この章では、Oracle Solaris ZFS ファイルシステムの管理について詳しく説明します。ファイルシステムの階層レイアウト、プロパティーが継承されること、およびマウントポイント管理および共有が自動的に行われることなどについて、それらの概念を説明しています。
この章は、次の節で構成されます。
ZFS ファイルシステムは、ストレージプールの最上位に構築されます。ファイルシステムは動的に作成および破棄することができ、基礎となるディスク領域を割り当てたりフォーマットしたりする必要はありません。ファイルシステムが非常に軽量であることと、ZFS はファイルシステムに基づいて管理することから、作成されるファイルシステムの数は多くなる傾向があります。
ZFS ファイルシステムの管理には、zfs コマンドを使用します。zfs コマンドには、ファイルシステムに特定の操作を実行するために一連のサブコマンドが用意されています。この章では、これらのサブコマンドについて詳細に説明します。スナップショット、ボリューム、およびクローンもこのコマンドを使って管理しますが、これらの機能についてはこの章では簡単に取り上げるだけにとどめます。スナップショットおよびクローンの詳細については、第 7 章Oracle Solaris ZFS のスナップショットとクローンの操作を参照してください。ZFS ボリュームの詳細については、「ZFS ボリューム」を参照してください。
「データセット」という用語は、この章ではファイルシステム、スナップショット、クローン、またはボリュームの総称として使用します。
ZFS ファイルシステムは、zfs create および zfs destroy コマンドを使って作成および破棄できます。zfs rename コマンドを使用して、ZFS ファイルシステムの名前を変更できます。
ZFS ファイルシステムの作成には、zfs create コマンドを使用します。create サブコマンドの引数は 1 つだけです。作成するファイルシステムの名前です。ファイルシステム名は、次のようにプール名から始まるパス名として指定します。
pool-name/[filesystem-name/]filesystem-name
パスのプール名と最初のファイルシステム名は、新規ファイルシステムを階層内のどこに作成するかを示しています。パスの最後にある名前は、作成するファイルシステムの名前です。ファイルシステム名は、「ZFS コンポーネントに名前を付けるときの規則」の命名要件に従って付ける必要があります。
次の例では、bonwick という名前のファイルシステムが tank/home ファイルシステムに作成されます。
# zfs create tank/home/bonwick |
新しく作成するファイルシステムが正常に作成されると、自動的にマウントされます。ファイルシステムは、デフォルトでは create サブコマンドのファイルシステム名に指定したパスを使って、 /dataset としてマウントされます。この例では、新しく作成した bonwick ファイルシステムは /tank/home/bonwick にマウントされます。自動的に管理されるマウントポイントの詳細については、「ZFS マウントポイントを管理する」を参照してください。
zfs create コマンドの詳細については、zfs(1M) を参照してください。
ファイルシステムの作成時にファイルシステムのプロパティーを設定できます。
次の例では、tank/home ファイルシステム用に /export/zfs というマウントポイントが作成されます。
# zfs create -o mountpoint=/export/zfs tank/home |
ファイルシステムのプロパティーの詳細については、「ZFS のプロパティーの紹介」を参照してください。
ZFS ファイルシステムを破棄するには、zfs destroy コマンドを使用します。破棄されたファイルシステムは、マウントおよび共有が自動的に解除されます。自動的に管理されるマウントおよび共有の詳細については、「自動マウントポイント」を参照してください。
次の例では、tabriz ファイルシステムが破棄されます。
# zfs destroy tank/home/tabriz |
destroy サブコマンドでは、確認を求めるプロンプトは表示されません。慎重に使用してください。
破棄するファイルシステムがビジー状態でマウントを解除できない場合、zfs destroy コマンドは失敗します。アクティブなファイルシステムを破棄する場合は、-f オプションを使用します。このオプションは慎重に使用してください。アクティブなファイルシステムのマウント解除、共有解除、および破棄も実行することができ、その場合はアプリケーションが予期しない動作をすることがあります。
# zfs destroy tank/home/ahrens cannot unmount 'tank/home/ahrens': Device busy # zfs destroy -f tank/home/ahrens |
zfs destroy コマンドは、ファイルシステムに子孫が存在する場合にも失敗します。ファイルシステムとそのすべての子孫を再帰的に破棄するときは、-r オプションを使用します。再帰的な破棄を実行すると、スナップショットも破棄されるので、このオプションは慎重に使用してください。
# zfs destroy tank/ws cannot destroy 'tank/ws': filesystem has children use '-r' to destroy the following datasets: tank/ws/billm tank/ws/bonwick tank/ws/maybee # zfs destroy -r tank/ws |
破棄するファイルシステムに間接的な依存関係が存在する場合は、再帰的な破棄コマンドでも失敗します。破棄する階層の外部に複製されたファイルシステムなど、すべての依存関係を強制的に破棄する場合は、-R オプションを使用する必要があります。このオプションは、慎重に使用してください。
# zfs destroy -r tank/home/schrock cannot destroy 'tank/home/schrock': filesystem has dependent clones use '-R' to destroy the following datasets: tank/clones/schrock-clone # zfs destroy -R tank/home/schrock |
zfs destroy コマンドの -f、-r、または -R オプションでは、確認を求めるプロンプトは表示されないので、これらのオプションは慎重に使用してください。
スナップショットおよびクローンの詳細については、第 7 章Oracle Solaris ZFS のスナップショットとクローンの操作を参照してください。
zfs rename コマンドを使用して、ファイルシステムの名前を変更できます。rename サブコマンドを使用すれば、次の操作を実行できます。
ファイルシステムの名前を変更する。
ZFS 階層内でファイルシステムの場所を移動する。
ファイルシステムの名前を変更して、ZFS 階層内で場所を移動する。
次の例では、rename サブコマンドを使ってファイルシステムの名前を kustarz から kustarz_old に変更しています。
# zfs rename tank/home/kustarz tank/home/kustarz_old |
次の例では、zfs rename を使用してファイルシステムの場所を移動する方法を示しています。
# zfs rename tank/home/maybee tank/ws/maybee |
この例では、maybee ファイルシステムの場所が tank/home から tank/ws に移動します。名前の変更を使ってファイルの場所を移動するときは、新しい場所は同じプールの中にする必要があり、新しいファイルシステムを格納するために十分なディスク領域が存在している必要があります。割り当て制限に達したなどの理由で新しい場所のディスク容量が不足していると、rename 操作は失敗します。
割り当て制限の詳細については、「ZFS の割り当て制限と予約を設定する」を参照してください。
rename を実行すると、ファイルシステムおよび子孫のファイルシステム (存在する場合) をマウント解除して再マウントしようとする処理が行われます。アクティブなファイルシステムのマウントを解除できない場合、rename コマンドは失敗します。この問題が発生した場合は、ファイルシステムを強制的にマウント解除する必要があります。
スナップショットの名前を変更する方法については、「ZFS スナップショットの名前を変更する」を参照してください。
ファイルシステム、ボリューム、スナップショット、およびクローンの動作を制御するときには、主にプロパティーという機構を使用します。この節で定義しているプロパティーは、特に説明している場合を除いて、すべての種類のデータセットに適用されます。
プロパティーは、ネイティブプロパティーとユーザー定義プロパティーの 2 種類に分けられます。ネイティブプロパティーは、内部の統計情報をエクスポートするか、ZFS ファイルシステムの動作を制御します。また、ネイティブプロパティーは設定可能なプロパティーまたは読み取り専用のプロパティーのどちらかです。ユーザープロパティーは ZFS ファイルシステムの動作には影響しませんが、これらを使用すると、使用環境内で意味を持つようにデータセットに注釈を付けることができます。ユーザープロパティーの詳細については、「ZFS ユーザープロパティー」を参照してください。
設定可能なプロパティーのほとんどは、継承可能なプロパティーでもあります。継承可能なプロパティーとは、親データセットに設定されるとそのすべての子孫に伝達されるプロパティーのことです。
継承可能なプロパティーには必ず、どのようにしてプロパティーが取得されたかを示すソースが関連付けられています。プロパティーのソースには、次の値が記述される可能性があります。
そのプロパティーが zfs set コマンドを使用して明示的にデータセットに設定されたことを示しています。「ZFS プロパティーを設定する」を参照してください。
そのプロパティーが、指定された祖先から継承されたことを示しています。
そのプロパティーの値が、継承されたのでもローカルで設定されたのでもないことを示しています。このソースは、このプロパティーがソース local として設定された祖先が存在しないことを示しています。
次の表には、ZFS ファイルシステムの読み取り専用のネイティブプロパティーと設定可能なネイティブプロパティーの両方を示しています。読み取り専用のネイティブプロパティーには、そのことを記載しています。この表に示すそれ以外のプロパティーは、すべて設定可能なプロパティーです。ユーザープロパティーについては、「ZFS ユーザープロパティー」を参照してください。
表 6–1 ZFS のネイティブプロパティーの説明
プロパティー名 |
種類 |
デフォルト値 |
説明 |
---|---|---|---|
aclinherit |
文字列 |
secure |
ファイルとディレクトリが作成されるときに ACL エントリをどのように継承するかを制御します。値は、discard、noallow、secure、および passthrough です。これらの値については、「ACL プロパティー」を参照してください。 |
aclmode |
文字列 |
groupmask |
chmod を実行するときに ACL エントリをどのように変更するかを制御します。値は、discard、groupmask、および passthrough です。これらの値については、「ACL プロパティー」を参照してください。 |
atime |
ブール型 |
on |
ファイルを読み取るときにファイルのアクセス時刻を更新するかどうかを制御します。このプロパティーをオフに設定すると、ファイルを読み取るときに書き込みトラフィックが生成されなくなるため、パフォーマンスが大幅に向上する可能性があります。ただし、メールプログラムなどのユーティリティーが予期しない動作をすることがあります。 |
