Wnn6 には次のような特徴があります。
Wnn6 は、FI (Flexible Intelligence) 変換機能と FI 学習機能により、高水準のかな漢字変換効率を実現しています。
Wnn6 のシステム構成 は、クライアント / サーバー方式を採用しています。これにより、複数のクライアントからサーバー側にある同一の辞書を使用することができるので、どのクライアントからも同一の学習効果を得ることができます。
また、辞書の追加などのメンテナンス作業を効率良く行なったり、効果的なオフライン学習機能をサポートすることができます。
さらに、この方式を使用することにより、サーバーにアクセスできるクライアントを制限することもできます。
辞書操作や環境設定には、GUI のツールが用意されています。 Wnn6 に対して特別な知識がなくても、すべての環境の設定を簡単に行うことができます。
ユーザーの好みに合わせて、キーの割り当てを他の日本語入力システム (cs00, ATOK8 など) に合わせることができます。
辞書は、システム (固定形式) 辞書とユーザー (登録可能形式) 辞書に分類されます。辞書のエントリである変換文字列に対して、各ユーザーが個別の頻度情報を持つことにより、変換効率が向上します。
各辞書の特徴は次のとおりです。
システム辞書は、『岩波国語辞典第四版』をもとにしています。また、次のような独自の語彙が加えられています。
現代語、話しことば
複合語、複合品詞
全国の主要地名、世界の国名、都市名
人名 (姓と名の分離)
最大登録語数
システムからの制限はありません。マシンのディスク容量によります。
登録読み、登録漢字文字数 (253 文字)
登録読み文字種 (全文字種)
登録漢字文字種 (全文字種)
単語登録、単語削除、単語検索などの辞書操作は、辞書ユーティリティを利用して簡単に行うことができます。また、他の日本語入力システム (cs00、ATOK7、ATOK8、 VJE-Delta、EGBRIDGE) で作成された辞書から、Wnn6 の辞書フォーマットへ変換する辞書コンバータもあります。これらを活用することにより、他の日本語入力システムから Wnn6 への移行がスムーズに行えます。
Wnn6 の FI 変換とは、FI 関係辞書 (文節間接続関係辞書) を用いて、変換文字列中の各文節間の接続度合いを調査し、接続度合いの高い候補を優先して変換する機能をいいます。これにより、高いかな漢字変換効率を実現しています。
FI 変換には次の変換機能があります。
表 1-1 Wnn6 の格係り受け変換
が格 |
手が挙がる / 株が騰がる / てんぷらが揚がる |
を格 |
身長を測る / 時間を計る / 暗殺を謀る |
に、には格 |
宿に泊まる / 駅に停まる |
で格 |
汽車で帰る / 貴社で会う |
へ格 |
京へ向かった / 今日へ持ち越した |
より格 |
車より速い / 予定より早い |
から格 |
敵から奪回する / 会から脱会する |
まで格 |
誤解まで招いた / 五階まで昇る |
表 1-2 Wnn6 の所有格変換
かいとう |
=> |
会頭の回答 |
かいじょう |
=> |
会場の開場 |
表 1-3 Wnn6 の受身変換
|
FI 接続関係 |
変換可能文字列 |
---|---|---|
受身 |
交通を − 規制する |
交通が規制される |
可能 |
テレビを − 見る |
テレビが [を] 見られる |
自発 |
故郷を − 偲ぶ |
故郷が偲ばれる |
尊敬 |
社長が − 読む |
社長が読まれる |
表 1-4 Wnn6 の使役変換
|
FI 接続関係 |
変換可能文字列 |
---|---|---|
使役 |
彼が − 答える |
彼に答えさせる |
表 1-5 Wnn6 の合成語変換
複合語 | => |
集団 − 登校 |
会社 − 訪問 |
人名 | => |
福沢 − 諭吉 |
夏目 − 漱石 |
表 1-6 Wnn6 の修飾語変換
形容詞 |
あつい△△△ |
熱い湯 / 厚い本 / 暑い夏 |
形容動詞 |
ていちょうな△△△ ふしんな△△△ |
丁重な挨拶 / 低調な作品 不審な人影 / 不振な成績 |
副詞 |
▲▲▲もる |
ぽたぽた漏る / こんもり盛る |
連体詞 |
▲▲▲きのう |
小さな機能 / 楽しかった昨日 |
表 1-7 Wnn6 の複文変換
▽ |
▼ |
家が建ち |
人が立つ |
FI 変換以外には、次のような変換機能があります。
付属語を含まない候補を優先します。
同音異義語のなかで、直前に使用した単語を必ず先頭の候補に挙げます。次候補は使用した順に 6 個までを提示します。
単漢字だけを使って変換します。
入力文字列が辞書に登録されていない場合、その文字列と表記は異なっても、同じ発音になる別の単語が辞書に登録されていれば、その単語を候補として提示します。
こおり / こうり => 氷 |
表 1-9 Wnn6 の長音変換
うぃんどう / うぃんどー => ウィンドウ |
表 1-10 Wnn6 の送りがな基準処理
|
本則 |
