Sun Java System Messaging Server 6.3 管理ガイド

ProcedureSun Cluster HAStorage または HAStoragePlus を使用して Messaging Server を設定する — 一般的な例

ここでは、HA 用に Messaging Server を設定する一般的な手順について説明します。ここでの手順を確認したら、次の節で特定の非対称または対称の例について参照してください。これらの手順では、物理ホスト名を mars および venus とします。論理ホスト名は meadow です。

  1. スーパーユーザーになってコンソールを開きます。

    以降の Sun Cluster コマンドはすべて、スーパーユーザーとしてログインしてから実行する必要があります。/dev/console へのメッセージ出力を確認するためにコンソールまたはウィンドウを開きます。

  2. すべてのノードで、必要な Messaging Server Sun Cluster Data Service Agents (SUNWscims) パッケージをインストールします。

  3. クラスタの各ノードで、Messaging Server を実行するための Messaging Server 実行時ユーザーおよびグループを作成します。

    ユーザー ID およびグループ ID 番号は、クラスタ内のすべてのノードで同じでなければなりません。実行時ユーザー ID は、Messaging Server を実行するユーザー名です。この名前に root を指定することはできません。デフォルトは mailsrv です。実行時グループ ID は、Messaging Server を実行するグループです。デフォルトは mail です。

    configure ユーティリティーでもこれらの名前を作成できますが、configure を実行する前に、この章で説明する各ノードの準備の一環としてこれらの名前を作成できます。実行時ユーザーおよびグループ ID 名は、次のファイルに存在する必要があります。

    • クラスタ内の全ノードの /etc/passwd: mailsrv または選択した名前が存在する必要がある

    • クラスタ内の全ノードの /etc/group: mail または選択した名前が存在する必要がある

    「1.1 UNIX システムのユーザーとグループを作成する」を参照してください。

  4. 必要なリソースタイプを Sun Cluster に追加します。

    使用する予定のリソースタイプを認識するように Sun Cluster を設定します。Messaging Server をリソースとして登録するには、次のコマンドを使用します。


    # scrgadm -a -t SUNW.ims

    HAStoragePlus をリソースタイプとして登録するには、次のコマンドを使用します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus

    HAStorage をリソースタイプとして同じ操作を行うには、次のコマンドを使用します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStorage
  5. Messaging Server 用のフェイルオーバーリソースグループを作成します。

    リソースグループをまだ作成していない場合は作成し、Messaging Server を実行するクラスタノード上でそのグループが見えるようにします。次のコマンドは、MAIL-RG という名前のリソースグループを作成し、クラスタノード mars および venus 上でそのグループが見えるようにします。

    # scrgadm -a -g MAIL-RG -h mars,venus

    もちろん、リソースグループに対しては任意の名前を使用できます。

  6. HA 論理ホスト名リソースを作成し、オンラインにします。

    HA 論理ホスト名のリソースを作成して有効にし、リソースグループに配置します (まだこの作業を行なっていない場合のみ)。次のコマンドは、論理ホスト名 meadow を使用してその処理を行います。-j スイッチを省略しているため、作成されるリソースの名前も meadow になります。meadow は、クライアントがリソースグループ内のサービスと通信するときに使用する論理ホスト名です。


    # scrgadm -a -L -g MAIL-RG -l meadow
    # scswitch -Z -g MAIL-RG
  7. HAStorage リソースまたは HAStoragePlus リソースを作成します。

    次に、Messaging Server が依存するファイルシステムに対して HA Storage または HAStoragePlus リソースタイプを作成する必要があります。次のコマンドは、disk-rs という名前の HAStoragePlus リソースを作成し、ファイルシステム disk_sys_mount_point をその制御下に置きます。


    # scrgadm -a -j disk-rs -g MAIL-RG \
    -t SUNW.HAStoragePlus \
    -x FilesystemMountPoints=disk_sys_mount_point-1, disk_sys_mount_point-2 -x AffinityOn=True

    SUNW.HAStoragePlus は、1 個以上のデータサービスリソースによって使用されるデバイスグループ、クラスタおよびローカルファイルシステムを表します。これらは、リソースグループに SUNW.HAStoragePlus 型のリソースを追加し、その他のリソースと SUNW.HAStoragePlus リソース間の依存関係を設定します。この依存関係により、データサービスリソースは、次の条件が揃った時点でオンラインになります。

