Solaris のシステム管理 (基本編)

第 10 章 システムのシャットダウンとブート (概要)

この章では、システムのシャットダウンとブートについて概要を説明します。Solaris オペレーティングシステムは、電子メールとネットワークリソースをいつでも利用できるように、停止することなく動作するように設計されています。しかし、システム構成の変更、定期保守、停電などの理由で、システムをシャットダウンまたはリブートしなければならない場合があります。

この章の内容は以下のとおりです。

システムのシャットダウンとブートに関する新機能

この節では、Solaris におけるシステムのシャットダウンとブートに関する新機能について説明します。

PXE ネットワークブート

PXE (Preboot Execution Environment) ネットワーク起動プロトコルをサポートしている IA システムでは、Solaris ブートフロッピーディスクを使用しなくても、ネットワークから直接 Solaris 9 オペレーティング環境 (Intel プラットフォーム版) をブートできます。PXE ネットワークブートは、Intel の PXE 仕様を実装しているデバイスでのみ動作します。

システム BIOS またはネットワークアダプタ BIOS のどちらか一方、またはその両方の BIOS 設定プログラムを使うことによって、クライアントシステム上で PXE ネットワークブートを使用できるようにします。いくつかのシステムでは、他のデバイスからのブートよりも先にネットワークブートが実行されるように、ブートデバイスの優先順位を調整する必要があります。各設定プログラムに関しては、製造業者のマニュアルを参照するか、またはブート中に表示される設定プログラムの指示を参照してください。

PXE 対応ネットワークアダプタの中には、ブート時にしばらく表示されるプロンプトに対して特定のキーを押すと、PXE ブートを実行する機能を持つものがあります。この機能は、PXE の設定を変更する必要がないので、通常はディスクドライブからブートを実行するシステムのインストールブートにおいて PXE を使用する場合に適しています。アダプタにこの機能がない場合は、システムのインストール後に行われるリブート時に、BIOS の設定で PXE を使用しないように設定してください。システムがディスクドライブからブートするようになります。

一部の初期バージョンの PXE ファームウェアでは、Solaris システムをブートすることができません。このようなファームウェアを使用する場合、システムがブートサーバーから PXE ネットワークブートストラッププログラムを読み込むことはできますが、ブートストラップはパケットを転送しません。この問題が発生した場合は、アダプタの PXE ファームウェアをアップグレードしてください。ファームウェアのアップグレードに関する情報は、アダプタの製造業者の web サイトから入手してください。詳細については、elxl(7D) および iprb(7D) のマニュアルページを参照してください。

ブートフロッピーディスクを使用するか使用しないかに関わらず、IA システムのブートについては、「IA: システムをネットワークからブートする方法」を参照してください。

シャットダウンとブートについての参照先

システムをシャットダウンおよびブートする手順については、次を参照してください。

シャットダウンとブート作業 

参照先 

SPARC システムまたは IA システムのシャットダウン 

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

SPARC システムのブート 

第 13 章「SPARC: システムのブート (手順)」

IA システムのブート 

第 14 章「IA: システムのブート (手順)」

電源管理ソフトウェアによる SPARC システムの管理 

power.conf(4) および pmconfig(1M) の各マニュアルページ

シャットダウンとブートの用語

この節では、シャットダウンとブートに関する用語について説明します。

システムのシャットダウンに関するガイドライン

システムをシャットダウンするときは次の点に注意してください。

システムのブートに関するガイドライン

システムをブートするときは、次の点に注意してください。

ネットワークからのシステムのブート

次のような場合に、システムをネットワークからブートする必要があります。

さらに、次の 2 つのネットワーク構成ブート方法も利用できます。

デフォルトのネットワークブート方法は RARP に設定されています。

ネットワーク経由でシステムをブートする方法については、次の表を参考にしてください。

ネットワークブート作業 

参照先 

SPARC システムまたは SPARC ディスクレスクライアントのブート 

第 13 章「SPARC: システムのブート (手順)」

IA システムまたは IA ディスクレスクライアントのブート 

第 14 章「IA: システムのブート (手順)」

インストール時の DHCP クライアントのブート 

Solaris 9 インストールガイド

DHCP マネージャを備えた DHCP クライアントの構成 

Solaris のシステム管理 (IP サービス)

