この章では、IDN コマンドの使用方法について説明します。第 1 章「InterDomain Networks の概要」を読んでから、この章のコマンドを使用するようにしてください。
IDN の構成方法はオンラインマニュアル Solaris 8 6/00 on Sun Hardware Collection - Japanese AnswerBook2 の「Sun Enterprise 10000 Domain 構成マニュアル」を参照してください。
この節では、IDN に対する一般的な要件と OpenBoot PROM (OBP) の要件を示します。
IDN コマンドを使用するには、最低限、システムに以下のソフトウェアコンポーネントが必要です。
ホストに、IDN ドライバパッケージ (SUNWidn.u、32 ビットバイナリと SUNWidnx.u、64 ビットバイナリ) が含まれる、Sun Enterprise 10000 サーバー用の Solaris オペレーティング環境の 1 つのバージョンがインストールされていること。
最新のすべてのパッチが適用された SSP 3.2 がインストールされていること。
OBP にある 1 つの変数 idn-smr-size によって、ドメインをリンクする前に SMR (Shared Memory Region: 共有メモリー領域) サイズを設定する必要があります。この値を 0 に設定すると、IDN 機能は無効になります。0 以外の値は、SMR として予約されるカーネル空間のメガバイト数を示します。
システムを起動または停止して OBP プロンプトを表示し、以下の例のように setenv コマンドを使用してこの変数を設定します。
<#o> ok setenv idn-smr-size 32 |
idn-smr-size の値は、OBP プロンプトでのみ設定することができます。新たな値を有効にするには、値の設定後、ドメインを再起動する必要があります。ただし、idn_smr_size driver.conf(4) 変数を使用して、SMR の実際のサイズを削減することができます。idn-smr-size idn.conf 変数のデフォルトのサイズと推奨サイズの詳細は、「Sun Enterprise 10000 Domain 構成マニュアル」を参照してください。
IDN をサポートするコマンドには、以下のものがあります。
domain_link(1M) - ドメインをリンクして IDN を形成または拡張します。
domain_unlink(1M) - 1 つ以上のドメインを IDN からリンク解除します。
domain_status(1M) - サーバー上のすべての IDN を形成するドメインの情報を表示します。
domain_link(1M)、domain_unlink(1M)、および domain_status(1M) コマンドは、ユーザー ssp から実行することが必要です。これらのコマンドについては、『Sun Enterprise 10000 SSP 3.3 リファレンスマニュアル』を参照してください。
domain_status(1M) コマンドは、ドメインの一般的な情報と、それらのドメインが属する IDN の情報を表示します。以下に例を示します。
ssp% domain_status DOMAIN TYPE PLATFORM OS SYSBDS xf3 Ultra-Enterprise-10000 xf3 5.7 4 6 7 xf3-b8 Ultra-Enterprise-10000 xf3 5.7 8 9 13 xf3-b10-hme0 Ultra-Enterprise-10000 xf3 5.6 10 11 xf3-b2 Ultra-Enterprise-10000 xf3 5.8 2 14 xf3-b5-fddi0 Ultra-Enterprise-10000 xf3 5.7 0 1 5 IDN NETWORKS 0: xf3-b2 xf3-b8 1: xf3 xf3-b5-fddi0 |
この例の最後のセクションは、このサーバーに 2 つの IDN が存在していることを示しています。各 IDN は番号で識別され、ネットワークを形成するドメインの名前がその後に表示されます。IDN に付けられた番号は、この一覧で使用するタグに過ぎず、その IDN に対する固定された識別子ではないことに注意してください。
この節では、IDN を作成するためにドメインをリンクする手順を示します。IDN の作成方法は、一緒にリンクされる各ドメインの状態によって変わります。非アクティブドメインでも、アクティブドメインでもリンクできます。domain_link(1M) コマンドの詳細は、「ドメインのリンク」を参照してください。
