NFS 環境は、アーキテクチャーやオペレーティングシステムの異なるコンピュータから構成されるネットワーク上でファイルシステムを共有するために、有力で使いやすい手段です。しかし、NFS の操作によるファイルシステムの共有を便利にする機能が、一方ではセキュリティー上の問題につながっています。今まで、NFS はほとんどのバージョンで UNIX (AUTH_SYS) 認証を使用してきましたが、現在では AUTH_DH のようなより強力な認証方式も使用可能です。UNIX 認証を使用している場合、NFS サーバーは、要求をしたユーザーではなくコンピュータを認証して、ファイル要求を認証します。そのため、クライアントユーザーは、su を実行してファイルの所有者を装ったりすることができます。DH 認証では、NFS サーバーはユーザーを認証するため、このような操作が困難になります。
スーパーユーザーのアクセス権とネットワークプログラミングについての知識があれば、だれでも任意のデータをネットワークに取り入れたり、ネットワークから取り出したりできます。ネットワークに対するもっとも危険な攻撃は、データをネットワークに持ち込むような攻撃です。たとえば、有効なパケットを生成したり、または「対話」を記録し後で再生することによってユーザーを装うなどの手段があります。これらはデータの整合性に影響を与えます。ユーザーを装わず、単にネットワークトラフィックを傍受するための盗聴が行われる攻撃であれば、データの整合性が損なわれることはないため、それほど危険ではありません。ネットワーク上でやりとりされるデータを暗号化すると、機密情報のプライバシを保護できます。
ネットワークのセキュリティー問題に対する共通の対処方法は、解決策を各アプリケーションにゆだねることです。さらに優れた手法としては、すべてのアプリケーションを対象として、標準の認証システムを導入することです。
Solaris オペレーティングシステムには、NFS の操作が構築されるメカニズムである遠隔手続き呼び出し (RPC) のレベルで、認証システムが組み込まれています。このシステムは Secure RPC と呼ばれ、ネットワーク環境のセキュリティーを大幅に向上させるとともに、NFS のセキュリティーを強化します。Secure RPC の機能を利用した NFS システムを Secure NFS システムといいます。