Solaris のシステム管理 (上級編)

日次アカウンティングレポート

runacct シェルスクリプトは、呼び出されるたびに基本的な 5 種類のレポートを生成します。5 つの基本レポートは次のとおりです。

表 20–2 日次アカウンティングレポート

レポートの種類 

説明 

日次レポート

tty 番号別の端末回線の利用状況を示す

日次利用状況レポート

ユーザー別のシステム資源の利用状況を示す。ユーザー ID 順に表示される 

日次コマンド要約

コマンド別のシステム資源の利用状況を示す。メモリー使用量が大きい順に表示される。つまり、メモリーを最も多く使用したコマンドから先に表示される。これと同じ情報が月次コマンド概要で該当月について報告される 

月次コマンド要約

monacct プログラムの最新の実行から累積した日付を反映した累積概要

最終ログインレポート

各ユーザーが最後にログインした日付を示す。日付順に表示される 

日次レポート

このレポートは、使用された各端末回線に関する情報を示します。次に日次レポートの例を示します。


Oct 16 02:30 2001  DAILY REPORT FOR venus Page 1


from Mon Oct 15 02:30:02 2001
to   Tue Oct 16 02:30:01 2001
1       runacct
1       acctcon

TOTAL DURATION IS 1440 MINUTES
LINE         MINUTES  PERCENT  # SESS  # ON  # OFF
console      868      60       1       1     2
TOTALS       868      --       1       1     2

from および to の行は、レポートに反映される時間帯を指定します。この時間帯とは、直前の日次レポートが生成された時間から現在の日次レポートが生成されるまでの時間のことです。次に、システムリブートのログ、シャットダウン、電源異常からの回復、acctwtmp プログラムによって /var/adm/wtmpx ファイルにダンプされたその他のレコードが続きます。詳細は、acct(1M) のマニュアルページを参照してください。

このレポートの第 2 部は回線利用状況の内訳です。TOTAL DURATION は、システムがどれだけの時間マルチユーザーモード (端末回線を通してアクセス可能です) であったかを示します。次の表は、日次レポートのデータを説明したものです。

表 20–3 日次レポート

列 

説明 

LINE

端末回線またはアクセスポート 

MINUTES

アカウンティング期間を通じてこの回線が使用中であった合計分 

PERCENT

TOTAL DURATIONMINUTES の合計値で割った数値

# SESS

この回線またはポートがログインセッション用にアクセスされた回数 

# ON

SESS に同じ。(このカラムにはそれ以上の意味はない。回線またはポートがユーザーのログインに使用された回数を表示する)

# OFF

このカラムは、この回線でユーザーがログアウトした回数と発生した割り込みを表す。割り込みは一般にシステムがマルチユーザーモードにされてから ttymon が初めて起動されたときに発生する。# OFF が大きな割合で # SESS を上回る場合は、マルチプレクサ、モデム、ケーブルに障害があるか、どこかに接続の問題がある可能性がある。一番考えられる原因は、マルチプレクサからのケーブルの接続が外れたままになっていることである

マシンの稼動中は、/var/adm/wtmpx ファイルが接続アカウンティングの元になるため、このファイルを監視する必要があります。wtmpx ファイルが急速に大きくなる場合は、次のコマンドを実行して、どの tty 回線が最も使用頻度が高いかを調べてください。


# /usr/lib/acct/acctcon -l file < /var/adm/wtmpx

割り込みが頻繁に発生する場合は、全般的なシステムのパフォーマンスが影響を受けることになります。さらに、wtmp ファイルが壊れることもあります。この問題を解決するには、壊れた wtmpx ファイルの修復方法を参照してください。

日次利用状況レポート

このレポートは、システム資源の利用状況のユーザー別の内訳を示します。このレポートの例は、次のとおりです。


Oct 16 02:30 2001  DAILY USAGE REPORT FOR skisun Page 1


     LOGIN  CPU  (MINS)  KCORE-   MINS    CONNECT  (MINS) DISK   # OF   # OF  # DISK  FEE
UID  NAME   PRIME NPRIME PRIME    NPRIME  PRIME    NPRIME BLOCKS PROCS  SESS  SAMPLES
0    TOTAL  72    148    11006173 51168   26230634 57792  539    330    0     2150    1
0    root   32    76     11006164 33664   26230616 22784  0      0      0     127     0
4    adm    0     0      22       51      0        0      0      420    0     0       0
101  rimmer 39    72     894385   1766020 539      330    0      1603   1     0       0

