Solaris 2.6 情報ライブラリ (SPARC 版)

OS / ネットワークの日本語機能

PCK (PC 漢字コード) のサポート

Solaris 2.6 では、従来の日本語 EUC に加えて PCK (シフト JIS あるいは MS 漢字コード) で日本語を扱う環境を新たに提供します。PCK は、Microsoft が Windows3.1 で規定したマイクロソフト標準キャラクタセットと同等の文字集合およびエンコーディングを提供するものです。また、PCK は、従来の Solaris リリースで MS 漢字コード (または シフト JIS) と呼ばれていたものに、ユーザー定義文字やベンダー定義文字を加えたもので、JIS X 0201、JIS X 0208 の 1-84 区 (13 区除く) までに関しては従来のものと互換性があります。

ja_JP.PCK ロケールとその意義

従来、Solaris は EUC (拡張 UNIX コード) をベースとした国際化機能をもとに日本語機能を提供してきましたが、Solaris 2.5.1 で、新たに CSI と呼ばれる EUC エンコーディングに依存しない機構を導入しました。これにより、Solaris 2.5.1 の「PC 漢字コード開発キット」(以降、PCK-DK とします) をインストールすることで、従来の EUC に加えて PCK でも各ライブラリの国際化機能を用いて、PCK をサポートするアプリケーションが開発できるようになりました。 Solaris 2.6 では、サポートするコマンド、ライブラリ、デスクトップなどをさらに追加することにより、日本語 EUC とほぼ同様な作業環境を提供します。これにより Solaris CDE の起動時から ja_JP.PCK ロケールで使用することが可能になりました。

ja_JP.PCK ロケールを使用する利点は、たとえばパソコンなどとの混在環境で使用する場合にあります。従来はパソコンなどにデータを渡す場合、漢字コードが異なるので漢字コードの変換作業が必要でした。しかし、ja_JP.PCK ロケールでは Solaris 上で PCK が直接扱えるため、この作業が不要になります。ja_JP.PCK ロケールを選択することにより、パソコンでネットワークを組んだ環境に新たに Solaris を導入することなどが、スムーズにできるようになります。

ただし、ja_JP.PCK ロケールのサポートは、既存の ja ロケール環境から ja_JP.PCK ロケール環境への移行を積極的におすすめする主旨のものではありません。ja_JP.PCK ロケールの環境にはいくつかの制限事項があります。さらに、Sun が提供する別パッケージ製品および多くのサードパーティのアプリケーションでは、ja_JP.PCK ロケールはサポートされていませんので、ユーザーのシステム環境で上記の ja_JP.PCK ロケールを使用する利点が特にない場合は、ja ロケールを使用することをおすすめします。 詳細については、『JFP ユーザーズガイド』を参照してください。

新しい文字コード変換規則

Solaris 2.6 から、『TOG (The Open Group) 日本ベンダ協議会推奨日本語 EUC・シフト JIS コード変換仕様』に基づく新しいコード変換規則が導入されました。

この変換規則に従うものは次の通りです。

日本語 PostScript プリンタのサポート

Solaris 2.6 では、LP 印刷サービスを使用して、日本語 PostScriptプリンタで日本語テキストを印刷することができます。従来、jtops を用いてクライアント側で PostScript に変換することにより、日本語テキストの印刷ができましたが、Solaris 2.6 から、サーバー側で変換する機能が加わりました。

Solaris 2.6 では日本語 PostScript プリンタをサポートするために次のファイルを提供します。

JIS X 0212、ユーザー定義文字の印刷サポート

Solaris 2.6 では、LP 印刷サービスを使用して、日本語 PostScriptプリンタ、ドットマトリックス漢字プリンタ (EPSON VP-5085、 NEC PC-PR201)、日本語ページプリンタ (Canon LASERSHOT) で JIS X 0212、ユーザー定義文字を含む日本語テキストを印刷できるようになりました。JIS X 0212、ユーザー定義文字を印刷するためには、そのフォントを正しくインストールする必要があります。

日本語 PostScript プリンタを使用する場合

ユーザー定義文字用のフォントには sdtudctool が出力する Type1 フォント、JIS X 0212 のフォントには SUNWjcs3f に含まれる Type1 フォントだけが使用できます。

ドットマトリックス漢字プリンタ、日本語ページプリンタを使用する場合

JIS X 0212 のフォントには SUNWjxcft に含まれる 24 ドットの PCF フォントだけが使用できます。

新しい STREAMS モジュールの導入、およびそれに伴う tty 端末制御の改善

ja_JP.PCK ロケールにおいて tty 端末制御を補佐する STREAMS モジュール (jconvrs) が導入されました。従来の STREAMS モジュールと協調して回線制御機能を提供するほか、シリアル回線でバイナリ転送などを行う際は自動的にコード変換機能を ON/OFF します。 またメモリー使用効率が約 50% 向上しています。これに同期して、従来のモジュール (jconv7/jconv8/jconvs) も変更されています。

iconv(1)/iconv(3) の新機能

JIS X 0208 を扱うものでは、更新番号を表すエスケープシーケンスに対応しました。 UTF-8 と日本語 EUC または PC 漢字コードとの変換をサポートしました。IBM 漢字コードとの変換では JIS X 0208 の 1983 年度版に対応しました。

その他のコード変換ユーティリティ

jistoeuc(1) など、ISO-2022-JP 準拠のエンコーディングを入力するユーティリティは、"ESC 2/4 2/8 F" 形式のエスケープシーケンスを正しく扱えるようになりました。

euctoibmj(1) など、IBM 漢字コードとの変換を行うユーティリティは、JIS X 0208 の 1983 年度版に対応しました。

ユーザー定義文字の登録のための日本語ロケールの再定義

日本語ロケールにあらかじめユーザー定義文字領域を定義するようになりました。このため、ユーザー定義文字登録時に必要だった日本語ロケールの再定義作業が不要になりました。