Sun Java Enterprise System 5 技術の概要

付録 A Java ES コンポーネント

Java ES は、製品コンポーネントおよび共有コンポーネントのコレクションで構成され、これらは互いに連携して、ネットワーク経由の分散型アプリケーションをサポートします。インストール中、Java ES インストーラは選択可能なコンポーネントを提示し、その多くは選択可能なサブコンポーネントを含んでいます。これらのコンポーネントおよびサブコンポーネントがこの付録に一覧表示されています。

この付録には、Java ES コンポーネントの概要として簡単な説明が示されています。特定のコンポーネントに関する詳細は、http://docs.sun.com/app/docs/prod/entsys.5 で利用可能なマニュアルセットを参照してください。広範囲にわたる Java ES についての情報およびリソースは、http://www.sun.com/bigadmin/hubs/javaes/ からも利用できます。

この付録に一覧表示する Java ES コンポーネントは、カテゴリごとにグループ化され、次の節で説明されています。

システムサービスコンポーネント

Java ES システムサービスコンポーネントは、分散型エンタープライズアプリケーションをサポートするために必要なインフラストラクチャーサービスを提供します。これらのサービスには、「Java ES が必要な理由」で説明したように、ポータルサービス、アイデンティティーサービスとセキュリティーサービス、Web サービスとアプリケーションサービス、および可用性サービスが含まれます。次の各節で Java ES システムサービスコンポーネントについて説明します。

Access Manager 7.1

Sun Java System Access Manager (Access Manager) は、認証、承認サービス、ポリシーエージェント、およびアイデンティティー連携を統合し、ネットワークリソースを保護するための包括的なソリューションを提供します。Access Manager は、Web サービスアプリケーションおよび Web コンテンツに対する権限のないアクセスを防ぎ、Web ベースのサービスおよび Web ベースでないアプリケーションを使用する顧客、従業員、およびパートナのデジタル ID の管理プロセスを、組織が管理するためのインフラストラクチャーを提供します。これらのリソースは内部および外部の広範なコンピューティングネットワークで利用される可能性があるため、ID ごとに属性、ポリシー、資格付与が定義および適用されて、これらのテクノロジへのアクセスが管理されます。

Access Manager には、次のサブコンポーネントが含まれます。

Application Server Enterprise Edition 8.2

Sun Java System Application Server (Application Server) は、サーバーサイド Java アプリケーションと Web サービスの開発および配信に使用する J2EE 互換プラットフォームを提供します。主要な機能には、スケーラブルなトランザクション管理、コンテナ管理された持続ランタイム、Web サービスパフォーマンス、クラスタ、高可用性セッション状態、セキュリティー、および統合機能が含まれます。

Application Server には、次のサブコンポーネントが含まれます。

Directory Server Enterprise Edition 6.0

Sun Java System Directory Server (Directory Server) は LDAP ベースのディレクトリサーバーで、イントラネット、ネットワーク、およびエクストラネットの情報に対する、一元化されたディレクトリサービスを提供します。Directory Server は既存のシステムに統合され、従業員、顧客、仕入先、およびパートナ企業の情報を統合化に対応した集中的リポジトリとして機能します。Directory Server を拡張することで、ユーザーのプロファイルや設定情報、およびエクストラネットのユーザー認証を管理できます。

Directory Server には、次のサブコンポーネントが含まれます。

Java DB 10.1

Java DB は、Java アプリケーションの開発用に軽量なデータベースを提供します。Java DB は、100% Java テクノロジによるデータベースであるオープンソース Apache Derby の、Sun がサポートする配布です。Java ES 5 は、Java DB を製品コンポーネントとして含む最初のリリースです。Java DB は最初 Derby Database という名前の共有コンポーネントとしてリリースされ、Java ES 2005Q4 に含まれていました。

Java DB には、次のサブコンポーネントが含まれます。

Message Queue 3.7 UR 1

Sun Java System Message Queue (Message Queue) は、アプリケーション間通信および信頼性の高いメッセージ配信の問題に対する、標準ベースのソリューションです。Message Queue は、JMS (Java Message Service) オープン標準を実装した企業向けのメッセージングシステムです。

