Solaris 8 のインストール (上級編)

第 20 章 フラッシュに関するリファレンス情報

フラッシュインストール機能では、フラッシュアーカイブの管理および制御のためのツールを提供します。アーカイブを作成後、アーカイブ情報を抽出する、1 つのアーカイブを複数のセクションに分割する、複数のアーカイブセクションを結合するなどの作業が行えます。

フラッシュアーカイブのセクション

フラッシュアーカイブには、少なくとも 3 つのセクションが含まれます。これらのセクションは、アーカイブ識別情報と、クローンシステムにインストールされるマスターシステムからコピーされた実際のファイルから構成されています。

  1. cookie セクション - フラッシュアーカイブの先頭には、ファイルをフラッシュアーカイブとして識別する cookie が含まれます。アーカイブが有効であるためには、この cookie が存在する必要があります。

  2. identification セクション - 2 つ目のセクションには、アーカイブについての識別情報を示す値が指定されたキーワードが含まれます。

  3. ユーザー定義のセクション - identification セクションの後には、ユーザーがセクションを定義して挿入できます。フラッシュアーカイブは、ユーザーが挿入したセクションは処理しません。ユーザー定義のセクションは、行単位で作成し、復帰改行 (ASCII 0x0a) 文字で終了させる必要があります。個々の行の長さに制限はありません。ユーザー定義のセクションにバイナリデータを含める場合は、base64 またはそれに類似したアルゴリズムを使用してコード化する必要があります。

    ユーザー定義のセクションの名前は「X」で始める必要がありますが、その後には改行、等号、空文字、フォワードスラッシュ (/) 以外の任意の文字を続けることができます。たとえば、X-department はユーザー定義のセクション名として有効です。

  4. archive セクション - archive セクションには、マスターシステムから保存されたファイルが含まれます。

フラッシュのキーワード

キーワードと値は 1 つの等号で区切られ、1 行に 1 キーワードを指定します。個々の行の長さに制限はありません。キーワードは、大文字と小文字を区別する必要があります。

一般的なキーワード

フラッシュアーカイブの各セクションの初めと終わりは、section_beginsection_end キーワードで定義されます。section_beginsection_end キーワードの値を以下の表に示します。

表 20–1 section_beginsection_end キーワードの値

アーカイブのセクション 

section_beginsection_end キーワードの値

cookie セクション

cookie

identification セクション 

identification

ユーザー定義のセクション 

section_name

archive セクション 

archive

identification セクションのキーワード

この節では、identification セクションで使用されるキーワードと、これらに定義できる値について説明します。

次の表は、アーカイブについて記述するキーワードを説明しています。

表 20–2 identification セクションのキーワード

キーワード 

値の定義 

content_name (必須)

フラッシュアーカイブの展開ユーティリティは、content_name キーワードの値を使用してアーカイブを識別します。この値は、256 文字以内で指定する必要があります。

content_name キーワードの値は、アーカイブの選択と抽出プロセスの間ユーザーに提示されることがあるため、この値にアーカイブの機能と目的を記述すると便利です。

creation_date

creation_date キーワードの値は、アーカイブが作成された日時を示す、テキスト形式のタイムスタンプです。値は、YYYYMMDDhhmmss 形式にしてください。たとえば、20000131221409 は、2000 年 1 月 31 日、22 時 14 分 09 秒 を示します。作成日を指定しない場合、デフォルトの日付がグリニッジ標準時 (GMT) で設定されます。

creation_master

creation_master キーワードの値は、アーカイブの作成に使用したマスターシステムの名前です。creation_master に値を指定しない場合、flarcreate には uname -n が出力するシステム名が設定されます。

content_type

content_type キーワードの値は、アーカイブのカテゴリを指定するために定義します。フラッシュアーカイブの展開ユーティリティは、展開中に content_type キーワードの値を表示します。

content_description

content_description キーワードの値は、アーカイブの内容を記述するために定義します。このキーワードの値の長さに制限はありません。

content_author

content_author キーワードの値は、アーカイブの作成者を示すために定義します。作成者のフルネームと電子メールアドレスを含めることをお勧めします。

content_architectures

content_architectures キーワードの値は、アーカイブがサポートするカーネルアーキテクチャをコンマで区切って指定したリストです。フラッシュアーカイブを作成すると、このアーカイブによって content_architectures キーワードの値が生成されます。

