TCP/IP とデータ通信

IP アドレス指定方針の設定

サポートを予定しているマシンの数によって、このサイトでのネットワーク設定の現段階で行う決定実行のいくつかが影響を受けます。組織によっては、1 つの階または 1 つのビルの中にある数十台のスタンドアロンマシンから成る小さいネットワークが必要な場合もあります。逆に、複数のビルに散在する 1000 以上ものホストを持つネットワークの設定が必要な場合もあります。このような大きい配置の場合は、ネットワークをサブネットと呼ばれる小区分に細分することが必要になることもあります。予定されているネットワークのサイズは、次の事項に影響を与えます。

ネットワーク番号を入手し、IP アドレス指定方針を確立することは、ネットワーク管理の計画フェーズでの最も重要な作業の 1 つです。

IP アドレス番号のパーツ

TCP/IP を実行する各ネットワークは、それぞれ一意なネットワーク番号を持っていて、そのネットワーク上のすべてのマシンがそれぞれ一意な IP アドレスを持っていることが必要です。ネットワークを登録し、ネットワーク番号を入手するには、その前に、IP アドレスの構造を理解しておくことが重要です。

IP アドレスは、特定のマシンのネットワークインタフェースを一意なものとして識別する 32 ビットの番号です。IP アドレスは一般に 10 進数字で表され、ピリオドで区切った 4 つの 8 ビットフィールドの形式をとります。個々の 8 ビットフィールドは、それぞれ IP アドレスの 1 バイトを表します。このような形式で IP アドレスのバイトを表す方式を、「ドット化 10 進形式」と呼びます。

IP アドレスのバイトは、さらに、ネットワーク部とホスト部の 2 つの部分に分かれます。図 3-1 に、129.144.50.56 という典型的な IP アドレスの構成パーツを示します。

図 3-1 IP アドレス番号のパーツ

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ネットワーク部

ネットワーク部は、ネットワークに割り当てられている一意な番号を示します。これは、割り当てられているネットワーククラスも識別します。 図 3-1 では、ネットワーク部は IP アドレスの 2 バイトを占めています。

ホスト部

IP アドレスのこの部分は、管理者が各ホストに割り当てる番号です。この番号は、ネットワーク内でこのマシンを一意なものとして識別します。ネットワーク上の各ホストについて、アドレスのネットワーク部は同じで、ホスト部は違っていなければならないという点に注意してください。

サブネット番号 (オプション)

多数のホストを持つローカルネットワークは、いくつかのサブネットに分割されることがあります。ネットワークをサブネット化することにした場合は、サブネットにサブネット番号を割り当てる必要があります。IP アドレスのホスト番号部の一部のビットをネットワーク識別子として使用することで、IP アドレス空間の有効率を最大限にすることができます。ネットワーク識別子として使用した場合、アドレスの指定した部分がサブネット番号になります。サブネット番号は、ネットマスクを使って作成します。ネットマスクは、IP アドレスのネットワーク部とサブネット部を選択するビットマスクです (詳細は、「ネットワークマスクの作成」を参照してください)。

ネットワーククラス

ネットワーク上での IP アドレス指定に関する計画の第 1 ステップは、最も妥当なネットワーククラスを決定することです。それが済んだら、きわめて重要な第 2 のステップ、つまり、InterNIC アドレス指定機関からのネットワーク番号の入手に移ることができます。

現在、TCP/IP ネットワークには 3 つのクラスがあります。32 ビットのアドレス空間は、ネットワーク部のビット数が多かったり少なかったりするなど、クラスによって使い方が異なります。3 つのクラスとは、クラス A、クラス B、クラス C です。

クラス A ネットワーク番号

クラス A ネットワーク番号では、IP アドレスの最初の 8 ビットが「ネットワーク部」として使用されます。残りの 24 ビットは、下の 図 3-2 に示すように、IP アドレスのホスト部です。

図 3-2 クラス A アドレスのバイト割り当て

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クラス A ネットワーク番号の最初のバイトに割り当てられる値の範囲は、1 〜 127 です。たとえば、75.4.10.4 という IP アドレスがあるとします。最初のバイトの 75 という値は、このホストがクラス A ネットワーク内にあることを示しています。残りのバイトの 4.10.4 はホストアドレスを形成します。クラス A の番号の場合、InterNIC が割り当てるのは、最初の 1 バイトだけです。残りの 3 バイトをどのように使用するかは、そのネットワーク番号の所有者の自由です。クラス A のネットワークとして存在可能なのは 127 個だけです。この範囲内の各番号が、それぞれ最大 16,777,214 個のホストを収容できます。

クラス B ネットワーク番号

クラス B ネットワーク番号では、16 ビットがネットワーク番号に使用され、16 ビットがホスト番号に使用されます。クラス B ネットワーク番号の最初のバイトの値の範囲は、128 〜 191 です。129.144.50.56 の番号の場合、最初の 2 バイトの 129.144 は InterNIC により割り当てられるネットワークアドレスです。残りの 2 バイトの 50.56 はホストアドレスで、これはネットワーク番号の所有者が任意に割り当てることができます。図 3-3 に、クラス B のアドレスを示します。

図 3-3 クラス B アドレスのバイト割り当て

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一般に、クラス B は、多数のホストを備えたネットワークを持つ組織に割り当てられます。

