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Sun Java Enterprise System 配備計画に関する白書 

第 4 章
論理アーキテクチャの設計

この章では、論理アーキテクチャを作成するプロセスについて説明し、中規模企業のコミュニケーション用配備において使用のモデルケースセットを使用するプロセスの例を示します。

論理アーキテクチャは、配備のビジネス上の目的を達成する上で必要なソフトウェアサービスを提供する Java Enterprise System コンポーネント (およびその依存関係) を識別します。一般に、どのソフトウェアサービスが必要になるかは、技術要件フェーズで特定された使用のモデルケースによって示されます。しかし多くの場合は、ビジネス分析フェーズで特定されるビジネス要件からも、ソフトウェアサービスに関する情報を直接取得できます。

論理アーキテクチャと、技術要件フェーズで特定されるシステム要件に基づいて、配備シナリオが形成されます。配備シナリオは、配備アーキテクチャの設計の基本となります。次の図は、論理設計フェーズと、ビジネス分析、技術要件、配備設計の各フェーズの関係を示しています。

図 4-1 論理設計フェーズと配備計画のその他のフェーズの関係

論理設計フェーズとその他のフェーズの関係を示す図[D]

この章で説明する内容は、次のとおりです。


導入計画の例

配備計画のプロセスをわかりやすく説明するために、ここでは、一般的な中規模企業のコミュニケーションニーズに基づく配備例の使用のモデルケースを例にとります。この配備例は、配備計画の各手順を説明するために、この白書の残りの章でも使用されます。


警告

配備例の使用のモデルケース、論理アーキテクチャ、設計仕様は、配備計画プロセスの手順を簡略化したものです。

説明を目的としているため、この例は簡略化されています。配備例の設計は不完全なものであり、実際には構築またはテストされていません。計画している配備の青写真として、この例を使用しないでください。


配備例は、コミュニケーション用配備の一般的なビジネス要件に基づく使用のモデルケースから開始されます。次の表は、これらのモデルケースを要約しています。

表 4-1 配備例の使用のモデルケース 

モデルケース

説明

#1
シングルサインオン

ユーザーは、次のエンタープライズ Web サービスにアクセスするために、Web ブラウザからシステムにログインする (ユーザー名とパスワードを指定する)

  • カスタムポータル Web ページ
  • Web ベースの電子メールページ
  • カレンダーインタフェース
  • セキュア Web ページ

#2
個人向けにカスタマイズされたポータル画面を開く

ユーザーは、Web ブラウザから個人向けにカスタマイズされたポータル画面に移動する

#3
ユーザーは、ポータル経由でメールチェックを行う

ユーザーは、ポータルインタフェースから新規電子メールメッセージをチェックする

#4
ユーザーは、ポータル経由でセキュア Web ページのチェックを行う

ユーザーは、個人向けにカスタマイズされたポータルインタフェースから、セキュリティ保護されたプロジェクト状態確認ページをチェックする

#5
ユーザーは、ポータル経由でカレンダーのチェックを行う

ユーザーは、ポータルインタフェースからその日の予定をチェックする

#6
カレンダーを管理する

ユーザーは、Web ベースのカレンダークライアントから予定を設定する

#7
電子メールを管理する

ユーザーは、電子メールクライアントから電子メールの読み取りと送信を行う

これらの使用のモデルケースから、次の各節で説明する論理アーキテクチャに必要なサービスを特定することができます。


Java Enterprise System サービス

論理アーキテクチャの設計は、使用のモデルケースの分析から開始されます。これは、配備に必要なサービスの特定に役立ちます。Java Enterprise System に関する知識と、これまでの設計経験に基づいて、モデルケースによって識別されるサービスを提供するための Java Enterprise System コンポーネントの初期論理設計をレイアウトします。

コンポーネントをレイアウトするときは、システム内でのデータの論理フローと、サービスを提供するコンポーネント間の依存関係を考慮します。論理設計は、設計に含まれるコンポーネント間のデータフローに影響する、これらの依存関係を反映したものである必要があります。

次の図は、Java Enterprise System が提供するコンポーネントを示しています。この図と表 4-2 に基づいて、Java Enterprise System コンポーネントの相互関係を理解してください。全般的に、図の下に示されるコンポーネントは、その上のコンポーネントをサポートします。

図 4-2 Java Enterprise System コンポーネント

Java Enterprise System のコンポーネント間の関係を示す図[D]

次の表は、Java Enterprise System コンポーネント間の実際の依存関係を示しています。

表 4-2 Java Enterprise System コンポーネントの相互依存関係 

Java Enterprise System コンポーネント

サポートするコンポーネント

依存するコンポーネント

Application Server

Identity Server
Portal Server

Message Queue

Calendar Server

Portal Server (カレンダーチャネル用)