アーカイブにこのキーワードが含まれる場合、フラッシュアーカイブ展開ユーティリティは、アーカイブがサポートするアーキテクチャのリストに照らしてクローンシステムのカーネルアーキテクチャの検証を行います。アーカイブがクローンシステムのカーネルアーキテクチャをサポートしていない場合、展開は失敗します。このキーワードが存在しない場合、展開ユーティリティはクローンシステムのアーキテクチャの検証を行いません。 

フラッシュアーカイブで定義されるキーワードに加えて、ユーザー自身でもキーワードを定義できます。フラッシュアーカイブはユーザー定義のキーワードを無視しますが、identification セクションを処理しユーザー定義のキーワードを使用するスクリプトまたはプログラムを提供できます。ユーザー定義のキーワードの名前は「X」で始まる必要がありますが、改行、等号、空文字以外の任意の文字を含むことができます。たとえば、X-department はユーザー定義のキーワードとして有効です。

フラッシュのコマンド

フラッシュのコマンドは、フラッシュアーカイブの作成と管理に使用します。

flarcreate

flarcreate コマンドは、マスターシステムからフラッシュアーカイブを作成するために使用します。このコマンドは、マスターシステムがマルチユーザーモードまたはシングルユーザーモードで稼働している時に使用できます。また、flarcreate は、マスターシステムが Solaris 8 DVD または Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD からブートしている時、あるいは Solaris 8 SOFTWARE CD および Solaris 8 LANGUAGES CD のネットイメージからブートしている時にも使用できます。フラッシュアーカイブを作成する時は、マスターシステムはできるだけ静的な状態にしておく必要があります。このコマンドの構文は次のとおりです。

flarcreate -n name [-R root] [-S] [-H] [-c] [-x excl ude] [-t [-p posn][-b blocksize]] [-i date] [-m [-u section [-d dir]] [-f file_list] [-F] [-U key=val] ] [-a author] [-e descr:-E desc r_file] [-T type]

このコマンド行で、path は、アーカイブファイルを保存するディレクトリです。filename は、アーカイブファイルの名前です。パスを指定しない場合、flarcreate はアーカイブファイルを現在のディレクトリに保存します。

表 20–3 flarcreate のコマンド行オプション

オプション 

説明 

必須オプション 

-n name

このオプションの値は、アーカイブの名前です。指定する name は、content_name キーワードの値になります。

圧縮用のオプション 

-c

compress(1) を使用してアーカイブを圧縮します。

ディレクトリとサイズを指定するオプション 

- R root

root のファイルシステムツリーからアーカイブを作成します。このオプションを指定しない場合、flarcreate/ ファイルシステムからアーカイブを作成します。

-S

アーカイブにサイズ情報を含めません。 

-x exclude

ディレクトリ exclude をアーカイブの対象外にします。ファイルシステムとして -R root を指定すると、ディレクトリ exclude へのパスは root からの相対パスとみなされます。

-H

ハッシュ識別子を生成しません。 

ユーザー定義のセクションで使用されるオプション 

-u section

ユーザー定義のセクションを含めます。ユーザー定義のセクションを複数含めるには、セクション名を空白で区切ったリストにします。 

-d dir

dir から、-u で指定したセクションを取り出します。

テープアーカイブで使用されるオプション 

-t

テープデバイス上にアーカイブを作成します。filename 引数は、テープデバイスの名前です。

-p posn

-t オプションとの併用でのみ使用できます。flarcreate がアーカイブを格納するための、テープデバイス上の位置を指定します。このオプションを指定しない場合、flarcreate はテープの現在の位置にアーカイブを配置します。

-b blocksize

flarcreate がアーカイブの作成時に使用するブロックサイズを指定します。ブロックサイズを指定しない場合、flarcreate はデフォルトのブロックサイズ 64k を使用します。

ファイルを指定するためのオプション 

-f file_list

file_list に示されるファイルをアーカイブに追加します。

file_list ファイルでは、1 ファイルを 1 行で表す必要があります。各ファイルへのパスは、代替ルートディレクトリからの相対パスまたは絶対パスです。

file_list の値として「-」を指定すると、ファイルのリストとして stdin の出力が使用されます。「-」を指定すると、アーカイブのサイズは計算されません。

