この節では、4 つの基本的なメール構成のタイプについて説明し、各構成を設定するために必要とされる作業について簡単に説明します。新しいメールシステムを設定する必要がある場合や、既存のものを拡張しようとする場合、この節が役立ちます。構成の最も基本的なケース (メールが完全にローカルで、外部との接続がない) から始め、メールゲートウェイを持つ 2 つのドメインの構成へと、順に複雑なものを取り上げます。まず最初に、これらの構成のどれを使用するのかを決める必要があります。次の構成が対象となります。
システム管理者として、別名の更新とメールメッセージの転送の方法を決定してください。ユーザーがメールの転送要求やデフォルトのメール別名の変更要求を送る場所として、aliases メールボックスを設定できます。システムで NIS または NIS+ を使用する場合、転送の管理は、ユーザーではなく管理者が行うことができます。
図 34-1 で示すように、最も単純なメール構成は、1 つのメールホストと、それに接続する複数のワークステーションです。メールは完全にローカルです。すべてのクライアントがローカルのディスクにメールを格納し、メールサーバーとして機能します。メールアドレスは /etc/mail/aliases ファイルを使用して構文解析されます。
メールホストに指定されたサーバー (メールホストの /etc/hosts ファイルに mailhost.domainname を追加。NIS または NIS+ を実行していない場合は、すべてのメールクライアントの /etc/hosts ファイルにメールホスト IP アドレス行を追加)
ローカルメールボックスを持つ任意のシステム上にある同じ内容の /etc/mail/aliases ファイル (NIS または NIS+ を実行していない場合)
この構成では、各メールクライアントが、クライアントのメールボックスにメールのスプーリングが行える 1 つのメールサーバーから、メールをマウントします。このサーバーがメールホストになっても構いません。この構成では、各クライアントのメールボックスのバックアップが簡単に行えます。
メールホストとして指定されたサーバー (メールホストの /etc/hosts ファイルに mailhost.domainname を追加。NIS または NIS+ を実行していない場合は、すべてのメールクライアントの /etc/hosts ファイルにメールホスト IP アドレス行を追加)
ローカルメールボックスを持つ任意のシステムにある同じ内容の /etc/mail/aliases ファイル (NIS または NIS+ を実行していない場合)
/var/mail ディレクトリをマウントするため、各メールクライアントの /etc/vfstab ファイルまたは /etc/auto_direct (autofs が使用されている場合) ファイルにエントリが必要
小規模のネットワークにおける最も一般的なメール構成を図 34-2 に示します。1 つのシステムが、メールサーバー、メールホスト、および外部へのメールゲートウェイを兼ねます。メールは /etc/mail/aliases ファイルを使用して配信されます。ネームサービスは必要ありません。
メールクライアントがメールホストの /var/mail からメールファイルをマウントする場合、この種のメール構成を設定するには、次の条件が必要です。
メールホストに指定したサーバー (メールホストの /etc/hosts ファイルに mailhost.domainname を追加。NIS または NIS+ を実行していない場合は、すべてのメールクライアントの /etc/hosts ファイルにメールホスト IP アドレス行を追加)
ローカルメールボックスを持つ任意のシステム上にある同じ内容の /etc/mail/aliases ファイル (NIS や NIS+ を実行していない場合)
メールボックスがメールホストにあるときに、/var/mail ディレクトリをマウントするための各メールクライアントの /etc/vfstab ファイルか /etc/auto_direct (autofs が使用されている場合) にあるエントリ
メールサーバーの /var/mail にクライアントメールボックスを格納できるだけの十分な領域
図 34-3 に示したメール構成には、2 つのドメインと 1 つのメールゲートウェイがあります。この構成では、各ドメインのメールサーバー、メールホストおよびメールゲートウェイ (複数も可) が、異なるシステムの場合も多くなります。メールの管理や配信の過程をより簡単にするため、ネームサービスを使用します。
メールクライアントがメールホストの /var/mail からメールファイルをマウントする場合、この種のメール構成を設定するには、以下の条件が必要です。
特別な規則が追加された、カスタマイズされた sendmail.cf ファイルを必要とする複雑なゲートウェイシステム
メールゲートウェイに main.cf ファイル (MX レコードが使用される場合には編集は不要)
メールホストとして指定されたサーバー (メールホストの /etc/hosts ファイルに mailhost.domainname を追加。NIS や NIS+ を実行していない場合は、すべてのメールクライアントの /etc/hosts ファイルにメールホスト IP アドレス行を追加)
ローカルメールボックスを持つ任意のシステム上にある同じ内容の /etc/mail/aliases ファイル (NIS や NIS+ を実行していない場合)
ユーザーにメールが格納される場所 (NIS+ では mail_aliases.org_dir、NIS では別名マップ) を示す別名エントリ
各メールクライアントシステムに、デフォルトの /etc/mail/sendmail.cf ファイル (編集は不要)
メールボックスがメールホストにあるときに、/var/mail ディレクトリをマウントするための各メールクライアントの /etc/vfstab ファイルまたは /etc/auto_direct (autofs が使用されている場合) ファイルにエントリが必要
メールサーバーの /var/mail に、クライアントのメールボックスを格納できるだけの十分な領域