Solaris 印刷ソフトウェアは、ネットワーク上のプリンタへのクライアントアクセスを設定および管理するための環境を提供します。
Solaris 印刷ソフトウェアは、次のコンポーネントから構成されます。
Solaris プリンタマネージャ。ローカルシステム上やネームサービス内の印刷構成を管理するグラフィカルユーザーインタフェースです。
LP 印刷サービスコマンド。ローカルシステム上やネームサービス内のプリンタを設定して管理するコマンド行インタフェースです。上記の機能に加え、他の印刷管理ツールにない機能も提供します。
印刷の設定には Solaris プリンタマネージャを使用しますが、Solaris 環境で印刷を完全に制御するためには、LP コマンドの一部を使用する必要があります。詳細は、第 5 章「プリンタの管理 (手順)」を参照してください。
Solaris 印刷ソフトウェアの制限事項には次のものがあります。
以前の Solaris リリースで s5 (System V 印刷プロトコル) として定義されたプリンタサーバーはサポートされません。
印刷クライアントでの印刷のフィルタリングはできません。
Solaris プリンタマネージャは Java ベースのグラフィカルユーザーインタフェースで、ローカルおよびリモートのプリンタ構成を管理できます。このツールは、ネームサービス環境 (NIS、NIS+、フェデレーテッド・ネーミング・サービス (FNS) を使用した NIS+、およびファイル) 内で使用できます。このツールを使用するには、スーパーユーザーとしてログインする必要があります。
プリンタ構成情報の管理には、Admintool: プリンタ (Printer) よりも Solaris プリンタマネージャの使用をお勧めします。Solaris プリンタマネージャをネームサービスとともに使用すれば、プリンタ情報を一元的に管理できるためです。プリンタ構成情報の格納には、ネームサービスの使用をお勧めします。ネームサービスを使用すると、ネットワーク上のすべてのシステムからプリンタ情報にアクセスできるようになるためです。これにより、印刷管理がより簡単になります。
Solaris プリンタマネージャは、プリンタサーバー、印刷クライアント、ネームサービスデータベースにあるプリンタ情報を認識します。印刷クライアントで Solaris 2.6、Solaris 7、Solaris 8 または Solaris 9 リリースが動作している限り、新しい Solaris プリンタマネージャを使用するために変換作業は必要ありません。
Solaris プリンタマネージャのパッケージは SUNWppm です。
Solaris プリンタマネージャを使用して新しいプリンタを設定する詳しい手順を知りたい場合は、第 4 章「プリンタの設定手順 (手順)」に進みます。
ネームサービススイッチファイル /etc/nsswitch.conf 内の printers データベースは、ネットワーク上のクライアントを出力するために、一元化したプリンタ構成情報を提供します。
ネームサービススイッチファイルに printers データベースとそれに対応する情報源を指定すると、印刷クライアントからプリンタ構成情報に自動的にアクセスできるようになるため、この情報を自分のシステムに追加する必要はありません。
ファイル、LDAP、NIS および NIS+ 環境に対応した /etc/nsswitch.conf ファイル内のデフォルトの printers エントリについて、次の表で説明します。 nisplus キーワードは printers.org_dir テーブルを表します。キーワード xfn は、FNS プリンタコンテキストを示します。
ネームサービスタイプ |
デフォルトの printers エントリ |
---|---|
files |
printers: user files |
ldap |
printers: user files ldap |
nis |
printers: user files nis |
nis+ |
printers: user nisplus files xfn |
たとえば、ネームサービスが NIS の場合、印刷クライアントのプリンタ構成情報は次のソースから次に記載する順に検索されます。
user - ユーザーの $HOME/.printers ファイルを表します。
files - /etc/printers.conf ファイルを表します。
nis - printers.conf.byname テーブルを表します。
詳細は、nsswitch.conf(4) のマニュアルページおよび『Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS、NIS、LDAP 編)』を参照してください。
プリンタ情報をネームサービスに追加すると、ネットワークのすべてのシステムからプリンタにアクセスできるようになります。さらに、プリンタに関するすべての情報が一元化されるため、プリンタ管理が一般に簡単になります。
ネームサービス構成 |
プリンタ情報を一元化する方法 |
---|---|
ネームサービスを使用する |
プリンタを LDAP、NIS、NIS+、NIS+ (xfn) データベースのどれかに追加すると、プリンタはネットワーク上のすべてのシステムからアクセスできるようになる |
ネームサービスを使用しない |
プリンタを追加しても、プリンタ情報はプリンタサーバーの構成ファイルにしか追加されない。したがって、印刷クライアントがそのプリンタを自動的に認識することはできない。 プリンタを必要とする印刷クライアントにはプリンタ情報を追加する必要がある |
表 2–1 に、印刷関連の主な作業と、印刷作業に利用できるツールを示します。
表 2–1 Solaris 印刷コンポーネントの機能
コンポーネント |
対応するリリース |
グラフィカルユーザーインタフェース |
ネットワークプリンタの設定 |
印刷クライアントとプリンタサーバーの管理 |
LDAP、NIS、NIS+、NIS+ (xfn) の使用 |
---|---|---|---|---|---|
Solaris プリンタマネージャ |
Solaris 9 および互換バージョンおよび Solaris Easy Access Server 3.0 |
あり |
できる |
できる |
できる |
Admintool |
Solaris 9 および互換バージョン |
あり |
できない |
できる |
できない |
LP コマンド |
Solaris 9 および互換バージョン |
なし |
できる |
できる |
できる |
表 2-1 を使用して、各ネットワーク環境に最適な印刷ツールを決めてから、プリンタの設定情報について第 4 章「プリンタの設定手順 (手順)」 を参照してください。
印刷構成作業のほとんどは Solaris プリンタマネージャで完了設定できます。ただし、インタフェーススクリプトの作成や独自フィルタの追加など、特別な必要がある場合は、LP 印刷サービスコマンドを使用します。 LP コマンドは、Solaris プリンタマネージャの元となるコマンドです。LP コマンドで印刷管理作業をする方法については、第 5 章「プリンタの管理 (手順)」で説明しています。