共通デスクトップ環境 プログラマ概要

第 3 章 アプリケーションの開発

この章では、命名規則およびその他のガイドラインなど、共通デスクトップ環境アプリケーションの開発に固有の情報を示します。アプリケーションへ組み込んでデスクトップとの統合を促進するデスクトップ機能を決定するためのガイドラインである、統合のレベルを概説します。また、共通デスクトップ環境アプリケーションの開発を容易にするツールであるアプリケーション・ビルダの概要も説明します。

デスクトップ統合のレベル

ユーザは共通デスクトップ環境のシェル・コマンド行から、任意の X11 ベースのアプリケーションを実行できます。ただしアプリケーションをデスクトップへ統合する場合は、従わなければならないガイドラインがあります。アプリケーションの設計または既存アプリケーションの移植において最大限の適応性を与えるために、共通デスクトップ環境は 3 つの統合レベルを定義しています。

統合の全レベルの詳細は、『Solaris 共通デスクトップ環境 プログラマーズ・ガイド』を参照してください。基本的な統合については『Solaris 共通デスクトップ環境 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド』でも説明しています。

デスクトップ命名規則

共通デスクトップ環境は、X および Motif で使用されているのと同様の命名規則を使用します。デスクトップ・クライアント、デスクトップ・ライブラリ、その他のデスクトップ・コンポーネントは、外部から見ることができる名前に共通の dtDtDT などの接頭辞を共有します。個人用のデスクトップ構造、関数、定義 (開発者が使用するのではなく、共通デスクトップ環境コードに入っている) には、_dt_Dt_DT という接頭辞が付いています。表 3-1 では、デスクトップの命名規則をリストします。

表 3-1 デスクトップ命名規則

名前 

接頭辞 

例 

デスクトップ・クライアントおよびユーティリティ 

dt

dthelpview

リソース名およびクラス 

Dt

DtNhelpType, DtCHelpType

ライブラリ名 

Dt

libDtHelp

ヘッダ・ファイル 

Dt

#include <Dt/Help.h>

公開している関数名 

Dt

DtCreateHelpDialog

公開しているデータ構造名 

Dt

DtHelpDialogCallbackStruct

定数名 

Dt

DtHELP_NEW_WINDOW

環境変数 

DT

DTHELPSEARCHPATH

公開していないデスクトップ・シンボル (構造、関数、定義) 

_dt, _Dt, _DT

_DtHelpFunction, _DtHELP_DEFINE

表 3-2 では、上記の命名規則の例外をリストします。

表 3-2 デスクトップ命名規則の例外

名前 

接頭辞 

例 

共通デスクトップ環境 Motif

Xm

XmCreateLabel

dtksh 簡易関数 

Dtksh

DtkshAddButtons

ToolTalk メッセージ・サービス

tt (関数用)

Tt (typedef用)

TT (定数用)

tt_open

Tt_message

TT_NOTICE

X11R5

X, Xt

XOpenDisplay, XtCreateWidget


注意 - 注意 -

アプリケーションのコードで新しいシンボルを定義するときは、接頭辞 dtDtDT_dt_Dt_DTXmttTtTTXXt を使用しないでください。使用した場合は、共通デスクトップ環境、ToolTalk、X11R5、Motif コードにすでに定義されているものか、定義される予定のものと重複する可能性があります。


公開しているインタフェースと公開していないインタフェース

マニュアル・ページまたは共通デスクトップ環境マニュアル・セットで、共通デスクトップ環境インタフェースについて言及されている場合、特に断り書きがなければそのインタフェースは公開されていると見なすことができます。インタフェースに対応するヘッダ・ファイルがあるという事実だけでは、そのインタフェースが公開されているものであるとは言いきれません。マニュアルまたはその他のドキュメントに記載されていないインタフェースは共通デスクトップ環境に対して内部専用であり、予告なしに変更されることがあります。

共通デスクトップ環境データベースのガイドライン

/usr/dt/man/man4 ディレクトリにあるマニュアル・ページに、アクションやデータ型などに使用するデスクトップ・データベースの形式があります。

データベースの詳細は、『Solaris 共通デスクトップ環境 プログラマーズ・ガイド』を参照してください。

アプリケーションの初期化と libDtSvc

アプリケーションが任意の libDtSvc API (アクション、データ型作成、ドラッグ&ドロップ、セッション・マネージャ、ワークスペース・マネージャのための) を使用している場合、DtInitialize() または DtAppInitialize() を呼び出して、まず libDtSvc ライブラリを初期化しなければなりません。詳細は、DtInitialize(3) または DtAppInitialize(3) のマニュアル・ページを参照してください。

アプリケーション・ビルダ

アプリケーション・ビルダ (AppBuilder) は、デスクトップのアプリケーション・プログラム・インタフェース (API) を呼び出すためにコードを書かなくても、共通デスクトップ環境アプリケーションのグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) を簡単に作成できるようにするツールです。このツールは Motif ツールキットを単純なオブジェクト・パレットとオブジェクト属性シートに要約します。AppBuilder を使用して、単純な GUI ベース・プログラムから複雑で統合されたシステムまであらゆる範囲のアプリケーションを構築できます。ユーザ・インタフェース言語 (UIL) ファイルのインポートおよびエクスポートをサポートし、他の Motif ベース・ツールおよびプロダクトの中にアプリケーションを移植できるようにします。

AppBuilder は、次のような場合に使用するのに適しています。

実際に上記のいずれかに該当しない場合でも、アプリケーションを開発する上で AppBuilder の使用が適切であり役に立つと思われることはよくあります。

AppBuilder を使用すると、次のようなことが実行できます。

AppBuilder からアプリケーションをコンパイルおよび起動できます。AppBuilder を終了して再起動しなくても、共通環境から構築、実行、デバッグのサイクルを実行できます。


ヒント -

アプリケーションビルダはよい教材になります。Sun Microsystems Advanced Developer Tools から、全機能 Motif GUI ビルダである XDesigner を購入することができます。


デモ・プログラム

AppBuilder のプログラム例は /usr/dt/examples/dtbuilder にあります。このプログラムの詳細は、README ファイルを参照してください。

関連マニュアル

アプリケーション・ビルダの詳細は、適切なマニュアル・ページ、AppBuilder のヘルプ・ボリューム、および『アプリケーション・ビルダ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。