Directory Server
Identity Server (シングルサインオン用)

Messaging Server (Calendar Server の電子メール通知サービス用)

Directory Proxy Server

なし

Directory Server

Directory Server

Administration Server
Calendar Server
Directory Proxy Server
Identity Server
Instant Messaging
Messaging Server
Portal Server

なし

Identity Server

Portal Server

シングルサインオンを設定する場合に必要なコンポーネント:

Calendar Server
Instant Messaging
Messaging Server

Directory Server
Application Server または Web Server

Instant Messaging

Portal Server

Directory Server

Message Queue

Application Server

Directory Server (省略可能)

Messaging Server

Calendar Server

Portal Server (メッセージングチャネル用)

Directory Server
Web Server
Identity Server

Portal Server

Secure Remote Access

Directory Server
Application Server または Web Server

Portal Server チャネルの使用を設定する場合に必要なコンポーネント :

Calendar Server
Messaging Server
Instant Messaging

Secure Remote Access

なし

Portal Server

Web Server

Identity Server
Portal Server

なし

たとえば、コミュニケーション用配備の例に必要な Java Enterprise System コンポーネントをレイアウトするには、表 4-1 に示される使用のモデルケースを分析します。次の表は、モデルケースによって特定される、配備に直接必要となるコンポーネントを示しています。

表 4-3 サンプルモデルケースのサポートに必要な Java Enterprise System コンポーネント 

Java Enterprise System コンポーネント

モデルケース

Portal Server

#1 シングルサインオン

#2 個人向けにカスタマイズされたポータル画面を開く

#3 ユーザーは、ポータル経由でメールチェックを行う

#4 ユーザーは、ポータル経由でセキュア Web ページのチェックを行う

#5 ユーザーは、ポータル経由でカレンダーのチェックを行う

Calendar Server

#1 シングルサインオン

#5 ユーザーは、ポータル経由でカレンダーのチェックを行う

#6 カレンダーを管理する

Messaging Server

#1 シングルサインオン

#3 ユーザーは、ポータル経由でメールチェックを行う

#7 電子メールを管理する

また、上の表 4-3 に示されるコンポーネントをサポートするために必要となる Java Enterprise System コンポーネントも特定する必要があります。次の表は、これらの追加コンポーネントを示しています。

表 4-4 サンプルモデルケースのサポートに必要な追加コンポーネント

Java Enterprise System コンポーネント

サポートされるコンポーネント

Identity Server

Portal Server をサポートする

Calendar Server と Messaging Server にシングルサインオンのサポートを提供する

Directory Server

Identity Server と Portal Server をサポートする

Application Server または
Web Server

Identity Server と Portal Server をサポートする (Identity Server と Portal Server は Web コンテナ内で実行する必要がある)


配備例の論理アーキテクチャ

次の図 4-3 は、配備例のコンポーネントレイアウトを示しています。配備へのユーザーのエントリポイントが示されます。この図では、最も多くのサポートを必要とするサービス (Portal Server) を上部に記載し、サポートする側のコンポーネントをその下に記載することで、コンポーネント間の依存関係 (表 4-2 を参照) の概略を示しています。配備のデータフローに影響しないため、Portal Server と Identity Server をサポートする Web コンテナが必要とするコンポーネントは図示されていません。

図 4-3 論理アーキテクチャ上の Java Enterprise System コンポーネント

配備例の論理アーキテクチャに含まれるサービスの相対関係を示しています[D]

配備例のデータフロー

使用のモデルケースに基づいて、論理アーキテクチャ内のサービス間での論理データフローを特定し、このフローをレイアウトに追加します。システム内のサービス間のデータフローは、「計画中の配備のサイズ設定」で説明するように、パフォーマンスと可用性のためのサイズ設定で重要な役割を果たします。

次の図は、配備例のデータフローを示しています。データフローは、配備の使用のモデルケースだけでなく、Java Enterprise System サービスの依存関係からも特定されます。

図 4-4 配備例の論理データフロー

論理アーキテクチャ上のコンポーネント間のデータフローを示しています。

図 4-4 は、モデルケース 1、2 に必要なデータフローを示しています。これは、次のようなデータの流れを表します。

図 4-4 の残りのデータフローも、同様に使用のモデルケースとサーバーの依存関係から特定されます。


配備シナリオ

完成した論理アーキテクチャ設計と、技術要件の分析によって特定されたシステム要件から、配備シナリオが形成されます。第 5 章「配備アーキテクチャの設計」で説明するように、配備シナリオは、配備アーキテクチャの設計の開始点となります。



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