sysidcfg ファイルに一連のキーワードを指定すると、システムを事前設定できます。
異なる構成情報を必要とするシステムごとに、固有の sysidcfg ファイルを作成する必要があります。すべてのシステムに同じタイムゾーンを割り当てる場合は、同じ sysidcfg ファイルを使用して、一連のシステムにタイムゾーンを事前設定することができます。ただし、これらの各システムに異なる root (スーパーユーザー) パスワードを事前設定する場合は、各システムに固有の sysidcfg ファイルを作成する必要があります。
sysidcfg ファイルは、次のいずれかに置くことができます。
UFS または PCFS フロッピーディスク – sysidcfg ファイルをフロッピーディスクのルート (/) ディレクトリに置きます。
HTTP または HTTPS サーバー – WAN (広域ネットワーク) ブートインストールを実行する場合は、sysidcfg ファイルを Web サーバーのドキュメントルートディレクトリに置きます。
1 つのディレクトリまたはフロッピーディスクには、1 つの sysidcfg ファイルだけを入れることができます。複数の sysidcfg ファイルを作成する場合は、各ファイルを異なるディレクトリまたは異なるフロッピーディスクに置く必要があります。
次の節では、sysidcfg ファイルの構成要素について説明します。この情報は、新しい sysidcfg ファイルを作成する際に参照してください。sysidcfg ファイルのサンプルは、/install-dir-path/Solaris_10.1/Tools ディレクトリにあります。新しいファイルを作成する代わりにこのファイルをコピーし、ユーザーのインストール環境に合わせて使用したりカスタマイズしたりできます。
sysidcfg ファイルで使用するキーワードには、非依存型と依存型の 2 種類があります。依存型キーワードは、非依存型キーワード内でのみ固有であることが保証されています。依存型キーワードは、対応する非依存型キーワードによって識別される場合にのみ存在します。
構文規則 |
例 |
|
---|---|---|
非依存型キーワードは任意の順序で指定可能です。 |
|
|
キーワードは、大文字と小文字を区別しません。 |
|
|
関連する非依存型キーワードを結合するには、すべての依存型キーワードを中括弧 { } で囲みます。 |
|
|
値は単一引用符 (') または二重引用符 (“) で囲んで指定可能です。 |
|
sysidcfg ファイル内のシステム情報を設定するために使用できるキーワードを、次の表に示します。
表 1–3 sysidcfg の構成情報とキーワードの例
構成情報 |
キーワード |
---|---|
ネットワークインタフェース、ホスト名、IP アドレス、ネットマスク、DHCP、IPv6 |
network_interface |
root (スーパーユーザー) パスワード |
root_password |
セキュリティーポリシー |
security_policy |
インストールプログラムとデスクトップで表示する言語 |
system_locale |
端末タイプ |
terminal |
タイムゾーン |
timezone |
日付と時刻 |
timeserver |
モニタータイプ |
monitor |
キーボード言語、キーボード配置 |
keyboard |
グラフィックスカード、カラー深度、表示解像度、画面サイズ |
display |
ポインティングデバイス、ボタン数、IRQ レベル |
pointer |
次の節では、sysidcfg ファイルで使用できるキーワードについて説明します。
次の作業を実行するには、network_interface キーワードを使用します。
ホスト名を指定する。
IP アドレスを指定する。
ネットマスク値を指定する。
DHCP を使用してネットワークインタフェースを構成する。
ネットワークインタフェース上で IPv6 を有効にする。
次の各節では、network_interface キーワードを使用してシステムインタフェースを構成する方法について説明します。
システムのネットワーク接続をオフにするには、network_interface 値に none を設定します。たとえば、次のように指定します。
network_interface=none |
network_interface キーワードを使用して 1 つのインタフェースを構成するときには、次の方法を使用します。
DHCP を使用する場合 – ネットワーク上の DHCP サーバーを使用して、ネットワークインタフェースを構成できます。インストール時に DHCP サーバーを使用する方法の詳細は、「DHCP サービスによるシステム構成情報の事前設定 (作業マップ)」を参照してください。
DHCP サーバーを使用してシステム上に 1 つのインタフェースを構成する場合は、network_interface キーワードに次の構文を使用します。
network_interface=PRIMARY or value {dhcp protocol_ipv6=yes-or-no} |
システム上に存在するインタフェースのうち、最初に稼働する非ループバックインタフェースを構成するように指定します。順序は、ifconfig コマンドの表示どおりです。稼働しているインタフェースが存在しない場合には、最初の非ループバックインタフェースが使用されます。非ループバックインタフェースが見つからない場合は、システムはネットワーク接続されません。
複数のインタフェースを構成する場合は、PRIMARY キーワード値を使用しないでください。
hme0 や eri1 など、特定のインタフェースを構成するように指定します。
IPv6 を使用してシステムを構成するかどうかを指定します。
DHCP を使用しない場合 – DHCP を使用しないでネットワークインタフェースを構成する場合には、構成情報を sysidcfg ファイルに指定できます。DHCP を使用しないでシステム上に 1 つのインタフェースを構成する場合は、次の構文を使用します。
