TCP/IP とデータ通信

動的割り当て PPP リンクの構成

動的ポイントツーポイントリンクを持つダイヤルインサーバを使用するサイトでは、ポイントツーポイント通信の利点を最大限に活用することができます。この構成タイプについては、第 7 章「PPP の概要」で概説しました。この構成では、必要時提供方式で動的にポイントツーポイントリンクを割り当てる少なくとも 1 つのダイヤルインサーバと、リモートホストとの間で通信が行われます。この節では、図 11-1 に示すサンプル構成に基づいて説明を進めます。

図 11-1 リモートホストと動的リンクダイヤルインサーバのネットワーク

Graphic

各リモートホストは、標準のポイントツーポイントリンクを使ってダイヤルインサーバと通信します。しかし、図 9-1 に示したマルチポイントダイヤルインサーバとは違って、ダイヤルインサーバ mojave は、動的ポイントツーポイントリンクを介して呼び出し側ホストに接続されます。リモートホストのどれかが接続を確立しようとすると、サーバが使用可能なリンクを割り当てます。

動的リンクの基礎概念は、接続確立のたびにサーバがクライアントに IP アドレスを供給するというものです。接続を確立すると、使用可能な IP インタフェースをサーバがクライアントに割り当てます。その後、接続が継続している間、インタフェースのリモート IP アドレスがクライアントの IP アドレスになります。接続を終了すると、使用可能なインタフェースのプールに IP インタフェースが戻され、別の接続に使用できる状態になります。

動的リンクの構成には、リモートホスト対マルチポイントダイヤルインサーバの場合と同じ一般的な手順を用います。この手順については、「構成プロセスの概要」に説明があります。ただし、動的ポイントツーポイントリンクには独自の必要条件がいくつかあり、そのため構成に関係するファイルに対する修正のしかたも少々異なります。

動的割り当てリンクの場合のアドレス指定に関する必要事項

動的割り当て PPP リンクを使用する各マシンについて、/etc/inet/hosts ファイルにホスト情報を追加する必要があります。PPP エンドポイントの IP アドレスについては次の規則があります。


注 -

IP インタフェースに割り当てられるリモート IP アドレスに制限はありません。ただし、明確にするには、同じサブネットに属する IP アドレスだけを入れるのが最適です。


動的リンクの場合の hosts データベースの更新

動的リンク構成に含まれるすべてのマシンで、hosts データベースを更新する必要があります。

リモートホストの更新方法

リモートマシンの hosts データベースを構成するための手順は、次のとおりです。

  1. リンクの反対側にある各ダイヤルインサーバについて、一次ネットワークインタフェースの IP アドレスとホスト名を、/etc/inet/hosts ファイルに追加します。

    たとえば、図 11-1 では、nomadanomadbnomadc/etc/inet/hosts ファイルには、ダイヤルインサーバ mojave の一次ネットワークインタフェースの IP アドレスが入ります。

  2. ダミー IP アドレスを追加します。

    この IP アドレスが使用されるのは、PPP の起動時だけです。

    nomadc/etc/inet/hosts ファイルは、次のように表示されます。


    # Internet host table
    #
    127.0.0.1          localhost	       loghost
    192.41.40.55       mojave
    1.2.3.4            dummy
  3. ダイヤルインサーバの物理ネットワーク上にあって、リモートホストからリモートログインできるすべてのマシンの IP アドレスを、/etc/inet/hosts ファイルに追加します。

  4. 物理ネットワーク上にあるネームサーバのデータベースを、リモートホストのホスト名と IP アドレスに更新します。

ダイヤルインサーバの更新方法

ダイヤルインサーバの hosts データベースには、PPP 固有のアドレスを追加する必要はありません。動的割り当てリンクは、サーバのネットワークインタフェースを使用する必要があります。したがって、ダイヤルインサーバの hosts データベースを構成するには、次のようにします。

  1. サービス対象の各リモートホストについて、サーバの /etc/inet/hosts ファイルにエントリを追加します。

  2. 物理ネットワーク上のすべてのマシンの /etc/inet/hosts ファイルに、それぞれが通信することのできるリモートホストについてのエントリを追加します。

その他のファイルに関する考慮事項

構成プロセスの次のステップでは、/etc/passwd ファイルと /etc/shadow ファイルを編集します。動的リンク構成の場合も、リモートホスト対マルチポイントダイヤルインサーバ構成の場合と同じ手順で、これらのファイルを編集します。/etc/passwd ファイルと /etc/shadow ファイルの詳細は、/etc/passwd ファイルの修正」を参照してください。