-F

file_list に示されるファイルだけを使ってアーカイブを作成します。

アーカイブ識別のためのオプション 

-U key=val

identification セクションに、ユーザー定義のキーワードと値を含めます。 

-i date

date は、creation_date キーワードの値として使用されます。date を指定しない場合、flarcreate は現在のシステム日時を使用します。

-m master

master は、creation_master キーワードのアーカイブを作成したマスターシステムの名前として使用されます。master を指定しない場合、flarcreateuname -n が出力するシステム名を使用します。

-e descr

descr は、content_description キーワードの値として使用されます。-E オプションを使用する場合はこのオプションを使用できません。

-E descr_file

ファイル descr_file から content_description キーワードの値を取得します。-e オプションを使用する場合はこのオプションを使用できません。

-a author

author は、identification セクション内の content_author キーワードの値として使用されます。作成者を指定しない場合、flarcreate は identification セクションの content_author キーワードを含めません。

-T type

type は、content_type キーワードの値として使用されます。タイプを指定しない場合、flarcreatecontent_type キーワードを含めません。

flar

flar コマンドは、アーカイブの管理に使用します。このコマンドで行うことができる作業は以下のとおりです。

アーカイブからの情報の抽出

作成済みのアーカイブについての情報を取得するには、-i または info オプションを指定して flar コマンドを使用します。このコマンドの構文は次のとおりです。

flar -i:info [- l] [-k keyword] [- t [-p posn] [- b blocksize]] filename

表 20–4 flar -i (flar info) のコマンド行オプション

オプション 

説明 

-k keyword

キーワード keyword の値のみを返します。

-l

アーカイブセクション内のすべてのファイルをリスト表示します。 

アーカイブの分割

フラッシュアーカイブを複数のセクションに分割するには、-s または split オプションを指定して flar コマンドを使用します。flar コマンドは、現在のディレクトリまたは指定されたディレクトリ内に各セクションを個々のファイルに分けてコピーします。ファイルには、セクション名からとった名前が付けられます。たとえば、cookie セクションは、cookie と名付けられたファイルに保存されます。flar コマンドでは、1 つのセクションだけを保存するように指定できます。このコマンドの構文は次のとおりです。

flar -s:split[- d dir] [-u section] [-f archive] [-S section] [-t [-p posn] [-b blocksize]] filename

表 20–5 flar -s (flar split) のコマンド行オプション

オプション 

説明 

-d dir

コピーするセクションを、現在のディレクトリからではなく dir から取得します。

-u section

このオプションを使用しない場合、flar は現在のディレクトリ内のすべてのセクションをコピーします。このオプションを使用した場合、flarcookie セクション、identification セクション、archive セクション、および section セクションをコピーします。1 つのセクション名を指定することも、あるいは空白で区切って複数のセクション名を指定することも可能です。

-f archive

アーカイブセクションを、archive という名前のファイルに入れるのではなく、archive というディレクトリに抽出します。

-S section

アーカイブから section と名付けられたセクションだけをコピーします。

アーカイブの結合

個々のセクションからフラッシュアーカイブを作成するには、-c または combine オプションを指定して、flar コマンドを使用します。各セクションは、セクション名を名前に持つ個々のファイル内にあると見なされます。少なくとも、cookie (cookie セクション)、identification (identification セクション)、および archive (archive セクション) の 3 つのファイルが存在する必要があります。archive がディレクトリである場合、flar コマンドは、結合されたアーカイブに含める前に、cpio を使用してこれをアーカイブします。identification セクションにアーカイブの圧縮が指定されている場合、flar は新しく結合されたアーカイブのコンテンツを圧縮します。

flar -c:combine [-d dir] [-u section] [-t [-p posn] [-b blocksize]] filename


注 –

どのセクションについても検証は何も行われません。特に、identification セクション内のどのフィールドについても、検証や更新は行われません。


表 20–6 flar -c (flar combine) のコマンド行オプション

オプション 

説明 

-d dir

結合するセクションを、現在のディレクトリからではなく dir から取得します。

-u section

このオプションを指定しない場合、flar は現在のディレクトリ内のすべてのセクションを結合します。このオプションを使用した場合、flarcookie セクション、identification セクション、archive セクション、および section セクションのみを結合します。1 つのセクション名を指定することも、あるいは空白で区切って複数のセクション名を指定することも可能です。