network_interface=PRIMARY or value {hostname=host-name default_route=ip-address ip_address=ip-address netmask=netmask protocol_ipv6=yes-or-no} |
システム上に存在するインタフェースのうち、最初に稼働する非ループバックインタフェースを構成するように指定します。順序は、ifconfig コマンドの表示どおりです。稼働しているインタフェースが存在しない場合には、最初の非ループバックインタフェースが使用されます。非ループバックインタフェースが見つからない場合は、システムはネットワーク接続されません。
複数のインタフェースを構成する場合は、PRIMARY キーワード値を使用しないでください。
hme0 や eri1 など、特定のインタフェースを構成するように指定します。
(省略可能) システムのホスト名を指定します。
(省略可能) デフォルトルーターの IP アドレスを指定します。ICMP ルーター発見プロトコルを使用してルーターを自動的に検出する場合には、このキーワードを省略してください。
インストール時にルーターを自動的に検出できない場合、ルーター情報の入力を求めるメッセージが表示されます。
(省略可能) システムの IP アドレスを指定します。
(省略可能) システムのネットマスク値を指定します。
(省略可能) IPv6 を使用してシステムを構成するかどうかを指定します。
カスタム JumpStart を使用して自動インストールを実行する場合は、protocol_ipv6 キーワードに値を指定する必要があります。
必要に応じて、hostname、ip_address、netmask キーワードのいずれかを組み合わせて設定します。あるいは、これらのキーワードをまったく設定しなくてもかまいません。どのキーワードも使用しない場合、中括弧 { } は省略します。
次の例では、インストールプログラムが DHCP に、eri0 ネットワークインタフェースを構成するように指示する方法を示します。IPv6 サポートは無効になります。
network_interface=eri0 {dhcp protocol_ipv6=no} |
次の例では、次の設定で eri0 インタフェースを構成する方法を示します。
ホスト名は host1 に設定。
IP アドレスは 172.31.88.100 に設定。
ネットマスクは 255.255.255.0 に設定。
IPv6 サポートがインタフェース上で無効になる。
network_interface=eri0 {hostname=host1 ip_address=172.31.88.100 netmask=255.255.255.0 protocol_ipv6=no} |
sysidcfg ファイルでは、複数のネットワークインタフェースを構成できます。構成するインタフェースごとに 、network_interface キーワードエントリを sysidcfg ファイルに追加します。
network_interface キーワードを使用して複数のインタフェースを構成するには、次の方法を使用できます。
DHCP を使用する場合 – ネットワーク上の DHCP サーバーを使用して、ネットワークインタフェースを構成できます。インストール時に DHCP サーバーを使用する方法の詳細は、「DHCP サービスによるシステム構成情報の事前設定 (作業マップ)」を参照してください。
DHCP サーバーを使用してシステム上のインタフェースを構成する場合は、network_interface キーワードに次の構文を使用します。
network_interface=value {PRIMARY dhcp protocol_ipv6=yes-or-no} |
hme0 や eri1 など、特定のインタフェースを構成するように指定します。
(省略可能) value を 1 次インタフェースとして指定します。
IPv6 を使用してシステムを構成するかどうかを指定します。
DHCP を使用しない場合 – DHCP を使用しないでネットワークインタフェースを構成する場合には、構成情報を sysidcfg ファイルに指定できます。DHCP を使用しないで複数のインタフェースを構成する場合は、次の構文を使用します。
network_interface=value {PRIMARY hostname=host-name default_route=ip-address or NONE ip_address=ip-address netmask=netmask protocol_ipv6=yes-or-no} |
hme0 や eri1 など、特定のインタフェースを構成するように指定します。
(省略可能) value を 1 次インタフェースとして指定します。
(省略可能) システムのホスト名を指定します。
(省略可能) デフォルトルーターの IP アドレスを指定します。ICMP ルーター発見プロトコルを使用してルーターを自動的に検出する場合には、このキーワードを省略してください。
sysidcfg ファイルで複数のインタフェースを構成する場合は、静的なデフォルトルートを使用しない 2 次インタフェースすべてに対して、それぞれ default_route=NONE を設定してください。
インストール時にルーターを自動的に検出できない場合、ルーター情報の入力を求めるメッセージが表示されます。
(省略可能) システムの IP アドレスを指定します。
(省略可能) システムのネットマスク値を指定します。
(省略可能) IPv6 を使用してシステムを構成するかどうかを指定します。
カスタム JumpStart を使用して自動インストールを実行する場合は、protocol_ipv6 キーワードに値を指定する必要があります。
必要に応じて、hostname、ip_address、netmask キーワードのいずれかを組み合わせて設定します。あるいは、これらのキーワードをまったく設定しなくてもかまいません。どのキーワードも使用しない場合、中括弧 { } は省略します。
同一の sysidcfg ファイル内において、一部のインタフェースだけが DHCP を使用するように構成し、ほかのインタフェース用には構成情報を直接記述することもできます。
