ドメインでアービトレーション停止 (arbstop: arbitration stop) が発生すると、そのドメインが動かなくなり、あらゆるハードウェアレベルのトランザクションが停止されます。IDN の一部であるドメイン内でアービトレーション停止が発生すると、その IDN 内の他のすべてのドメインでアービトレーション停止が次々と発生します。
アービトレーション停止が発生した IDN のメンバーでないドメインは、アービトレーション停止の影響を受けません。
通常、アービトレーション停止はめったに発生しないので、問題はありません。しかし、その IDN にある他のドメインが未認識の状態にあり、リンク解除しようとするドメインとの通信を試みる可能性がある場合は、リンク解除コマンドでアービトレーション停止が発生するおそれがあります。特にコマンドに強制オプションを指定した場合は注意してください。
ドメインまたはクラスタのアービトレーション停止が発生する場合は、その時点の BBSRAM とアービトレーション停止情報が以下のファイルにダンプされます。
ドメインのアービトレーション停止
$SSPLOGGER/ドメイン名/Edd-Arbstop-bbsram-タイムスタンプ
$SSPLOGGER/ドメイン名/Edd-Arbstop-Dump-タイムスタンプ
クラスタのアービトレーション停止
$SSPLOGGER/ドメイン名/Edd-MD-Arbstop-bbsram-タイムスタンプ
$SSPLOGGER/ドメイン名/Edd-MD-Arbstop-Dump-タイムスタンプ
アービトレーション停止が発生する条件について理解するには、複数のシステムボードが互いに通信できるハードウェアアーキテクチャーを考慮することが役立ちます。以下の図では、3 つのドメインが存在し、そのいずれもが IDN のメンバーではありません。
インターコネクト (システムバックプレーン) には 共有メモリードメインレジスタがあり、各ボードには共有メモリーマスクレジスタがあります。これらのレジスタはともに動作して、ドメイン内でのボード間通信をサポートし、IDN 環境でのドメイン間通信を容易にします。インターコネクト上の共有メモリードメインレジスタは、発信元のボードがメッセージを指定された受信先ボードに送信できるようにレジスタがプログラムされている場合にだけ、メッセージを特定の受信先ボードに転送します。これに対応して、受信先ボードの共有メモリーマスクレジスタは、受信先ボードが発信元ボードからメッセージを受信できるようレジスタがプログラムされている場合にだけ、メッセージを受け付けます。
図 1-3 では、3 つのドメインのインターコネクト上の共有メモリードメインレジスタがグループ化され、ドメイン間のメッセージ転送が可能になっています。加えて、各ドメインのボードは、他のドメインからのメッセージを受け付けるようにプログラムされた共有メモリーマスクレジスタを持っています。
いずれかのボードが他のボードにメッセージを送信しようとする場合や共有メモリードメインレジスタまたは共有メモリーマスクレジスタが 2 つのボード間の通信を妨げる場合は、特定のハードウェアの障害に加えて、アービトレーション停止が発生することがあります。リンク処理またはリンク解除処理時に、domain_link(1M) と domain_unlink(1M) コマンドは、ドメイン間トランザクションを有効または無効にするためにこれらのレジスタを再プログラムします。
1 つのドメインが部分的ハングアップなどの未認識状態にある場合に、IDN 内の別のドメインをリンク解除しようとすると、domain_unlink(1M) コマンドは、強制オプションの -f または -F のいずれかを使用しない限り失敗します。これは、domain_unlink(1M) コマンドが、その共有メモリーに関連するレジスタを再プログラムする前に、ハングアップしたドメインと通信してすべてのドメイン間トランザクションが停止したことを確認する必要があるからです。domain_unlink(1M) コマンドは、ドメインが応答しない場合は、共有メモリードメインレジスタを再プログラムしません。リンク解除を処理するよう強制すると、共有メモリードメインレジスタは再プログラムされますが、ハングアップしたドメインの共有メモリーマスクレジスタが再プログラムされず、ドメインの IDN ソフトウェアは切断されたことを認識しません。
すべての IDN 固有のレジスタが再プログラムされた後、ハングアップしたドメインが他のドメインとの通信を試みると、ハングアップしたドメインやその IDN 内の他のドメインでアービトレーション停止が発生することがあります。このため、強制オプションを使用するのは、ハングアップしたドメインが同じネットワークの他のドメインとそれ以上通信を試みないことが確実な場合に限られます。このようなアービトレーション停止の可能性を減少させるため、他のドメインをリンク解除する前に、ハングアップしたドメインを再起動するか、IDN からリンク解除します。
どうしても必要な場合以外は、認識されているアクティブなドメインに対して強制オプションを使用してはなりません。