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Sun ONE Application Server 7, Enterprise Edition サーバーアプリケーションの移行および再配備

第 2 章
Sun ONE Application Server 7, Enterprise Edition の概要

この章では、SunTM ONE Application Server 7 製品ラインの概要、SunTM ONE Application Server 7 のアーキテクチャ、およびサーバー環境に不可欠な J2EE コンポーネントについて説明します。さらに、Sun ONE Application Server 7 製品ラインの環境とそれ以前の Sun ONE Application Server 環境の違いについても説明します。

次の項目について説明します。


製品ラインの概要

Sun ONE Application Server 7 は、アプリケーションサーバー関連の技術の向上に寄与する、画期的な製品です。最新の Java テクノロジを開発者向けに使いやすくパッケージ化しています。Application Server は、高度なスケーラビリティを備えたアプリケーションサーバー技術を実現したいという Sun の専門家たちの 6 年以上におよぶ開発努力の成果です。本製品により、JavaServer Pages (JSPTM) テクノロジ、JavaTM Servlet、Enterprise Java BeansTM (EJBTM) テクノロジをベースにした堅牢なアプリケーションを迅速に開発できます。本製品のテクノロジは、小規模な部門アプリケーションからエンタープライズ規模のミッションクリティカルなサービスまで、広い範囲のビジネス要件をカバーしています。本稼動環境と開発環境の両方に幅広く対応するため、次の 3 種類のアプリケーションサーバーが用意されています。

Platform Edition

Platform Edition は、Sun ONE Application Server 7 製品ラインの中核を成す製品です。本製品では、J2EE 1.3 仕様に準拠した高性能なの実行環境を提供します。この環境は、基本的な配備作業やサードパーティ製のアプリケーションの組み込みにも適しています。

Platform Edition の配備先は、単一アプリケーションサーバーインスタンスに限られています。このアプリケーションサーバーインスタンスは、単一のJava プラットフォーム用の仮想マシン、すなわち Java 仮想マシン (JVMTM) になります。Platform Edition では、複数層の配備トポロジがサポートされます。ただし、Web サーバー層のプロキシはロードバランスを行いません。さらに、管理ユーティリティを使用できるのは、ローカルクライアントに限定されています。

Sun ONE Application Server 7, Platform Edition は Solaris 9 にバンドルされています。

Standard Edition

Standard Edition では、Platform Edition の機能に加え、拡張されたリモート管理機能の層が提供されます。リモート管理機能では、中央の管理ステーションから複数のアプリケーションサーバーインスタンスを管理することが可能です。また、Web サーバー層のプロキシにより Web アプリケーションのトラフィックを分散する機能もあります。Standard Edition では、管理ドメインごとに複数のアプリケーションサーバーインスタンスを設定できます。また、SNMP (Simple Network Management Protocol) を使って Standard Edition のアプリケーションサーバーを監視できます。バンドルされている Sun ONE Directory Server は、ユーザー認証機能を持ち、限られたアプリケーション構成データを格納しています。

Enterprise Edition

Enterprise Edition では、アプリケーションサーバープラットフォームの基本機能に、高可用性、ロードバランス機能、クラスタ管理機能が追加されています。これにより、高性能な実行環境を必要とするような、J2EE ベースのアプリケーションもスムーズに配備できます。Standard Edition より高度な管理機能により、複数のインスタンスの配備にも対応しています。

クラスタリング機能では、複数のアプリケーションサーバーインスタンスの複製をグループとして構成し、クライアント要求のロードバランスを行うことができます。Enterprise Edition では、Web 層のロードバランスプラグインとサードパーティのハードウェアロードバランサがサポートされます。「Always On (常時配信)」という独自の高可用性データベーステクノロジを、高可用性持続ストアの基盤として採用しています。


Sun ONE Application Server 7 のアーキテクチャ

アプリケーションサーバーは、クライアントがバックエンドソースに接続するための基盤を提供し、アプリケーションロジックを実行し、実行結果をクライアントに戻します。アプリケーションサーバーは 3 層コンピューティングモデルの中間層を使用します。

Sun ONE Application Server 7 製品ラインは、多種多様なサーバー、クライアント、およびデバイスを対象とした電子商取引アプリケーションサービスを開発、配備、管理するための堅牢な J2EE プラットフォームです。