次の例では、ネットワークインタフェース eri0 と eri1 を次のように構成しています。
eri0 は、DHCP サーバーを使用して構成されます。eri0 の IPv6 サポートは無効になります。
eri1 は、1 次ネットワークインタフェースです。ホスト名は host1 に設定され、IP アドレスは 172.31.88.100 に設定されます。ネットマスクは 255.255.255.0 に設定されます。eri1 の IPv6 サポートは無効になります。
network_interface=eri0 {dhcp protocol_ipv6=no} network_interface=eri1 {primary hostname=host1 ip_address=172.31.88.100 netmask=255.255.255.0 protocol_ipv6=no} |
sysidcfg ファイルにシステムの root (スーパーユーザー) パスワードを指定できます。root (スーパーユーザー) パスワードを指定するには、root_password キーワードを次の構文に従って使用します。
root_password=encrypted-password |
encrypted-password は、/etc/shadow ファイルに設定される暗号化パスワードです。
sysidcfg ファイルで security_policy キーワードを使用して、Kerberos ネットワーク認証プロトコルを使用するようにシステムを構成できます。Kerberos を使用するようにシステムを構成する場合には、次の構文を使用します。
security_policy=kerberos {default_realm=FQDN admin_server=FQDN kdc=FQDN1, FQDN2, FQDN3} |
FQDN には、Kerberos のデフォルトレルム、管理サーバー、および鍵配布センター (Key Distribution Center、KDC) を、完全指定のドメイン名で指定します。KDC は 1 つ以上指定する必要があります (最大 3 つまで指定可能)。
システムのセキュリティーポリシーを設定しない場合は、security_policy=NONE と設定します。
Kerberos ネットワーク認証プロトコルの詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』のパート VI「Kerberos サービス」を参照してください。
次の例では、次の情報を使用して、Kerberos を使用するようにシステムを構成しています。
Kerberos デフォルトレルムは example.COM。
Kerberos 管理サーバーは krbadmin.example.COM。
KDC は、kdc1.example.COM と kdc2.example.COM の 2 つ。
security_policy=kerberos {default_realm=example.COM admin_server=krbadmin.example.COM kdc=kdc1.example.COM, kdc2.example.COM} |
system_locale キーワードを使用して、インストールプログラムおよびデスクトップの表示言語を指定できます。ロケールを指定するには、次の構文を使用します。
system_locale=locale |
locale には、インストールパネルおよび画面を表示する際の使用言語を指定します。有効なロケール値の一覧については、/usr/lib/locale ディレクトリまたは『国際化対応言語環境の利用ガイド』を参照してください。
terminal キーワードを使用して、システムの端末タイプを指定できます。端末タイプを指定するには、次の構文を使用します。
terminal=terminal_type |
terminal_type には、システムの端末タイプを指定します。有効な端末タイプのリストについては、/usr/share/lib/terminfo ディレクトリのサブディレクトリを参照してください。
timezone キーワードを使用して、システムのタイムゾーンを設定できます。構文は次のとおりです。
timezone=timezone |
timezone キーワードは、システムのタイムゾーンの値を指定します。/usr/share/lib/zoneinfo ディレクトリにあるディレクトリとファイルには、有効なタイムゾーンの値が用意されています。timezone の値は、/usr/share/lib/zoneinfo ディレクトリからの相対パス名です。また、有効な Olson タイムゾーンも指定できます。
次の例では、システムのタイムゾーンを米国の山岳部標準時に設定しています。
timezone=US/Mountain |
/usr/share/lib/zoneinfo/US/Mountain のタイムゾーン情報を使用するようにシステムが構成されます。
timeserver キーワードを使用して、インストール先のシステムに日付と時刻を設定するためのシステムを指定できます。
ネームサービスを実行する場合は、timeserver=host-name または ip-address を設定しないでください。
timeserver キーワードを設定するときには、次のいずれかの方法を選択します。
システム自体をタイムサーバーとして構成する場合は、timeserver=localhost と設定します。localhost を指定した場合は、そのシステムの時刻が正しいものと仮定し、時刻が設定されます。
別のシステムをタイムサーバーとして指定する場合は、timeserver キーワードを使用して、タイムサーバーのホスト名または IP アドレスを指定します。構文は次のとおりです。
timeserver=host-name または ip-address |
host-name はタイムサーバーシステムのホスト名で、ip-address はタイムサーバーの IP アドレスを指定します。
monitor キーワードを使用して、モニター情報を構成できます。monitor キーワードでは次の構文を使用します。