available |
数値 |
なし |
読み取り専用プロパティー。データセットおよびそのすべての子が利用できるディスク容量を調べます。プール内でほかのアクティビティーが実行されていないことを前提とします。ディスク容量はプール内で共有されるため、プールの物理サイズ、割り当て制限、予約、プール内のほかのデータセットなどのさまざまな要因によって、利用できる容量が制限されることがあります。 このプロパティーの省略名は avail です。 ディスク領域の計上の詳細については、「ZFS のディスク領域の計上」を参照してください。 |
canmount |
ブール型 |
on |
ファイルシステムが zfs mount コマンドを使ってマウントできるかどうかを制御します。このプロパティーはどのファイルシステムにも設定可能で、プロパティー自体は継承可能ではありません。ただし、このプロパティーを off に設定するとマウントポイントを子孫のファイルシステムに継承できますが、ファイルシステム自体がマウントされることはありません。 noauto オプションを設定すると、データセットのマウントおよびマウント解除は明示的に実行することが必要になります。データセットの作成時やインポート時に、データセットが自動的にマウントされることはありません。また、zfs mount-a コマンドでマウントされることや、zfs unmount-a コマンドでマウント解除されることもありません。 詳細は、「canmount プロパティー」を参照してください。 |
チェックサム |
文字列 |
on |
データの整合性を検証するために使用するチェックサムを制御します。デフォルト値は on で、適切なアルゴリズム (現在は fletcher4) が自動的に選択されます。値は、on、off、fletcher2、fletcher4、および sha256 です。値を off にすると、ユーザーデータの完全性チェックが無効になります。値を off にすることは推奨されていません。 |
compression |
文字列 |
off |
データセットに対する圧縮を有効または無効にします。値は on、 off、lzjb、gzip、および gzip-N です。現時点では、このプロパティーを lzjb、gzip、または gzip-N に設定することは、このプロパティーを on に設定することと同じ効果を持ちます。既存のデータを持つファイルシステムで compression を有効にした場合は、新しいデータのみが圧縮されます。既存のデータは圧縮されないまま残されます。 このプロパティーの省略名は compress です。 |
compressratio |
数値 |
なし |
読み取り専用プロパティー。データセットに適用された圧縮率を調べます。乗数で表現されます。zfs set compression=on dataset コマンドを実行すると、圧縮を有効にできます。 値は、すべてのファイルの論理サイズおよび参照する物理データの量から計算されます。これには、compression プロパティーを使用して明示的に圧縮されたデータセットも含まれます。 |
copies |
数値 |
1 |
ファイルシステムごとのユーザーデータのコピー数を設定します。使用できる値は 1、2、または 3 です。これらのコピーは、プールレベルの冗長性を補うものです。ユーザーデータの複数のコピーで使用されるディスク領域は、対応するファイルとデータセットから取られるため、割り当て制限と予約にとって不利に働きます。また、複数のコピーを有効にすると、used プロパティーが更新されます。既存のファイルシステムでこのプロパティーを変更しても、新たに書き出されるデータが影響を受けるだけなので、ファイルシステムの作成時にこのプロパティーの設定を検討してください。 |
creation |
文字列 |
なし | |
devices |
ブール型 |
on | |
exec |
ブール型 |
on |
ファイルシステムに含まれるプログラムの実行を許可するかどうかを制御します。off に設定した場合は、PROT_EXEC による mmap(2) 呼び出しも許可されません。 |
mounted |
ブール型 |
なし |
読み取り専用のプロパティー。ファイルシステム、クローン、またはスナップショットが現在マウントされているかどうかを調べます。このプロパティーは、ボリュームには適用されません。値には yes または no を指定できます。 |
mountpoint |
文字列 |
なし |
このファイルシステムで使用されるマウントポイントを制御します。ファイルシステムの mountpoint プロパティーを変更すると、そのマウントポイントを継承するファイルシステムおよびそのすべての子孫がマウント解除されます。新しい値が legacy の場合は、マウントが解除されたままになります。それ以外のときは、プロパティーの古い値が legacy または none だった場合、またはプロパティーが変更される前にマウントされていた場合は、自動的に再マウントされます。また、共有されていたすべてのファイルシステムは、共有が解除されてから新しい場所で共有されます。 このプロパティーの使用方法の詳細については、「ZFS マウントポイントを管理する」を参照してください。 |
primarycache |
文字列 |
all |
一次キャッシュ (ARC) にキャッシュされる内容を制御します。設定できる値は、all、none、および metadata です。all に設定すると、ユーザーデータとメタデータの両方がキャッシュされます。none に設定すると、ユーザーデータも、メタデータも、キャッシュされません。metadata に設定すると、メタデータだけがキャッシュされます。 |
origin |
文字列 |
なし |
複製されたファイルシステムまたはボリュームのための読み取り専用プロパティー。どのスナップショットからクローンが作成されたかを調べます。クローンが存在する場合には、-r や -f オプションを使用しても、作成元は破棄できません。 |
quota |
数値 (または none) |
none |
データセットおよびその子孫が消費できるディスク容量を制限します。このプロパティーは、使用されるディスク容量に強い制限値を適用します。容量には、子孫 (ファイルシステムやスナップショットを含む) が使用するすべての容量も含まれます。割り当て制限がすでに設定されているデータセットの子孫に割り当て制限を設定した場合は、祖先の割り当て制限は上書きされずに、制限が追加されます。ボリュームには割り当て制限を設定できません。volsize プロパティーが暗黙的な割り当て制限として機能します。 割り当て制限の設定については、「ZFS ファイルシステムに割り当て制限を設定する」を参照してください。 |
readonly |
ブール型 |
off |
データセットを変更できるかどうかを制御します。on に設定すると、変更できなくなります。 このプロパティーの省略名は rdonly です。 |
recordsize |
数値 |
128K |
ファイルシステムに格納するファイルの推奨ブロックサイズを指定します。 このプロパティーの省略名は recsize です。詳細については、「recordsize プロパティー」を参照してください。 |
referenced |
数値 |
なし |
読み取り専用プロパティー。データセットからアクセスできるデータの量を調べます。プール内のほかのデータセットで共有されるデータも含まれることがあります。 スナップショットまたはクローンを作成したときには、それらの作成元のファイルシステムまたはスナップショットと同じディスク領域を最初は参照しています。内容が同じであるためです。 このプロパティーの省略名は refer です。 |
refquota |
数値 (または none) |
none |
1 つのデータセットが消費できるディスク容量を設定します。このプロパティーにより、使用される容量に対して強い制限値が設定されます。この強い制限値には、スナップショットやクローンなどの子孫で使用されるディスク容量は含まれません。 |
refreservation |
数値 (または none) |
none |
データセットに保証される最小ディスク容量を設定します。この容量には、スナップショットやクローンなどの子孫は含まれません。使用しているディスク容量がこの値を下回っているデータセットは、refreservation に指定された容量を使用していると見なされます。refreservation 予約は、親データセットが使用するディスク容量に計上されるので、親データセットの割り当て制限と予約を減らすことになります。 refreservation を設定すると、スナップショットを作成できるのは、データセットの referenced の現在のバイト数を格納できる十分な空きプール領域が、この予約容量のほかに存在する場合だけになります。 このプロパティーの省略名は refreserv です。 |
reservation |
数値 (または none) |
none |
データセットおよびその子孫に保証される最小ディスク容量を設定します。使用しているディスク容量がこの値を下回っているデータセットは、予約に指定された容量を使用していると見なされます。予約は、親データセットが使用するディスク容量に計上されるので、親データセットの割り当て制限と予約を減らすことになります。 このプロパティーの省略名は reserv です。 詳細については、「ZFS ファイルシステムに予約を設定する」を参照してください。 |
secondarycache |
文字列 |
all |
二次キャッシュ (L2ARC) にキャッシュされる内容を制御します。設定できる値は、all、none、および metadata です。all に設定すると、ユーザーデータとメタデータの両方がキャッシュされます。none に設定すると、ユーザーデータも、メタデータも、キャッシュされません。metadata に設定すると、メタデータだけがキャッシュされます。 |
setuid |
ブール型 |
on | |
shareiscsi |
文字列 |
off |
ZFS ボリュームが iSCSI ターゲットとして共有されるかどうかを制御します。プロパティーの値は on、off、および type=disk です。ファイルシステムに shareiscsi=on と設定して、そのファイルシステム内のすべての ZFS ボリュームがデフォルトで共有されるようにすることをお勧めします。ただし、このプロパティーをファイルシステムに設定しても、直接的な効果は何も得られません。 |
sharenfs |
文字列 |
off |
ファイルシステムを NFS 経由で使用できるかどうか、およびどのオプションを使用するかを制御します。on に設定した場合は、zfs share コマンドがオプションなしで呼び出されます。または、このプロパティーの内容に対応するオプションを使って、zfs share コマンドが呼び出されます。off に設定した場合は、従来の share と unshare コマンド、および dfstab ファイルを使用してファイルシステムが管理されます。 ZFS ファイルシステムの共有の詳細については、「ZFS ファイルシステムを共有および共有解除する」を参照してください。 |
snapdir |
文字列 |
hidden |
ファイルシステムのルートから .zfs ディレクトリを見えるようにするかどうかを制御します。スナップショットの使用方法の詳細については、「ZFS スナップショットの概要」を参照してください。 |
type |
文字列 |
なし |
読み取り専用プロパティー。データセットの種類を調べます。filesystem (ファイルシステムまたはクローン)、volume、または snapshot のいずれかになります。 |
used |
数値 |
なし |
読み取り専用プロパティー。データセットおよびそのすべての子孫が消費するディスク容量を調べます。 詳細については、「used プロパティー」を参照してください。 |
usedbychildren |
数値 |
off |
このデータセットの子によって使用されるディスク領域の量を特定する読み取り専用プロパティー。この領域は、データセットのすべての子が破棄されると、解放されます。プロパティーの省略名は usedchild です。 |