Sun ONE Application Server 7, Enterprise Edition アーキテクチャの主な機能は次のとおりです。

Sun ONE Application Server 7 はまた、第一世代の Sun ONE アプリケーションサーバー製品から大きく進歩したアーキテクチャを持っています。既存の強力な Sun ONE 製品およびテクノロジと J2EE 1.4 標準を組み合わせた Sun ONE Application Server 7 のアーキテクチャは、様々なテクノロジの基盤として最適なものです。

図 2-1 Sun ONE Application Server 7 Enterprise Edition のアーキテクチャ

上の図は、Sun ONE Application Server 7 アーキテクチャを図解したものであり、Sun ONE Application Server のコンポーネントアーキテクチャ、サブシステム、アクセスパス、および外部エンティティとコアサーバーのインタフェースが示されています。

Sun ONE Application Server 7 のアーキテクチャは高度にコンポーネント化されており、非常に管理しやすいものになっています。J2EE 仕様で要求されるすべてのサービスは、明確に定義された標準インタフェースとして提供され、アプリケーションから呼び出して使用できます。

Web ユーザーインタフェースにより、容易にリモートサーバー管理ができます。実際は 1 台の管理サーバーで複数のサーバーを管理することができる設計になっています。

Sun ONE Application Server のオペレーションで JDK 1.4 を使用することにより、このバージョンで拡張された機能を利用できるようになっています。

一般的な J2EE アプリケーションは n 層のシステムで構成され、クライアントは処理された情報を Web サーバーまたはアプリケーションサーバーから取得します。サーバーは RDBMS や ERP などの企業規模のシステムが持つ情報にアクセスし、ビジネスロジックで処理し、処理後の情報を適切な形式でクライアントに配信します。これらのレイヤはそれぞれクライアントレイヤ (Web ブラウザまたはリッチ Java クライアント)、中間レイヤ (Web サーバーおよびアプリケーションサーバー)、およびバックエンドレイヤまたはデータレイヤ (データベースなどの企業規模のシステム) に対応します。

Sun ONE Application Server の J2EE アプリケーションモデルを使用すれば、J2EE コンポーネントが低レベルの詳細に関するすべての処理を受け持つため、開発者はビジネスロジックの作成に集中することができます。したがって、アプリケーションおよびサービスを容易に拡張して短期間で配備し、競合相手の変化に素早く対応することができます。J2EE プラットフォームでオープンスタンダードアーキテクチャを提供している Sun ONE Application Server は、拡張性と高い可用性を持ち、安全で信頼性の高い多層サービスの開発における複雑さと費用の問題を解決します。


J2EE コンポーネント標準

Sun ONE Application Server 7 は J2EE 1.3 に準拠したサーバーです。Java コミュニティによって開発された、サーブレット、Java Server Pages、および Enterprise JavaBeans (EJB) 用のコンポーネント標準をベースにしています。

Sun ONE Application Server 7 以前の Sun ONE Application Server 6.0/6.5 は、J2EE 1.2 に準拠したサーバーです。2 つの J2EE バージョンの間には、J2EE アプリケーションコンポーネント API に関して大きな違いがあります。

J2EE 1.3 準拠の Sun ONE Application Server 7 Enterprise Edition および Standard Edition と、J2EE 1.2 準拠の Sun ONE Application Server 6.0/6.5 で使用されるコンポーネント API 間の相違点を次の表に示します。

表 2-1 J2EE コンポーネント用 API の Application Server 間でのバージョン比較

コンポーネント API

Sun ONE Application Server 6.0/6.5

Sun ONE Application Server 7, Enterprise Edition と Standard Edition

JDK

Sun 1.2.2

Sun 1.4

サーブレット

2.2

2.3

JSP

1.1

1.2

JDBC

2.0

2.0

EJB

1.1

2.0

JNDI

1.2

1.2

JMS

1.0

1.1

JTA

1.0

1.01

さらに、この 2 つの製品では、XML 標準および Web サービスと関連のあるテクノロジを多数サポートしています。これらは J2EE 仕様の一部ではないものの、企業アプリケーションでますます広く使用されるようになっています。これらの標準を次の表に示します。

表 2-2 Application Server がサポートするその他のテクノロジ 

テクノロジ

Sun ONE Application Server 6.0/6.5

Sun ONE Application Server 7

XML 文書処理 (API および XML パーサ)

