TCP/IP とデータ通信

第 11 章 PPP リンクの調整

この章には、第 9 章「PPP の構成」で述べた基本リンクに比べて少々特殊な PPP リンクを構成するために必要な情報を収めてあります。この章では、主として 2 つの種類の PPP リンクの構成方法について説明します。2 つの種類とは、動的ポイントツーポイントリンクを持つダイヤルインサーバと、仮想ネットワーク (これはマルチポイントリンクを使用します) です。章の終わりには、asppp.cf 構成ファイルで使用できるすべてのキーワードのリストを示してあります。

動的割り当て PPP リンクの構成

動的ポイントツーポイントリンクを持つダイヤルインサーバを使用するサイトでは、ポイントツーポイント通信の利点を最大限に活用することができます。この構成タイプについては、第 7 章「PPP の概要」で概説しました。この構成では、必要時提供方式で動的にポイントツーポイントリンクを割り当てる少なくとも 1 つのダイヤルインサーバと、リモートホストとの間で通信が行われます。この節では、図 11-1 に示すサンプル構成に基づいて説明を進めます。

図 11-1 リモートホストと動的リンクダイヤルインサーバのネットワーク

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各リモートホストは、標準のポイントツーポイントリンクを使ってダイヤルインサーバと通信します。しかし、図 9-1 に示したマルチポイントダイヤルインサーバとは違って、ダイヤルインサーバ mojave は、動的ポイントツーポイントリンクを介して呼び出し側ホストに接続されます。リモートホストのどれかが接続を確立しようとすると、サーバが使用可能なリンクを割り当てます。

動的リンクの基礎概念は、接続確立のたびにサーバがクライアントに IP アドレスを供給するというものです。接続を確立すると、使用可能な IP インタフェースをサーバがクライアントに割り当てます。その後、接続が継続している間、インタフェースのリモート IP アドレスがクライアントの IP アドレスになります。接続を終了すると、使用可能なインタフェースのプールに IP インタフェースが戻され、別の接続に使用できる状態になります。

動的リンクの構成には、リモートホスト対マルチポイントダイヤルインサーバの場合と同じ一般的な手順を用います。この手順については、「構成プロセスの概要」に説明があります。ただし、動的ポイントツーポイントリンクには独自の必要条件がいくつかあり、そのため構成に関係するファイルに対する修正のしかたも少々異なります。

動的割り当てリンクの場合のアドレス指定に関する必要事項

動的割り当て PPP リンクを使用する各マシンについて、/etc/inet/hosts ファイルにホスト情報を追加する必要があります。PPP エンドポイントの IP アドレスについては次の規則があります。


注 -

IP インタフェースに割り当てられるリモート IP アドレスに制限はありません。ただし、明確にするには、同じサブネットに属する IP アドレスだけを入れるのが最適です。


動的リンクの場合の hosts データベースの更新

動的リンク構成に含まれるすべてのマシンで、hosts データベースを更新する必要があります。

リモートホストの更新方法

リモートマシンの hosts データベースを構成するための手順は、次のとおりです。

  1. リンクの反対側にある各ダイヤルインサーバについて、一次ネットワークインタフェースの IP アドレスとホスト名を、/etc/inet/hosts ファイルに追加します。

    たとえば、図 11-1 では、nomadanomadbnomadc/etc/inet/hosts ファイルには、ダイヤルインサーバ mojave の一次ネットワークインタフェースの IP アドレスが入ります。

  2. ダミー IP アドレスを追加します。

    この IP アドレスが使用されるのは、PPP の起動時だけです。

    nomadc/etc/inet/hosts ファイルは、次のように表示されます。


    # Internet host table
    #
    127.0.0.1          localhost	       loghost
    192.41.40.55       mojave
    1.2.3.4            dummy
  3. ダイヤルインサーバの物理ネットワーク上にあって、リモートホストからリモートログインできるすべてのマシンの IP アドレスを、/etc/inet/hosts ファイルに追加します。

