日本語入力システムの概要とセットアップ

Wnn6 の概要

特徴

Wnn6 には次のような特徴があります。

高度な変換機能と学習機能

Wnn6 は、FI (Flexible Intelligence) 変換機能と FI 学習機能により、高水準のかな漢字変換効率を実現しています。

クライアント / サーバー方式

Wnn6 のシステム構成 は、クライアント / サーバー方式を採用しています。これにより、複数のクライアントからサーバー側にある同一の辞書を使用することができるので、どのクライアントからも同一の学習効果を得ることができます。

また、辞書の追加などのメンテナンス作業を効率良く行なったり、効果的なオフライン学習機能をサポートすることができます。

さらに、この方式を使用することにより、サーバーにアクセスできるクライアントを制限することもできます。

GUI ユーティリティ

辞書操作や環境設定には、GUI のツールが用意されています。 Wnn6 に対して特別な知識がなくても、すべての環境の設定を簡単に行うことができます。

入力スタイル

ユーザーの好みに合わせて、キーの割り当てを他の日本語入力システム (cs00, ATOK8 など) に合わせることができます。

辞書

辞書は、システム (固定形式) 辞書とユーザー (登録可能形式) 辞書に分類されます。辞書のエントリである変換文字列に対して、各ユーザーが個別の頻度情報を持つことにより、変換効率が向上します。

各辞書の特徴は次のとおりです。

単語登録、単語削除、単語検索などの辞書操作は、辞書ユーティリティを利用して簡単に行うことができます。また、他の日本語入力システム (cs00、ATOK7、ATOK8、 VJE-Delta、EGBRIDGE) で作成された辞書から、Wnn6 の辞書フォーマットへ変換する辞書コンバータもあります。これらを活用することにより、他の日本語入力システムから Wnn6 への移行がスムーズに行えます。

かな漢字変換機能

FI 変換

Wnn6 の FI 変換とは、FI 関係辞書 (文節間接続関係辞書) を用いて、変換文字列中の各文節間の接続度合いを調査し、接続度合いの高い候補を優先して変換する機能をいいます。これにより、高いかな漢字変換効率を実現しています。

FI 変換には次の変換機能があります。

表 1-1 Wnn6 の格係り受け変換

が格 

手が挙がる / 株が騰がる / てんぷらが揚がる 

を格 

身長を測る / 時間を計る / 暗殺を謀る 

に、には格 

宿に泊まる / 駅に停まる 

で格 

汽車で帰る / 貴社で会う 

へ格 

京へ向かった / 今日へ持ち越した 

より格 

車より速い / 予定より早い 

から格 

敵から奪回する / 会から脱会する 

まで格 

誤解まで招いた / 五階まで昇る 

表 1-2 Wnn6 の所有格変換

かいとう 

=> 

会頭の回答 

かいじょう 

=> 

会場の開場 

表 1-3 Wnn6 の受身変換

 

FI 接続関係 

変換可能文字列 

受身 

交通を − 規制する 

交通が規制される 

可能 

テレビを − 見る 

テレビが [を] 見られる 

自発 

故郷を − 偲ぶ 

故郷が偲ばれる 

尊敬 

社長が − 読む 

社長が読まれる 

表 1-4 Wnn6 の使役変換

 

FI 接続関係 

変換可能文字列 

使役 

彼が − 答える 

彼に答えさせる 

表 1-5 Wnn6 の合成語変換

複合語 

 =>

集団 − 登校 

会社 − 訪問 

人名 

 =>

福沢 − 諭吉 

夏目 − 漱石 

表 1-6 Wnn6 の修飾語変換

形容詞 

あつい△△△ 

熱い湯 / 厚い本 / 暑い夏 

形容動詞 

ていちょうな△△△ 

ふしんな△△△  

丁重な挨拶 / 低調な作品 

不審な人影 / 不振な成績 

副詞 

▲▲▲もる 

ぽたぽた漏る / こんもり盛る 

連体詞 

▲▲▲きのう 

小さな機能 / 楽しかった昨日 

表 1-7 Wnn6 の複文変換

▽  

▼ 

家が建ち 

人が立つ 

その他の変換

FI 変換以外には、次のような変換機能があります。

表 1-8 Wnn6 の揺らぎ処理

こおり / こうり => 氷 

表 1-9 Wnn6 の長音変換

うぃんどう / うぃんどー => ウィンドウ 

表 1-10 Wnn6 の送りがな基準処理

 