JAXP 1.0、Apache Xerces

JAXP 1.1

Web サービス用 SOAP/Java サポート

SOAP 1.1 (IBM SOAP4J フレームワーク)

Apache SOAP 2.2、JAX-RPC 1.0、JAXM 1.1、JAXR 1.0


開発環境

この節では Sun ONE Application Server 6.0/6.5 と Sun ONE Application Server 7 の開発環境の違いを説明します。次の項目があります。

Sun ONE Application Server 6.0/6.5 の開発環境

Sun ONE Application Server 6.0/6.5 では Sun ONE Studio for Java の評価バージョンを提供しています。これは特にこのバージョンの Sun ONE Application Server のアプリケーション開発向けに調整されています。

これは NetBeans プラットフォームをベースにした完全な Java 開発環境です。この IDE は、Java アプリケーションおよび EJB コンポーネントの設計および開発のための、非常に広範囲の機能を提供します。また、プラグインによって Sun ONE Application Server と統合し、アプリケーションの様々な J2EE コンポーネントのアセンブリ、配備およびデバックに使用できます。Windows および Solaris のどちらの環境でも利用できます。

市場に出回っているサードパーティベンダー提供のソリューションの中では、最近リリースされた Borland JBuilder 6 Enterprise が非常に完成度が高く、利用範囲の広い製品です。Windows、Solaris、Linux、および MacOS X など複数のプラットフォームで動作するという利点もあります。JBuilder は、サーブレット、JSP ページ、EJB コンポーネント、グラフィックアプリケーションなどの Java の開発機能だけではなく、UML 設計、単体テスト、共同開発、および XML 開発の機能も提供しています。さらに、JBuilder を Sun ONE Application Server を含むメインストリームのアプリケーションサーバーと完全に統合し、Web アプリケーションおよび EJB コンポーネントのアセンブリ、配備およびデバッグに使用できます。

Sun ONE Application Server 7 の開発環境

Sun ONE Application Server 7 をうまく使いこなせるかどうかは、完全に統合された開発環境を利用できるかどうかで決まります。Sun ONE Studio for Java Enterprise Edition 4 は Sun ONE アプリケーション開発のための重要なツールです。

Sun ONE Studio for Java 4 は Sun ONE Application Server とともに提供されます。

Sun ONE Studio for Java Enterprise Edition 4 の中心的な機能を次に示します。

次の図のように、Sun ONE Application Server 7 統合モジュールは、Sun ONE Studio Close Source で実装される NetBeans Open Source モジュールを基にしています。

図 2-2 Sun ONE Studio 4.0 Enterprise Edition と Sun ONE Application Server 7 の統合


管理ツール

この節では Sun ONE Application Server 6.0/6.5 と Sun ONE Application Server 7 の管理ツールの違いについて説明します。次の項目があります。

Sun ONE Application Server 6.0 の管理ツール

Sun ONE Application Server 6.0 は、サーバー管理のあらゆる機能をカバーする、完全なグラフィカル管理ツールを提供しています。

Sun ONE Application Server 6.5 の管理ツール

Sun ONE Application Server 6.5 は、統合されている Administration Tool、Sun ONE registry editor およびコマンド行ツールで管理できます。以下はその説明です。

Sun ONE Application Server 7 の管理ツール

Sun ONE Application Server 7 の管理サーバーはサーバーの特別なインスタンスです。管理インタフェースとしての機能を持ち、すべてのサーバーインスタンスに共通のグローバル設定を管理します。Web ベースのサーバーであり、Sun ONE Application Server 設定用のフォームを持ちます。

アプリケーションサーバーを管理するためのグラフィカルツールです。エラーやアクセスログの表示、サーバーの稼動状況の監視、仮想サーバーの作成と編集、構成内容の変更、サーバーインスタンスの起動および停止などを行います。

Sun ONE Application Server をインストールする際に、管理サーバーのポート番号を選択していない場合は、デフォルトのポート番号 4848 を使用しています。管理インタフェースにアクセスするには、Web ブラウザで次の URL を指定します。

http://hostname:port/admin

設定済みのユーザー名とパスワードの入力が要求されます。入力して「OK (了解)」ボタンをクリックすると、次の図のような管理インタフェースのホームページが表示されます。

左側のペインには、Sun ONE Application Server で設定できるすべての項目がツリー表示されます。管理インタフェースを使用するには、この左側のペインのどれか 1 つの項目をクリックします。右側のペインに、クリックした項目に対応するページが表示されます。