usedbydataset |
数値 |
off |
データセット自体によって使用されるディスク領域の量を特定する読み取り専用プロパティー。この領域は、最初にあらゆるスナップショットが破棄されてから refreservation 予約がすべて削除された後に、データセットが破棄されると、解放されます。プロパティーの省略名は usedds です。 |
usedbyrefreservation |
数値 |
off |
データセットに設定されている refreservation によって使用されるディスク領域の量を特定する読み取り専用プロパティー。この領域は、refreservation が削除されると、解放されます。プロパティーの省略名は usedrefreserv です。 |
usedbysnapshots |
数値 |
off |
データセットのスナップショットによって消費されるディスク領域の量を特定する読み取り専用プロパティー。特に、このディスク領域は、このデータセットのすべてのスナップショットが破棄されると、解放されます。この値はスナップショットの used プロパティーの値を単純に合計した結果ではないことに注意してください。複数のスナップショットで共有されている容量も存在するためです。プロパティーの省略名は usedsnap です。 |
version |
数値 |
なし |
ファイルシステムのディスク上バージョンを識別します。プールのバージョンとは無関係です。このプロパティーは、サポートされるソフトウェアリリースから入手可能な最近のバージョンにしか設定できません。詳細については、zfs upgrade コマンドを参照してください。 |
volsize |
数値 |
なし |
詳細については、「volsize プロパティー」を参照してください。 |
volblocksize |
数値 |
8K バイト |
ボリュームの場合に、ボリュームのブロックサイズを指定します。ボリュームが書き込まれたあとに、ブロックサイズを変更することはできません。ブロックサイズはボリュームを作成するときに設定してください。ボリュームのデフォルトブロックサイズは、8K バイトです。512 バイト から 128K バイトの範囲で、任意の 2 の累乗を指定できます。 このプロパティーの省略名は volblock です。 |
zoned |
ブール型 |
なし |
データセットが非大域ゾーンに追加されているかどうかを指定します。このプロパティーが設定されている場合、そのマウントポイントは大域ゾーンで考慮されません。ZFS では、このようなファイルシステムを要求されても、マウントすることはできません。ゾーンを最初にインストールしたときには、追加されたすべてのファイルシステムにこのプロパティーが設定されます。 ゾーンがインストールされている環境で ZFS を使用する方法の詳細については、「ゾーンがインストールされている Solaris システムで ZFS を使用する」を参照してください。 |
xattr |
ブール型 |
on |
読み取り専用のネイティブプロパティーは、取得はできますが設定はできません。読み取り専用のネイティブプロパティーは継承されません。一部のネイティブプロパティーは、特定の種類のデータセットに固有です。このような場合は、データセットの種類について、表 6–1 の説明の中で記載しています。
読み取り専用のネイティブプロパティーをここに示します。説明は、表 6–1 を参照してください。
available
compressratio
creation
mounted
origin
referenced
type
used
詳細については、「used プロパティー」を参照してください。
usedbychildren
usedbydataset
usedbyrefreservation
usedbysnapshots
used 、referenced、available プロパティーなど、ディスク領域の計上の詳細については、「ZFS のディスク領域の計上」を参照してください。
used プロパティーは読み取り専用のプロパティーであり、このデータセットとそのすべての子孫が消費するディスク容量を特定します。この値は、データの割り当て制限および予約を対象にして確認されます。使用されるディスク領域にデータセットの予約は含まれませんが、子孫のデータセットがある場合はそれらの予約も考慮されます。データセットがその親から継承して消費するディスク容量、およびデータセットが再帰的に破棄されるときに解放されるディスク容量は、使用済み領域および予約の中で大きな割合を占めます。
スナップショットを作成したときは、それらのディスク領域は最初はスナップショットとファイルシステムの間で共有されます。それまでに作成したスナップショットと領域が共有されることもあります。ファイルシステムが変化していくにつれて、それまで共有されていたディスク領域がスナップショット固有になり、スナップショットが使用する領域に計上されます。スナップショットが使用するディスク領域には、その固有データが計上されます。また、スナップショットを削除すると、ほかのスナップショットに固有の (および使用される) ディスク容量を増やすことができます。スナップショットと領域の詳細については、「領域が不足した場合の動作」を参照してください。
使用済み、使用可能、参照済みの各ディスク容量には、保留状態の変更は含まれません。保留状態の変更は通常、数秒以内に計上されます。fsync(3c) や O_SYNC 関数を使用してディスクへの変更をコミットしても、ディスク領域の使用状況の情報がすぐに更新されることが保証されているわけではありません。
usedbychildren、usedbydataset、usedbyrefreservation、および usedbysnapshots プロパティーの情報は、zfs list - o space コマンドを使用して表示することができます。これらのプロパティーを使用して、used プロパティーを、子孫によって消費されるディスク領域に分解することができます。詳細は、表 6–1 を参照してください。
設定可能なネイティブプロパティーとは、値の取得および設定ができるプロパティーのことです。設定可能なネイティブプロパティーは、zfs set コマンド (説明は 「ZFS プロパティーを設定する」を参照) または zfs create コマンド (説明は 「ZFS ファイルシステムを作成する」を参照) を使って設定します。設定可能なネイティブプロパティーは、割り当て制限と予約を除いて継承されます。割り当て制限と予約の詳細については、「ZFS の割り当て制限と予約を設定する」を参照してください。
一部の設定可能なネイティブプロパティーは、特定の種類のデータセットに固有です。このような場合は、データセットの種類について、表 6–1 の説明の中で記載しています。特に記載している場合を除いて、プロパティーはすべての種類のデータセットに適用されます。 つまり、ファイルシステム、ボリューム、クローン、およびスナップショットに適用されます。
次のプロパティーは設定可能です。説明は、表 6–1 を参照してください。
aclinherit
詳細については、「ACL プロパティー」を参照してください。
aclmode
詳細については、「ACL プロパティー」を参照してください。
atime
canmount
チェックサム
compression
copies
devices
exec
mountpoint
primarycache
quota
readonly
recordsize
詳細については、「recordsize プロパティー」を参照してください。
refquota
refreservation
reservation
secondarycache
shareiscsi
sharenfs
setuid
snapdir
version
volsize
詳細については、「volsize プロパティー」を参照してください。
volblocksize
zoned
xattr
canmount プロパティーを off に設定した場合は、zfs mount または zfs mount -a コマンドを使ってファイルシステムをマウントすることはできません。このプロパティーを off に設定することは、mountpoint プロパティーを none に設定することに似ていますが、継承可能な通常の mountpoint プロパティーをデータセットが引き続き保持する点が異なります。たとえば、このプロパティーを off に設定して、子孫のファイルシステム用に継承可能なプロパティーを確立できますが、親ファイルシステム自体がマウントされることもなければ、ユーザーがそれにアクセスすることもできません。この場合、親のファイルシステムは「コンテナ」の役目を果たしているため、そのコンテナにプロパティーを設定することはできますが、コンテナ自体にはアクセスできません。
次の例では、userpool が作成され、その canmount プロパティーが off に設定されます。子孫のユーザーファイルシステムのマウントポイントは、 1 つの共通したマウントポイント /export/home に設定されます。親のファイルシステムに設定されたプロパティーは子孫のファイルシステムに継承されますが、親のファイルシステム自体がマウントされることはありません。
# zpool create userpool mirror c0t5d0 c1t6d0 # zfs set canmount=off userpool # zfs set mountpoint=/export/home userpool # zfs set compression=on userpool # zfs create userpool/user1 # zfs create userpool/user2 # zfs mount userpool/user1 /export/home/user1 userpool/user2 /export/home/user2 |
canmount プロパティーを noauto に設定した場合、データセットは明示的にマウントする必要があり、自動的にはマウントできません。この値設定は Oracle Solaris アップグレードソフトウェアで使用され、アクティブなブート環境に属するデータセットだけが起動時にマウントされるようにします。
recordsize プロパティーは、ファイルシステムに格納するファイルの推奨ブロックサイズを指定します。
このプロパティーは、レコードサイズが固定されているファイルにアクセスするデータベースワークロードだけで使用するように設計されています。ZFS では、標準的なアクセスパターンに最適化された内部アルゴリズムに従って、ブロックサイズが自動的に調整されます。作成されるファイルのサイズが大きく、それらのファイルにさまざまなパターンの小さなブロック単位でアクセスするデータベースの場合には、このようなアルゴリズムが最適でないことがあります。recordsize にデータベースのレコードサイズ以上の値を設定すると、パフォーマンスが大きく向上することがあります。このプロパティーを汎用目的のファイルシステムに使用することは、パフォーマンスが低下する可能性があるため、できるだけ避けてください。指定するサイズは、512 バイト - 128K バイトの 2 の累乗にしてください。ファイルシステムの recordsize 値を変更した場合、そのあとに作成されたファイルだけに適用されます。既存のファイルには適用されません。
このプロパティーの省略名は recsize です。
volsize プロパティーはボリュームの論理サイズを指定します。デフォルトでは、ボリュームを作成するときに、同じ容量の予約が設定されます。volsize への変更があった場合には、予約にも同様の変更が反映されます。これらのチェックは、予期しない動作が起きないようにするために使用されます。ボリュームで使用できる容量が指定した容量より少ない場合には、ボリュームがどのように使用されるかによって異なりますが、定義されていない動作が実行されたりデータが破損したりする可能性があります。このような影響は、ボリュームの使用中にボリュームサイズを変更した場合にも発生することがあります。特に、サイズを縮小した場合にはその可能性が高くなります。ボリュームサイズを調整するときは、特に注意してください。