monitor=monitor-type |
monitor キーワードに値を設定するには、インストール先のシステム上で kdmconfig -d コマンドを実行します。出力結果から monitor キーワードを含む行をコピーし、この行を sysidcfg ファイルに追加します。
keyboard キーワードを使用して、キーボードの言語と配置の情報を設定できます。keyboard キーワードでは次の構文を使用します。
keyboard=keyboard-language {layout=value} |
keyboard キーワードに値を設定するには、インストール先のシステム上で kdmconfig -d コマンドを実行します。出力結果から keyboard キーワードを含む行をコピーし、この行を sysidcfg ファイルに追加します。
display キーワードを使用して、次の情報を構成できます。
グラフィックスカード
画面サイズ
カラー深度
表示解像度
display キーワードでは次の構文を使用します。
display=graphics_card {size=screen_size depth=color_depth resolution=screen_resolution} |
display キーワードに適切な値を設定するには、インストール先のシステム上で kdmconfig -d コマンドを実行します。出力結果から display キーワードを含む行をコピーし、この行を sysidcfg ファイルに追加します。
pointer キーワードを使用して、次のマウス情報を設定できます。
ポインティングデバイス
ボタン数
IRQ レベル
pointer キーワードでは次の構文を使用します。
pointer=pointing-device {nbuttons=number-buttons irq=value} |
pointer キーワードに値を設定するには、インストール先のシステム上で kdmconfig -d コマンドを実行します。出力結果から pointer キーワードを含む行をコピーし、この行を sysidcfg ファイルに追加します。
これらのキーワードの詳細は、kdmconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
Solaris OS インストールプログラムでは、周辺機器、ホスト名、IP アドレス、ネームサービス (該当する場合) など、システムに関する構成情報を入力する必要があります。インストールプログラムは、この構成情報の入力を求める前に、まず sysidcfg ファイル内のこの情報を調べ、次にネームサービスのデータベース (該当する場合) の情報を調べます。Solaris インストールプログラムまたはカスタム JumpStart インストールプログラムが sysidcfg ファイルで事前構成されたシステム情報を検出したときは、この情報を手動で入力するように求められません。これによって、時間とリソースが節約されます。たとえば、複数のシステムがあり、Solaris OS をインストールするたびにタイムゾーンの入力を求められないようにする場合は、sysidcfg ファイルにタイムゾーンを指定できます。
sysidcfg ファイルの詳細は、sysidcfg(4) のマニュアルページを参照してください。
テキストエディタを使って、sysidcfg という名前のファイルを作成します。
sysidcfg 構成ファイルに、指定するキーワードを入力します。ガイドラインと使用する構文については、「sysidcfg ファイルによる事前設定」を参照してください。
sysidcfg ファイルを保存します。
複数の sysidcfg ファイルを作成する場合は、それぞれのファイルを別々のディレクトリまたは別々のフロッピーディスクに保存する必要があります。
次のいずれかを介してクライアントから sysidcfg ファイルにアクセスできるようにします。
共有 NFS ファイルシステム。add_install_client コマンドに -p オプションを指定して、ネットワークからインストールするシステムを設定します。
UFS フロッピーディスクまたは PCFS フロッピーディスクのルート(/) ディレクトリ。
次の例で、同じ種類のキーボード、グラフィックカード、ポインティングデバイス情報を使用するシステムのグループの sysidcfg ファイルを示します。この例の sysidcfg ファイルが使用されている場合、インストールを続行する前に言語 (system_locale) を選択するように求められることがあります。
このデバイス情報 (キーボード、ディスプレイ、ポインタ) は、kdmconfig コマンドに -d オプションを指定して実行することで取得されました。詳細については、kdmconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
keyboard=ATKBD {layout=US-English} display=ati {size=15-inch} pointer=MS-S timezone=US/Central timeserver=timehost1 terminal=ibm-pc name_service=NIS {domain_name=marquee.central.example.com name_server=nmsvr2(172.25.112.3)} root_password=URFUni9 |
sysidcfg ファイルを使ってネットワーク経由のインストールを行うには、インストールサーバーを設定し、システムをインストールクライアントとして追加する必要があります。詳細については、「IBM BladeCenter サーバーへの Solaris オペレーティングシステムのインストールの準備 (作業マップ)」および 「sysidcfg ファイルによる事前設定」を参照してください。
sysidcfg ファイルを使ってカスタム JumpStart インストールを行うには、プロファイルと rules.ok ファイルを作成する必要があります。「rules ファイルの作成方法」を参照してください。