以下に 2 つのドメイン domain_a と domain_b をリンクする手順を示します。3 つ以上のドメインをリンクする場合は、対象のすべてのドメインについてドメインごとの手順 (つまり、ドメインプロンプトで実行する手順) を実行する必要があります。
IDN を構成するドメインは、IDN を定義する前に起動されて操作可能になっている必要はありません。ただし、ドメインが起動されていない場合は、リンク操作は SSP で保守される論理 IDN 情報を更新するだけです。bringup(1M) コマンドを使用してドメインを起動すると、SSP 上の IDN の 情報がドメインの構成に使用されます。
この手順を実行する前に、各ドメインに対して /etc/hostname.idnX ファイルが定義されていることを確認してください。このファイルの詳細は、「Sun Enterprise 10000 Domain 構成マニュアル」を参照してください。このファイルが定義されていない場合は、以下の手順を実行する前に各ドメイン用のファイルを作成する必要があります。
domain_switch(1M) コマンドを使用して、SUNW_HOSTNAME 変数に正しいドメイン名を設定します。
ドメイン上で、IDN をサポートする Solaris オペレーティング環境の 1 つのバージョンが動作している必要があります。バージョンサポート情報については、IDN リリース情報を参照してください。SUNW_HOSTNAME 変数に Solaris 2.5.1、Solaris 2.6、Solaris 7、Solaris 7 - 3/99、Solaris 7 - 5/99、Solaris 7 - 8/99 のいずれかのオペレーティング環境が動作するドメインが設定されている場合は、domain_link(1M) コマンドは失敗します。
SSP 上で domain_link(1M) コマンドを実行し、IDN を定義します。
ssp% domain_link domain_a domain_b |
起動されていないドメインでもリンクできるため、そのドメインが IDN をサポートするかどうかを確認することはできません。IDN をサポートしないドメインは、起動時に自動的にはリンクされません。
ドメインを起動して、OpenBoot PROM (OBP) プロンプトを表示します。
OBP プロンプトで、IDN ドライバを有効にします。
IDN ドライバを有効にするには、idn-smr-size 変数を有効な 0 でない値に設定する必要があります。
<#O> ok printenv |
idn-smr-size 変数が適切に設定されていない場合は、この変数の設定方法について「OpenBoot PROM 変数」を参照してください。
各ドメインに対して bringup(1M) コマンドを実行します。
ドメインを起動します。
すべてのドメインが起動された後、それらのドメイン間の IDN は、起動されたドメインを検出する SSP サービスによって自動的に有効になります。
以下に 2 つのドメイン domain_a と domain_b をリンクする手順を示します。3 つ以上のドメインをリンクする場合は、対象のすべてのドメインについてドメインごとの手順 (つまり、ドメインプロンプトで実行する手順) を実行する必要があります。以下の手順では、両方のドメインが起動されていると想定しています。
各ドメインに対して /etc/hostname.idnX ファイルが定義されていることを確認します。
このファイルの詳細は、「Sun Enterprise 10000 Domain 構成マニュアル」を参照してください。このファイルが定義されていない場合は、以下の手順を実行する前に各ドメイン用のファイルを定義する必要があります。
eeprom(1M) コマンドを使用して、IDN ドライバを有効にします。
オペレーティングシステムが SMR として適切な量のメモリーを予約するように、OBP 変数である idn-smr-size を起動前に設定する必要があります。デフォルトでは、idn_nwr_size は idn-smr-size に等しく、通常 idn-smr-size は IDN 内のすべてのドメインで同じ値に設定する必要があります。
IDN ドライバを有効にするには、idn-smr-size 変数に有効な 0 でない値を設定する必要があります。
<#O> ok printenv |
idn-smr-size 変数が適切に設定されていない場合は、この変数の設定方法について「OpenBoot PROM 変数」を参照してください。
domain_link(1M) コマンドを使用して、ドメインをリンクします。
ssp% domain_link domain_a domain_b |
