DHCP を使用するためにネットワークを構成する前に、情報を収集し、サーバー (複数も可) の設定方法について決定を行う必要があります。
以下の作業を行います。
ネットワークトポロジについての詳細な計画を立て、どのサーバーが DHCP サーバーとして最善の候補であり、サーバーがいくつ必要になるのかを決定します。
システムファイルと netmasks テーブルを更新し、ネットワークトポロジを正確に反映するようにします。DHCP サーバーが複数のリモートネットワーク上のクライアントをサポートするのであれば、それらのネットワークに対する netmasks テーブルのエントリが、最新のものであることを確認します (詳細は、netmask(4) のマニュアルページを参照してください)。
使用するデータ保存方法として、ローカルファイルまたは NIS+ のいずれかを選択します。
リースポリシーを確立します。
クライアントがルーター情報を取得する方法を決定します。
ネットワークの物理構造またはレイアウトについてまだ計画を立てていない場合には、ルーターとクライアントの配置、およびネットワークサービスの提供を行うサーバーの配置を調べます。ネットワークトポロジのマッピングにより、DHCP サービスに使用するサーバー、および DHCP サーバーがクライアントに提供することのできる構成情報を決定することができます。
ネットワークの計画については、第 5 章「TCP/IP ネットワークの計画」を参照してください。
DHCP 構成プロセスは、サーバーのシステムファイルとネットワークファイルから、いくつかのネットワーク情報を検索することができます。「システムファイルとネットマスクテーブルの更新」では、これらのファイルについて説明しています。クライアントに他のサービス情報を提供したい場合もあり、その場合にはサーバーのデータベースを検索する必要があります。ネットワークトポロジを調べる際に、クライアントに知らせておきたいすべてのサーバーの IP アドレスを記録しておきます。ネットワーク上に存在している可能性はあるが、その存在を DHCP 構成プロセスが検出できないネットワークサービスの例を次に示します。
タイムサーバー
ログサーバー
プリントサーバー
インストールサーバー
ブートサーバー
スワップサーバー
X Window System フォントサーバー
TFTP サーバー
DHCP は、複数のネットワークハードウェアインタフェースまたは複数の論理インタフェースのいずれかを介して、複数の IP ネットワークが同じネットワークハードウェア媒体を共有しているようなネットワーク環境では正しく動作しません。複数の IP ネットワークが同じ物理 LAN を通じて動作している場合、DHCP クライアントの要求はすべてのネットワークハードウェアインタフェースに到達し、それら IP ネットワークのすべてに対してそのクライアントが同時にアタッチされているように見えてしまいます。
DHCP は、適切な IP アドレスをクライアントに割り当てられるように、クライアントのネットワークアドレスを特定できなければなりません。複数のネットワークがハードウェア媒体上に存在する場合、サーバーはクライアントのネットワークを特定することができず、IP アドレスを割り当てることができません。
DHCP はどのネットワーク上でも使用することができますが、複数のネットワーク上では使用できません。この条件がユーザーのニーズにそぐわない場合は、ネットワークを再構成する必要があります。次のような再構成が推奨候補として挙げられます。
可変長サブネットマスク (variable length subnet mask: VLSM) を使用して、手持ちの IP アドレス空間を有効活用します。これにより、同じ物理ネットワーク上で複数の LAN を動作させる必要がなくなります。VLSM と Classless Inter-Domain Routing (CDIR) についての詳細は、RFC-1519 を参照してください。
スイッチ上のポートを設定し、デバイスを別の物理 LAN に割り当てます。これにより、Solaris DHCP の要件である、1 つの LAN から 1 つの IP ネットワークへのマッピングが維持されます。ポートの設定については、スイッチに関する技術資料を参照してください。
データの保存方法は、DHCP クライアントをサポートするために必要なサーバー数に直接影響します。ローカルファイルを使用する方法では、1 つのサーバーは最大 10,000の クライアントをサポートできます。NIS+ を使用する場合、1 つのサーバーは最大 40,000 のクライアントをサポートすることができます。
「データ保存方法の選択」の節では、データの保存場所について説明しています。
設定処理の間、DHCP Manager または dhcpconfig ユーティリティは、サーバー上のさまざまなシステムファイルを走査し、サーバーの設定に使用できる情報を収集します。
DHCP Manager または dhcpconfig を使用してサーバーの設定を行う前に、システムファイル内の情報が最新のものであることを確認する必要があります。サーバーの設定後にエラーが検出された場合は、サーバー上のマクロを手動で変更し、dhcptab 構成テーブルを更新してください。
表 9-1 は、DCHP サーバーの設定中に収集されるいくつかの情報と、情報の提供元を示します。DHCP をサーバー上に設定する前に、これらの情報が適切に設定されていることを確認してください。サーバーの設定後にシステムファイルを変更する場合には、DHCP Manager または dhcpconfig を再度実行し、変更を反映させる必要があります。
表 9-1 DHCP 構成のための情報
情報 |
提供元 |
説明 |
---|---|---|
時間帯 |
システムの日時、時間帯設定 |
日時と時間帯は Solaris のインストール時に初期設定される。date コマンドを使用すると、日時を変更できる。時間帯を変更するには、TZ 変数が設定されている /etc/TIMEZONE ファイルを編集する |
DNS パラメータ |
/etc/resolv.conf |
DHCP サーバーは /etc/resolv.conf を使用して、DNSドメイン名や DNS サーバーアドレスなどの DNS パラメータを検索する。resolv.conf についての詳細は、『Solaris ネーミングの設定と構成』の「DNS クライアントの設定」を参照 |
NIS+ パラメータ |
システムのドメイン名、nsswitch.conf、 NIS+ |
DHCP サーバーは domainname コマンドを使用してサーバーマシンのドメイン名を取得し、nsswitch.conf ファイルを使用してドメインベースの情報を検索する場所を特定する。サーバーマシンが NIS または NIS+ クライアントの場合、DHCP サーバーは NIS または NIS+ サービスを参照し、NIS/NIS+ サーバーの IP アドレスを取得する |
デフォルトルーター |
システムのルーティングテーブル、管理者の入力 |
DHCP サーバーはネットワークルーティングテーブルを検索し、ローカルネットワークに接続されているクライアントのデフォルトルーターを見つける。同一ネットワーク上にないクライアントについては、DHCP サーバーは管理者を通じて情報を取得しなければならない |
サブネットマスク |
ネットワークインタフェース、netmasks テーブル |
DHCP サーバーはそれ自身のネットワークインタフェースを参照し、ローカルクライアント用のネットマスクとブロードキャストアドレスを特定する。リレーエージェントにより要求がすでに転送されている場合、サーバーはリレーエージェントのネットワーク上の netmasks テーブル内のサブネットマスクを検索する |
ブロードキャストアドレス |
ネットワークインタフェース、netmasks テーブル |
ローカルネットワークでは、DHCP サーバーはネットワークインタフェースに照会することにりブロードキャストアドレスを取得する。リモートネットワークでは、サーバーは BOOTP リレーエージェントの IP アドレスとリモートネットワークのネットマスクを使用して、そのネットワーク用のブロードキャストアドレスを計算する |