    • 指定のすべてのデバイスサービスが使用可能な状態になっており、必要に応じて連結されている

    • 指定のすべてのファイルシステムのチェックとマウントが完了している

    FilesystemMountPoints 拡張プロパティーにより、グローバルとローカルのどちらのファイルシステムでも指定できます。つまり、クラスタのすべてのノードからも、単一クラスタノードからも、アクセス可能なファイルシステムです。ローカルファイルシステムは、SUNW.HAStoragePlus リソースによって管理され、単一のクラスタノードにマウントされます。配下のデバイスは Sun Cluster グローバルデバイスである必要があります。ローカルファイルシステムを指定する SUNW.HAStoragePlus リソースは、アフィニティースイッチオーバーが有効になっているフェイルオーバーリソースグループ以外には所属できません。このため、これらのローカルファイルシステムはフェイルオーバーファイルシステムと呼ばれます。ローカルとグローバルの両方のファイルシステムのマウントポイントを同時に指定できます。

    ファイルシステムのマウントポイントが FilesystemMountPoints 拡張プロパティーに指定され、/etc/vfstab エントリが次の条件を両方とも満たしている場合、このファイルシステムはローカルです。

    • 非グローバルマウントオプション

    • ブート時マウントフラグが no に設定されている


    注 –

    SUNW.HAStoragePlus リソースタイプのインスタンスは、大域ファイルシステムのブート時マウントフラグを無視します。


    HAStoragePlus リソースの場合、FilesystemMountPoints のコンマ区切りのリストが、Messaging Server が依存するクラスタファイルシステム (CFS) またはフェイルオーバーファイルシステム (FFS) のマウントポイントです。この例では、disk_sys_mount_point-1 および disk_sys_mount_point-2 の 2 つのマウントポイントのみを指定しています。いずれかのサーバーが依存するファイルシステムがほかにもある場合、追加の HA ストレージリソースを作成し、手順 15 でその追加の依存関係を指定することができます。

    HAStorage の場合は、次のコマンドを使用します。


    # scrgadm -a -j disk-rs -g MAIL-RG \
    -t SUNW.HAStorage
    -x ServicePaths=disk_sys_mount_point-1, disk_sys_mount_point-2 -x AffinityOn=True

    HAStorage リソースの ServicePaths のコンマ区切りのリストは、Messaging Server が依存するクラスタファイルシステムのマウントポイントです。この例では、disk_sys_mount_point-1 および disk_sys_mount_point-2 の 2 つのマウントポイントのみを指定しています。いずれかのサーバーが依存するファイルシステムがほかにもある場合、追加の HA ストレージリソースを作成し、手順 15 でその追加の依存関係を指定することができます。

  8. 必要な Messaging Server パッケージを第一のノードにインストールします。「あとで設定」オプションを選択します。

    Messaging Server パッケージのインストールには、Communications Suite のインストーラを使用します。

    対称配備の場合: Messaging Server バイナリおよび構成データを、Sun Cluster の共有ディスクにマウントされたファイルシステム上にインストールします。たとえば、Messaging Server バイナリの場合は /disk_sys_mount_point-1/SUNWmsgsr に、構成データの場合は /disk_sys_mount_point-2/config にインストールします。

    非対称配備の場合: Messaging Server バイナリを、Sun Cluster の各ノードのローカルファイルシステム上にインストールします。構成データを共有ディスク上にインストールします。たとえば構成データの場合は /disk_sys_mount_point-2/config にインストールします。

  9. Messaging Server を構成します。「1.3 Messaging Server の初期実行時設定を作成する」を参照してください。

    初期実行時設定で、完全修飾ホスト名が要求されます。HA の物理ホスト名ではなく、論理ホスト名を使用する必要があります。

    「1.3 Messaging Server の初期実行時設定を作成する」に示すように、初期実行時設定では設定ディレクトリを指定するよう求められます。必ず、対象の HAStorage または HAStoragePlus リソースの共有ディスクディレクトリパスを使用してください。

  10. ha_ip_config スクリプトを実行して、service.listenaddr および service.http.smtphost パラメータと、dispatcher.cnf および job_controller.cnf ファイルを高可用性のために設定します。

    このスクリプトは、これらのパラメータおよびファイルに対して、物理 IP アドレスではなく論理 IP アドレスが設定されることを確認します。また、watcher プロセス (local.watcher.enable) と自動再起動プロセス (local.autorestart) を有効 (それぞれ 1 に設定) にします。