クラス C ネットワーク番号

クラス C ネットワーク番号では、24 ビットがネットワーク番号に使用され、8 ビットがホスト番号に使用されます。クラス C ネットワーク番号は、ホスト数が少ない、つまり最大ホスト数が 254 台程度のネットワークに適しています。クラス C ネットワーク番号は、IP アドレスの最初の 3 バイトを占めます。ネットワーク番号の所有者が自由に割り当てることができるのは、4 番目のバイトだけです。図 3-4 に、クラス C アドレスのバイトを示します。

図 3-4 クラス C アドレスのバイト割り当て

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クラス C ネットワーク番号の最初のバイトの値の範囲は、192 〜 223 です。第 2 と第 3 のバイトの値の範囲は、どちらも 1 〜 255 です。典型的なクラス C アドレスは、たとえば 192.5.2.5 のようになります。最初の 3 バイトの 192.5.2 がネットワーク番号です。最後のバイト、つまり 5 がホスト番号です。

ネットワーク番号の管理

所属している組織に複数のネットワーク番号が割り当てられているか、またはサブネットを使用している場合は、組織内でネットワーク番号を割り当てる総括責任者 (人または部門) を指名してください。この責任者が、割り当てられたネットワーク番号のプールを管理する権限を保持し、ネットワーク、サブネット、ホスト番号を必要に応じて割り当てます。問題の発生を避けるために、組織内に重複したネットワーク番号や無秩序なネットワーク番号が生じることのないように注意してください。

IP アドレス指定方針の設計

ネットワーク番号を受け取ったら、IP アドレスのホスト部をどのように割り当てるかについて、計画を立てることができます。

表 3-1 は、IP アドレス空間がどのようにネットワークアドレス空間とホストアドレス空間に分かれるかを示しています。どのクラスについても、「範囲」の欄は、ネットワーク番号の最初のバイトの 10 進数値の範囲を示しています。「ネットワークアドレス」は、IP アドレスの中でネットワーク部の働きをするバイト数を示し、xxx が 1 バイトを表しています。「ホストアドレス」は、アドレスのホスト部として働くバイト数を示します。たとえばクラス A ネットワークアドレスの場合は、最初の 1 バイトがネットワーク番号で、残りの 3 バイトがホスト番号です。クラス C ネットワークの場合は、この関係が逆になります。

表 3-1 IP アドレス空間の区分

クラス 

範囲 

ネットワークアドレス  

ホストアドレス 

A

1 〜 127  

xxx

xxx.xxx.xxx

B

128 〜 191  

xxx.xxx

xxx.xxx

C

192 〜 223  

xxx.xxx.xxx

xxx

IP アドレスの最初のバイトの数値は、ネットワークがクラス A、B、C のどれであるかを示す値で、常に InterNIC が割り当てます。残りの 3 つのバイトの値の範囲は、どれも 0 〜 255 です。番号 0 と 255 は予約されています。ネットワーク管理者は、割り当てられているネットワーク番号に応じて、各バイトに 1 〜 254 の範囲内の番号を指定することができます。

表 3-2 は、IP アドレスのどのバイトがインターネットから割り当てられ、ホストへの割り当てが可能な各バイトにどの範囲の値を指定できるかを示しています。

表 3-2 使用できる番号の範囲

ネットワーククラス 

バイト 1 の範囲 

バイト 2 の範囲 

バイト 3 の範囲  

バイト 4 の範囲 

A

0 〜 127 

1 〜 254 

1 〜 254  

1 〜 254 

B

128 〜 191 

インターネットにより事前割り当て 

1 〜 254 

1 〜 254 

C

192 〜 223 

インターネットにより事前割り当て 

インターネットにより事前割り当て 

1 〜 254 

ネットワークインタフェースへの IP アドレスの適用法

「ネットワークインタフェース」 で説明したように、ネットワークに接続するには、コンピュータはネットワークインタフェースを少なくとも 1 つは備えていることが必要です。そして、各ネットワークインタフェースは、それぞれ一意な IP アドレスを持っていなければなりません。管理者がホストに与えた IP アドレスはそのホストのネットワークインタフェースに割り当てられます。このインタフェースは、一次ネットワークインタフェースと呼ばれることがあります。あるマシンに第 2 のネットワークインタフェースを追加した場合は、それにも一意な IP アドレスが必要です。第 5 章「ルータの構成」で説明したように、第 2 のネットワークインタフェースを追加すると、マシンの機能がホストからルータに変わります。ホストに第 2 のネットワークインタフェースを追加し、しかもルーティング機能を無効にした場合は、そのホストはマルチホームホストとみなされます。

/devices ディレクトリには、各ネットワークインタフェースのデバイス名、デバイスドライバ、関連のデバイスファイルが入っています。ネットワークインタフェースのデバイス名には、たとえば le0 または smc0 などがあります。これらは、よく使われる 2 つのイーサネットインタフェースのデバイス名です。


注 -

このマニュアルでは、イーサネットネットワークインタフェースを持つマシンを想定して説明を進めます。別のネットワークメディアを使用する予定の場合は、そのネットワークインタフェースのマニュアルの中の構成に関する情報を参照してください。