推奨される方法ではありませんが、zfs create -V に -s フラグを指定するか、またはボリュームの作成後に予約を変更すると、疎ボリュームを作成できます。「疎ボリューム」とは、予約がボリュームサイズと等しくないボリュームのことです。疎ボリュームの場合、volsize を変更しても予約には反映されません。
ボリュームの使用方法の詳細については、「ZFS ボリューム」を参照してください。
ZFS は、ネイティブプロパティーに加えて、任意のユーザープロパティーもサポートします。ユーザープロパティーは ZFS の動作には影響しませんが、これらを使用すると、使用環境内で意味のある情報をデータセットに注釈として付けることができます。
ユーザープロパティーの名前は、次の規則に適合している必要があります。
ネイティブプロパティーと区別するためのコロン(': ') を含んでいる必要がある。
小文字の英字、数字、または次の句読文字を含んでいる必要がある。「:」、「+」、「.」、「_」。
ユーザープロパティー名の最大長は、256 文字である。
想定されている規則では、プロパティー名は次の 2 つの部分に分割しますが、この名前空間は ZFS によって強制されているものではありません。
module:property |
ユーザープロパティーをプログラムで使用する場合、プロパティー名の module 要素には、逆順にした DNS ドメイン名を使用してください。これは、それぞれ単独で開発された 2 つのパッケージが、異なる目的で同じプロパティー名を使用する可能性を減らすためです。com.sun. で始まるプロパティー名は、Oracle Corporation が使用するために予約されています。
ユーザープロパティーの値は次の規則に準拠する必要があります。
常に継承され、決して検証されることのない任意の文字列から構成されている必要がある。
ユーザープロパティー値の最大長は、1024 文字である。
次に例を示します。
# zfs set dept:users=finance userpool/user1 # zfs set dept:users=general userpool/user2 # zfs set dept:users=itops userpool/user3 |
プロパティーを処理するコマンド (zfs list、zfs get、zfs set など) はすべて、ネイティブプロパティーとユーザープロパティーの両方の操作に使用できます。
次に例を示します。
zfs get -r dept:users userpool NAME PROPERTY VALUE SOURCE userpool dept:users all local userpool/user1 dept:users finance local userpool/user2 dept:users general local userpool/user3 dept:users itops local |
ユーザープロパティーを消去するには、zfs inherit コマンドを使用します。次に例を示します。
# zfs inherit -r dept:users userpool |
プロパティーがどの親のデータセットにも定義されていない場合は、完全に削除されます。
zfs list コマンドを使って、データセット情報を表示してクエリー検索を行うことができます。さらに、必要に応じてその操作を拡張することができます。この節では、基本的なクエリーと複雑なクエリーについて説明します。
zfs list コマンドをオプションなしで使用すると、基本的なデータセット情報を表示できます。このコマンドでは、システム上のすべてのデータセットの名前と、それらの used、available、 referenced、および mountpoint プロパティーの値が表示されます。これらのプロパティーの詳細については、「ZFS のプロパティーの紹介」を参照してください。
次に例を示します。
# zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT pool 476K 16.5G 21K /pool pool/clone 18K 16.5G 18K /pool/clone pool/home 296K 16.5G 19K /pool/home pool/home/marks 277K 16.5G 277K /pool/home/marks pool/home/marks@snap 0 - 277K - pool/test 18K 16.5G 18K /test |
このコマンドを使用するときに、コマンド行にデータセット名を指定すれば、特定のデータセットを表示することもできます。また、-r オプションを使って、そのデータセットのすべての子孫を再帰的に表示することもできます。次に例を示します。
# zfs list -r pool/home/marks NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT pool/home/marks 277K 16.5G 277K /pool/home/marks pool/home/marks@snap 0 - 277K - |
zfs list コマンドは、ファイルシステムのマウントポイントとともに使用することができます。次に例を示します。
# zfs list /pool/home/marks NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT pool/home/marks 277K 16.5G 277K /pool/home/marks |
次の例は、tank/home/chua およびそのすべての子孫データセットの基本情報を表示する方法を示しています。
# zfs list -r tank/home/chua NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT tank/home/chua 26.0K 4.81G 10.0K /tank/home/chua tank/home/chua/projects 16K 4.81G 9.0K /tank/home/chua/projects tank/home/chua/projects/fs1 8K 4.81G 8K /tank/home/chua/projects/fs1 tank/home/chua/projects/fs2 8K 4.81G 8K /tank/home/chua/projects/fs2 |
zfs list コマンドの追加情報については、zfs(1M) を参照してください。
-o、-t、および -H オプションを使用して、zfs list の出力をカスタマイズすることができます。
-o オプションと必要なプロパティーのコンマ区切りのリストを使用すれば、プロパティー値の出力をカスタマイズできます。任意のデータセットプロパティーを有効な引数として指定できます。サポートされているすべてのデータセットプロパティーのリストは、「ZFS のプロパティーの紹介」を参照してください。また、定義されているプロパティー以外に、-o オプションのリストにリテラル name を指定すれば、出力にデータセットの名前が表示されるはずです。
次の例では、zfs list と一緒に sharenfs と mountpoint プロパティー値を使用して、データセット名を表示しています。
# zfs list -o name,sharenfs,mountpoint NAME SHARENFS MOUNTPOINT tank off /tank tank/home on /tank/home tank/home/ahrens on /tank/home/ahrens tank/home/bonwick on /tank/home/bonwick tank/home/chua on /tank/home/chua tank/home/eschrock on legacy tank/home/moore on /tank/home/moore tank/home/tabriz ro /tank/home/tabriz |
-t オプションを使用すれば、表示するデータセットの種類を指定できます。次の表は、有効な種類について説明しています。
表 6–2 ZFS データセットの種類
種類 |
説明 |
---|---|
filesystem |
ファイルシステムとクローン |
ボリューム |
ボリューム |
snapshot |
スナップショット |
-t オプションには、表示するデータセットの種類をコンマ区切りのリストとして指定します。次の例では、-t オプションと - o オプションを同時に使用して、すべてのファイルシステムの名前と used プロパティーを表示しています。
# zfs list -t filesystem -o name,used NAME USED pool 476K pool/clone 18K pool/home 296K pool/home/marks 277K pool/test 18K |
-H オプションを使用すると、生成される出力から zfs list ヘッダーを省略できます。-H オプションを使用した場合、空白はすべてタブ文字で置き換えられます。このオプションは、スクリプトで使えるようにする場合など、解析しやすい出力を必要とするときに利用できます。次の例では、zfs list コマンドと -H オプションを使用して生成される出力を示しています。
# zfs list -H -o name pool pool/clone pool/home pool/home/marks pool/home/marks@snap pool/test |
データセットプロパティーの管理には、zfs コマンドの set、inherit、および get サブコマンドを使用します。
zfs set コマンドを使用して、任意の設定可能なデータセットプロパティーを変更できます。あるいは、zfs create コマンドを使用して、データセットの作成時にプロパティーを設定できます。設定可能なデータセットプロパティーのリストは、「設定可能な ZFS ネイティブプロパティー」を参照してください。
zfs set コマンドには、property=value の形式のプロパティー/値のシーケンスを指定したあと、続けてデータセット名を指定します。各 zfs set 呼び出しで設定または変更できるプロパティーは、1 つだけです。
次の例では、tank/home の atime プロパティーを off に設定しています。
# zfs set atime=off tank/home |
また、どのファイルシステムプロパティーもファイルシステムの作成時に設定できます。次に例を示します。
# zfs create -o atime=off tank/home |
数値プロパティー値を指定する際には、理解が容易な次の接尾辞を使用できます (サイズの小さい順): BKMGTPEZ。これらのすべての接尾辞のあとに、オプションの b (バイト) を続けて指定することができます。ただし、B 接尾辞のあとには指定できません。もともとバイトを表しているためです。次の例にある 4 つの zfs set 呼び出しは、すべて同じ数値を表現しています。つまり、tank/home/marks ファイルシステムの quota プロパティーに 50G バイトの値を設定しています。
# zfs set quota=50G tank/home/marks # zfs set quota=50g tank/home/marks # zfs set quota=50GB tank/home/marks # zfs set quota=50gb tank/home/marks |
数値でないプロパティーの値では、大文字と小文字が区別されるので、小文字を使用する必要があります。ただし、mountpoint および sharenfs は例外です。これらのプロパティーの値には、大文字と小文字を混在させることができます。
zfs set コマンドの詳細については、zfs(1M) を参照してください。
