AP メタネットワークでは、ネットワークパスグループ内で互いを代替する物理ネットワークは必ず、同じ種類の媒体にし、同じサブネット上に配置します。たとえば、ネットワークパスグループは 2 つの Ethernet ネットワークまたは 2 つの FDDI ネットワークで構成できますが、Ethernet ネットワークと FDDI ネットワークを 1 つずつでは構成できません。Ethernet ネットワーク内では、異なる種類の Ethernet を使用できます。たとえば、hme と qfe を同じパスグループで使用できます。
ネットワークパスグループ中で互いを代替するパスは、同じネットワークに接続します。たとえば、Ethernet コントローラは同じサブネットに接続します。
複数の物理ネットワーク接続があっても、一度に有効にできるコントローラは 1 つだけです。有効にできるすべての代替パスに影響を与えることなく (DR Detach 操作などの) DR 操作を実行できるように、コントローラは異なるシステムボード上に必要です。
この章では、有効な代替パスを切り替える操作方法について説明します。
メタネットワークインタフェース名は、代替パスが属しているネットワークの種類から派生的に生成されます。Ethernet メタネットワークインタフェース名の形式は、metherx で、x はインスタンス番号です (たとえば、mether0) 。FDDI メタネットワークインタフェース名の形式は、 mfddix で、x はインスタンス番号です (たとえば、mfddi0) 。
メタネットワークインタフェースの作成では、同じメディアの種類のネットワークインタフェースを 2 つ使用する必要があります。たとえば、hme0 と qfe2、あるいは nf0 と nf1 を組み合わせることはできますが、hme0 と nf1 を組み合わせることはできません。 以下に例を示します。
ネットワークコントローラ hme0 と qfe1 は、同じ Ethernet サブネットに接続されていると見なします。メタネットワーク mether0 はこれら 2 つのコントローラを含むことができます。Ethernet コントローラの場合は、同じサブネット上であれば、hme、qfe、le などの種類を任意に組みあわせて混在させることができます。
FDDI のネットワークはシングルアタッチステーション型 (SAS) またはデュアルアタッチステーション型 (DAS) のどちらの構成にもすることができます。メタネットワークインタフェースの作成では、SAS と DAS 構成を混在させることができます。
この操作を主ネットワークに対して実行しないでください。主ネットワークを代替パスにする場合は、「主ネットワークインタフェースの代替パスの設定」を参照してください。
-c オプションを指定した apnet(1M) コマンドを実行します。
# apnet -c -a hme0 -a qfe2 # apconfig -N -u メタネットワーク: mether0 U 物理デバイス: hme0 A qfe2
apnet(1M) コマンドによって、ネットワークパスグループと hme0 と qfe2 という 2 つの物理デバイスに対するメタネットワークインタフェース名 mether0 が作成されます。
apconfig(1M) コマンドは、データベースにある未確定のネットワークエントリを一覧表示します。
-N は、ネットワークデータベースエントリを一覧表示することを指定します。
-u は、未確定のエントリを表示することを指定します。
手順 1 で示されたネットワークパスグループで問題がなければ、abdb(1M) コマンドを実行してエントリを確定します。
# apdb -C # apconfig -N メタネットワーク: mether0 物理デバイス: hme0 A qfe2
apdb -C コマンドによって、データベースエントリが確定されます。
apconfig -N コマンドは、データベースにある確定済みのネットワークエントリを表示します。
ここで表示される一覧は手順 1 の一覧とほぼ同じですが、mether0 に続く U が表示されません。
パスグループの両方のメンバーの直接使用をすべて停止します (ifconfig (1M) を参照)。
物理インタフェースが現在構成されている場合は、その物理インタフェースを構成解除します。ただし、以下の場合を除きます。
主ネットワークインタフェースではない。
コマンドを実行する際にメタネットワークを構成するために使用するインタフェースではない。
設定を解除しようとするインタフェースが主ネットワークインタフェースであるか、コマンドを実行する際にメタネットワークを構成するために使用するインタフェースである場合は、「主ネットワークインタフェースの代替パスの設定」のいずれかの手順に従ってください。
以下の例のように、物理インタフェースの設定解除が必要な場合もあります。
# ifconfig hme0 down unplumb
通常、ネットワークインタフェースはシステム起動中に /etc/hostname.xxxx ファイルによって構成されます (xxxx は hme0 などのインタフェース名です)。このファイルには、そのインタフェースに対応する IP アドレスかホスト名が記述されています。代替パスを設定した全インタフェースの /etc/hostname.xxxx ファイルを削除するかファイル名を変更する必要があります。これは、代替パスの直接的な使用を避けるためです。