以下に基本的な TCP/IP ネットワークを設定する手順を示します。実際の構成はこれとは異なることがあり、この例の手順が個々の構成に適用できるとは限りません。TCP/IP ネットワークの設定方法の詳細は、『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。
domain_switch(1M) コマンドを使用して、SUNW_HOSTNAME 変数に正しいドメイン名を設定します。
ドメイン上で、IDN をサポートする Solaris オペレーティング環境の 1 つのバージョンが動作している必要があります。バージョンサポート情報については、IDN リリース情報を参照してください。SUNW_HOSTNAME 変数に Solaris 2.5.1 または Solaris 2.6 オペレーティング環境が動作するドメインが設定されている場合は、domain_link(1M) コマンドは失敗します。
eeprom(1M) コマンドを使用して、各ドメインで IDN ドライバを有効にします。
IDN ドライバを有効にするには、idn-smr-size 変数に有効なゼロでない値を設定する必要があります。idn-smr-size 変数が適切に設定されていない場合は、この変数の設定方法について 「OpenBoot PROM 変数」を参照してください。
各ドメイン内でネットワークインタフェースを plumb および構成します。
plumb および IDN インタフェースの構成の詳細は、「Sun Enterprise 10000 Domain 構成マニュアル」を参照してください。IDN へのドメインのリンクは IDN インタフェースの plumb および構成の前後どちらでもかまいません。
domain_link(1M) コマンドを使用してドメインをリンクします。
ssp% domain_link domain_a domain_b |
domain_link(1M) コマンドで別々の IDN に属する 2 つのドメイン名を指定します。
ssp% domain_link domain_a domain_b |
このコマンドは、domain_a が属する IDN と domain_b が属する IDN を統合します。
この節では、IDN からドメインをリンク解除する方法を説明します。IDN からのリンク解除の方法は、リンク解除対象のドメインの状態と IDN 内の他のドメインの状態によって異なります。domain_unlink(1M) コマンドの詳細は、「ドメインのリンク解除」を参照してください。
domain_status(1M) コマンドを使用して、IDN 内にあるすべてのドメインの状態を確認します。
SSP 上で domain_unlink(1M) コマンドを実行し、ドメインへの IDN 接続を切断します。
ssp% domain_unlink ドメイン名 |
指定したドメインが属する IDN 内に、未認識 (AWOL) 状態 (たとえば、停止またはハングアップ状態) のドメインがある場合は、すべての AWOL ドメインを同時にリンク解除するか、目的のドメインに対して強制オプションを使用する必要があります。たとえば、domain_a および domain_c が未認識の状態にある場合は、以下のコマンドを使用してそれらを同時にリンク解除します。
ssp% domain_unlink domain_a domain_c |
ドメインが応答しない場合は、強制オプション (-f または -F) を使用して、目的のドメインをリンク解除します。
ssp% domain_unlink -f domain_b |
最初にすべてのドメインのリンク解除を試みた後で、強制オプションによる AWOL ドメインのリンク解除を試みることをお勧めします。リンク解除操作の強制の詳細は、「強制オプション」を参照してください。
これで、ドメインが IDN から完全にリンク解除されました。
TCP/IP スタックの解放と IDN 接続のリンク解除は、どちらを先に行ってもかまいません。ドメインを IDN からリンク解除するために、TCP/IP が解放されている必要はありません。上の例では、idn0 は IPv4 の使用法に基づいています。IPv6 の場合の使用法は、IPv6 のマニュアルを参照してください。Solaris 7 オペレーティング環境では、IPv6 はサポートされていません。TCP/IP ネットワークの構成方法の詳細は、「Sun Enterprise 10000 Domain 構成マニュアル」を参照してください。
IDN 内の最後の 1 組のドメインをリンク解除すると、その IDN は存在しなくなるので、domain_status(1M) の出力には情報が表示されません。