Solaris のシステム管理 (上級編)

第 10 章 端末とモデムの管理 (概要)

この章では、端末やモデムを管理する場合の概要を説明します。この章の内容は次のとおりです。

シリアルポートツールで端末とモデムを設定する手順については、第 11 章「端末とモデムの設定 (手順)」を参照してください。

SAF で端末とモデムを設定する手順については、第 12 章「サービスアクセス機能によるシリアルポートの管理 (手順)」を参照してください。

端末とモデムの管理に関する新機能

Solaris 管理コンソールは、端末とモデムを設定するための シリアルポートツールを提供します。 Solaris 管理コンソールの起動については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の「Solaris Management Console を起動する」を参照してください。 端末やモデムを設定する手順については、Solaris 管理コンソールのオンラインヘルプを参照してください。

端末、モデム、ポート、サービス

端末とモデムは、システム資源とネットワーク資源へのローカルおよびリモートのアクセスを提供します。端末とモデムの設定は、システム管理者の重要な作業です。この節では、Solaris 環境におけるモデムと端末の管理についての概要を説明します。

端末

システムのビットマップグラフィックスディスプレイは、シリアルポートに接続され、テキストしか表示できない英数字端末とは異なります。グラフィックスディスプレイは、特別な手順に従って管理する必要はありません。

モデム

モデムには次の 3 つの基本構成があります。

家庭用コンピュータに接続されるモデムの中には、「発信専用」サービス向けに設定されていることがあります。その場合、ユーザーは家から他のコンピュータにアクセスできますが、外からは誰もユーザーのコンピュータにアクセスできません。

「着信専用」サービスは発信専用のちょうど逆です。つまり、リモートサイトからはシステムにアクセスできますが、そのシステムから外側には呼び出しができません。

「発着信両用」アクセスは、その名前が示すとおり、着信専用、発信専用の両機能を持っています。

ポート

「ポート」とは、装置がオペレーティングシステムと通信するためのチャネルのことです。具体的には、端末やモデムのケーブルを物理的に接続する「コンセント」と考えると一番わかりやすいでしょう。

ただし、ポートは厳密には物理的なコンセントではなく、その実体はハードウェア (ピンとコネクタ) とソフトウェア (デバイスドライバ) からなっています。多くの場合、1 つの物理的コンセントが複数のポートを備えており、複数の装置を接続できます。

一般的なポートとして、シリアル、パラレル、SCSI (Small Computer Systems Interface)、Ethernet などがあります。

「シリアルポート」は、標準の通信プロトコルを使用し、1 本の信号線で 1 バイト単位の情報を 1 ビットずつ送信します。

RS-232-C または RS-423 規格に準拠して設計されている装置 (大部分のモデム、英数字端末、プロッタ、一部のプリンタ) は、同様に設計されたコンピュータのシリアルポートにはどれにでも、標準ケーブルを使用して接続できます。

1 台のコンピュータに多数のシリアルポートを接続する場合は、システムに「アダプタボード」 を追加する必要があります。アダプタボードは、ドライバソフトウェアを使用することにより、より多くの装置を接続できるための追加のシリアルポートを提供します。

サービス

モデムや端末を使用すると、シリアルポートのソフトウェアを介してコンピュータ資源にアクセスできます。シリアルポートソフトウェアは、ポートに接続する装置向けに特定の「サービス」を提供するように設定しなければなりません。 たとえば、モデムに対してはシリアルポートは発着信両用サービスを提供するように構成できます。

ポートモニター

特定のサービスへのアクセスは、主に「ポートモニター」を通じて行います。ポートモニターとは、ログイン要求や、プリンタまたはファイルのアクセス要求を常に監視しているプログラムのことです。

ポートモニターは要求を検出すると、オペレーティングシステムとサービスを要求する装置間の通信を確立するのに必要なすべてのパラメータを設定します。次に、必要なサービスを提供する他のプロセスに制御を移します。

表 10–1 に、Solaris 環境で提供されている 2 つのタイプのポートモニターとその説明を示します。

表 10–1 ポートモニターのタイプ

ポートモニター 

マニュアルページ 

説明 

listen

listen(1M)

Solaris 2.6 より前のシステムからのリモート印刷要求の処理など、ネットワークサービスへのアクセスを制御する。デフォルトの Solaris オペレーティング環境では、このタイプのポートモニターは使用されていない。

ttymon

ttymon(1M)

モデムや英数字端末が必要とするログインサービスへのアクセスを提供する。シリアルポートツールは、それらの装置からのログイン要求を処理するように、ttymon ポートモニターを自動的に設定する。

getty(1M) という従来のポートモニターに慣れているユーザーも、新しい ttymon を使用してください。新しい ttymon はさらに強力なツールとなっています。1 つの ttymon で複数の getty に相当する処理が行えます。それ以外の点では、どちらのプログラムも同じ機能を提供します。

端末とモデムを管理するツール

次の表は、端末とモデムを管理するツールを列挙したものです。

表 10–2 端末とモデムを管理するツール

ツールの説明 

ツール 

参照箇所 

管理作業全般 

サービスアクセス機能 (SAF) のコマンド 

サービスアクセス機能 (SAF)

簡易設定 

Solaris 管理コンソールのシリアルポートツール 

第 11 章「端末とモデムの設定 (手順)」と Solaris 管理コンソールオンラインヘルプ

簡易設定 

Admintool 

Admintool オンラインヘルプ 

シリアルポートツール

シリアルポートツールは、pmadm コマンドを呼び出すことにより、シリアルポートソフトウェアを設定して端末やモデムを管理します。シリアルポートツールはまた、次の機能も提供します。

サービスアクセス機能 (SAF)

SAF は、端末、モデム、その他のネットワーク装置の管理用のツールです。SAF では特に次の設定を行います。

SAF は、tty 装置やローカルエリアネットワーク (LAN) を通して行われるシステム資源やネットワーク資源へのアクセスを制御するオープンシステムソリューションです。SAF はプログラムではなく、バックグラウンドプロセスと管理用コマンドの階層構造になっています。