IPv6: AP では、hostname.xxxx が使用されている場所では、すべて hostname6.xxxx ファイルを使用できます。使用中のシステムで IPv4 および IPv6 を両方使用している場合は、各ファイルのエントリを互いに一致させる必要があります。IPv6 の詳細は、『Solaris のシステム管理 (第 3 巻)』を参照してください。
システムの再起動時に構成するすべてのメタネットワークに対して、/etc/hostname.metherx (/etc/hostname.mether0 など)ファイルを作成します。
このファイルには、メタネットワークの IP アドレスまたはインタフェースのホスト名を記述します。ファイルは、ファイル名を変更することで作成します。
# mv /etc/hostname.hme0 /etc/hostname.mether0
ネットワークインタフェースの正常な動作状態として、使用中は設定され、使用されていないときは設定が解除されます。ネットワークインタフェースを /etc/hostname.* によって自動的に構成する場合、インタフェースはこれらの状態のどちらかになっています。ネットワークインタフェースを手動で構成する場合、ネットワークインタフェースを設定したままにしておくことができます。しかし、これは正常な動作モードではないので、ネットワークインタフェースがこの状態のまま放置されることはありません。
AP ネットワーク構成の間は、メタネットワークをこの状態にしないでください。
ネットワークメタデバイスは、同じ種類の他のネットワークメタデバイスすべてのインタフェースが設定または設定解除された状態になっている場合にだけ削除できます。この条件にない場合は、AP が削除要求を無視します。また、構成によっては次の警告メッセージが表示されます。
WARNING:mnf_setphyspath: APUNSET busy WARNING:ap_db_commit: mfddi3 not deleted, metadevice returned error 16
FDDI を使用している場合、メタネットワークには一意のメディアアクセス制御識別子 (MACID : Media Access Control Identifier) を指定する必要があります。
MACID は、ifconfig(1M) コマンドの ether パラメタによって設定されます。最初に、各代替パスの MACID を検査してください。MACID を検査するには、各代替パスを起動し、ether フィールドを調べます。その後、どの代替パスとも異なる MACID を作成します。
MACID の割り当ては、IEEE Std. 802-1990 および 1992 年 7 月 の RFC 1340「Assigned Numbers」に記述されています。AP ネットワークインタフェース用の MACID を生成するときは、新規の 48 ビットハードウェアアドレスを IEEE Standards Office, 345 East 47th Street, New York, N.Y. 10017 から取得する必要があります。ただし、メタインタフェースの代替要素のうち、既存の MACID の最初のバイトに 2 を加算して番号を「作成」することができます。たとえば、8:0:20:xx:xx:xx は、A:0:20:xx:xx:xx となります。番号を作成した後、作成したアドレスを正当に使用するハードウェアが同じサブネット上にないことを確認することが重要です。
#!/sbin/sh /sbin/ifconfig mfddi0 ether A:0:20:68:6d:62
S19macid を作成したら、chmod を使用して 744(rwxr--r--) に設定します。
メタネットワークの MACID は、メタネットワークの有効な物理インタフェースを構成するために使用されます。インタフェースの AP 切り替えと DR ボード挿入アクティビティを組み合わせるとき、ネットワーク上での MACID の重複を避けるため、メタネットワークの MACID を使用する必要があります。
メタネットワークは、デフォルトでは、起動時に有効な代替パスの MACID に設定されます。MACID が起動時に適切に設定されるようにするには、スーパーユーザーで、以下のような /etc/rcs.d/S19macid を作成します。
#!/sbin/sh /sbin/ifconfig mfddix ether mfddix_macid
mfddix は、正しいメタネットワークデバイス番号に置き換えます (apconfig -N を使用して取得)。
mfddix_macid は、実際の Ethernet 番号に置き換えます。
メタネットワークを通常の方法で、ただし物理ネットワーク名の代わりにメタネットワーク名を使用して起動します。これは、マシンを再起動するか、以下の例のようにネットワークを手動で構成することで実行できます。
