IP ネットワークマルチパスの管理

マルチパスインタフェースグループの構成

この節では、マルチパスインタフェースグループの構成手順とインタフェースを待機インタフェースに指定するための手順を説明します。

物理インタフェースのグループ化にも関連情報が記述されています。

マルチパスインタフェースグループの構成 (作業マップ)

表 2–1 マルチパスインタフェースグループの構成 (作業マップ)

作業 

説明 

参照個所 

2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成 

ifconfig コマンド、group オプション、-failover オプション、deprecated オプション、および /etc/hostname.interface ファイルを使用

2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成する方法

インタフェースの 1 つが待機インタフェースであるマルチパスグループを構成 

ifconfig コマンド、group オプション、standby オプション、failover オプション、および /etc/hostname.interface ファイルを使用

インタフェースの 1 つが待機インタフェースであるマルチパスグループを構成する方法

物理インタフェースが属するグループを表示 

ifconfig コマンドとインタフェース名を使用

物理インタフェースが属するグループを表示する方法

グループにインタフェースを追加 

ifconfig コマンドとインタフェース名を使用

グループにインタフェースを追加する方法

グループからインタフェースを削除 

ifconfig コマンドと空文字列を使用して、IP ネットワークマルチパスを無効化

グループからインタフェースを削除する方法

インタフェースを既存のグループから別のグループに移動 

ifconfig コマンドと group オプションを使用

インタフェースを既存のグループから別のグループに移動する方法

2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成する方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. 次のコマンドを使って、個々の物理インタフェースをマルチパスグループに入れます。


    # ifconfig interface-name group group-name
    

    たとえば、hme0hme1test グループに入れるには、次のように入力します。


    # ifconfig hme0 group test
    # ifconfig hme1 group test
  3. すべての物理インタフェースに対し検査用 IP アドレスを指定します。

    • IPv4 検査用アドレスの場合は、次のコマンドを使用します。


      注 –

      この手順では、物理インタフェースのアドレスがすでに構成されているものとします。



      # ifconfig interface-name addif ip-address <パラメータ> -failover deprecated up

      たとえば、次の構成で hme0 上に検査用 IP アドレスを構成するとします。

      • アドレスは 19.16.85.21

      • ネットマスクおよびブロードキャストアドレスをデフォルト値に設定

      • -failoverdeprecated を指定

      この場合、次のコマンドを入力します。


      # ifconfig hme0 addif 19.16.85.21 netmask + broadcast + -failover deprecated up

      構成を確認するには、次のように入力します。


      # ifconfig hme0:1
      	hme0:1: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,DEPRECATED,IPv4,NOFAILOVER>
          mtu 1500 index 2 inet 19.16.85.21 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255

      注 –

      この検査用 IP アドレスをアプリケーションが使用しないようにするため IPv4 検査用 IP アドレスを deprecated と指定する必要があります。


      たとえば、次の構成で hme1 上に検査用 IP アドレスを構成するとします。

      • アドレスは 19.16.85.22

      • ネットマスクおよびブロードキャストアドレスをデフォルト値に設定

      • -failoverdeprecated を指定

      この場合、次のコマンドを入力します。


      # ifconfig hme1 addif 19.16.85.22 netmask + broadcast + -failover deprecated up
    • IPv6 検査用 IP アドレスの場合は、次のコマンドを使用します。


      # ifconfig interface-name inet6 -failover

      注 –

      IPv6 アドレスを割り当てられた物理インタフェースは、IPv4 アドレスとして同じマルチパスグループ内に明示的に追加されます。IPv4 アドレスを割り当てられた物理インタフェースがマルチパスグループに追加されることによって、このような結果になります。IPv6 アドレスを持つ物理インタフェースが最初にマルチパスグループに追加されていることがありますが、その場合、IPv4 アドレスを持つ物理インタフェースが自動的に同じマルチパスグループに追加されます。


      たとえば、hme0 に IPv6 検査用 IP アドレスを指定するには、次のコマンドを使用します。


      # ifconfig hme0 inet6 -failover

      構成を確認するには、次のように入力します。


      # ifconfig hme0 inet6
      	hme0: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6,NOFAILOVER> mtu 1500 
              	index 2 inet6 fe80::a00:20ff:feb9:17fa/10 
              	groupname test

