Java ES の導入につながるビジネスのニーズは多様です。ただし、ほとんどすべての Java ES 配備の高い目標は、次のいずれかの導入シナリオに該当します。
新しいシステム: 既存のソフトウェアシステムなしで始め、新しいビジネスソリューションをサポートするために Java Enterprise System ソフトウェアを配備します。
強化: 既存の情報技術 (IT) インフラストラクチャーで始め、そのシステムの一部、大部分、または全部を Java ES ソフトウェアで置き換えます。通常は、システムまたはサブシステムが複雑すぎるか、制約が多すぎるか、維持するのに高価であるという理由でシステムやサブシステムを置き換えます。たとえば、セキュリティーの向上、高い可用性、スケーラビリティーの向上、柔軟性の向上、複雑さの解消、追加機能 (シングルサインオンなど)、または IT リソースの有効利用が必要であるなどです。つまり、既存のシステムで得られるよりも優れた投資効果を望んでいるということです。
拡張: 既存の IT インフラストラクチャーで始め、現在システムに含まれない Java Enterprise System ソフトウェアを配備します。通常、新しいビジネスのニーズに対応するために、この方法でソフトウェアシステムを拡張します。Java ES ポータルによる既存のサービスの個人用にカスタマイズされた集約や既存のサービスに対する Java 認証および承認などの新しい機能が必要になる場合があります。
アップグレード: Java Enterprise System の以前のバージョンまたは Java Enterprise System よりも前の Sun 製品から構成される IT インフラストラクチャーで始め、Java Enterprise System コンポーネントの最新のバージョンにアップグレードします。
各導入シナリオには、それぞれ考慮しなければならない点と克服しなければならない点があります。ユーザーの状況に当てはまる導入シナリオがどれであるかにかかわらず、図 1–3 に示すソリューションのライフサイクルプロセスが適用されます。ただし、導入シナリオによって、ライフサイクルの各フェーズで対処する必要のある問題や投資する必要のあるリソースが異なります。
一般に、導入シナリオには、次に示す考慮事項が程度の差はありますが適用されます。
移行: 既存のインフラストラクチャーを新しいソフトウェアで強化またはアップグレードするには、多くの場合、既存のシステムから新しいシステムにデータを移行する必要があります。データは、設定情報、ユーザー情報、アプリケーションの情報などになります。新しいプログラミングインタフェースのために、ビジネスロジックやプレゼンテーションロジックを移行する必要がある場合もあります。
統合: 新しいソフトウェアを既存のシステムに追加したり、既存のソフトウェアサブシステムを置き換えたりするには、多くの場合、新しいソフトウェアコンポーネントを残りのサブシステムに統合する必要があります。統合には、新しいインタフェースレイヤーの開発、J2EE コネクタまたはリソースアダプタの使用、既存のコンポーネントの再設定、データ変換スキーマの実装などが含まれます。
トレーニング: インフラストラクチャーの変更はほとんどの場合、IT 手順やスキルセットの変更を意味します。IT 部門は、Java Enterprise System テクノロジをサポートするための、新しいスキルの習得、または古いスキルの移行のために十分な時間を確保できる必要があります。
ハードウェア: 既存のシステムまたはサブシステムを置き換えたり強化したりする場合、ビジネス上の制約により、既存のハードウェアを再利用しなければならない可能性があります。導入シナリオによっては、ハードウェアリソースが重要な要素になります。
次の表は、Java ES の各導入シナリオに該当する考慮事項の性質を要約しています。
表 1–6 Java ES 導入シナリオに関する考慮事項