この章では Japanese Feature Package (以降、JFP とします) の位置づけなどを紹介し、SunOS を中心に、JFP の提供する機能について説明します。Solaris CDE と日本語 OpenWindows の機能については、パート II, JFP - GUI を参照してください。
JFP は、Solaris で日本語機能を使用するための追加パッケージです。このパッケージには、SunOS と Solaris CDE、OpenWindows 用の日本語サポート機能が含まれています。Solaris は、JFP と、国際化された SunOS、Solaris CDE、OpenWindows で構成されています。
このマニュアルでは、システムのソフトウェアやアプリケーションを特定の言語や文化、慣習 (これらをまとめてロケール (locale) と呼びます) に適応させることを「各国語対応 (localization)」と呼びます。日本語対応とは、日本語および日本の文化、慣習を対象とした各国語対応のことです。各国語対応の要求はさまざまですが、言語に依存しない共通の枠組みで処理できる部分と、特定の言語専用の機能を必要とする部分があります。
各国語対応のために利用できる共通の枠組みを提供することを「国際化 (internationalization)」と呼びます。システムやアプリケーションを国際化することにより、複数の言語の各国語対応を簡単かつ統一された方法で実現できます。
エンコーディングに依存しない国際化機構を「CSI (Code Set Independence) 化された国際機構」と呼びます。国際化機構の CSI 化により、日本語 EUC (Extended Unix Code) を扱う ja または ja_JP.EUC ロケールに加え、PC 漢字コードを扱う ja_JP.PCK ロケール、UTF-8 コードを扱う ja_JP.UTF-8 ロケールがサポートされます。ただし、現時点では、対応するコマンドやライブラリなどに制限があります。CSI 化されたコマンドやライブラリについては、『国際化対応言語環境の利用ガイド』を参照してください。
JFP は、国際化された SunOS と Solaris CDE および OpenWindows に対して日本語のための各国語化機能を提供します。
JFP は、パッケージと呼ばれるインストールの単位の集合からなります (SUNWjfpr、SUNWjfpu など) 。JFP のパッケージがシステム上に存在するかどうかは、pkginfo(1) コマンドを使って調べることができます。たとえば、grep(1) コマンドを併用して次のように入力します。
sun% pkginfo | grep SUNWjfp : system SUNWjfpr Japanese Feature Package root files system SUNWjfpu Japanese Feature Package user files : : |
JFP パッケージの一覧は、『Solaris 8 ご使用にあたって (SPARC 版 / Intel 版)』 で確認できます。
JFP は、システム提供の日本語ロケールとして、日本語 EUC を扱う ja または ja_JP.EUC ロケール、PC 漢字コードを扱う ja_JP.PCK ロケール、UTF-8 を扱う ja_JP.UTF-8 ロケールを提供します (以降、この 3 ロケールを総称して「日本語ロケール」と記述します)。 「japanese」というロケール名は、ja と同等のロケールを提供します。これは、日本語 Solaris 1.x システムとのネットワーク環境での共存のために用意されたものです。日本語ロケールの定義内容の詳細は、第 2 章「日本語ロケール」を参照してください。
JFP は、メッセージの国際化機能を利用して、日本語化されたメッセージカタログを提供しています。ただし、SunOS が提供するすべてのコマンド、ライブラリで、メッセージが国際化されているわけではありません。国際化されていないメッセージは、日本語環境でも英語で表示されます。
SunOS 5.x で国際化されたコマンドに加えて、日本語環境をサポートするための以下の SunOS コマンドが提供されます。これらのコマンドの使用法については、第 6 章「日本語環境用 SunOS コマンド」と各コマンドのマニュアルページを参照してください。
表 1-1 JFP 日本語環境用コマンド
JFP は、SunOS の国際化されたコマンドを拡張した以下のコマンドも提供します。これらのコマンドの使用法については、第 5 章「国際化 SunOS コマンドの利用」と第 6 章「日本語環境用 SunOS コマンド」のほか、各コマンドのマニュアルページを参照してください。
表 1-2 国際化拡張コマンド
/usr/bin/ setterm コードセット変換用 STREAMS モジュールの構成用コマンド /usr/SUNWale/bin/ mailx 複数バイト言語の国際化のために拡張された mailx talk 複数バイト言語の国際化のために拡張された talk /usr/SUNWale/sbin/ in.comsat 複数バイト言語の国際化のために拡張された in.comsat |
mailx、talk、install_comsat は、ja ロケールでのみ動作が保証されています。
JFP は、国際化 SunOS で提供されているコード変換機能 iconv の日本語コードセットのサポートとして、この機能で使用する日本語モジュールを提供します。「日本語環境用 SunOS のコマンド」で紹介しているコード変換 (euctosj、sjtojis など) は、ベンダー定義文字やユーザー定義文字の変換をサポートしていません。変換対象にこのような定義文字が含まれる場合は、iconv を使用してください。コード変換機能 iconv(1) の使用法については第 6 章「日本語環境用 SunOS コマンド」を、iconv(3C) の使用法については『JFP 開発ガイド』を参照してください。
JFP は、各種日本語端末からの tty ベースの入出力に対して、コードセット変換を行う STREAMS モジュール群を提供します。
日本語端末から STREAMS モジュールを使用するときは、国際化された SunOS コマンドとして提供されている setterm(1) を使用します。STREAMS モジュールの使用法については、第 6 章「日本語環境用 SunOS コマンド」と、各コマンドのマニュアルページを参照してください。
JFP は、LP 印刷サービスを使用してドットマトリックス漢字プリンタ (EPSON VP-5085、 NEC PC-PR201)、日本語ページプリンタ (Canon LASERSHOT)、日本語 PostScript プリンタで日本語テキストを印刷するために、これらの変換フィルタ群を提供します。日本語プリンタの使用法については、第 4 章「日本語対応 SunOS のシステム環境設定」を参照してください。
JFP は、ATOK12、Wnn6、ATOK8、および cs00 による日本語入力機能を提供しています。詳細は、『日本語入力システムの概要とセットアップ』、『ATOK12 ユーザーズガイド』、『Wnn6 ユーザーズガイド』、『ATOK8 ユーザーズガイド』、『cs00 ユーザーズガイド』を参照してください。
プロセッサの種類 |
キーボードの種類 |
---|---|
SPARC |
日本語タイプ 4 キーボード 日本語タイプ 5 キーボード 日本語タイプ 6 キーボード |
IA |
106 キーボード J3100 キーボード |
JFP は、日本語のオンラインマニュアルを提供しています。ただし、すべてのオンラインマニュアルが日本語化されているわけではありません。
JFP では、JLE システム (SunOS 4.x に対する日本語処理機能) 上で作成されたアプリケーションを動作させるために、JLE バイナリ互換性サポートパッケージを提供しています。バイナリ互換性パッケージの一般的な注意事項および使用条件については、『バイナリ互換性ガイド』を参照してください。以下にパッケージ固有の注意事項を示します。
JLE ロケールデータベースは JFP のものとは互換性がありません。このため、JLE バイナリ互換性サポートパッケージでは /usr/lib/oldlocale に JLE 互換ロケールデータベースを置いています。 JLE アプリケーションは自動的にこのディレクトリを参照するようになっています。