割り当て制限と予約を除いて、すべての設定可能なプロパティーは、親データセットから値を継承します。ただし、子孫データセットに対して割り当て制限または予約が明示的に設定されている場合は継承されません。継承するプロパティーについて、明示的な値が祖先に設定されていない場合は、プロパティーのデフォルト値が使用されます。zfs inherit コマンドを使用して、プロパティー値を消去することができます。その場合は、親データセットの値を継承することになります。
次の例では、zfs set コマンドを使用して tank/home/bonwick ファイルシステムの圧縮を有効にしています。次に、zfs inherit を使用して、compression プロパティーをクリアしています。この結果、このプロパティーはデフォルト値の off を継承します。home と tank の compression プロパティーはローカルに設定されていないため、デフォルト値が使用されます。圧縮が両方とも有効になっていた場合は、すぐ上の祖先 (この例では home) に設定されている値が使用されます。
# zfs set compression=on tank/home/bonwick # zfs get -r compression tank NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank compression off default tank/home compression off default tank/home/bonwick compression on local # zfs inherit compression tank/home/bonwick # zfs get -r compression tank NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank compression off default tank/home compression off default tank/home/bonwick compression off default |
-r オプションを指定すると、inherit サブコマンドが再帰的に適用されます。次の例では、このコマンドによって、compression プロパティーの値が tank/home およびそのすべての子孫に継承されます。
# zfs inherit -r compression tank/home |
-r オプションを使用すると、すべての子孫のデータセットに割り当てられている現在のプロパティー設定が消去されることに注意してください。
zfs inherit コマンドの詳細については、zfs(1M) を参照してください。
プロパティー値のクエリー検索を行うもっとも簡単な方法は、zfs list コマンドを使用することです。詳細については、「基本的な ZFS 情報を表示する」を参照してください。ただし、複雑なクエリーを使用する場合およびスクリプトで使用する場合は、より詳細な情報をカスタマイズした書式で渡すために zfs get コマンドを使用します。
zfs get コマンドを使用して、任意のデータセットプロパティーを取得できます。次の例は、データセット上の 1 つのプロパティー値を取得する方法を示しています。
# zfs get checksum tank/ws NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/ws checksum on default |
4 番目の列 SOURCE は、このプロパティー値の起点を示します。次の表は、表示される可能性のあるソース値を定義したものです。
表 6–3 出力される可能性のある SOURCE 値 (zfs get コマンド)
ソース値 |
説明 |
---|---|
default |
このプロパティー値は、このデータセットまたはその祖先 (存在する場合) で明示的に設定されたことが一度もありません。このプロパティーのデフォルト値が使用されています。 |
inherited from dataset-name |
このプロパティー値は、dataset-name に指定されている親データセットから継承されます。 |
local |
このプロパティー値は、zfs set を使って、このデータセットに明示的に設定されました。 |
temporary |
このプロパティー値は、zfs mount - o オプションを使って設定され、マウントの有効期間だけ有効です。一時的なマウントプロパティーの詳細については、「一時的なマウントプロパティーを使用する」を参照してください。 |
- (なし) |
このプロパティーは読み取り専用です。値は ZFS によって生成されます。 |
特殊キーワード all を使って、すべてのデータセットプロパティー値を取得できます。all キーワードの使用例を次に示します。
# zfs get all tank/home NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/home type filesystem - tank/home creation Tue Jun 29 11:44 2010 - tank/home used 21K - tank/home available 66.9G - tank/home referenced 21K - tank/home compressratio 1.00x - tank/home mounted yes - tank/home quota none default tank/home reservation none default tank/home recordsize 128K default tank/home mountpoint /tank/home default tank/home sharenfs off default tank/home checksum on default tank/home compression off default tank/home atime on default tank/home devices on default tank/home exec on default tank/home setuid on default tank/home readonly off default tank/home zoned off default tank/home snapdir hidden default tank/home aclmode groupmask default tank/home aclinherit restricted default tank/home canmount on default tank/home shareiscsi off default tank/home xattr on default tank/home copies 1 default tank/home version 4 - tank/home utf8only off - tank/home normalization none - tank/home casesensitivity sensitive - tank/home vscan off default tank/home nbmand off default tank/home sharesmb off default tank/home refquota none default tank/home refreservation none default tank/home primarycache all default tank/home secondarycache all default tank/home usedbysnapshots 0 - tank/home usedbydataset 21K - tank/home usedbychildren 0 - tank/home usedbyrefreservation 0 - tank/home logbias latency default |
Oracle Solaris 10 リリースでは Oracle Solaris SMB サービスがサポートされていないため、Oracle Solaris 10 リリースの casesensitivity、nbmand、normalization、sharesmb、utf8only、および vscan プロパティーは完全には機能しません。
zfs get に -s オプションを使用すると、表示するプロパティーをソースの種類ごとに指定できます。このオプションには、必要なソースの種類をコンマ区切りのリストとして指定します。指定したソースの種類のプロパティーだけが表示されます。有効なソースの種類は、local、default、inherited、temporary、および none です。次の例では、pool 上にローカルに設定されているすべてのプロパティーを表示しています。
# zfs get -s local all pool NAME PROPERTY VALUE SOURCE pool compression on local |
前述のどのオプションの場合にも、-r オプションを使用して、指定したデータセットのすべての子に設定されている特定のプロパティーを再帰的に表示することができます。次の例では、tank に含まれるすべてのデータセットに設定されている、すべての一時的なプロパティーが再帰的に表示されます。
# zfs get -r -s temporary all tank NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/home atime off temporary tank/home/bonwick atime off temporary tank/home/marks atime off temporary |
zfs get コマンドでは、ターゲットのファイルシステムを指定せずにプロパティー値のクエリーを行うことが可能です。これは、すべてのプールやファイルシステムがコマンドの処理対象となることを意味します。次に例を示します。
# zfs get -s local all tank/home atime off local tank/home/bonwick atime off local tank/home/marks quota 50G local |
zfs get コマンドの詳細については、zfs(1M) を参照してください。
zfs get コマンドでは、スクリプトで使用できるように設計された -H および - o オプションを利用できます。-H オプションを使用すると、ヘッダー情報を省略し、空白をタブ文字で置き換えることができます。空白が揃うことで、データが見やすくなります。-o オプションを使用すると、次の方法で出力をカスタマイズできます。
リテラル name は、「ZFS のプロパティーの紹介」節で定義したプロパティーのコンマ区切りリストと組み合わせて使用できます。
出力対象となるリテラルフィールド name、value、property、および source のコンマ区切りリストのあとに、空白 1 つと引数 1 つ。この引数は、プロパティーのコンマ区切りリストとなります。
次の例では、-zfs get の -H および o オプションを使用して、1 つの値を取得する方法を示しています。
# zfs get -H -o value compression tank/home on |
-p オプションを指定すると、数値が正確な値として出力されます。たとえば、1M バイトは 1000000 として出力されます。このオプションは、次のように使用できます。
# zfs get -H -o value -p used tank/home 182983742 |
前述のどのオプションの場合にも、-r オプションを使用して、要求した値をすべての子孫について再帰的に取得できます。次の例では、-H、-o、および -r オプションを使用して、export/home およびその子孫のデータセット名と used プロパティーの値を取得しています。ヘッダー出力は省略されています。