  4. 物理ネットワーク上にあるネームサーバのデータベースを、リモートホストのホスト名と IP アドレスに更新します。

ダイヤルインサーバの更新方法

ダイヤルインサーバの hosts データベースには、PPP 固有のアドレスを追加する必要はありません。動的割り当てリンクは、サーバのネットワークインタフェースを使用する必要があります。したがって、ダイヤルインサーバの hosts データベースを構成するには、次のようにします。

  1. サービス対象の各リモートホストについて、サーバの /etc/inet/hosts ファイルにエントリを追加します。

  2. 物理ネットワーク上のすべてのマシンの /etc/inet/hosts ファイルに、それぞれが通信することのできるリモートホストについてのエントリを追加します。

その他のファイルに関する考慮事項

構成プロセスの次のステップでは、/etc/passwd ファイルと /etc/shadow ファイルを編集します。動的リンク構成の場合も、リモートホスト対マルチポイントダイヤルインサーバ構成の場合と同じ手順で、これらのファイルを編集します。/etc/passwd ファイルと /etc/shadow ファイルの詳細は、/etc/passwd ファイルの修正」を参照してください。

動的リンクの場合の asppp.cf の編集

動的リンク構成用の asppp.cf 構成ファイルには、リモートホストに関する情報と、PPP リンクに使用するインタフェースに関する情報が含まれていなければなりません。ダイヤルインサーバがブートした後、リモートエンドポイントからサーバが呼び出されるたびに、リンクマネージャはこの情報を使って通信を確立します。

動的リンクを持つリモートホスト

リモートホスト用の asppp.cf 構成ファイルは、「基本構成ファイルの各部分」で説明したファイルと同じですが、パラメタ negotiate_address が追加されている点が異なります。


ifconfig ipdptp0 plumb dummy mojave up
path
    interface ipdptp0
    peer_system_name mojave-ppp
    connectivity_timeout 300
    negotiate_address on

negotiate_address パラメタは、ローカル IP アドレスの割り当てがネゴシエーションによって取得されて動的に割り当てられているかどうかを示します。設定が on の場合、サーバから供給された IP アドレスが、接続中にクライアントのローカルアドレスとして使用されます。

動的リンクを持つダイヤルインサーバ

ダイヤルインサーバが着信パケットを受信すると、リンクマネージャは構成ファイルの path セクションを読んで、リモートエンドポイントを識別し、使用するインタフェースを決定します。例 11-1 に示す構成ファイルには、インタフェースキーワードは含まれていません。代わりに、リンクマネージャは、defaults セクションに設定されているインタフェース情報を使用します。

動的割り当てリンクを持つダイヤルインサーバ用の asppp.cf 構成ファイルは、例 11-1 のようになります。


例 11-1 動的割り当てリンクを持つサーバ用の構成ファイル


ifconfig ipdptp0 plumb mojave clienta down
ifconfig ipdptp1 plumb mojave clientb down
ifconfig ipdptp2 plumb mojave clientc down

# This means grab whatever interface is available (not in use)
defaults
	    interface ipdptp*

# Each path specifies a machine that might dial up / log
# in to this server

path
    peer_system_name tamerlane   # nomada uses the login name
                                 # tamerlane
	   
path
    peer_system_name lawrence    # nomadb uses the name lawrence
                                 # for login
    
path
    peer_system_name nomadc   

動的リンクを持つサーバ用の ifconfig セクション

動的割り当てリンクを持つダイヤルインサーバ用の ifconfig セクションの構文は、次のとおりです。

ifconfig ipdptpn plumb server-name client-address down

例 11-1 には、3 つの ifconfig 行があり、それぞれポイントツーポイントインタフェースを初期化しています。


ifconfig  ipdptp0  plumb  mojave  clienta  down
ifconfig  ipdptp1  plumb  mojave  clientb  down
ifconfig  ipdptp2  plumb  mojave  clientc  down