システムをシャットダウンする場合

表 10-1 に、システム管理作業とそれに伴って必要となるシャットダウンの種類を示します。

表 10-1 システムのシャットダウン

システムシャットダウンの理由 

適切な実行レベル 

参照先 

停電のためシステムの電源を切断する。 

実行レベル 0。安全に電源を切れる状態。 

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更する。

実行レベル 6 (システムのリブート)。 

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

ファイルシステムを保守する (システムデータのバックアップや復元など)。 

実行レベル S (シングルユーザーレベル)。 

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

/etc/system などのシステム構成ファイルを修正する。

「システムをブートする場合」を参照。

なし 

システムにハードウェアを追加する (または、システムからハードウェアを削除する)。 

再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を切断する)。 

第 26 章「デバイスの管理 (手順)」

ブート失敗の原因となっていた重要なシステムファイルを修正する。 

「システムをブートする場合」を参照。

なし 

カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査する。

実行レベル 0 (可能な場合)。 

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

ハング状態から回復し、クラッシュダンプを強制する。 

「システムをブートする場合」を参照。

なし 

サーバーまたはスタンドアロンシステムのシャットダウンの例については、第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」を参照してください。

システムをブートする場合

次の表に、システム管理作業とそれに伴って必要となるブートタイプを示します。

表 10-2 システムのブート

システムリブートの理由 

適切なブートタイプ 

SPARC のブート手順の参照先 

IA のブート手順の参照先 

停電のためシステムの電源を切断する。 

システムの電源を再投入する。 

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

第 12 章「システムのシャットダウン (手順)」

/etc/system ファイル内のカーネルパラメータを変更する。

システムを実行レベル 3 でリブートする (NFS リソースを共有できるマルチユーザーレベル) 

「SPARC: システムを実行レベル 3 (マルチユーザーレベル) でブートする方法」

「IA: システムを実行レベル 3 (マルチユーザーレベル) でブートする方法」

ファイルシステムを保守する (システムデータのバックアップや復元など)。 

実行レベル S で Control + D を押して、システムを実行レベル 3 に戻す。 

「SPARC: システムを実行レベル S (シングルユーザーレベル) でブートする方法」

「IA: システムを実行レベル S (シングルユーザーレベル) でブートする方法」

/etc/system などのシステム構成ファイルを修正する。

対話式ブート。 

「SPARC: システムを対話式でブートする方法」

「IA: システムを対話式でブートする方法」

システムにハードウェアを追加する (または、システムからハードウェアを削除する)。 

再構成用ブート (ハードウェアを追加または削除したら電源を投入する)。 

「SPARC: 二次ディスクを接続してブートする方法」

「IA: 二次ディスクを接続してブートする方法」

カーネルデバッガ (kadb) をブートして、システムの障害を調査する。

kabd をブートする。

「SPARC: カーネルデバッガ (kadb) を使ってシステムをブートする方法」

「IA: カーネルデバッガ (kadb) を使ってシステムをブートする方法」

ブート失敗の原因となっていた重要なシステムファイルを修正する。 

回復ブート。 

「SPARC: 復元を目的としてシステムをブートする方法」

「IA: 復元を目的としてシステムをブートする方法」

ハング状態から回復し、クラッシュダンプを強制する。 

回復ブート。 

「SPARC: クラッシュダンプを強制してシステムをリブートする方法」の例を参照

「IA: クラッシュダンプを強制してシステムをリブートする方法」の例を参照

システムブートの例については、第 13 章「SPARC: システムのブート (手順)」または第 14 章「IA: システムのブート (手順)」を参照してください。