# zfs get -H -o name,value -r used export/home export/home 5.57G export/home/marks 1.43G export/home/maybee 2.15G |
この節では、ZFS でマウントポイントと共有ファイルシステムをどのように管理するかについて説明します。
デフォルトで、ZFS ファイルシステムは作成時に自動的にマウントされます。この節で説明するように、ユーザーはファイルシステムの特定のマウントポイント動作を決定することができます。
zpool create の -m オプションを使用すれば、プールを作成するときにプールのデータセットのデフォルトマウントポイントを設定することもできます。プールの作成の詳細については、「ZFS ストレージプールを作成する」を参照してください。
すべての ZFS ファイルシステムは、ZFS の起動時にサービス管理機能 (SMF) の svc://system/filesystem/local サービスを使用してマウントされます。ファイルシステムは、/path にマウントされます。path はファイルシステムの名前です。
デフォルトのマウントポイントを上書きするには、zfs set コマンド使って mountpoint プロパティーを特定のパスに設定します。ZFS では、zfs mount -a コマンドが呼び出されるときに、指定されたマウントポイントが必要に応じて自動的に作成され、関連付けられたファイルシステムが自動的にマウントされます。/etc/vfstab ファイルを編集する必要はありません。
mountpoint プロパティーは継承されます。たとえば、pool/home の mountpoint プロパティーが /export/stuff に設定されている場合、pool/home/user は mountpoint プロパティー値の /export/stuff/user を継承します。
ファイルシステムがマウントされないようにするには、mountpoint プロパティーを none に設定します。さらに、canmount プロパティーを使えば、ファイルシステムをマウント可能にするかどうかを制御できます。canmount プロパティーの詳細については、「canmount プロパティー」を参照してください。
また、従来のマウントインタフェース経由でファイルシステムを明示的に管理することもできます。それには、zfs set を使って mountpoint プロパティーを legacy に設定します。このようにすると、ファイルシステムが自動的にマウントおよび管理されなくなります。代わりに、mount や umount コマンドなどのレガシーツールと、/etc/vfstab ファイルを使用する必要があります。レガシーマウントの詳細については、「レガシーマウントポイント」を参照してください。
mountpoint プロパティーを legacy または none から特定のパスに変更すると、ZFS はそのファイルシステムを自動的にマウントします。
ファイルシステムが ZFS によって管理されているのにそのマウントが現在解除されている場合は、mountpoint プロパティーを変更しても、そのファイルシステムのマウントは解除されたままになります。
mountpoint プロパティーが legacy に設定されていないデータセットは、すべて ZFS によって管理されます。次の例では、作成されたデータセットのマウントポイントが ZFS によって自動的に管理されます。
# zfs create pool/filesystem # zfs get mountpoint pool/filesystem NAME PROPERTY VALUE SOURCE pool/filesystem mountpoint /pool/filesystem default # zfs get mounted pool/filesystem NAME PROPERTY VALUE SOURCE pool/filesystem mounted yes - |
次の例に示すように、mountpoint プロパティーを明示的に設定することもできます。
# zfs set mountpoint=/mnt pool/filesystem # zfs get mountpoint pool/filesystem NAME PROPERTY VALUE SOURCE pool/filesystem mountpoint /mnt local # zfs get mounted pool/filesystem NAME PROPERTY VALUE SOURCE pool/filesystem mounted yes - |
mountpoint プロパティーを変更すると、ファイルシステムが古いマウントポイントから自動的にマウント解除されて、新しいマウントポイントに再マウントされます。マウントポイントのディレクトリは必要に応じて作成されます。ファイルシステムがアクティブであるためにマウント解除できない場合は、エラーが報告され、手動で強制的にマウント解除する必要があります。
mountpoint プロパティーを legacy に設定することで、ZFS ファイルシステムをレガシーツールを使って管理することができます。レガシーファイルシステムは、mount と umount コマンド、および /etc/vfstab ファイルを使用して管理する必要があります。レガシーファイルシステムは、ZFS が起動するときに自動的にマウントされません。ZFS の mount および umount コマンドは、この種類のデータセットでは使用できません。次の例では、ZFS データセットをレガシーモードで設定および管理する方法を示しています。
# zfs set mountpoint=legacy tank/home/eschrock # mount -F zfs tank/home/eschrock /mnt |
起動時にレガシーファイルシステムを自動的にマウントするには、/etc/vfstab ファイルにエントリを追加する必要があります。次に、/etc/vfstab ファイル内のエントリの例を示します。
#device device mount FS fsck mount mount #to mount to fsck point type pass at boot options # tank/home/eschrock - /mnt zfs - yes - |
device to fsck エントリと fsck pass エントリは - に設定されていますが、これは、fsck コマンドが ZFS ファイルシステムで使用できないからです。ZFS データの整合性の詳細については、「トランザクションのセマンティクス」を参照してください。
ZFS では、ファイルシステムが作成されるときまたはシステムが起動するときに、ファイルシステムが自動的にマウントされます。zfs mount コマンドを使用する必要があるのは、マウントオプションを変更したりファイルシステムを明示的にマウントまたはマウント解除したりする必要がある場合だけです。
zfs mount コマンドを引数なしで実行すると、現在マウントされているファイルシステムのうち、ZFS が管理しているファイルシステムがすべて表示されます。レガシー管理されているマウントポイントは表示されません。次に例を示します。
# zfs mount tank /tank tank/home /tank/home tank/home/bonwick /tank/home/bonwick tank/ws /tank/ws |
-a オプションを使用すると、ZFS が管理しているファイルシステムをすべてマウントできます。レガシー管理されているファイルシステムはマウントされません。次に例を示します。
# zfs mount -a |
デフォルトでは、空でないディレクトリの最上位にマウントすることは許可されません。空でないディレクトリの最上位に強制的にマウントする場合は、-O オプションを使用する必要があります。次に例を示します。
# zfs mount tank/home/lalt cannot mount '/export/home/lalt': directory is not empty use legacy mountpoint to allow this behavior, or use the -O flag # zfs mount -O tank/home/lalt |
レガシーマウントポイントは、レガシーツールを使って管理する必要があります。ZFS ツールを使用しようとすると、エラーになります。次に例を示します。
# zfs mount pool/home/billm cannot mount 'pool/home/billm': legacy mountpoint use mount(1M) to mount this filesystem # mount -F zfs tank/home/billm |
ファイルシステムがマウントされるときに使用されるマウントオプションは、データセットに関連付けられたプロパティー値に基づいて決まります。プロパティーとマウントオプションは、次のような関係になっています。
表 6–4 ZFS のマウント関連プロパティーとマウントオプション
プロパティー |
マウントオプション |
---|---|
atime |
atime/noatime |
devices |
devices/nodevices |
exec |
exec/noexec |
nbmand |
nbmand/nonbmand |
readonly |
ro/rw |
setuid |
setuid/nosetuid |
xattr |
xattr/noaxttr |
マウントオプション nosuid は、nodevices,nosetuid の別名です。
前節で説明したどのマウントオプションの場合にも、-zfs mount コマンドと o オプションを使って明示的に設定されている場合には、関連するプロパティー値が一時的に上書きされます。これらのプロパティー値は zfs get コマンドを実行すると temporary として報告されますが、ファイルシステムがマウント解除されるときに元の値に戻ります。データセットがマウントされるときにプロパティー値を変更した場合は、変更がすぐに有効になり、一時的な設定がすべて上書きされます。
次の例では、tank/home/perrin ファイルシステムに読み取り専用マウントオプションが一時的に設定されます。ファイルシステムがマウント解除されているものと仮定しています。
# zfs mount -o ro tank/home/perrin |
現在マウントされているファイルシステムのプロパティー値を一時的に変更するときは、特別な remount オプションを使用する必要があります。次の例では、現在マウントされているファイルシステムの atime プロパティーを一時的に off に変更しています。
# zfs mount -o remount,noatime tank/home/perrin # zfs get atime tank/home/perrin NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/home/perrin atime off temporary |
zfs mount コマンドの詳細については、zfs(1M) を参照してください。
zfs unmount サブコマンドを使用して、ZFS ファイルシステムをマウント解除できます。unmount コマンドの引数として、マウントポイントまたはファイルシステム名のいずれかを指定できます。
次の例では、ファイルシステム名を使ってファイルシステムをマウント解除しています。
# zfs unmount tank/home/tabriz |
次の例では、マウントポイントを使ってファイルシステムをマウント解除しています。
# zfs unmount /export/home/tabriz |
ファイルシステムがビジー状態の場合には、unmount コマンドは失敗します。ファイルシステムを強制的にマウント解除する場合は、-f オプションを使用できます。アクティブに使用されているファイルシステムを強制的にマウント解除する場合は、十分に注意してください。アプリケーションが予期しない動作を行うことがあります。