動的リンクを持つサーバ用の defaults セクション

動的割り当てリンクを構成するときに、asppp.cf ファイルに defaults セクションを含めることができます。このセクションでは、その後に asppp.cf ファイル内に keyword が現れたときに、keyword に代入するデフォルトの値を設定します。defaults セクションの構文は次のとおりです。


default 
     keyword

例 11-1 では、キーワード interface を使って ipdptp* をインタフェースとして定義することにより、動的リンクを指定しています。ワイルドカードを示すアスタリスクは、ifconfig セクションで定義されている任意の使用可能な ipdptp インタフェースを使用するよう、リンクマネージャに指示しています。したがって、サーバ mojave のリンクマネージャは、ipdptp0ipdptp1ipdptp2 のうち、「ダウン」として構成されている最初のインタフェースを使用します。

動的リンクを持つサーバ用の path セクション

動的リンクを持つサーバ用の構成ファイルには、そのサーバとの接続の確立が許されているすべてのリモートホストについての path セクションが含まれていなければなりません。path セクションの構文は次のとおりです。


path
    peer_system_name endpoint-username    

interface キーワードは、path セクションの中で定義されていません。これは、この値が defaults セクションで定義されているからです。 この場合の peer_system_name キーワードと peer_ip_address キーワードの意味は、マルチポイントサーバ用の構成ファイルの場合と同じです。詳細は、「マルチポイントダイヤルインサーバの path セクション」を参照してください。

その他のキーワード

asppp.cf ファイルでは、上記のほかに、エンドポイントがどのように通信するかを定義するためのキーワードをいくつか指定できます。これには、「構成キーワード」で説明するセキュリティキーワードも含まれます。

仮想ネットワークの構成

仮想ネットワークは、それぞれ離れた場所にあるいくつかのスタンドアロンコンピュータを、互いに PPP マルチポイントリンクで接続したものです。仮想ネットワークの概念については、「仮想ネットワーク」で紹介しました。この節では、仮想ネットワークを構成する方法について説明します。

図 11-2 サンプル仮想ネットワーク

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図 11-2 に示すネットワークは、3 つの単独コンピュータから成っています。ネットワークの各メンバは、マルチポイント PPP リンクを介して他のメンバに接続しています。したがって、このようなネットワークを作成するには、ネットワーク管理者 (そしておそらくリモートロケーションの他のネットワーク管理者) は、関与する各ホストでマルチポイント PPP リンクを構成する必要があります。

マルチポイントリンクの構成には、マルチポイントダイヤルインサーバの場合と同じ一般的な手順を用います。この手順については、「構成プロセスの概要」に説明があります。ただし、仮想ネットワークには独自の必要条件がいくつかあり、それに従ってネットワーク内の各ホストを構成する必要があります。

仮想ネットワークの場合のアドレス指定に関する必要事項

仮想ネットワーク内の各マシンについて、/etc/hosts ファイルにホスト情報を追加する必要があります。PPP エンドポイント用に使用する IP アドレスを入力するときは、次の規則に従ってください。

hosts データベースと networks データベースの更新

構成プロセスの最初のステップでは、仮想ネットワークに関する情報によって、hosts データベースと networks データベースを更新します。

仮想ネットワークの場合の /etc/inet/hosts ファイル

各マシンの /etc/inet/hosts ファイルには、このホストからアクセスできるすべてのネットワークメンバに関するアドレス指定情報が含まれていることが必要です。たとえば、図 11-2 に示したネットワーク内の各ホストは、次のような情報を持っていることが必要です。

# Internet host table
#
127.0.0.1           localhost	loghost
192.41.47.15        nomada
192.41.47.20        nomadb
192.41.47.12        nomadc