本則 

送る 

送らない 

おこなう => 

行う 

行なう 

行う 

表 1-11 Wnn6 の異形字処理

渡辺 <==> 渡邊 

表 1-12 Wnn6 の郵便番号変換

600 => 京都府京都市下京区 

表 1-13 Wnn6 の電話番号変換

075 => 京都府京都市 

表 1-14 Wnn6 の英単語日本語変換

COMPUTER => コンピュータ 

表 1-15 Wnn6 の濁音処理

べんきょうづくえ 

 => 勉強机

づくえ 

 => * 机

学習機能

FI 学習

Wnn6 には、FI 変換 (格係り受け変換、所有格変換、受身変換、使役変換、合成語変換、修飾語変換、複文変換) で、現在の FI 関係辞書に登録されていない文節間の関係をユーザーが確定した場合に、新しくユーザーごとの FI 関係辞書に登録する機能があります (FI 学習機能)。

FI 学習機能は、「する / しない / 一時的」の各設定に切り換えることができます。

頻度学習

単語の使用頻度をユーザーごとに管理して、使用頻度の高い単語を変換時に優先的に表示することができます。システム辞書内の単語と、FI 関係システム辞書内の単語を管理します。

学習レベルは、「じわじわ / 基準 / すぐ / 必ず / しない」の学習レベルで切り換えることができます。

その他の学習機能

Wnn6 の構成

Wnn6 は、 ユーザーの入力処理を行うクライアント (Wnn6/Htt) と、かな漢字変換を行うサーバー (jserver) からなるクライアント / サーバー方式で構成されています。jserver は、辞書引き専用サーバー (wnnds) と共に使用することができます。

クライアント / サーバー方式により、複数のクライアント (Wnn6/Htt など) からのかな漢字変換要求を、1 台のマシンで動いている jserver で処理することができます。

図 1-2 サーバー / クライアント方式の Wnn6

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jserver のかな漢字変換機能を使って日本語入力処理を行うには、ユーザーとのインタフェース部分でアプリケーションプログラムが必要になります。このアプリケーションプログラムがクライアントに相当します。Solaris では、アプリケーションプラグラムとして Wnn6/Htt と uum を提供しています。

Wnn6/Htt は X ウィンドウシステムで動く複数のクライアントに対して、日本語入力環境を提供します。Wnn6/Htt からは、Wnn6 辞書ユーティリティ、Wnn6 設定ユーティリティなどのユーティリティプログラムを起動することもできます。 uum は、漢字端末や X ウィンドウシステムの exterm などの個々のウィンドウ上で動作します。

辞書への単語登録と単語削除は、辞書ユーティリティ wnndictutil で簡単に操作できます。また、辞書コンバータ wnnotow を使って、ATOK8、ATOK7、cs00、VJE-delta、EGBRIDGE のユーザー辞書ファイルを、 Wnn6 でも活用することができます。

Wnn6/Htt から、キーの割り当ての設定や、かな漢字変換実行の環境 (辞書の指定、変換パラメータ値の設定など) のカスタマイズを行うことができます。その他の環境についても、Wnn6 設定ユーティリティ wnnenvutil を使って、カスタマイズを簡単に行うことができます。

Wnn6 のシステム構成の概略図を図 1-3 に示します。

図 1-3 Wnn6 のシステム構成

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