# zfs unmount tank/home/eschrock cannot unmount '/export/home/eschrock': Device busy # zfs unmount -f tank/home/eschrock |
下位互換性を提供するために、従来の umount コマンドを使用して ZFS ファイルシステムをマウント解除することもできます。次に例を示します。
# umount /export/home/bob |
zfs umount コマンドの詳細については、zfs(1M) を参照してください。
ZFS でファイルシステムを自動的に共有するには、sharenfs プロパティーを設定します。このプロパティーを使用すれば、新規ファイルシステムを共有するときに /etc/dfs/dfstab ファイルを変更する必要はありません。sharenfs プロパティーは、コンマ区切りのオプションリストとして、share コマンドに渡されます。値 on は、デフォルトの共有オプションの別名で、すべてのユーザーに read/write アクセス権を提供します。値 off を指定すると、ファイルシステムが ZFS によって管理されなくなり、従来の方法 (/etc/dfs/dfstab ファイルなど) で共有できるようになります。sharenfs プロパティーが off でないすべてのファイルシステムは、起動時に共有されます。
デフォルトでは、すべてのファイルシステムは共有されていません。新規ファイルシステムを共有する場合は、次のような zfs set 構文を使用します。
# zfs set sharenfs=on tank/home/eschrock |
sharenfs プロパティーは継承されます。継承したプロパティーが off でないファイルシステムは、作成時に自動的に共有されます。次に例を示します。
# zfs set sharenfs=on tank/home # zfs create tank/home/bricker # zfs create tank/home/tabriz # zfs set sharenfs=ro tank/home/tabriz |
tank/home/bricker と tank/home/tabriz は、tank/home から sharenfs プロパティーを継承するため、最初は書き込み可能として共有されます。このプロパティーが ro (読み取り専用) に設定されたあとは、tank/home に設定されている sharenfs プロパティーに関係なく、tank/home/tabriz は読み取り専用として共有されます。
ほとんどのファイルシステムは、起動、作成、および破棄されるときに自動的に共有または共有解除されますが、場合によってはファイルシステムの共有を明示的に解除しなければならないことがあります。このような場合は、zfs unshare コマンドを使用します。次に例を示します。
# zfs unshare tank/home/tabriz |
このコマンドを実行すると、tank/home/tabriz ファイルシステムの共有が解除されます。システムの上のすべての ZFS ファイルシステムを共有解除する場合は、-a オプションを使用する必要があります。
# zfs unshare -a |
通常の操作にはほとんどの場合、起動時や作成時のファイルシステムの共有に関する ZFS の自動動作で十分です。なんらかの理由でファイルシステムの共有を解除する場合でも、zfs share コマンドを使用すれば再度共有できます。次に例を示します。
# zfs share tank/home/tabriz |
- a オプションを使用すれば、システム上のすべての ZFS ファイルシステムを共有できます。
# zfs share -a |
sharenfs プロパティーが off に設定された場合は、ZFS はどのような場合にもファイルシステムを共有または共有解除することがありません。この値を使用すれば、/etc/dfs/dfstab ファイルなどの従来の方法でファイルシステムの共有を管理することができます。
従来の mount コマンドと異なり、従来の share および unshare コマンドは ZFS ファイルシステムでも使用できます。このため、sharenfs プロパティーのオプションとは異なるオプションを使って、ファイルシステムを手動で共有することもできます。この管理モデルは推奨されていません。ZFS を使用して NFS 共有を完全に管理するか、または /etc/dfs/dfstab ファイルを使用して完全に管理する方法を選択してください。ZFS 管理モデルは、従来のモデルより少ない操作で簡単に管理できるように設計されています。
quota プロパティーを使用して、ファイルシステムが使用できるディスク容量を制限できます。また、reservation プロパティーを使用して、指定されたディスク容量をファイルシステムが使用できることを保証することもできます。これらのプロパティーは、設定したデータセットとそのデータセットのすべての子孫に適用されます。
つまり、割り当て制限を tank/home データセットに設定した場合は、tank/home およびそのすべての子孫が使用するディスク容量の合計がその割り当て制限を超えることができなくなります。同様に、tank/home に予約を設定した場合は、tank/home およびそのすべての子孫がその予約を利用することになります。データセットとそのすべての子孫が使用するディスク容量は、used プロパティーによって報告されます。
refquota プロパティーと refreservation プロパティーは、スナップショットやクローンなどの子孫で消費されるディスク容量を計上せずにファイルシステムの容量を管理するために使用されます。
この Solaris リリースでは、特定のユーザーまたはグループが所有するファイルによって消費されるディスク領域の量に割り当て制限を設定することができます。ファイルシステムバージョン 4 より古いファイルシステム上のボリューム、またはバージョン 15 より古いプール上のボリュームには、ユーザーおよびグループの割り当て制限プロパティーを設定できません。
ファイルシステムを管理するために、割り当て制限と予約の機能としてどれがもっとも役立つかを判断するには、次の点を考慮してください。
quota プロパティーと reservation プロパティーは、データセットとその子孫が消費するディスク容量を管理する場合に便利です。
refquota プロパティーと refreservation プロパティーは、データセットが消費するディスク容量を管理する場合に適しています。
refquota または refreservation プロパティーに、quota または reservation プロパティーより大きい値を設定しても、何の効果もありません。quota プロパティーまたは refquota プロパティーを設定した場合、どちらかの値を超えるような操作は失敗します。refquota より大きい値の quota 値を超える場合もあります。たとえば、スナップショットのブロックの一部が変更された場合は、refquota を超える前に実際に quota を超える可能性があります。
ユーザーおよびグループの割り当てを制限することによって、大学などのような、多数のユーザーアカウントが存在する環境でディスクスペースを簡単に管理できるようになります。
割り当て制限と予約の設定方法の詳細については、「ZFS ファイルシステムに割り当て制限を設定する」および「ZFS ファイルシステムに予約を設定する」を参照してください。
ZFS ファイルシステムの割り当て制限は、zfs set および zfs get コマンドを使用して設定および表示できます。次の例では、10G バイトの割り当て制限が tank/home/bonwick に設定されます。
# zfs set quota=10G tank/home/bonwick # zfs get quota tank/home/bonwick NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/home/bonwick quota 10.0G local |
割り当て制限を設定すると、zfs list および df コマンドの出力も変化します。次に例を示します。
# zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT tank/home 16.5K 33.5G 8.50K /export/home tank/home/bonwick 15.0K 10.0G 8.50K /export/home/bonwick tank/home/bonwick/ws 6.50K 10.0G 8.50K /export/home/bonwick/ws # df -h /export/home/bonwick Filesystem size used avail capacity Mounted on tank/home/bonwick 10G 8K 10G 1% /export/home/bonwick |
tank/home は 33.5G バイトのディスク容量を使用できますが、tank/home/bonwick と tank/home/bonwick/ws は 10G バイトしか使用できません。これは、 tank/home/bonwick に割り当て制限が設定されているためです。
割り当て制限には、データセットが現在使用している容量より少ない容量を設定することはできません。次に例を示します。
# zfs set quota=10K tank/home/bonwick cannot set quota for 'tank/home/bonwick': size is less than current used or reserved space |
データセットに refquota を設定して、データセットが消費できるディスク容量を制限できます。この強い制限値には、子孫が消費するディスク容量は含まれません。次に例を示します。
# zfs set refquota=10g students/studentA # zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT profs 106K 33.2G 18K /profs students 57.7M 33.2G 19K /students students/studentA 57.5M 9.94G 57.5M /students/studentA # zfs snapshot students/studentA@today # zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT profs 106K 33.2G 18K /profs students 57.7M 33.2G 19K /students students/studentA 57.5M 9.94G 57.5M /students/studentA students/studentA@today 0 - 57.5M - |
利便性を高めるために、データセットに別の割り当て制限を設定して、スナップショットで消費されるディスク容量を管理することもできます。次に例を示します。
# zfs set quota=20g students/studentA # zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT profs 106K 33.2G 18K /profs students 57.7M 33.2G 19K /students students/studentA 57.5M 9.94G 57.5M /students/studentA students/studentA@today 0 - 57.5M - |
このシナリオでは、studentA が refquota (10G バイト) の強い制限に到達する可能性がありますが、スナップショットが存在している場合でも回復のためにファイルを削除することができます。