仮想ネットワークの場合の /etc/inet/networks ファイル

仮想ネットワークは一意な IP アドレスを必要とするので、このアドレスを networks データベースに入力する必要があります。たとえば、図 11-2 に示したネットワークの番号は 192.41.47 です。さらに、このネットワーク上のホストが他のネットワークと通信する必要がある場合は、このネットワークを InterNIC のアドレス指定機関に登録する必要があります。networks データベースの編集方法については、第 4 章「ネットワーク上での TCP/IP の構成」を参照してください。

仮想ネットワーク上の各ホストは、ネットワークのアドレスが入ったエントリを、/etc/inet/networks ファイル中に持っている必要があります。たとえば、ネットワーク 192.41.47 の各ホストは、/etc/inet/networks の中に次のようなエントリを持っていることが必要とされます。


# Internet networks
#
# arpanet   10          arpa
# ucb-ether 46          ucbether
#
# local networks
loopback    127
ppp         192.41.47   #remote sales offices

その他のファイルの構成

構成プロセスの次のステップでは、UUCP データベース、/etc/passwd ファイル、/etc/shadow ファイルを編集します。仮想ネットワーク内のマシンについてこれらのファイルを編集する方法は、マルチポイントダイヤルインサーバ構成の場合と同じです。UUCP 関係の情報については、「UUCP データベースの編集」を、そして passwd ファイルについては、/etc/passwd ファイルの修正」を参照してください。

仮想ネットワークの場合の asppp.cf 構成ファイル

仮想ネットワーク上のローカルマシン用の構成ファイルには、そのネットワーク内にあってローカルホストからアクセスできるすべてのリモートホストに関する情報が含まれていることが必要です。さらに、仮想ネットワーク上のマシンは、どれもダイヤルインとダイヤルアウトの両方の機能を備えたものとして構成されていなければなりません。ローカルホストマシンがブートすると、リンクマネージャは asppp.cf ファイルを読んで通信を確立します。

例 11-2 は、仮想ネットワーク 192.41.47 の nomada 用として設定した構成ファイルです。


例 11-2 nomada 用の構成ファイル


# /etc/asppp.cf for hosta

ifconfig ipd0 plumb nomada netmask + up
defaults
   interface ipd0
path
   peer_ip_address  nomadb
   peer_system_name lawrence	   	# name machine logs in with
path
   peer_ip_address nomadc
   peer_system_name azziz

例 11-3 は、仮想ネットワーク 192.41.47 の nomadb 用として設定した構成ファイルです。


例 11-3 nomadb 用の構成ファイル


# /etc/asppp.cf for nomadb

ifconfig ipd0 plumb nomadb netmask + up
defaults
   interface ipd0
path
   peer_ip_address   nomada
   peer_system_name  tamerlane  # name the machine logs in with
path
   peer_ip_address   nomadc
   peer_system_name  azziz

PAP/CHAP セキュリティのための asppp.cf の編集

asppp.cf ファイルを編集することによってセキュリティを設定し、リンクの各部分が、パスワード認証プロトコル (PAP) または誰何ハンドシェーク認証プロトコル (CHAP) に応答するかどうかを指定できます。PAP と CHAP については、「PPP のセキュリティ」に説明があります。asppp.cf ファイルを編集するには、一連のキーワードを追加します。この節では、認証システムはリンクまたは誰何を開始するシステムであり、これは多くの場合サーバです。対等システムはリンクの反対側にあるシステムであり、これは多くの場合クライアントです。

追加するキーワードは、require_authenticationwill_do_authentication です。認証システムつまりサーバは一般に認証を要求し、対等システムつまりクライアントは一般に認証行為を行います。

表 11-1 認証システムのキーワードと関連の文字列

require_authentication pap

require_authentication chap

pap_peer_id

chap_peer_secret

pap_peer_password

chap_peer_name

表 11-2 対等システムのキーワードと関連の文字列

will_do__authentication pap

will_do_authentication chap

pap_id

chap_secret

pap_password

chap_name

PAP/CHAP のインストール方法

  1. サーバでスーパーユーザとなり、/etc/asppp.cf ファイルを編集する準備を整えます。

  2. リンク上の各マシンについて require_authentication キーワードを追加して、PAP セキュリティと CHAP セキュリティのどちらを使用するかを指定します。