# ifconfig mether0 plumb # ifconfig mether0 inet 136.162.65.30 up netmask + broadcast + Setting netmask of mether0 to 255.255.255.0 # ifconfig -a lo0: flags=849<UP,LOOPBACK,RUNNING,MULTICAST> mtu 8232 inet 127.0.0.1 netmask ff000000 mether0: flags=843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST> mtu 1500 inet 136.162.65.30 netmask ffffff00 broadcast 136.162.65.255 ether 0:0:be:0:8:c5
この後、/dev/mether といったデバイスノードを介して snoop(1M) などの Solaris コマンドを使用した ネットワークへのアクセスができます。
ネットワークにトラフィックがあるときでも、ネットワークパスグループを切り替えることができます。
apconfig(1M) コマンドを以下のように実行します。
# apconfig -P mether0 -a hme2 # apconfig -N メタネットワーク: mether0 物理デバイス: hme0 hme2 A
-P オプションはパスグループを指定します。
-a は有効にする代替パスを指定します。
上記の表示では、hme2 の後に A が表示されていますが、これは有効な代替パスが hme2 に切り替えられたことを示します。
切り替え操作を確定する必要はありません。
ifconfig コマンドで対応するメタネットワークのすべての使用を削除してから、-d オプションを指定した apnet(1M) コマンドを実行します。
# ifconfig mether0 down unplumb # apnet -d mether0 # apconfig -N メタネットワーク: mether0 D 物理デバイス: hme0 hme2 A
apconfig -N コマンドによって表示される一覧中で、mether0 の後に D が表示されています。これは、このパスグループの削除が記録されたことを示しています。
-C オプションを指定した apdb(1M) コマンドを実行して、データベース内のエントリを確定します。
# apdb -C # apconfig -N #
apconfig -N コマンドを実行しても何も表示されません。これは、ネットワークパスグループ (以前にあった唯一のパスグループ) が削除されたことを示します。
削除を確定する前なら、削除の取り消しができます。削除を取り消すには、 apnet -z コマンドを使用して、以前に指定したものと同じメタネットワークインタフェースを指定します。
apnet -m -r または apnet -m -a コマンドが実行されると、AP は現在のパスグループ構成を削除されるものとして記録し、新たな未確定のパスグループ定義を作成します。
apdb -C コマンドによってデータベースの変更が一度確定されると、新しい定義が古い定義に置き換わります。
下記の「メタネットワークを構成解除する」の説明に従って、/etc/hostname.metherx ファイルを削除します。
以下の手順では、マシンの再起動が必要になります。マシンを再起動できない場合、以下の手順は行わないでください。
IPv6: すべての例で、hostname.xxxx は hostname6.xxxx に置き換えてください。
主ネットワークインタフェース名を確認します (この例では mether0)。
# cat /etc/nodename eng2 # cat /etc/hostname.mether0 eng2 #
hostname.xxxx は、ネットワークが起動時に自動的に構成されるように名前を変更します。
# mv /etc/hostname.mether0 /etc/hostname.qfe0
再起動します。
以下の手順では、マシンの再起動が必要になります。マシンを再起動できない場合、以下の手順は行わないでください。
IPv6: すべての例で、hostname.xxxx は hostname6.xxxx に置き換えてください。
主ネットワークインタフェース名を確認します (この例では qfe0)
# cat /etc/nodename eng2 # cat /etc/hostname.qfe0 eng2 #
hostname.xxxx は、ネットワークが起動時に自動的に構成されるように名前を変更します。
# mv /etc/hostname.qfe0 /etc/hostname.mether0
再起動します。
Sun Enterprise サーバーとネットワーク上の他のマシンとの間の主ネットワークインタフェースは、そのサーバーのホスト名に関連付けられたアドレスを保持するインタフェースです。主ネットワークを特定するための方法の 1 つは、/etc/nodenameファイルにあるホスト名と一致するホストが記述された /etc/hostname.metherx ファイルを見つけることです。対応する metherx ネットワーク (たとえば mether0) が主ネットワークです。
