Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 配備計画ガイド

idsktune コマンドによるシステム固有のチューニング

製品に付属する idsktune(1M) ユーティリティーを使えば、基本的なシステム設定の問題を診断するのに役立つかもしれません。このユーティリティーは、高いパフォーマンスを示すディレクトリサービスをサポートするようにシステムをチューニングするための推奨事項を提示します。このユーティリティーは、推奨事項を示すだけで、実際には何の操作も行いません。適切な権限を持ったシステム管理者が提示された推奨事項に基づいて必要な操作を行なってください。

ユーティリティーを root として実行すると、idsktune はシステムに関する情報を収集します。ユーティリティーは、注意、警告、およびエラーを推奨の対処法とともに表示します。idsktune コマンドがチェックする内容は、次のとおりです。


ヒント –

Directory Server ソフトウェアを本番用のシステムにインストールする前に、少なくともすべての ERROR 状態を解決してください。


個々の配備要件が最小要件を上回る可能性があります。idsktune ユーティリティーによって最小システム要件として指摘されたリソースよりも多くのリソースを提供することができます。

特定の推奨事項を実施する前に、ローカルネットワークの状態やその他のアプリケーションを考慮してください。ネットワーク設定のチューニングに関する追加のヒントについては、オペレーティングシステムのマニュアルを参照してください。

ファイル記述子の設定

Directory Server は、同時クライアント接続を処理する際にファイル記述子を使用します。したがって、サーバープロセスから利用可能なファイル記述子の最大数が小さければ、同時接続数が制限される可能性があります。したがって、ファイル記述子の数に関する推奨事項は、Directory Server が処理可能な同時接続数に関係します。

Solaris システムの場合、利用可能なファイル記述子の数を設定するには rlim_fd_max パラメータを使用します。利用可能なファイル記述子の数を変更するための詳細な手順については、オペレーティングシステムのマニュアルを参照してください。

伝送制御プロトコル (TCP) の設定

具体的なネットワーク設定はプラットフォームに依存します。一部のシステムでは、TCP 設定を変更することで Directory Server のパフォーマンスを向上させることができます。


注 –

まずディレクトリサービスを配備し、次にそれらのパラメータのチューニングを必要に応じて検討します。


この節では、idsktune による TCP 設定関連の推奨事項の背景にある根拠について説明したあと、Solaris 10 システム上でそれらの設定をチューニングする方法を示します。

アクティブでない接続

一部のシステムでは、keepalive パケットの送信間隔を設定できます。この設定によって、アクティブでない、場合によっては切断されている TCP 接続を、どのくらいの期間維持するかを決めることができます。keepalive 間隔の設定値が大きすぎると、すでに切断されたクライアント接続を維持するためにシステムが不要なリソースを使用してしまう可能性があります。大部分の配備では、このパラメータの値を 600 秒に設定します。この値を 600,000 ミリ秒すなわち 10 分に設定することで、Directory Server への同時接続数を増やすことができます。

一方、keepalive 間隔の設定値が小さすぎると、ネットワークの一時的な停止時にもシステムが接続を切断してしまう可能性があります。

Solaris システムでこの時間間隔を設定するには、tcp_keepalive_interval パラメータを使用します。

送信接続

一部のシステムでは、送信接続が確立されるのをシステムがどのくらいの期間待つかを設定できます。設定値が大きすぎると、すぐに応答しないレプリカなどの送信先サーバーとの送信接続を確立する際に、大きな遅延が生じる可能性があります。高速で信頼性の高いネットワーク上のイントラネット配備の場合、このパラメータの値を 10 秒に設定すれば、パフォーマンスの改善が期待できます。一方、低速、低信頼、または WAN 型の接続を含むネットワーク上では、そうした小さな値を使用しないでください。

Solaris システムでこの時間間隔を設定するには、tcp_ip_abort_cinterval パラメータを使用します。

再送信タイムアウト

一部のシステムでは、パケットの再送信間の初期時間間隔を設定できます。この設定は、確認応答のなかったパケットが再送信されるまでの待機時間に影響を与えます。設定値が大きすぎると、失われたパケットのためにクライアントが待たされる可能性があります。高速で信頼性の高いネットワーク上のイントラネット配備の場合、このパラメータの値を 500 ミリ秒に設定すれば、パフォーマンスの改善が期待できます。一方、往復時間が 250 ミリ秒を超えるようなネットワークでは、そうした小さな値を使用しないでください。

Solaris システムでこの時間間隔を設定するには、tcp_rexmit_interval_initial パラメータを使用します。

シーケンス番号

一部のシステムでは、システムが初期シーケンス番号の生成を処理する方法を設定できます。エクストラネットおよびインターネット配備では、シーケンス番号攻撃を避けるため、初期シーケンス番号の生成が RFC 1948 に基づいて行われるようにこのパラメータを設定してください。そうした環境では、ここで説明したほかの TCP チューニング設定は役に立ちません。

Solaris システムでこの動作を設定するには、tcp_strong_iss パラメータを使用します。

Solaris 10 システムでの TCP 設定のチューニング

Solaris 10 システム上で TCP 設定をチューニングするもっとも単純な方法は、単純な SMF サービスを次のようにして作成することです。