    1. 各 pap キーワードについて、関連の pap_peer_idpap_peer_password 文字列を追加します。

    2. 各 chap キーワードについて、関連の chap_peer_secretchap_peer_name 文字列を追加します。

      これらのキーワードは明示的に指定することも、パスのデフォルト値を使用することもできます。各キーワードが何を指定するかについては、表 11-3 を参照してください。例は 例 11-4に示してあります。

  3. will_do_authentication キーワードを使って、リンク上で PAP または CHAP セキュリティを使用する各リモートホストについて、リモートホストの /etc/asppp.cf ファイルにエントリを追加します。

    1. 各 pap キーワードについて、関連の pap_idpap_password 文字列を追加します。

    2. 各 chap キーワードについて、関連の chap_secretchap_name 文字列を追加します。

これらのキーワードは明示的に指定することも、パスのデフォルト値を使用することもできます。各キーワードが何を指定するかについては、表 11-3 を参照してください。例は 例 11-4に示してあります。

PAP/CHAP キーワードに関する規則

表 11-3 PAP/CHAP のキーワードの定義

キーワード 

値の定義 

require_authentication keywords [キーワード として使用できるのは off|pap[chap] | chap[pap]]

対等システムがそれ自身を認証することを指定する。papchap のどちらかがある場合は、対等システムは認証に参加するか、または接続を終了する必要がある。デフォルト値は off

pap_peer_id peername [peername は、認証システムから見てポイントツーポイントリンクの反対側にあるシステムの名前です。これは、脚注 4 に示す構文の文字列です。]

現在のパスについて認証される必要のある対等システムの名前を指定する。peername 文字列の長さは 1 オクテット [オクテットはバイトの厳密な定義です。] 以上。長さがゼロの文字列を指示するには、このキーワードを省略する

pap_peer_password string [string はホワイトスペースを含まない単一トークンです。特殊文字を含めるには、標準 ANSI の ¥ エスケープ文字を使用できます。空白文字を入れるには、¥s を使用します。文字列の先頭にポンド記号がある場合は、コメントとして解釈されないようにするために、エスケープ (¥#) する必要があります。NULL (¥0) は文字列を切り捨てます。]

対等システムのパスワードを 1 オクテット以上の長さで指定する。長さがゼロの文字列を指示するには、このキーワードを省略する 

chap_peer_secret string

対等システムが送る応答を生成するために誰何値とともに使用されるシークレットを指定する。形式は 1 オクテット以上の長さで、少なくとも 16 オクテット以上が望ましい 

chap_peer_name peername

パケットを伝送する対等システムの識別情報を指定する。名前には、NULL と、CR/LF で終わる文字列は使用できない。名前は、対等システムからの応答パケットの一部として受信されるもので、1 オクテット以上の長さからなる 

will_do_authentication keywords

システムが、指定した認証プロセスに認証された対等システムとして参加する意志があるかどうかを指定する。papchap の両方が存在する場合は、システムはどちらの認証プロトコルにも参加する意志を持つことになる。デフォルト値は off

pap_id peername

応答パケットに入れて認証システムに送るシステムの名前を指定する。長さがゼロの文字列を指示するには、このキーワードを省略する 

pap_password string

応答パケットに入れて認証システムに送るシステムのパスワードを指定する。長さがゼロの文字列を指示するには、このキーワードを省略する 

chap_secret string

認証システムに送る応答を生成するために、受信した誰何値とともに使用するシークレットを入れる。形式は 1 オクテット以上の長さで、少なくとも 16 オクテット以上が望ましい 

chap_name peername

システムの識別情報を指定する。名前は、NULL または CR/LF で終わるものであってはならない。この名前は、応答パケットに入れて認証システムに送られる 

PAP/CHAP の例

例 11-4 は、PAP と CHAP の認証を必要とするサーバ mojave 用の asppp.cf ファイルを示しています。対等システムは、nomada (PAP) と nomadb (CHAP) です。