      注 –

      検査用 IP アドレスをアプリケーションから使用されないようにするために IPv6 検査用 IP アドレスを deprecated と指定する必要はありません。


      2 つ目のインタフェース hme1 には、次のコマンドを使用します。


      # ifconfig hme1 inet6 -failover
  4. この手順は、リブート後も構成内容を保持したい場合にのみ行います。リブート後も構成内容を保持するには、次の手順に従ってください。

    • IPv4 の場合は、/etc/hostname.interface ファイルに次の行を追加します。


      interface-address <パラメータ> group group-name up \
      	addif logical-interface -failover deprecated <パラメータ> up

      注 –

      この検査用 IP アドレスは、次回のリブートで有効になります。構成をその場で有効にするには、手順 1 から 3 を実行する必要があります。


      たとえば、hme0 を次のように構成して test グループを作成するとします。

      • 物理インタフェース hme0 のアドレスが 19.16.85.19

      • 論理インタフェースのアドレスが 19.16.85.21

      • deprecated-failover を指定

      • ネットマスクおよびブロードキャストアドレスをデフォルト値に設定

      この場合、/etc/hostname.hme0 ファイルに次の行を追加します。


      19.16.85.19 netmask + broadcast + group test up \
      	addif 19.16.85.21 deprecated -failover netmask + broadcast + up

      同様に、hme1 を同じグループ (test) に入れ、検査用 IP アドレスを指定するには、/etc/hostname.hme1 ファイルに次の行を追加します。


      19.16.85.20 netmask + broadcast + group test up \
      	addif 19.16.85.22 deprecated -failover netmask + broadcast + up
    • IPv6 の場合は、/etc/hostname6.interface ファイルに次の行を追加します。


      -failover group group-name up

      注 –

      この検査用 IP アドレスは、次回のリブートで有効になります。構成をその場で有効にするには、手順 1 から 3 を実行する必要があります。


      たとえば、IPv6 アドレスを持つ hme0 に対して test グループを作成するには、次の行を /etc/hostname6.hme0 ファイルに追加します。


      -failover group test up

      同様に、hme1 を同じグループ (test) に入れ、検査用 IP アドレスを指定するには、次の行を /etc/hostname6.hme1 ファイルに追加します。


      -failover group test up

注 –

マルチパスグループにさらにインタフェースを追加する場合は、上記の手順 1 から 3 を繰り返します。新しいインタフェースを、動作しているシステム上の既存のグループに追加することができます。ただし、リブート後は変更の内容は失われます。


インタフェースの 1 つが待機インタフェースであるマルチパスグループを構成する方法

この例では、hme1 を待機インタフェースとして構成します。


注 –

待機インタフェースのアドレスには、検査用 IP アドレスしか指定できません。


  1. 2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成する方法の手順 1 と 2 を実行します。

  2. すべての物理インタフェースに検査用 IP アドレスを設定するために、次の手順を実行します。

    1. hme0 のような非待機インタフェースは、2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成する方法の手順 3 を実行します。

    2. 待機インタフェースは、次のコマンドを使って検査用 IP アドレスを設定します。


      注 –

      待機インタフェースのアドレスには、検査用 IP アドレスしか指定できません。待機インタフェースは、これ以外の IP アドレスを持つことはできません。



      # ifconfig interface-name plumb ip-address <その他のパラメータ> deprecated -failover 
      standby up

      注 –

      -failover オプションは standby オプションより前に、standby オプションは up より前にそれぞれ指定する必要があります。


      <その他のパラメータ> には、実際の構成に応じたパラメータを指定します。 詳細については、ifconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。

      たとえば、次の構成で検査用 IP アドレスを作成するとします。

      • 物理インタフェース hme1 を待機インタフェースにする

      • アドレスは 19.16.85.22

      • deprecated-failover を指定

      • ネットマスクおよびブロードキャストアドレスをデフォルト値に設定

      この場合、次のコマンドを入力します。


      # ifconfig hme1 plumb 19.16.85.22 netmask + broadcast + deprecated -failover standby up

      結果を確認するには、次のコマンドを入力します。


      # ifconfig hme1
      flags=69040843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,DEPRECATED,IPv4,NOFAILOVER,STANDBY,INACTIVE> 
              mtu 1500 index 4 inet 19.16.85.22 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255
              groupname test