次の表は、日次利用状況レポートのデータを説明したものです。

表 20–4 日次利用状況レポート

列 

説明 

UID

ユーザー ID 番号 

LOGIN NAME

ユーザーのログイン (またはユーザー) 名。複数のログイン名をもつユーザーを識別する 

CPU (MINS)

ユーザーのプロセスが CPU を使用した時間を表す。このカテゴリの情報は、PRIME (プライムタイム時間帯) と NPRIME (プライムタイム時間帯外) に分けられる。アカウンティングシステムのこれらのデータのバージョンは、/etc/acct/holidays ファイルに格納されている

KCORE-MINS

プロセスが実行中に使用する累積メモリー量を表す。毎分あたりに使用される K バイトメモリーセグメント数を表す。この計量値も PRIMENPRIME に分けられる

CONNECT (MINS)

ユーザーがシステムにログインしていた時間を分単位で表す。「実時間」とも呼ぶ。PRIMENPRIME に分けられる。たとえば、この時間の値が大きく # OF PROCS の数値が小さい場合は、ログインの所有者がまず朝にログインし、その後はその日の終わりまで端末にほとんど触れていないと考えられる

DISK BLOCKS

acctdusg プログラムからの出力であり、ディスクアカウンティングプログラムを実行し、アカウンティングレコード (daytacct) をマージする。 アカウンティングの目的では、ブロックは 512 バイト

# OF PROCS

ユーザーが起動したプロセス数を表す。数値が大きい場合は、ユーザーのシェルプロシージャが制御できなくなった可能性がある 

# OF SESS

ユーザーがシステムにログインした回数 

# DISK SAMPLES

平均ディスクブロック数 (DISK BLOCKS) を得るためにディスクアカウンティングが何回実行されたかを示す

FEE

chargefee スクリプトによってユーザーに課金された累積合計額を表す。使用されない場合が多い

日次コマンド要約

このレポートはコマンド別のシステム資源の利用状況を示します。このレポートでは、最も使用率の高いコマンドがわかり、それらコマンドがどのようにシステム資源を利用しているかに基づいて、どのようにしたらシステムの最適チューニングが可能かを知ることができます。

これらのレポートは TOTAL KCOREMIN によってソートされます。TOTAL KCOREMIN は任意の基準ですが、システムでのドレーンの計算にはすぐれた指標です。

日次コマンド要約の例を、次に示します。


                   TOTAL COMMAND SUMMARY
COMMAND   NUMBER      TOTAL   TOTAL     TOTAL   MEAN    MEAN     HOG   CHARS     BLOCKS
NAME        CMDS    KCOREMIN CPU-MIN REAL-MIN  SIZE-K  CPU-MIN  FACTOR TRNSFD    READ

TOTALS      2150  1334999.75  219.59 724258.50 6079.48   0.10   0.00   397338982 419448

netscape      43  2456898.50   92.03  54503.12 26695.51  2.14   0.00   947774912 225568
adeptedi       7    88328.22    4.03    404.12 21914.95  0.58   0.01    93155160   8774
dtmail         1    54919.17    5.33  17716.57 10308.94  5.33   0.00   213843968  40192
acroread       8    31218.02    2.67  17744.57 11682.66  0.33   0.00   331454464  11260
dtwm           1    16252.93    2.53  17716.57 6416.05   2.53   0.00   158662656  12848
dtterm         5     4762.71    1.30  76300.29 3658.93   0.26   0.00    33828352  11604
dtaction      23     1389.72    0.33      0.60 4196.43   0.01   0.55    18653184    539
dtsessio       1     1174.87    0.24  17716.57 4932.97   0.24   0.00    23535616   5421
dtcm           1      866.30    0.18  17716.57 4826.21   0.18   0.00     3012096   6490