例 11-4 サーバ mojave 用のコード例

ifconfig ipdptp0 plumb mojave nomada up
ifconfig ipdptp1 plumb mojave nomanb up
path
      peer_system_name tamerlane
      require_authentication pap  #tells nomada that mojave
                                  #requires pap authentication
      pap_peer_id desert
      pap_peer_password oasis
path
      peer_system_name lawrence
      require_authentication chap  #tells nomadb that mojave
                                   #requires chap authentication
      chap_peer_name another¥sdesert
      chap_peer_secret secret¥soasis¥swith¥007bell

例 11-5 に示された mojave のリモートホスト nomada は、PAP と CHAP の両方を認証しようしています。


例 11-5 リモートホスト nomada 用のコード例


ifconfig ipdptp0 plumb tamerlane mojave up
path
      interface ipdptp0
      peer_system_name mojave
      will_do_authentication chap pap #nomada tells mojave
                                      #that it will do chap and
                                      #pap authentication
      pap_id desert
      pap_password oasis
      chap_name desert¥srain
      chap_secret %$#@7&*(+|`P'12

例 11-6 に示された mojave のリモートホスト nomadb は、CHAP を認証しようしています。


例 11-6 リモートホスト nomadbe 用のコード例


ifconfig ipdptp0 plumb nomadb mojave private up
path
     interface ipdptp0
     peer_system_name mojave
     will_do_authentication chap   #nomadb tells mojave that it
                                   #will do chap authentication
     chap_name another¥sdesert
     chap_secret secret¥soasis¥swith¥007bell

一般に、CHAP と PAP の両方が構成ファイルに組み込まれていて、サーバが認証を要求し、リモートホストが認証を行おうとするのが、理想的な形です。しかし、逆にリモートホストの方が認証を要求するようにすることも可能です。CHAP シークレットは安全な手段で送付する必要があります。そのためには、一般に CHAP シークレットは先方に手で渡すことが必要です。

構成キーワード

この節では、asppp.cf 構成ファイルで使用できる構成キーワードと、それぞれについて定義する必要のある値について説明します。これらのキーワードのほとんどはオプションです。必須のものについてはその旨示してあります。キーワードの詳しい説明については、RFC 1331、1332、1333、1334 を参照してください。

表 11-4 は、すべての asppp.cf ファイルに含まれていなければならない必須キーワードの一覧です。

表 11-4 asppp.cf の必須キーワード

キーワード 

値の定義 

ifconfig parameters

parameters に指定する値で ifconfig コマンドを実行するよう、リンクマネージャに指示する。詳細は、asppp.cf ファイルの ifconfig セクション」「マルチポイントダイヤルインサーバの ifconfig セクション」、そして ifconfig(1M) のマニュアルページを参照

path

この (現行の) パスの属性としてグループ化するトークンシーケンスの始まりを指定する。現行パスを形成する属性の集合は、後続の path キーワード、defaults キーワード、ファイルの終わり文字のどれかが生じた時点で終了する

interface (ipdptpn, ipdptp* または ipdn)

ネットワーク内の各インタフェースについて、ipdptp (静的ポイントツーポイント)、ipdptp* (動的ポイントツーポイント)、ipd (マルチポイント) のどれかのデバイスを指定する。ipdptpnipdn, の場合は、このキーワードは、n で定義される特定のインタフェースを現行パスに関連付ける。n は 0 もしくは正の整数でなければならない。この数は、path セクションに定義されているインタフェースと、ifconfig セクションに指定されているインタフェースが一致するようにする

