この節では、ASET を構成する方法と、ASET が稼働する環境について説明します。
ASET の管理と構成は最小限ですみ、ほとんどの場合はデフォルト値で実行できます。ただし、ASET の処理や動作に影響する一部のパラメータを調整して、その特長を最大限に発揮させることができます。デフォルト値を変更する前に、ASET の機能と、ASET がシステムの構成要素に及ぼす影響を理解しておく必要があります。
ASET は、次の 4 つの構成ファイルに依存してタスクの動作を制御します。
/usr/aset/asetenv
/usr/aset/masters/tune.low
/usr/aset/masters/tune.med
/usr/aset/masters/tune.high
/usr/aset/asetenv ファイルには、2 つのメインセクションがあります。
ユーザーが構成可能な環境変数セクション
内部環境変数セクション
ユーザーが構成可能なパラメータセクションは変更できます。ただし、内部環境変数セクションの設定は内部使用だけに限られ、変更できません。
ユーザーが構成可能なセクションのエントリを編集して、次の操作を行うことができます。
実行するタスクを選択する
システムファイルの確認タスク用のディレクトリを指定する
ASET の実行スケジュールを指定する
UID 別名ファイルを指定する
確認対象を NIS+ テーブルまで拡張する
ASET が実行する各タスクでは、システムセキュリティーの特定の領域が監視されます。ほとんどのシステム環境では、すべてのタスクでバランスがとれたセキュリティー範囲を提供する必要があります。ただし、1 つまたは複数のタスクを除外しても構いません。
たとえば、ファイアウォールタスクはすべてのセキュリティーレベルで実行されますが、本来の機能は最上位レベルでのみ動作します。ASET を高セキュリティーレベルで実行する場合でも、ファイアウォール保護は不要なときがあります。
管理者は、ファイアウォール機能を使用しないで高セキュリティーレベルで実行するように ASET を設定できます。このためには、asetenv ファイル内で環境変数の TASKS の一覧を編集します。デフォルトでは、TASKS の一覧にはすべての ASET タスクが含まれています。特定のタスクを削除するには、このファイルからそのタスクに関連する変数を削除します。この場合は、一覧から firewall 環境変数を削除することになります。次の一覧に ASET を実行すると、除外したタスクは実行されません。
次の例では、すべての ASET タスクが含まれる TASKS 一覧が表示されます。
TASKS=”env sysconfig usrgrp tune cklist eeprom firewall” |
システムファイル確認では、選択したシステムディレクトリ内のファイルの属性が確認されます。次の環境変数を使用して、どのディレクトリを確認するかを定義できます。
CKLISTPATH_LOW 変数は、低セキュリティーレベルで確認されるディレクトリを定義します。CKLISTPATH_MED と CKLISTPATH_HIGH 環境変数は、それぞれ中セキュリティーレベルと高セキュリティーレベルで同じように機能します。
セキュリティーレベルの低い環境変数を定義したディレクトリの一覧は、次にセキュリティーレベルの高い環境変数を定義したディレクトリの一覧のサブセットである必要があります。たとえば、CKLISTPATH_LOW に指定したディレクトリはすべて CKLISTPATH_MED に含めます。同様に、CKLISTPATH_MED に指定したディレクトリはすべて CKLISTPATH_HIGH に含めます。
これらのディレクトリに対して実行される確認は再帰的ではありません。ASET では、環境変数に明示的に指定されているディレクトリだけが確認されます。ASET では、そのサブディレクトリは確認されません。
これらの環境変数の定義を編集して、ASET に確認させたいディレクトリを追加または削除できます。これらの確認リストは、通常は毎日変更がないシステムファイルにのみ便利なことに注意してください。たとえば、一般にユーザーのホームディレクトリは動的な変化が大きすぎるので、確認リストの候補にはなりません。
ASET は対話形式で実行できます。また、-p オプションを使用して、ASET タスクの実行を指定した時刻に要求することもできます。ASET は、システム需要が少ないときに定期的に実行できます。たとえば、ASET は PERIODIC_SCHEDULE を照会して、ASET タスクの実行頻度と実行時刻を判断します。ASET を定期的に実行するように設定する方法については、「ASET を定期的に実行する方法」を参照してください。
PERIODIC_SCHEDULE の形式は、crontab エントリの形式と同じです。詳細は、crontab(1) のマニュアルページを参照してください。
UID_ALIASES 変数は、共有 UID がリストされる別名ファイルを指定します。デフォルトファイルは /usr/aset/masters/uid_aliases です。
YPCHECK 環境変数は、ASET でシステム構成ファイルテーブルも確認するかどうかを指定します。YPCHECK はブール型変数です。YPCHECK には true または false しか指定できません。デフォルト値は false で、NIS+ テーブルの確認は無効になっています。
この環境変数の機能を理解するために、passwd ファイルに与える影響を考えてみてください。false に設定すると、ASET はローカルの passwd ファイルを確認します。true に設定すると、NIS+ の passwd テーブル内でシステムのドメインも確認されます。
ASET ではローカルファイルが自動的に修復されますが、NIS+ テーブル内の潜在的な問題はレポートされるだけです。NIS+ テーブルの変更は行いません。
ASET は、3 つのマスター調整ファイル tune.low、tune.med、tune.high を使用して、重要なシステムファイルへのアクセス制限を緩めたり厳しくしたりします。この 3 つのマスターファイルは /usr/aset/masters ディレクトリにあり、環境に合わせて調整できます。詳細は、「調整ファイルの例」を参照してください。
tune.low ファイルは、アクセス権をデフォルトのシステム設定に適した値に設定します。tune.med ファイルは、これらのアクセス権をさらに制限し、tune.low に含まれていないエントリを追加します。tune.high ファイルは、アクセス権をさらに厳しく制限します。
調整ファイル内の設定を変更するには、ファイルのエントリを追加または削除します。アクセス権を現在の設定よりも制限が緩やかになるような値に設定しても意味がありません。システムセキュリティーを下位レベルに下げない限り、ASET がアクセス権の制限を緩和したことになりません。