この章では、システムのシャットダウンとブートについて概要を説明します。Solaris オペレーティングシステムは、電子メールとネットワーク資源をいつでも利用できるように停止することなく動作するように設計されています。しかし、システム構成の変更、定期保守、停電などの理由で、システムをシャットダウンまたはリブートしなければならない場合があります。
この章の内容は次のとおりです。
この節では、Solaris 7 におけるシステムのシャットダウンとブートに関する新機能について説明します。
バグ ID 1154696 は Solaris 7 で修正されました。つまり、shutdown -s または init -s コマンドで、システムを正常にシャットダウンし、レベル S (シングルユーザーモード) に移行できるようになりました。inittab ファイルと、/etc/init.d および /etc/rcn.d ディレクトリ内の rc スクリプトが修正され、システム起動レベルの変更が適切かつ効率的に行われるようになりました。
32 ビットまたは 64 ビットの Solaris 7 オペレーティング環境のシステムをブートする方法については、「64 ビット Solaris ブート時の問題の解決」を参照してください。
システムをシャットダウンおよびブートする手順については次を参照してください。
ここではシャットダウンとブートに関する用語について説明します。
実行レベルと init 状態 - 「実行レベル」とは、システムの状態を表す文字または数字のことで、どのシステムサービスを使用できるのかを示します。システムは常に定義済み実行レベルの 1 つで動作します。実行レベルを変更するために init プロセスが使用されるため、実行レベルは「init 状態」と呼ばれることもあります。システム管理者は init(1M) コマンドを使用して、実行レベルを変更します。
ブートタイプ - 「ブートタイプ」とはシステムのブート方法を指すもので、次のようなブートタイプがあります。
対話式ブート - システムのブート方法に関する情報 (カーネルやデバイスのパス名など) を入力するプロンプトが表示されます。
再構成用ブート - システムが再構成され、新しく追加したハードウェアや新しい擬似デバイスがサポートされます。
回復ブート - システムがハング状態になったとき、無効なエントリがあるためシステムが正常にブートできないとき、またはユーザーがログインできないときに使用します。
システムをシャットダウンするときは次の点に注意してください。
システムのシャットダウンには、init および shutdown コマンドを使用します。これらのコマンドは、すべてのシステムプロセスとサービスを正常に終了させてからシャットダウンします。
サーバーをシャットダウンする場合は、shutdown コマンドを使用します。shutdown コマンドは、シャットダウンを実行する前に、サーバーにログインしているユーザーやサーバー資源をマウントしているシステムにシャットダウンを通知します。システムのシャットダウンについては、ユーザーが予定を立てられるようあらかじめ電子メールで知らせておくようにします。
shutdown または init コマンドを使用してシステムをシャットダウンするには、スーパーユーザー権限が必要です。
どちらのコマンドも実行レベルを引数に指定します。最もよく使用される実行レベルは次の 3 つです。
実行レベル 3 - すべてのシステム資源を使用でき、ユーザーもログインできる状態。デフォルトでは、システムをブートすると実行レベル 3 になります。通常の運用で使用されます。NFS 資源を共有できるマルチユーザーレベルとも呼ばれます。
実行レベル 6 - オペレーティングシステムを停止して、/etc/inittab ファイルの initdefault エントリに定義されている状態でリブートします。
実行レベル 0 - オペレーティングシステムがシャットダウンされ、安全に電源切断できる状態。システムの設置場所を変更したり、ハードウェアを追加または削除する場合は、システムを実行レベル 0 にする必要があります。
実行レベルについての詳細は、第 6 章「実行レベルとブートファイルの手順」を参照してください。
シャットダウン後にシステムをブートするには、SPARC システムの場合は、PROM レベルでboot コマンドを使用します。x86 システムの場合は、一次ブートサブシステムメニューで boot コマンドを使用します。
電源を切断したあと再投入すればシステムをリブートできます。ただし、この方法では、システムサービスやプロセスが突然終了してしまうので、適切なシャットダウンとは言えません。緊急時のリブート以外には使用しないようにします。
SPARC および x86 システムでは、ブート時に使用するハードウェアが異なります。これらのハードウェアの違いについては、第 10 章「ブートプロセスの参照情報」を参照してください。
再構成用ブートは、システムに新しいハードウェアを追加したときや擬似デバイスのサポートを再構成したとき (pty 数の増加など) に行います。表 5-1 は、どの場合にどの再構成手順を使用するかをまとめたものです。
表 5-1 再構成手順
システム再構成の内容 |
参照先 |
---|---|
ディスクの追加 | |
周辺装置の追加 | |
擬似デバイス数の変更 |
『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』の「システム情報の確認と変更」 |
表 5-2 は、システム管理作業とそれに伴って必要となるシャットダウンの種類をまとめたものです。
表 5-2 システムのシャットダウン
管理作業 |
以下の実行レベルに変更 |
参照先 |
---|---|---|
停電のためシステムの電源を切断する。 |
実行レベル 0。安全に電源を切れる状態。 | |
/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更する。 |
実行レベル 6 (システムのリブート)。 | |
ファイルシステムを保守する (システムデータのバックアップや復元など)。 |
実行レベル S (シングルユーザーモード)。 | |
/etc/system などのシステム構成ファイルを修正する。 |
「システムをブートする場合」を参照。 |
なし |
/etc/system ファイル内の擬似デバイスパラメータを変更する。 |
再構成用ブート。 |
『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』の「カーネルパラメータの調整手順」 |
システムにハードウェアを追加する (または、システムからハードウェアを削除する)。 |
再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を切断する)。 | |
ブート失敗の原因となっている重要なシステムファイルを修正する。 |
「システムをブートする場合」を参照。 |
なし |
カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査する。 |
実行レベル 0 (可能な場合)。 | |
ハング状態から回復する。または、クラッシュダンプを強制する。 |
「システムをブートする場合」を参照。 |
なし |
サーバーまたはスタンドアロンシステムのシャットダウンの例については、第 7 章「システムのシャットダウンの手順」を参照してください。
表 5-3 は、システム管理作業とそれに伴って必要となるブートの種類をまとめたものです。
表 5-3 システムのブート
リブート前に実行した管理作業 |
使用するブート種類 |
SPARC のブート手順の参照先 |
x86 のブート手順の参照先 |
---|---|---|---|
停電のためシステムの電源を切断した。 |
システムの電源を再投入する。 | ||
/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更した。 |
システムを実行レベル 3 にリブートする (NFS 資源を共有できる状態のマルチユーザーモード) | ||
ファイルシステムを保守した (システムデータのバックアップや復元など)。 |
実行レベル S で Ctrl-d を押して、システムを実行レベル 3 に戻す。 | ||
/etc/system などのシステム構成ファイルを修正した。 |
対話式ブート。 | ||
/etc/system ファイル内の擬似デバイスパラメータを変更した。 |
再構成用ブート。 |
『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』の「カーネルパラメータの調整手順」 |
『Solaris のシステム管理 (第 2 巻)』の「カーネルパラメータの調整手順」 |
システムにハードウェアを追加した (または、システムからハードウェアを削除した)。 |
再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を投入する)。 | ||
カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査した。 |
kabd をブートする。 | ||
ブート失敗の原因となっていた重要なシステムファイルを修正した。 |
回復ブート。 | ||
ハング状態から回復した。または、クラッシュダンプを強制した。 |
回復ブート。 |
システムブートの例については、第 8 章「SPARC: システムのブートの手順」または第 9 章「x86: システムのブートの手順」を参照してください。