Sun Java Enterprise System 5 技術の概要

Java ES コンポーネント

Java ES は、個別のソフトウェア製品やソフトウェアコンポーネントを単一のソフトウェアシステムとして統合化したものです。次のような多数のシステムレベルの機能によって、これらの統合が可能になりました。

これらの機能については、このマニュアルの後の章で説明します。ここでは、Java ES に統合されたコンポーネントの説明に重点を置いています。これらの システムコンポーネントは、次の図に示すように、3 つの主要カテゴリに分類できます。

図 1–2 Java ES コンポーネントのカテゴリ

Java ES コンポーネントのカテゴリとそれらの相互関係を示す図。

コンポーネントが提供するサービスは、次のとおりです。

Java ES コンポーネントのリストについては、付録 A 「Java ES コンポーネント」を参照してください。

システムサービスコンポーネント

いくつかの Java ES コンポーネントが分散型ソフトウェアソリューションをサポートする主なサービスを提供します。これらのシステムサービスには、システムサービスポータルサービス、アイデンティティーサービスとセキュリティーサービス、Webコンテナサービス、J2EE アプリケーションサービス、および持続サービスが含まれます。

これらの分散型サービスを提供するシステムサービスコンポーネントとそれらが提供するサービスをアルファベット順に一覧表示して、簡単に説明したのが、次の表です。各システムサービスコンポーネントはマルチスレッド対応のサーバープロセスであり、多数のクライアントをサポートします。コンポーネントの詳細については、「システムサービスコンポーネント」を参照してください。

表 1–1 Java ES システムサービスコンポーネント

構成要素 

提供されるシステムサービス 

Sun Java SystemSun Java System Access Manager

アクセス管理サービスおよびデジタルアイデンティティー管理サービスを提供します。アクセス管理サービスには、シングルサインオンを含む認証と、アプリケーションまたはサービス、あるいはその両方へのアクセスに対するロールに基づく承認が含まれます。管理サービスには、個々のユーザーアカウント、ロール、グループ、およびポリシーの集中管理が含まれます。

Sun Java System Application Server

セッション Beans、エンティティー Beans、メッセージ駆動型 Beans など、EJB (Enterprise JavaBeansTM) コンポーネントの J2EE コンテナサービスを提供します。コンテナは、密接に結合された分散コンポーネント間の対話に必要なインフラストラクチャーサービスを提供し、Application Server を e-コマースアプリケーションおよび Web サービスを開発および実行するためのプラットフォームにします。Application Server は Web コンテナサービスも提供します。

Sun Java System Directory Server

アイデンティティープロファイル (従業員、顧客、仕入先など)、ユーザーの信用情報 (公開鍵の証明書、パスワード、PIN 番号)、アクセス特権、アプリケーションリソース情報、ネットワークリソース情報などのイントラネット情報およびインターネット情報を格納および管理するための中央リポジトリを提供します。 

Java DB [Java ES 5 は、Java DB を製品コンポーネントとして含む最初のリリースです。Java DB は最初 Derby Database という名前の共有コンポーネントとしてリリースされ、Java ES 2005Q4 に含まれていました。]

Java アプリケーションの開発用に、軽量データベースを提供します。Java DB は、100% Java テクノロジによるデータベースであるオープンソース Apache Derby の、Sun がサポートする配布です。

Sun Java System Message Queue

緩やかに結合された分散型のコンポーネントやアプリケーション間における、信頼性の高い非同期のメッセージングを提供します。Message Queue は、JMS (Java Message Service) API 仕様を実装しているほか、さらにセキュリティー、スケーラビリティー、リモート管理などのエンタープライズ機能も備えています。

Sun Java System Portal Server

ビジネスアプリケーションやビジネスサービスにアクセスするブラウザベースのクライアントに対し、コンテンツの集約や個人用のカスタマイズなど、主要なポータルサービスを提供します。Portal Server は、設定可能な検索エンジンも提供します。 

Sun Java System Service Registry

サービス指向アーキテクチャー (SOA) に対応した Web アプリケーションをサポートするレジストリおよびリポジトリを提供します。Service Registry は、Web サービスを登録および検出するための業界標準に加え、関連情報や事実、XML スキーマ、ビジネスプロセスルール、アクセス制御、バージョン管理といったアーティファクトなどを管理するための業界標準を実装しています。 