上の例では、2 つの割り当て制限 (10G バイトと 20G バイト) の小さいほうが、zfs list 出力に表示されています。両方の割り当て制限を表示するには、zfs get コマンドを使用します。次に例を示します。
# zfs get refquota,quota students/studentA NAME PROPERTY VALUE SOURCE students/studentA refquota 10G local students/studentA quota 20G local |
ユーザー割り当て制限またはグループ割り当て制限を設定するには、それぞれ zfs userquota コマンドまたは zfs groupquota コマンドを使用します。次に例を示します。
# zfs create students/compsci # zfs set userquota@student1=10G students/compsci # zfs create students/labstaff # zfs set groupquota@staff=20GB students/labstaff |
現在のユーザーまたはグループの割り当て制限が次のように表示されます。
# zfs get userquota@student1 students/compsci NAME PROPERTY VALUE SOURCE students/compsci userquota@student1 10G local # zfs get groupquota@staff students/labstaff NAME PROPERTY VALUE SOURCE students/labstaff groupquota@staff 20G local |
次のプロパティーのクエリーによって、ユーザーまたはグループの全般的なディスク領域使用状況を表示することができます。
# zfs userspace students/compsci TYPE NAME USED QUOTA POSIX User root 227M none POSIX User student1 455M 10G # zfs groupspace students/labstaff TYPE NAME USED QUOTA POSIX Group root 217M none POSIX Group staff 217M 20G |
個々のユーザーやグループのディスク領域の使用状況を特定するには、次のプロパティーのクエリーを行います。
# zfs get userused@student1 students/compsci NAME PROPERTY VALUE SOURCE students/compsci userused@student1 455M local # zfs get groupused@staff students/labstaff NAME PROPERTY VALUE SOURCE students/labstaff groupused@staff 217M local |
zfs get all dataset コマンドを使用しても、ユーザーおよびグループの割り当て制限プロパティーは表示されず、その他のすべてのファイルシステムプロパティーの一覧が表示されるだけです。
ユーザー割り当て制限またはグループ割り当て制限は、次のようにして解除することができます。
# zfs set userquota@user1=none students/compsci # zfs set groupquota@staff=none students/labstaff |
ZFS ファイルシステムのユーザーおよびグループ割り当て制限で提供される機能は、次のとおりです。
親ファイルシステムで設定されたユーザー割り当て制限またはグループ割り当て制限は、自動的には子孫のファイルシステムに継承されません。
ただし、ユーザーまたはグループの割り当て制限が設定されているファイルシステムのクローンまたはスナップショットを作成した場合には、それらの割り当て制限が適用されます。同様に、zfs send コマンド (-R オプションなしでも可) を使用してストリームを作成した場合にも、ユーザーまたはグループの割り当て制限がファイルシステムに組み込まれます。
非特権ユーザーは、自身のディスク領域使用状況のみを確認することができます。root ユーザー、または userused 権限や groupused 権限を持っているユーザーは、あらゆるユーザーまたはグループのディスク領域アカウント情報にアクセスすることができます。
userquota および groupquota プロパティーは、ZFS ボリューム、バージョン 4 よりも古いファイルシステム、またはバージョン 15 よりも古いプールでは設定できません。
ユーザーまたはグループの割り当て制限が適用されるのが数秒遅れることがあります。そのような遅延が発生する場合は、割り当て制限を超えているのでこれ以上は書き込みが許可されないことが EDQUOT エラーメッセージによって通知される前にユーザーが自身の割り当て制限を超えている可能性があります。
従来の quota コマンドを使用して、NFS 環境 (例えば、ZFS ファイルシステムがマウントされているものなど) におけるユーザーの割り当て制限を確認することができます。ユーザーが割り当て制限を超えてる場合は、何もオプションを指定しなくても、quota コマンドだけで、出力情報が表示されます。次に例を示します。
# zfs set userquota@student1=10m students/compsci # zfs userspace students/compsci TYPE NAME USED QUOTA POSIX User root 227M none POSIX User student1 455M 10M # quota student1 Block limit reached on /students/compsci |
ユーザーの割り当て制限をリセットして制限を超えることがないようにする場合は、quota -v コマンドを使用してユーザーの割り当てを確認することができます。次に例を示します。
# zfs set userquota@student1=10GB students/compsci # zfs userspace students/compsci TYPE NAME USED QUOTA POSIX User root 227M none POSIX User student1 455M 10G # quota student1 # quota -v student1 Disk quotas for student1 (uid 201): Filesystem usage quota limit timeleft files quota limit timeleft /students/compsci 466029 10485760 10485760 |
ZFS の「予約」とは、データセットが使用できることを保証された、プールから割り当てられたディスク領域のことです。つまり、プールで現在使用できないディスク容量をデータセットのディスク容量として予約することはできません。未処理の使用されていない予約の合計容量が、プールで消費されていないディスク容量を超えることはできません。ZFS の予約は、zfs set および zfs get コマンドを使用して設定および表示できます。次に例を示します。
# zfs set reservation=5G tank/home/moore # zfs get reservation tank/home/moore NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/home/moore reservation 5G local |
予約を設定すると、zfs list コマンドの出力が変化する可能性があります。次に例を示します。
# zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT tank/home 5.00G 33.5G 8.50K /export/home tank/home/moore 15.0K 33.5G 8.50K /export/home/moore |
tank/home は 5G バイトのディスク容量を使用していますが、tank/home とそのすべての子孫が参照しているディスク容量の合計は 5G バイト未満です。使用されている容量には、tank/home/moore に予約されている容量が反映されます。予約は、親データセットが使用しているディスク容量の計算時に計上されるので、親データセットの割り当て制限または予約、あるいはその両方を減らすことになります。
# zfs set quota=5G pool/filesystem # zfs set reservation=10G pool/filesystem/user1 cannot set reservation for 'pool/filesystem/user1': size is greater than available space |
データセットは、予約より多くのディスク容量を使用できます。ただし、プールの中で予約されていない領域があり、データセットが現在使用している容量が割り当て制限に達していないことが条件です。データセットは、別のデータセットに予約されているディスク容量を使用することはできません。
予約は加算されません。つまり、zfs set をもう一度呼び出して予約を設定しても、既存の予約に新しい予約が追加されることはありません。代わりに、既存の予約が 2 番目の予約で置き換えられます。次に例を示します。
# zfs set reservation=10G tank/home/moore # zfs set reservation=5G tank/home/moore # zfs get reservation tank/home/moore NAME PROPERTY VALUE SOURCE tank/home/moore reservation 5.00G local |
refreservation 予約を設定すると、スナップショットとクローンで消費されるディスク容量は含めずに、データセットのディスク容量を保証することができます。この予約は、親データセットの使用済み容量の計算時に計上されるので、親データセットの割り当て制限と予約を減らすことになります。次に例を示します。
# zfs set refreservation=10g profs/prof1 # zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT profs 10.0G 23.2G 19K /profs profs/prof1 10G 33.2G 18K /profs/prof1 |
同じデータセットに予約を設定して、データセットの容量とスナップショットの容量を確保することもできます。次に例を示します。
# zfs set reservation=20g profs/prof1 # zfs list NAME USED AVAIL REFER MOUNTPOINT profs 20.0G 13.2G 19K /profs profs/prof1 10G 33.2G 18K /profs/prof1 |
通常の予約は、親の使用済み容量の計算時に計上されます。
上の例では、2 つの割り当て制限 (10G バイトと 20G バイト) の小さいほうが、zfs list 出力に表示されています。両方の割り当て制限を表示するには、zfs get コマンドを使用します。次に例を示します。
# zfs get reservation,refreserv profs/prof1 NAME PROPERTY VALUE SOURCE profs/prof1 reservation 20G local profs/prof1 refreservation 10G local |
refreservation を設定すると、スナップショットを作成できるのは、データセットの referenced の現在のバイト数を格納できるだけの未予約プール領域が、この予約容量のほかに存在する場合だけになります。