管理インタフェースのどのページのヘルプも、管理インタフェースの最上部のバナーにある「Help (ヘルプ)」ボタンをクリックして表示できます。オンラインヘルプには、表示されているページの使用方法や、ページ内のフィールドに入力する内容についての説明が記載されています。

図 2-3 管理インタフェースのホームページ

Sun ONE Application Server 7 はコマンド行インタフェースを装備しています。ユーティリティおよびコマンドを使用して、管理インタフェースと同じタスクを実行できます。コマンド行インタフェースは、シェル内のコマンドプロンプトから使用できるほか、スクリプトやプログラムから呼び出すこともできます。これらのコマンドを使用して、繰り返し行う管理タスクを自動化できます。

Sun ONE Application Server 7 のコマンド行ユーティリティ asadmin は、Windows のコマンドプロンプト、および Solaris のシェルプロンプトで実行できます。asadmin ユーティリティは、管理タスクを実行するためのコマンドセットです。これらのコマンドを使用して、基本設定からアプリケーション配備までのすべてのタスクを、管理インタフェースと同じように実行できます。コマンドの詳細を表示するには、asadmin ユーティリティに続いて help と入力します。

asadmin は、シングルモードまたはマルチモードで実行できます。シングルモードでは、コマンドプロンプトからコマンドを 1 つずつ実行します。マルチモードでは、環境レベル情報を再登録することなく、複数のコマンドを実行できます。


データベース接続

Sun ONE Application Server の各リリースでサポートされているデータベースの詳細な説明は、『プラットフォームの概要』を参照してください。


J2EE アプリケーションコンポーネントと移行

J2EE は、標準化されたモジュールコンポーネントをベースとして、これらのコンポーネントへの一連のサービスを提供し、アプリケーションの詳細な動作の多くを自動処理することにより、企業アプリケーションの開発を単純化します。複雑なプログラミングは必要ありません。J2EE 1.3 アーキテクチャには、さまざまなコンポーネント API が含まれます。主な J2EE API を次に示します。

J2EE コンポーネントは個別にパッケージ化され、配備用 J2EE アプリケーションにバンドルされます。各コンポーネント、GIF および HTML ファイルやサーバーサイドユーティリティクラスなどの関連ファイル、および配備記述子は、1 つのモジュールとしてアセンブルされ、J2EE アプリケーションに追加されます。J2EE アプリケーションは、1 つまたは複数の Enterprise JavaBeans、Web、またはアプリケーションクライアントコンポーネントモジュールで構成されます。最終的な企業用ソリューションは、設計要件に応じて 1 つの J2EE アプリケーションを使用することも、2 つ以上の J2EE アプリケーションで構成することもできます。

J2EE アプリケーションおよびその各モジュールは、独自の配備記述子を備えています。配備記述子は、拡張子 .xml を持つ XML ドキュメントであり、コンポーネントの配備設定を記述します。たとえば、Enterprise JavaBean モジュールの配備記述子は、Enterprise JavaBean 用のトランザクション属性およびセキュリティ認証を宣言します。配備記述子情報が宣言されるため、Bean ソースコードを修正しなくても変更できます。J2EE サーバーは、実行時に配備記述子を読み込み、そのコンポーネント上で適切に動作します。

J2EE アプリケーションとそのすべてのモジュールは、EAR ファイル (Enterprise アーカイブファイル) で配布されます。EAR ファイルは、拡張子 .ear を持つ標準 JAR ファイル (Java アーカイブファイル) です。EAR ファイルには、EJB JAR ファイル、アプリケーションクライアント JAR ファイル、あるいは WAR ファイル (Web アーカイブファイル) があります。これらのファイルの特徴を次に示します。

モジュールおよび EAR ファイルを使用すると、同一コンポーネントのいくつかを使用して、種類の異なる多数の J2EE アプリケーションをアセンブルできます。追加のコーディングは必要ありません。さまざまな J2EE モジュールを単純に J2EE EAR ファイルにアセンブルするだけです。

移行プロセスでは、主に J2EE アプリケーションコンポーネント、モジュール、およびファイルの移動を行います。

各種の J2EE コンポーネントの移行に関する詳細は、第 3 章「Sun ONE Application Server 6.x から Sun ONE Application Server 7 への移行」を参照してください。

J2EE の基本情報の詳細については、以下を参照してください。



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