Sun Java System Web Server

Java サーブレットコンポーネントや JSPTM (JavaServer PagesTM) コンポーネントなどの Java Web コンポーネントに対して、J2EETM Web コンテナサービスを提供します。Web Server は、CGI スクリプトや Sun JavaTM System Active Server Pages など、静的および動的な Web コンテンツを配信するためのその他の Web アプリケーション技術もサポートしています。

サービス品質コンポーネント

Java ES には、表 1–1 に示したシステムサービスコンポーネントのほかに、システムサービスコンポーネントが提供するサービスの品質を高めるためのコンポーネントがいくつか含まれています。また、サービス品質コンポーネントを使えば、カスタム開発されたアプリケーションサービスも改善できます。サービス品質コンポーネントは次のカテゴリに分類されます。

可用性コンポーネント

可用性コンポーネントは、システムサービスコンポーネントおよびカスタムアプリケーションサービスがほぼ連続的に稼動することを可能にします。Java ES に含まれる可用性コンポーネントおよびそれらのコンポーネントが提供するサービスを次の表に示します。各コンポーネントの詳細については、「可用性コンポーネント」を参照してください。

表 1–2 Java ES 可用性コンポーネント

構成要素 

提供される可用性サービス 

High Availability Session Store

障害発生時でも、アプリケーションのデータ、特にセッション状態データを利用可能にするデータストアを提供します。 

Sun Cluster

Java ES の高可用性サービスとスケーラビリティーサービス、Java ES インフラストラクチャーの最上部で実行されるアプリケーション、およびサービスとアプリケーションの両方が配備されるハードウェア環境を提供します。 

Sun Cluster Geographic Edition [Java ES 5 は、Sun Cluster Geographic Edition を Java ES 製品コンポーネントとして含む最初のリリースです。]

地理的に離れた複数のクラスタを使用し、これらのクラスタ間でデータを複製する冗長なインフラストラクチャーを使用することによって、予期しない中断からアプリケーションを保護します。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、Sun Cluster ソフトウェアを階層的に拡張したものです。 

アクセスコンポーネント

アクセスコンポーネントは、システムサービスへのフロントエンドアクセスを可能にし、多くの場合、エンタープライズファイアウォールの外にあるインターネットからのセキュリティー保護されたアクセスを可能にします。そのようなアクセスを可能にすることに加えて、多くの場合、ルーティング機能およびキャッシュ機能も提供します。Java ES に含まれるアクセスコンポーネントおよびそれらのコンポーネントが提供するサービスを次の表に示します。コンポーネントの詳細については、「アクセスコンポーネント」を参照してください。

表 1–3 Java ES アクセスコンポーネント

構成要素 

提供されるアクセスサービス 

Sun Java System Portal Server (Secure Remote Access を含む)

企業ファイアウォールの外から、内部ポータルを含む Portal Server のコンテンツやサービスへの、セキュリティー保護されたインターネットアクセスを提供します。 

Sun Java System Web Proxy Server

Web コンテンツをキャッシュ、フィルタリング、および配信する機能を、送信インターネット要求と受信インターネット要求の両方に対して提供します。 

監視コンポーネント

Java ES には、リアルタイムのシステム状態とカスタマイズ可能な監視ジョブを提供する新しい監視機能が含まれています。監視は、Sun Java System Monitoring Console 製品コンポーネント によって実装され、これは Sun Java System Monitoring Framework 共有コンポーネント (shared component)によってサポートされます。詳細は、「監視コンポーネント」を参照してください。

共有コンポーネント

Java ES には、多くのシステムサービスコンポーネントおよびサービス品質コンポーネントが依存する、ローカルにインストールされる共有ライブラリがいくつか含まれています。Java ES 共有コンポーネントは、同じホストコンピュータ上で稼働する Java ES 製品コンポーネントにローカルサービスを提供します。

共有コンポーネントは、多くの場合、異なるオペレーティングシステム間の移植性を提供するために使用されます。Java ES 共有コンポーネントの例として、Java 2 Platform, Standard Edition (J2SE)、Netscape Portable Runtime (NSPR)、Network Security Services (NSS)、Java Security Services for Java (JSS) などがあります。完全な一覧については、「共有コンポーネント」を参照してください。

共有コンポーネントのインストールは、インストール対象のシステムサービスやサービス品質コンポーネントに応じて、Java ES インストーラによって自動的に行われます。