    スクリプトの実行方法については、「3.4.4 サーバーへの IP アドレスのバインド」を参照してください。

    ha_ip_config スクリプトは、第一のノードで 1 回だけ実行されなければなりません。

  11. imta.cnf ファイルを修正します。すべての物理ホスト名をクラスタの論理ホスト名に置換します。

  12. リソースグループを一次クラスタノードから二次クラスタノードへフェイルオーバーして、フェイルオーバーが適切に機能することを確認します。

    リソースグループを別のクラスタノードに手動でフェイルオーバーします (フェイルオーバー先のクラスタノードに対するスーパーユーザー権限が必要)。

    scstat コマンドを使用して、リソースグループが現在どのノード上で動作しているか (「オンライン」であるか) を確認します。たとえば、リソースグループが mars 上でオンラインである場合、次のコマンドを実行して venus へフェイルオーバーします。

    # scswitch -z -g MAIL-RG -h venus

    一次ノードをアップグレードしている場合、Java Enterprise System インストーラでインストールを行なってから Messaging Server を設定します。そのあと、Java Enterprise System インストーラを使って Messaging Server パッケージをインストールする二次ノードにフェイルオーバーします。ただし、初期実行時設定プログラム (configure) をもう一度実行する必要はありません。代わりに、useconfig ユーティリティーを使用することができます。

  13. 必要な Messaging Server パッケージを第ニのノードにインストールします。「あとで設定」オプションを選択します。

    二次ノードにフェイルオーバーしたら、Communications Suite のインストーラを使用して Messaging Server パッケージをインストールします。

    対称配備の場合: Messaging Server をインストールしないでください。

    非対称配備の場合: Messaging Server バイナリを、ローカルファイルシステム上にインストールします。

  14. クラスタの二次ノードで useconfig を実行します。

    useconfig ユーティリティーを使用すると、HA 環境内の複数のノード間で単一の設定を共有できます。初期実行時設定プログラム (configure) を実行する必要はありません。代わりに useconfig ユーティリティーを使用してください (「3.3.3 useconfig ユーティリティーの使用」を参照)。

  15. HA Messaging Server リソースを作成します。

    ここで、HA Messaging Server リソースを作成してリソースグループに追加します。このリソースは HA 論理ホスト名と HA ディスクリソースに依存します。

    HA Messaging Server リソースを作成するとき、Messaging Server の最上位ディレクトリのパス (msg-svr-base パス) を指定する必要があります。これらは、次のコマンドに示すように IMS_serverroot 拡張プロパティーを使用して行います。


    # scrgadm -a -j mail-rs -t SUNW.ims -g MAIL-RG \
          -x IMS_serverroot=msg-svr-base \
          -y Resource_dependencies=disk-rs,meadow

    このコマンドは、msg-svr-base ディレクトリ内の IMS_serverroot にインストールされた Messaging Server に対して、mail-rs という名前の HA Messaging Server リソースを作成します。HA Messaging Server リソースは、HA 論理ホスト名 meadow に加えて、HA ディスクリソース disk-rs に依存します。

    ファイルシステムに対する Messaging Server の依存関係がほかにもある場合、それらのファイルシステムに対する追加の HA ストレージリソースを作成できます。必ず、追加の HA ストレージリソースの名前を、このコマンドの Resource_dependencies オプションに含めるようにしてください。

  16. Messaging Server リソースを有効にします。

    HA Messaging Server リソースをアクティブにし、それによってメッセージングサーバーをオンラインにする準備ができました。これを行うには、次のコマンドを使用します。

    # scswitch -e -j mail-rs

    このコマンドは、MAIL-RG リソースグループの mail-rs リソースを有効にします。MAIL-RG リソースはあらかじめオンラインにされていたため、このコマンドによって mail-rs もオンラインになります。

  17. 問題がないことを確認します。

    scstat -pw コマンドを使って、MAIL-RG リソースグループがオンラインかどうかを確認します。

    必要であれば、コンソールデバイスへの出力を参照して診断情報を確認します。また、syslog ファイル /var/adm/messages も確認します。詳細なデバッグのオプションと情報については、「3.4.3.1 Sun Cluster でデバッグを有効にする方法」を参照してください。