『Solaris WBEM 開発ガイド』では、CIM (Common Information Model) の概念について説明します。SolarisTM オペレーティングシステム (Solaris OS) での WBEM (Web-Based Enterprise Management) サービスの管理方法についても説明します。
またこのマニュアルでは、WBEM SDK (Solaris Web-Based Enterprise Management ソフトウェア開発キット) についても説明します。開発者は、WBEM SDK を利用して、Solaris OS のリソースを管理する標準ベースのアプリケーションを作成できます。また、プロバイダ (管理対象リソースと通信してデータにアクセスするプログラム) を作成することもできます。
Solaris WBEM SDK の構成要素は次のとおりです。
Distributed Management Task Force (DMTF) の CIM により、リソースの記述および管理を行うクライアントアプリケーションプログラミングインタフェース (API)。
管理対象のリソース上の動的データを取得および設定するプロバイダ API。
WBEM クライアントおよびプロバイダプログラムのサンプル。
システム上に管理対象リソースを作成したり表示したりできる JavaTM プログラミング言語で作成された CIM Workshop アプリケーション。
このリリースでは、SPARC® および x86 系列のプロセッサアーキテクチャ (UltraSPARC®、SPARC64、AMD64、 Pentium、Xeon EM64T) を使用するシステムをサポートします。 サポートされるシステムについては、Solaris 10 Hardware Compatibility List(http://www.sun.com/bigadmin/hcl) を参照してください。 本書では、プラットフォームにより実装が異なる場合は、それを特記します。
本書では、「x86」という用語は AMD64 あるいは Intel Xeon/Pentium 製品系列と互換性のあるプロセッサを使用して製造された 32 ビットおよび 64 ビットシステムを意味します。サポートされるシステムについては、 Solaris 10 Hardware Compatibility List を参照してください。
このマニュアルは、次のようなソフトウェア開発者を対象としています。
システム設計開発者 – ソフトウェアプロバイダを介して、標準の CIM 形式のデバイス情報を CIM オブジェクトマネージャ (CIM Object Manager) に伝えるようなソフトウェアを作成します。
システムおよびネットワークアプリケーション開発者 – CIM クラスおよびインスタンスに格納されている情報を管理するアプリケーションを作成します。これらの開発者は、Solaris WBEM サービス (Solaris WBEM Services) API を使って、CIM インスタンスおよびクラスのプロパティを取得または設定します。
このマニュアルは、読者に次の知識があることを前提としています。
オブジェクト指向プログラミングの概念
Java プログラミング言語
CIM の概念
ネットワーク管理の概念
知識が不十分な場合には、次の書籍を参考にすることをお勧めします。
『The Java Programming Language』第 2 版、Ken Arnold、James Gosling 共著、Addison-Wesley、ISBN 0–201–31006–6
『The Java Class Libraries』第 2 版、第 1 巻、Patrick Chan、Rosanna Lee、Douglas Kramer 共著、Addison-Wesley、ISBN 0–201–31002–3
『CIM Tutorial』、Distributed Management Task Force 提供
次に、WBEM 技術に携わる場合に有用な Web サイトを示します。
「Distributed Management Task Force (DMTF)」– http://www.dmtf.org
このサイトには、CIM の最新情報、各種の作業グループについての情報、および CIM スキーマの拡張についての情報が掲載されています。
「Rational Software」– http://www.rational.com/uml
このサイトでは、Unified Modeling Language (UML) および Rose CASE ツールの関連文書を入手できます。
第 1 章「Solaris WBEM の概要」では、WBEM、CIM、Solaris WBEM SDK の API、CIM Workshop について簡単に説明します。
第 2 章「CIM オブジェクトマネージャの使用」では、CIM オブジェクトマネージャについて説明します。CIM オブジェクトマネージャの起動および停止方法、CIM オブジェクトマネージャリポジトリのアップグレード方法についても取り上げます。