送る |
送らない |
---|---|---|---|
おこなう => |
行う |
行なう |
行う |
表 1-11 Wnn6 の異形字処理
渡辺 <==> 渡邊 |
表 1-12 Wnn6 の郵便番号変換
600 => 京都府京都市下京区 |
表 1-13 Wnn6 の電話番号変換
075 => 京都府京都市 |
表 1-14 Wnn6 の英単語日本語変換
COMPUTER => コンピュータ |
表 1-15 Wnn6 の濁音処理
べんきょうづくえ | => | 勉強机 |
づくえ | => * | 机 |
Wnn6 には、FI 変換 (格係り受け変換、所有格変換、受身変換、使役変換、合成語変換、修飾語変換、複文変換) で、現在の FI 関係辞書に登録されていない文節間の関係をユーザーが確定した場合に、新しくユーザーごとの FI 関係辞書に登録する機能があります (FI 学習機能)。
FI 学習機能は、「する / しない / 一時的」の各設定に切り換えることができます。
単語の使用頻度をユーザーごとに管理して、使用頻度の高い単語を変換時に優先的に表示することができます。システム辞書内の単語と、FI 関係システム辞書内の単語を管理します。
学習レベルは、「じわじわ / 基準 / すぐ / 必ず / しない」の学習レベルで切り換えることができます。
辞書に登録されていない「ひらがな / カタカナ / ローマ字」の候補が確定された場合に、自動的に辞書へ登録します。「する / しない / 一時的」の各設定に切り換えることができます。
文節の切り直しを行なって変換文字列を確定した場合に、切り直した前後の文節を学習します。「する / しない / 一時的」の各設定に切り換えることができます。
送りがな基準がある単語は、単語ごとに確定した規則「本則 / 送る / 送らない」を学習して、直前に使用した規則を最優先します。「する / しない」の各設定に切り換えることができます。
接頭語に「お / ご」「御」のどれを使用するか、直後の名詞ごとに学習します。「する / しない」の各設定に切り換えることができます。
単語ごとに確定した文字列の接尾語の規則「カナ / 漢字 (送る) / 漢字 (送らない) 」を学習して、直前に使用した規則を最優先します。「する / しない」の各設定に切り換えることができます。
一般語学習
確定した一般語の情報 「ひらがな / カタカナ / 漢字」 を学習します。「する / しない」の各設定に切り替えることができます。
確定した数字表記の種類「漢数字 / 半角 / 全角 / カンマ付き」を学習し、直前に使用した種類を最優先します。この学習は無効にできません。
複数のユーザー辞書で登録されている同一単語を、共用辞書に反映させます。この機能はシステム管理者が設定します。
変換効率の向上とディスクとメモリー資源の削減を目的に、オフラインで動く機能をいいます。不必要な単語の削除や頻度の再配置を行い、登録語自動反映モジュールを起動させます。この機能はシステム管理者を対象としています。
Wnn6 は、 ユーザーの入力処理を行うクライアント (Wnn6/Htt) と、かな漢字変換を行うサーバー (jserver) からなるクライアント / サーバー方式で構成されています。jserver は、辞書引き専用サーバー (wnnds) と共に使用することができます。
クライアント / サーバー方式により、複数のクライアント (Wnn6/Htt など) からのかな漢字変換要求を、1 台のマシンで動いている jserver で処理することができます。
jserver のかな漢字変換機能を使って日本語入力処理を行うには、ユーザーとのインタフェース部分でアプリケーションプログラムが必要になります。このアプリケーションプログラムがクライアントに相当します。Solaris では、アプリケーションプラグラムとして Wnn6/Htt と uum を提供しています。
Wnn6/Htt は X ウィンドウシステムで動く複数のクライアントに対して、日本語入力環境を提供します。Wnn6/Htt からは、Wnn6 辞書ユーティリティ、Wnn6 設定ユーティリティなどのユーティリティプログラムを起動することもできます。 uum は、漢字端末や X ウィンドウシステムの exterm などの個々のウィンドウ上で動作します。
辞書への単語登録と単語削除は、辞書ユーティリティ wnndictutil で簡単に操作できます。また、辞書コンバータ wnnotow を使って、ATOK8、ATOK7、cs00、VJE-delta、EGBRIDGE のユーザー辞書ファイルを、 Wnn6 でも活用することができます。
Wnn6/Htt から、キーの割り当ての設定や、かな漢字変換実行の環境 (辞書の指定、変換パラメータ値の設定など) のカスタマイズを行うことができます。その他の環境についても、Wnn6 設定ユーティリティ wnnenvutil を使って、カスタマイズを簡単に行うことができます。
Wnn6 のシステム構成の概略図を図 1-3 に示します。