ONC+ 開発ガイド

第 1 章 ONC+ 入門

この章では、Sun のオープンシステム分散コンピューティング環境である ONC+ について簡単に紹介します。ONC+ は、異機種分散コンピューティング環境において分散アプリケーションを実装する開発者が利用できるサービスの中心に位置づけられるものです。ONC+ には、クライアント / サーバネットワークを管理するツールも含まれています。

図 1-1 は ONC+ の上部に統合されているクライアント / サーバアプリケーションと、それらが低レベルのネットワークプロトコルの上部に位置づけられている様子を示しています。

図 1-1 ONC+ 分散コンピューティングプラットフォーム

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ONC+ の概要

ONC+ は、さまざまな技術、サービス、およびツールから構成されています。旧バージョンの ONC サービスとは下位互換性があり、相互に運用することができます。この節では主な構成要素について説明します。このマニュアルではプログラミング機能を必要とする技術について扱っています。

TI-RPC

トランスポート独立遠隔手続き呼び出し (TI-RPC) は、UNIX System V リリース 4 (SVR4) の一部として Sun と AT&T により開発されました。分散プログラムの 1 つのバイナリバージョンを複数のトランスポート上で実行することで、RPC アプリケーションをトランスポートに依存しないようにします。以前はトランスポートに固有な RPC であったため、コンパイル時にトランスポートが結合され、プログラムを再構築しないかぎりそのアプリケーションは他のトランスポートでは使用できませんでした。TI-RPC を使用すると、システム管理者がネットワーク構成ファイルを更新し、プログラムを再起動すれば、アプリケーションは新しいトランスポートを使用できます。バイナリアプリケーションを変更する必要はありません。

XDR

外部データ表現 (XDR: External Data Representation) はアーキテクチャに依存しないデータ表現方法です。データのバイト順序、データ型のサイズ、表現方法、異なるアーキテクチャ間のデータの並び方などの違いを解決します。XDR を使用するアプリケーションは、異機種ハードウェアシステム間でデータを交換できます。

NFS

NFS は Sun の分散コンピューティングファイルシステムであり、異機種ネットワーク上の遠隔ファイルシステムへの透過的なアクセスを提供します。NFS によりユーザは PC、ワークステーション、メインフレーム、そしてスーパーコンピュータ間でファイルを共有できます。同じネットワークに接続されていれば、ファイルはユーザのデスクトップ上にあるかのように表示されます。NFS 環境では Kerberos 認証、マルチスレッド、ネットワークロックマネージャ、自動マウンタなどの機能を利用できます。

NFS はプログラミング機能を持っていないため、このマニュアルでは説明していません。NFS V.3 の仕様については、anonymous ftp で入手できます。詳細は 「関連マニュアル 」を参照してください。

NIS+

NIS+ は Solaris 上において大規模な組織で使用できるネームサービスです。ホスト名、ネットワークアドレス、ユーザ名について、拡張性があり、また安全な基本情報を提供します。ネットワーク資源の追加、削除、再配置をサーバで行うことによって、大規模なマルチベンダのクライアント/サーバネットワークを簡単に管理できるように設計されています。NIS+ のデータベース情報を変更すると、それはネットワーク全体の複製サーバへ自動的にすぐに伝達されます。これによってシステムの稼働時間や性能に影響を与えません。NIS+ にはセキュリティ機能が組み込まれています。権利のないユーザやプログラムは、ネームサービス情報を読み取ったり、変更したり、破壊することはできません。