Solaris 移行ガイド

第 1 章 概要

Solaris オペレーティング環境は、強力なツールと機能を追加することにより、ユーザのシステムを拡張します。この概要では、Solaris オペレーティング環境へ移行するメリットについて説明するとともに、SVR4 (System V リリース 4) と Solaris オペレーティング環境の主な違いについても説明します。

Solaris オペレーティング環境に移行するメリット

UNIX(R)の標準である SVR4 は、主要な UNIX システム (System V、BSD、SunOS、Xenix) を取り込み、UNIX ユーザが実際に使用しているシステムのほとんどを統合しています。Solaris オペレーティング環境は SVR4 に基づくもので、多くのシステムとの互換性、スケーラビリティ、市場へ製品を送り出すまでの時間の短縮といった標準的なオペレーティングシステムの特長を、ソフトウェア開発者、システム管理者、エンドユーザに提供します。また、長年にわたって洗練された、機能的で強力な製品も提供しています。この多くのメリットの中には、Solaris オペレーティング環境の移植性、スケーラビリティ、相互運用性、互換性などが含まれます。

Solaris オペレーティング環境は、SVR4 に基づくものですが、マルチスレッド対応のシンメトリック (対称型) のマルチプロセッシング、リアルタイム機能、セキュリティの向上、システム管理の改善などの面で、機能を拡張しています。

Solaris オペレーティング環境には次のような特長があります。

移植性、スケーラビリティ、相互運用性、互換性

Solaris オペレーティング環境は、移植性、スケーラビリティ、相互運用性、互換性を備えています。

移植性

SunOS は、複数のベンダのプラットフォームに移植されています。アプリケーションバイナリインタフェース (ABI) に準拠しているソフトウェアは、共通のアーキテクチャのマイクロプロセッサを採用したシステムであれば、どのベンダのシステムでも、シュリンクラップ形式のソフトウェアとしてそのまま実行できます。この結果、アプリケーション開発者はソフトウェア開発コストを削減し、製品を迅速に市場へ送り出すことができます。また、ユーザは、ハードウェアをアップグレードしてもソフトウェアアプリケーションを変更する必要がなく、変換に要するコストを最小限に抑えることができます。

スケーラビリティ

アプリケーションはより広く使われるようになり、より強力なシステムを必要とするようになります。拡張を続ける環境で効率の良い動作を実現するには、ソフトウェアは幅広い範囲のシステムで動作すると同時に、強力なシステムの処理能力を十分に生かせるものでなければなりません。Solaris オペレーティング環境は、ラップトップからスーパーコンピュータまで、あらゆる大きさのマシンで動作します。

相互運用性

今日、異機種コンピューティング環境が現実のものとなっています。ユーザは、必要とするソリューションを実現するために、多くのベンダからシステムを購入します。異機種環境では、ユーザがネットワーク全体で情報をやりとりしながら、戦略を実行に移すことができるように、標準化と明確なインタフェースが必要とされます。 サンのシステムは、今日市場に出回っている一般的なすべてのシステムと相互運用することが可能であり、UNIX 上で動作しているアプリケーションと、容易に情報の交換を行うことができます。

互換性

コンピュータ技術は急速な成長を続けていますが、その一方でベンダは競争力を保つために、コストを最小限に抑え、最大の投資効果を生み出さなければなりません。サンは、新しい技術が採用されても、既存のソフトウェアへの投資が無駄にならないことを保証します。ユーザは、今日のソリューションのメリットを与えられると同時に、明日の技術との互換性も保証されます。

大規模な組織にとってのメリット

Solaris オペレーティング環境は、UNIX オペレーティングシステムをベースとする業界標準へ移行することによるメリットを提供します。アプリケーションの開発と保守のコストは削減され、アプリケーションの移植性は拡張されます。

SVR4 と Solaris オペレーティング環境の比較

この節では、SVR4 と Solaris オペレーティング環境の主な違いについて説明します。Solaris オペレーティング環境で利用できて SVR4 で利用できない機能と、SVR4 で利用できて Solaris オペレーティング環境で利用できない機能を取り上げます。

Solaris オペレーティング環境で追加された機能

Solaris オペレーティング環境は、SVR4 ベースのオペレーティングシステムに、付加価値の高いコンポーネントを追加しています。これらはコンピュータ処理を容易にするとともに、ユーザ、システム管理者、開発者に新しい可能性を提供するものとなります。

一般的に、SVR4 に代表される既存のシステムや Solaris オペレーティング環境は、既存のアプリケーションとの互換性を維持しながら、機能を強化しています。この結果、削除する機能をわずかにとどめ、多くの機能やコマンドを追加しています。

ユーザ用の機能

Solaris オペレーティング環境に含まれる強力な DeskSet アプリケーションのセットは、ユーザ個人の生産性を高めます。DeskSet のアプリケーションすべては、ドラッグ&ドロップのインタフェースを採用しているため、ユーザはマウスを使用するだけで、UNIX の複雑なコマンドを実行することができます。特に重要な機能を次に示します。

システム管理者用の機能

システム管理者は Solaris オペレーティング環境のさまざまな新しいツールにより、分散コンピューティング環境を容易に管理することができます。システム管理者用の機能として次のものが挙げられます。

開発者用の機能

アプリケーション開発者は、Solaris オペレーティング環境に含まれるさまざまなツールキットと機能によって、グラフィカルユーザインタフェースを使用する複雑なアプリケーションを容易に開発することができます。

Solaris オペレーティング環境に含まれない SVR4 の機能

SVR4 の機能の一部が、Solaris オペレーティング環境ではサポートされていません。これらは、AT&T のハードウェアに固有の機能、または、主に SVR3 の機能との上位互換性を保つために用意されている機能であるため、SunOS ユーザにとってはあまり意味のないものです。

Solaris オペレーティング環境は、System V のファイルシステムと、それに関連するユーティリティを含んでいません。これらは、UNIX のファイルシステムに比べて、制約が大きいためです。SVR4 のブートファイルシステムも、従来の SunOS のブートモデルに比べると管理負担が大きいため、採用されていません。

デバイスの自動構成とカーネルの再構築を行う AT&T の SVR4 の一般的なモデルは、完全な動的構成が可能なカーネルに置き換えられています。このカーネルは、現在と将来の SPARC システムのユーザのニーズに応えることができます。

SPARC XENIX はインストールベースでは存在しないため、Solaris オペレーティング環境の SPARC 用リリースは、XENIX アプリケーションとの互換性を持っていません。

Solaris オペレーティング環境には、AT&T の sysadm ユーティリティは含まれません。sysadm メニューユーティリティは、主に独立したシステムの端末デバイスを対象として設計されているため、ネットワーク全体にわたる分散システムの処理を容易にするという視点からグラフィカルユーザインタフェースが採用されました。Solaris オペレーティング環境は、SVR4 の sysadm ユーティリティの基本的な部分を持つユーティリティや構成ディレクトリを提供していますが、sysadm ユーティリティ自体は提供していません。