Message Queue の機能は、JMS プロバイダであることに加え、JMS 仕様の最小要件を満たしています。Message Queue ソフトウェアを使用することで、異なるプラットフォームおよびオペレーティングシステム上で稼動するプロセスが共通の Message Queue サービスに接続して、情報を送受信できます。アプリケーション開発者は、ネットワーク間の通信方法に関する低レベルの詳細ではなく、アプリケーションのビジネスロジックに集中して作業を行うことができます。

Java ES インストーラでは、Message Queue はインストール可能な単一のコンポーネントとして提供されます。

Portal Server 7.1

Sun Java System Portal Server (Portal Server) は、アイデンティティーに対応したポータルサーバーソリューションです。Portal Server はパーソナル化、集約、セキュリティー、統合、検索などの主なポータルサービスを組み合わせます。

Java ES インストーラでは、Portal Server はインストール可能な単一のコンポーネントとして提供されます。

Service Registry 3.1

Sun Java System Service Registry (Service Registry) は、Web サービス (UDDI) レジストリとしても、エンタープライズビジネス XML (ebXML) レジストリとしても機能するリポジトリであり、Web ベースのサービス指向アーキテクチャー (SOA) アプリケーションをサポートします。UDDI レジストリは、Web サービスの登録と検索に使用され、ebXML レジストリは、ビジネスプロセス統合のサポートに必要な情報アーティファクトの格納および管理に使用されます。これらのアーティファクトには、XML スキーマ、ビジネスプロセスルール、Web サービスアクセス制御、バージョン管理、分類スキーマなどのメタデータが含まれます。

Service Registry には、次のサブコンポーネントが含まれます。

Web Server 7.0

Sun Java System Web Server (Web Server) は、マルチプロセスとマルチスレッドに対応するセキュリティー保護された Web サーバーであり、業界標準に基づいて構築されています。Web Server は、高いパフォーマンス、信頼性、スケーラビリティー、および管理能力を、中規模から大規模の企業に対して提供します。

Web Server には、次のサブコンポーネントが含まれます。

サービス品質コンポーネント

Java ES サービス品質コンポーネントにより、システムサービスコンポーネントまたは分散型アプリケーションコンポーネントが提供するサービス品質が向上します。システムがほぼ連続的に稼動することを可能にする可用性コンポーネント、システムサービスへのセキュリティー保護されたエンドユーザーアクセスを可能にするアクセスコンポーネント、また Java ES ソリューションの保守性の向上に使用するシステム管理コンポーネントがあります。

Java ES サービスコンポーネントをサポートするコンポーネントは、次のカテゴリにグループ化され、この節で説明しています。

可用性コンポーネント

可用性コンポーネントは、システムサービスコンポーネントおよびアプリケーションコンポーネントがほぼ連続的に稼動することを可能にします。ここでは、次の Java ES 可用性コンポーネントについて説明します。

High Availability Session Store 4.4.3

Sun Java System High Availability Session Store (HADB) が提供するデータストアを使用すれば、障害発生時でもアプリケーションのデータが利用可能になります。この機能は、クライアントセッションに関連付けられた状態情報の復元に特に重要です。この機能がないと、セッション中に障害が発生した場合、セッションの再確立時にすべてのオペレーションを繰り返す必要があります。

次の Java ES コンポーネントは、セッション状態情報を格納するサービスを提供します。Application Server、Access Manager、および Message Queue。ただし、これらのコンポーネントの中で、障害時にセッション状態を保持するために HADB サービスを使用できるのは Application Server のみです。

Java ES インストーラでは、HADB はインストール可能な単一のコンポーネントとして提供されます。ただし、HADB サービスを提供するにはサーバーとクライアントの両方のサブコンポーネントが必要です。

Sun Cluster 3.1 8/05 および Sun Cluster エージェント 3.1


注 –

Sun Cluster コンポーネントは、Solaris プラットフォームでのみサポートされます。


Sun Cluster ソフトウェアは、高可用性サービスおよび高スケーラビリティーサービスを、Java ES と Java ES インフラストラクチャーに基づくアプリケーションに対して提供します。