動的リンクの場合の asppp.cf の編集

動的リンク構成用の asppp.cf 構成ファイルには、リモートホストに関する情報と、PPP リンクに使用するインタフェースに関する情報が含まれていなければなりません。ダイヤルインサーバがブートした後、リモートエンドポイントからサーバが呼び出されるたびに、リンクマネージャはこの情報を使って通信を確立します。

動的リンクを持つリモートホスト

リモートホスト用の asppp.cf 構成ファイルは、「基本構成ファイルの各部分」で説明したファイルと同じですが、パラメタ negotiate_address が追加されている点が異なります。


ifconfig ipdptp0 plumb dummy mojave up
path
    interface ipdptp0
    peer_system_name mojave-ppp
    connectivity_timeout 300
    negotiate_address on

negotiate_address パラメタは、ローカル IP アドレスの割り当てがネゴシエーションによって取得されて動的に割り当てられているかどうかを示します。設定が on の場合、サーバから供給された IP アドレスが、接続中にクライアントのローカルアドレスとして使用されます。

動的リンクを持つダイヤルインサーバ

ダイヤルインサーバが着信パケットを受信すると、リンクマネージャは構成ファイルの path セクションを読んで、リモートエンドポイントを識別し、使用するインタフェースを決定します。例 11-1 に示す構成ファイルには、インタフェースキーワードは含まれていません。代わりに、リンクマネージャは、defaults セクションに設定されているインタフェース情報を使用します。

動的割り当てリンクを持つダイヤルインサーバ用の asppp.cf 構成ファイルは、例 11-1 のようになります。


例 11-1 動的割り当てリンクを持つサーバ用の構成ファイル


ifconfig ipdptp0 plumb mojave clienta down
ifconfig ipdptp1 plumb mojave clientb down
ifconfig ipdptp2 plumb mojave clientc down

# This means grab whatever interface is available (not in use)
defaults
	    interface ipdptp*

# Each path specifies a machine that might dial up / log
# in to this server

path
    peer_system_name tamerlane   # nomada uses the login name
                                 # tamerlane
	   
path
    peer_system_name lawrence    # nomadb uses the name lawrence
                                 # for login
    
path
    peer_system_name nomadc   

動的リンクを持つサーバ用の ifconfig セクション

動的割り当てリンクを持つダイヤルインサーバ用の ifconfig セクションの構文は、次のとおりです。

ifconfig ipdptpn plumb server-name client-address down

例 11-1 には、3 つの ifconfig 行があり、それぞれポイントツーポイントインタフェースを初期化しています。


ifconfig  ipdptp0  plumb  mojave  clienta  down
ifconfig  ipdptp1  plumb  mojave  clientb  down
ifconfig  ipdptp2  plumb  mojave  clientc  down

動的リンクを持つサーバ用の defaults セクション

動的割り当てリンクを構成するときに、asppp.cf ファイルに defaults セクションを含めることができます。このセクションでは、その後に asppp.cf ファイル内に keyword が現れたときに、keyword に代入するデフォルトの値を設定します。defaults セクションの構文は次のとおりです。


default 
     keyword

例 11-1 では、キーワード interface を使って ipdptp* をインタフェースとして定義することにより、動的リンクを指定しています。ワイルドカードを示すアスタリスクは、ifconfig セクションで定義されている任意の使用可能な ipdptp インタフェースを使用するよう、リンクマネージャに指示しています。したがって、サーバ mojave のリンクマネージャは、ipdptp0ipdptp1ipdptp2 のうち、「ダウン」として構成されている最初のインタフェースを使用します。

動的リンクを持つサーバ用の path セクション

動的リンクを持つサーバ用の構成ファイルには、そのサーバとの接続の確立が許されているすべてのリモートホストについての path セクションが含まれていなければなりません。path セクションの構文は次のとおりです。


path
    peer_system_name endpoint-username    

interface キーワードは、path セクションの中で定義されていません。これは、この値が defaults セクションで定義されているからです。 この場合の peer_system_name キーワードと peer_ip_address キーワードの意味は、マルチポイントサーバ用の構成ファイルの場合と同じです。詳細は、「マルチポイントダイヤルインサーバの path セクション」を参照してください。

その他のキーワード

asppp.cf ファイルでは、上記のほかに、エンドポイントがどのように通信するかを定義するためのキーワードをいくつか指定できます。これには、「構成キーワード」で説明するセキュリティキーワードも含まれます。