主ネットワークの代替パスを設定することができます。主ネットワークは、起動時に自動切り替えが可能な唯一のネットワークインタフェースです。起動プロセス中に主ネットワークの有効な代替パスに障害が発生すると、システムがそのネットワークの正常な代替パスを見つけようとします。
代替パスが設定されたネットワークを構成する場合、メタネットワーク上にあるドライバが使用中のうちはメタネットワークを構成しないでください。
現在使用中のネットワークに AP を構成するとき、物理インタフェースの構成を削除して、AP インタフェースを設定する間の移行時間は、Sun Enterprise サーバーに対するネットワークサービスの提供が途切れることになります。
移行には、以下の操作のどれかを実行する必要があります。望ましい操作から順に記述します。
適切な AP データベースエントリを作成して、新しい /etc/hostname.xxx ファイルを作成し、対応する /etc/hostname.xxx ファイルを削除 (またはファイル名を変更) した後、Sun Enterprise サーバーを再起動します。この操作の詳細な例は、次の「現在のネットワークに対して AP を構成する」を参照してください。
Sun Enterprise サーバー上の移行を実行するスクリプトファイルを設定します。
AP 下で起動しているネットワークインタフェースでネットワークサービスが提供されない場合は、Sun Enterprise サーバーに他のネットワークインタフェースからログインし、コマンドを発行できるようにします。
以下に、現在使用している主ネットワークに対して AP を構成するときの標準例を示します。この例では、eng5 という名前の Sun Enterprise サーバーが mether0 上に主ネットワークインタフェースを持ち、qfe0 と hme2 で構成されるメタネットワークインタフェースを設定するものとします。どのネットワークインタフェースでメタネットワークを構成すればよいのか分からない場合は、snoop -d を使用して、同じサブネット上に存在する構成済みのネットワークを調べます。
以下の手順では、マシンの再起動が必要になります。マシンを再起動できない場合、以下の手順は行わないでください。
IPv6: すべての例で、hostname.xxxx は hostname6.xxxx に置き換えてください。
主ネットワークインタフェースが qfe0 であることを確認します。
# cat /etc/nodename eng5 # cat /etc/hostname.qfe0 eng5
新しいネットワークパスグループを作成し、変更内容を確定します。
# apnet -c -a qfe0 -a hme2 # apdb -C
AP データベース内の確定済みネットワークエントリを表示して、新しいパスグループを確認します。
# apconfig -N メタネットワーク: mether0 物理デバイス: qfe0 A hme2
hostname.xxxx は、ネットワークが起動時に自動的に構成されるように名前を変更します。
# mv /etc/hostname.qfe0 /etc/hostname.mether0
マシンを再起動して物理ネットワークインタフェースを停止し、メタネットワークインタフェースを起動します。
以下の手順では、マシンの再起動が必要になります。マシンを再起動できない場合、以下の手順は行わないでください。
IPv6: すべての例で、hostname.xxxx は hostname6.xxxx に置き換えてください。
主ネットワークインタフェース名を確認します (この例では mether0)
# cat /etc/nodename eng5 # cat /etc/hostname.mether0 eng5
メタネットワークインタフェースの構成ファイルの名前を変更します。
# mv /etc/hostname.mether0 /etc/hostname.qfe0
再起動します。
# apnet -d mether0 # apdb -C # apconfig -N #
以下の手順では、マシンの再起動が必要になります。マシンを再起動できない場合、以下の手順は行わないでください。
IPv6: すべての例で、hostname.xxxx は hostname6.xxxx に置き換えてください。
主ネットワークインタフェース名を確認します (この例では mether0)
# cat /etc/nodename eng5 # cat /etc/hostname.mether0 eng5
hostname.xxxx は、ネットワークが起動時に自動的に構成されるように名前を変更します。
# mv /etc/hostname.mether0 /etc/hostname.qfe0
再起動します。
以下の手順では、マシンの再起動が必要になります。マシンを再起動できない場合、以下の手順は行わないでください。
IPv6: すべての例で、hostname.xxxx は hostname6.xxxx に置き換えてください。