クラスタとは緩やかに結合された一連のコンピュータ (クラスタノード) のことであり、サービス、システムリソース、およびデータの単一のクライアントビューを一括して提供します。クラスタの内部では、冗長コンピュータ、インターコネクト、データ記憶域、およびネットワークインタフェースを使用して、クラスタベースのサービスおよびデータに高可用性を提供します。 Sun Cluster ソフトウェアは、メンバーノードおよびその他のクラスタリソースの健全性を継続的に監視し、障害が発生した場合でも、内部の冗長性を利用してそれらのリソースへのほぼ連続的なアクセスを提供します。

Java ES インストーラでは、Sun Cluster コアサブコンポーネントおよび Sun Cluster エージェントが、個別にインストール可能なコンポーネントとして提供されます。次の Sun Cluster エージェントが Java Enterprise System に含まれます。


注 –

次のリストの HA は、高可用性を表します。



注 –

エージェントのリストは、SPARC と x86 では異なります。Sun Cluster Agents についての詳細は、http://docs.sun.com/app/docs/prod/entsys.5 の Sun Cluster のマニュアルを参照してください。


Sun Cluster Geographic Edition 3.1 2006Q4

Sun Cluster Geographic Edition は、Sun Cluster ソフトウェアを階層的に拡張したものです。この拡張は、地理的に離れた複数のクラスタを使用し、これらのクラスタ間でデータを複製する冗長なインフラストラクチャーを使用することによって、予期しない中断からアプリケーションを保護します。Java ES 5 は、Sun Cluster Geographic Edition を Java ES 製品コンポーネントとして含む最初のリリースです。

Sun Cluster Geographic Edition には、次のサブコンポーネントが含まれます。


注 –

Sun Cluster Geographic Edition は、Solaris x86 ではサポートされていません。


アクセスコンポーネント

アクセスコンポーネントは、システムサービスへのフロントエンドアクセスを可能にし、多くの場合、エンタープライズファイアウォールの外にあるインターネットからのアクセスを可能にします。ここでは、次の Java ES アクセスコンポーネントについて説明します。

Portal Server Secure Remote Access 7.1

Sun Java System Portal Server Secure Remote Access (Portal Server Secure Remote Access) は、Portal Server のコンテンツとサービスに対するブラウザベースのセキュリティー保護されたリモートアクセスを任意のリモートブラウザに対して提供することで、Portal Server を拡張します。これにより、クライアントソフトウェアを用意する必要がなくなります。Portal Server との統合により、ユーザーはセキュリティー保護されたアクセスで、アクセス権があるコンテンツやサービスにアクセスすることができます。

Portal Server Secure Remote Access には、次のサブコンポーネントが含まれます。

Web Proxy Server 4.0.4

Sun Java System Web Proxy Server (Web Proxy Server) は、Web コンテンツのキャッシュ機能、フィルタリング機能、および配信機能を提供します。Web Proxy Server は通常、企業のファイアウォールの内側ではリモートのコンテンツサーバーに対する要求数を低減するために使用され、ファイアウォールの外側では受信されたインターネット要求に対するセキュリティー保護されたゲートウェイを提供するために使用されます。

Java ES インストーラでは、Web Proxy Server はインストール可能な単一のコンポーネントとして提供されます。

監視コンポーネント

Sun Java System Monitoring Console 1.0 (Monitoring Console) には、Java ES 配備内のすべてのノードエージェントに接続するマスターエージェントが含まれます。Monitoring Console は、Sun Java System Monitoring Framework 2.0 (Monitoring Framework) によってサポートされ、監視対象コンポーネントの属性を公開するために、すべての監視対象コンポーネントに必要なインストゥルメンテーションとノードエージェントを提供する、共有コンポーネントです。それぞれの製品コンポーネントは監視可能な属性を表すオブジェクトを公開し、ノードエージェントはホスト上の複数のコンポーネントの表示を集約します。監視についての詳細は、『Sun Java Enterprise System 5 監視ガイド (UNIX 版)』を参照してください。

共有コンポーネント

共有コンポーネントは、Java ES のシステムサービスコンポーネントとサービス品質コンポーネントが依存するローカルサービスとテクノロジサポートを提供します。特定のホストコンピュータ上で稼動するすべての Java ES コンポーネントが共有できるローカルライブラリです。Java ES インストーラは、ホストコンピュータにインストールされたほかの Java ES コンポーネントをサポートするために必要なすべての共有コンポーネントを自動的にインストールします。

Java ES には、次の共有コンポーネントが含まれます。