      IPv6 の場合、検査用 IP アドレスを待機インタフェースに作成するには、次のコマンドを使用します。


      ifconfig hme1 plumb -failover standby up

    INACTIVE は、このインタフェースが送信パケットには使用されないことを示します。この待機インタフェースに障害経路の迂回が行われると、INACTIVE フラグはクリアされます。

  3. この手順は、リブート後も構成内容を保持したい場合にのみ行います。リブート後も構成内容を保持するには、次の手順に従ってください。

    • IPv4 の場合は、/etc/hostname.interface ファイルに次の行を追加します。


      interface-address <parameters> group group-name up \
      	addif logical-interface-failover deprecated <parameters> up

      注 –

      この検査用 IP アドレスは、次回のリブートで有効になります。構成をその場で有効にするには、手順 1 と 2 を実行する必要があります。


      たとえば、hme0 を次のように構成して test グループを作成するとします。

      • 物理インタフェース hme0 のアドレスが 19.16.85.19

      • 論理インタフェースのアドレスが 19.16.85.21

      • deprecated-failover を指定

      • ネットマスクおよびブロードキャストアドレスをデフォルト値に設定

      /etc/hostname.hme0 ファイルに次の行を追加します。


      19.16.85.19 netmask + broadcast + group test up \
      	addif 19.16.85.21 deprecated -failover netmask + broadcast + up

      同様に、hme1 を同じグループ (test) に入れ、検査用 IP アドレスを指定するには、次のコマンドを入力します。


      19.16.85.22 netmask + broadcast + deprecated group test -failover standby up 
    • IPv6 の場合は、/etc/hostname6.interface ファイルに次の行を追加します。


      -failover group group-name up

      注 –

      この検査用 IP アドレスは、次回のリブートで有効になります。構成をその場で有効にするには、手順 1 と 2 を実行する必要があります。


      たとえば、IPv6 アドレスを持つ hme0 に対して test グループを作成するには、次の行を /etc/hostname6.hme0 ファイルに追加します。


      -failover group test up

      同様に、hme1 を同じグループ (test) に入れ、検査用 IP アドレスを指定するには、次の行を /etc/hostname6.hme1 ファイルに追加します。


      -failover group test standby up

物理インタフェースが属するグループを表示する方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. コマンド行から次のコマンドを入力します。


    # ifconfig interface-name
    

たとえば、hme0 のグループ名を表示するには、次のコマンドを入力します。


# ifconfig hme0
	hme0: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4> mtu 1500 
      index 2 inet 19.16.85.19 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255
      groupname test

IPv6 だけのグループ名を表示するには、次のコマンドを入力します。


# ifconfig hme0 inet6
	hme0: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6> mtu 1500 index 2
        	inet6 fe80::a00:20ff:feb9:19fa/10 
        	groupname test

グループにインタフェースを追加する方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. コマンド行から次のコマンドを入力します。


    # ifconfig interface-name group group-name
    

たとえば、test グループに hme0 を追加するには、次のコマンドを入力します。


# ifconfig hme0 group test

グループからインタフェースを削除する方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. コマンド行から次のコマンドを入力します。


    # ifconfig interface-name group ""

    引用符 ("") は空文字列を表します。

たとえば、test グループから hme0 を削除するには、次のコマンドを入力します。


# ifconfig hme0 group ""
	# ifconfig hme0
	hme0: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4> mtu 1500
        	index 2 inet 19.16.85.19 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255
	# ifconfig hme0 inet6
	hme0: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6> mtu 1500 index 2
        	inet6 fe80::a00:20ff:feb9:19fa/10 

マルチパスグループからのネットワークアダプタの削除に関連情報が記述されています。

インタフェースを既存のグループから別のグループに移動する方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. コマンド行から次のコマンドを入力します。


    # ifconfig interface-name group group-name
    

注 –

新しいグループに追加されたインタフェースは、既存のグループから自動的に削除されます。


たとえば、test グループから hme0 を削除し、cs-link グループに追加するには、次のコマンドを入力します。


# ifconfig hme0 group cs-link

該当のインタフェースが現在のグループから削除され、cs-link グループに追加されます。