 

ipdptp** インタフェースの場合は、* は、インタフェースが、「ダウン」として構成されているどのポイントツーポイントインタフェースにも一致することを示す

peer_system_name hostname peer_system_name username

ダイヤルアウトマシンでは、ローカルマシンから呼び出したいリモートエンドポイントのホスト名 (hostname) を指定する。この名前は、/etc/uucp/Systems ファイルの中のシステム名と同じである。リモートシステム名を現行パスに関連付ける。この名前は、/etc/uucp/Systems ファイルから、アウトバウンド接続に関する、モデムと対等システムに固有の情報を見つけるために使用される

ダイヤルインマシンでは、そのダイヤルインマシンにログインするときにリモートマシンが使用するユーザ名 (username) を指定する。username と、接続の獲得に使用されたログイン名との突き合わせによって、適正なパスが決定される

peer_ip_address hostname peer_ip_address ip-address

宛先ホストアドレスを指定する。これは、マルチポイントリンクの場合に限り必要とされる。このアドレスは現行パスに関連付けされる。パスがポイントツーポイントインタフェースを示している場合は、この値は無視される。アドレスの形式は、ドット付き 10 進数、16 進数、シンボルのどれでもよい 

表 11-5 には、PPP 構成をさらに進んで定義するために使用可能な、asppp.cf のオプションキーワードを示します。

表 11-5 asppp.cf のオプションキーワード

キーワード 

値の定義 

debug_level 0-9

ログファイルに書き込むデバッグ情報の量を定義する 0 〜 9 の整数。数値が大きいほど出力の量が多くなる 

defaults

次の path キーワードか、EOF 文字が現れるまでの後続のすべてのトークンシーケンスをデフォルトの属性に設定して、その間に定義されるパスに適用することを指示する

default_route

現行パスに対応する IP 層が完全に稼動状態にあるときに、このパスの対等 IP アドレスをデフォルトの宛先としてルーティングテーブルに追加するよう、リンクマネージャに指示する。IP 層がダウン状態になったときは、この送信経路は削除される 

inactivity_timeout seconds

現行パスの接続が、終了しないでアイドル状態のままでいられる最大秒数を指定する。タイムアウトなしの場合は 0 を指定する。デフォルトは 120 秒 

ipcp_async_map hex-number

現行パスの非同期制御文字マップを指定する。hex-number は、マップを形成する 4 オクテットの自然 (ビッグエンディアン) 形式を示す。デフォルト値は 0x FFFFFFFF

ipcp_compression (vj または off)

IP 圧縮を使用可能にするかどうかを指定する。デフォルトは、Van Jacobson 圧縮アルゴリズム (vj)

lcp_compression (on または off)

PPP アドレスフィールド、制御フィールド、プロトコルフィールドの圧縮を使用可能にするかどうかを指定する。デフォルトは on

lcp_mru number

必要な最大受信ユニットパケットサイズの値を指定する。number はサイズを指定するオクテット数。デフォルトは 1500

negotiate_address (on または off)

ローカル IP アドレス割り当てをネゴシエーションにより入手し動的に割り当てるかどうかを指示する。これを使用可能にした場合は、ローカルアドレスは PPP リンクのリモート側から渡される。このようにして渡された場合、0.0.0.0 を除くどのようなローカルアドレスでも、インタフェースの初期構成に使用できる。デフォルトはネゴシエーションなし (off)

peer_ip_address hostname peer_ip_address ip-address

宛先ホストアドレスを指定する。このキーワードはポイントツーポイントリンクの場合に限りオプション。address は現行パスに関連付けされる。アドレスの形式は、ドット付き 10 進数、16 進数、シンボルのどれでもよい

version n

構成ファイルの内容が形式バージョン n に対応することを指定する。このキーワードを使用する場合は、ファイルの最初のキーワードとする必要がある。このキーワードがないときは、バージョンは 1 とみなされる。このマニュアルでは、バージョン 1 形式の定義を構成ファイルに使用している