第 3 章「サンプルプログラムの使用」では、Solaris WBEM SDK 付属のサンプルプログラムについて説明します。
第 4 章「クライアントプログラムの記述」では、クライアント API を使用してクライアントプログラムを記述する方法について説明します。
第 5 章「WBEM 照会の作成」では、WQL (WBEM Query Language) と Query API による照会の作成および処理方法について説明します。
第 6 章「プロバイダプログラムの作成」では、プロバイダ API を使用してプロバイダプログラムを記述する方法について説明します。
第 7 章「MOF コンパイラを使用した JavaBeans 構成要素の作成」では、MOF コンパイラの使用方法について説明します。
第 8 章「セキュリティの管理」では、WBEM のセキュリティ機構と CIM オブジェクトマネージャの機能につ いて説明します。
第 9 章「問題発生時の解決方法」では、 ログデータの表示方法と、 Solaris WBEM SDK の構成要素に よって生成されたエラーメッセージの意味を説明します。
付録 A 「Solaris プラットフォームスキーマ」 では、Solaris WBEM SDK に含まれる MOF ファイルについて説明します。
次の関連マニュアルも参照してください。
JavadocTM リファレンスページ – WBEM API について説明しています。/usr/sadm/lib/wbem/doc/index.html を参照してください。
CIM/Solaris プラットフォームスキーマ – CIM および Solaris スキーマについて説明しています。/usr/sadm/lib/wbem/doc/mofhtml/index.html を参照してください。
DMTF 用語集 – CIM および WBEM 関連用語の総合的な用語集です。http://www.dmtf.org/education/cimtutorial/reference/glossary.php を参照してください。
docs.sun.com では、Sun が提供しているオンラインマニュアルを参照することができます。マニュアルのタイトルや特定の主題などをキーワードとして、検索を行うこともできます。URL は、http://docs.sun.com です。
このマニュアルでは、次のような字体や記号を特別な意味を持つものとして使用します。
表 P–1 表記上の規則
字体または記号 |
意味 |
例 |
|
---|---|---|---|
AaBbCc123 |
コマンド名、ファイル名、ディレクトリ名、画面上のコンピュータ出力、コード例を示します。 |
.login ファイルを編集します。 ls -a を使用してすべてのファイルを表示します。 system% |
|
AaBbCc123 |
ユーザーが入力する文字を、画面上のコンピュータ出力と区別して示します。 |
system% su password: |
|
AaBbCc123 |
変数を示します。実際に使用する特定の名前または値で置き換えます。 |
ファイルを削除するには、rm filename と入力します。 |
|
『 』 |
参照する書名を示します。 |
『コードマネージャ・ユーザーズガイド』を参照してください。 |
|
「 」 |
参照する章、節、ボタンやメニュー名、強調する単語を示します。 |
第 5 章「衝突の回避」を参照してください。 この操作ができるのは、「スーパーユーザー」だけです。 |
|
\ |
枠で囲まれたコード例で、テキストがページ行幅を超える場合に、継続を示します。 |
|
コード例は次のように表示されます。
C シェル
machine_name% command y|n [filename] |
C シェルのスーパーユーザー
machine_name# command y|n [filename] |
Bourne シェルおよび Korn シェル
$ command y|n [filename] |
Bourne シェルおよび Korn シェルのスーパーユーザー
# command y|n [filename] |
[ ] は省略可能な項目を示します。上記の例は、filename は省略してもよいことを示しています。
| は区切り文字 (セパレータ) です。この文字で分割されている引数のうち 1 つだけを指定します。
キーボードのキー名は英文で、頭文字を大文字で示します (例: Shift キーを押します)。ただし、キーボードによっては Enter キーが Return キーの動作をします。
ダッシュ (-) は 2 つのキーを同時に押すことを示します。たとえば、Ctrl-D は Control キーを押したまま D キーを押すことを意味します。
このマニュアルでは、英語環境での画面イメージを使っています。このため、実際に日本語環境で表示される画面イメージとこのマニュアルで使っている画面イメージが異なる場合があります。本文中で画面イメージを説明する場合には、日本語のメニュー、ボタン名などの項目名と英語の項目名が、適宜併記されています。