次の表は、日次コマンド要約のデータを説明したものです。

表 20–5 日次コマンド要約レポート

列 

説明 

COMMAND NAME

コマンド名。プロセスアカウンティングシステムではオブジェクトモジュールしか報告されないので、シェルプロシージャはすべて sh という名前で取り扱われる。a.out または core と呼ばれるプログラム、またはその他の、適切とは思われない名前のプログラムの使用頻度を監視すると良い。acctcom プログラムを使用して、名前に疑問があるコマンドを誰が実行したか、スーパーユーザー特権が使用されたかどうかを知ることができる

NUMBER CMDS

プライムタイム時間帯に、このコマンドが呼び出された回数 

TOTAL KCOREMIN

実行時の毎分当たりにプロセスが使用した K バイトメモリーセグメント数という計量値の累積合計 

TOTAL CPU-MIN

このプログラムのプライムタイム時間帯の累積合計処理時間 

TOTAL REAL-MIN

このプログラムのプライムタイム時間帯の累積合計実時間 (壁掛け時計)。分単位 

MEAN SIZE-K

NUMBER CMDS で表される呼び出し回数に対する TOTAL KCOREMIN の平均

MEAN CPU-MIN

NUMBER CMDS に対する TOTAL CPU-MIN の平均

HOG FACTOR

合計 CPU 時間を経過時間で割った値。システム利用可能時間とシステム使用時間との比であり、プロセスがその実行中に消費する合計利用可能 CPU 時間の相対値を示す 

CHARS TRNSFD

読み取りおよび書き込みシステムコールによってプッシュされた文字の合計数。オーバフローのために負の値になることがある 

BLOCKS READ

プロセスが実行した物理ブロックの読み取りおよび書き込みの合計数  

月次コマンド要約

日次コマンド要約と月次コマンド要約のレポート形式は、実際は同じものです。ただし、日次コマンド要約は現在のアカウンティング期間だけでレポートするのに対し、月次コマンド要約は会計期間の当初から現在の日付までをレポートします。つまり、月次レポートは、monacct プログラムが最後に実行されたときからの累積データの累積要約を表します。

レポートの例を次に示します。


Oct 16 02:30 2001  MONTHLY TOTAL COMMAND SUMMARY Page 1


                                     TOTAL COMMAND SUMMARY
COMMAND   NUMBER      TOTAL   TOTAL     TOTAL   MEAN     MEAN    HOG      CHARS    BLOCKS
NAME        CMDS    KCOREMIN CPU-MIN  REAL-MIN  SIZE-K   CPU-MIN FACTOR  TRNSFD    READ

TOTALS     42718  4398793.50  361.92  956039.00 12154.09 0.01    0.00  16100942848 825171

netscape     789  3110437.25  121.03   79101.12 25699.58 0.15    0.00   3930527232 302486
adeptedi      84  1214419.00   50.20    4174.65 24193.62 0.60    0.01    890216640 107237
acroread     145   165297.78    7.01   18180.74 23566.84 0.05    0.00   1900504064  26053
dtmail         2    64208.90    6.35   20557.14 10112.43 3.17    0.00    250445824  43280
dtaction     800    47602.28   11.26      15.37  4226.93 0.01    0.73    640057536   8095
soffice.      13    35506.79    0.97       9.23 36510.84 0.07    0.11    134754320   5712
dtwm           2    20350.98    3.17   20557.14  6419.87 1.59    0.00    190636032  14049

月次コマンド要約で提供されるデータの説明については、日次コマンド要約を参照してください。

最終ログインレポート

このレポートは、特定のログインが最後に使用された日付を示します。この情報を使用して、使用されていないログインやログインディレクトリを見つけることができます。それらのログインやログインディレクトリは保存して削除できます。次に例を示します。


Oct 16 02:30 2001  LAST LOGIN Page 1


01-06-12  kryten         01-09-08  protoA      01-10-14  ripley
01-07-14  lister         01-09-08  protoB      01-10-15  scutter1
01-08-16  pmorph         01-10-12  rimmer      01-10-16  scutter2

acctcom による pacct ファイルの確認

/var/adm/pacctn ファイル、または acct.h 形式の任意のファイルの内容は、acctcom プログラムを使用していつでも調べることができます。このコマンドを実行するときに、ファイルも標準入力も指定しなければ、acctcom コマンドは pacct ファイルを読み取ります。acctcom コマンドで読み取られる各レコードは、終了したプロセスの情報を表します。アクティブなプロセスは、ps コマンドを実行して調べます。acctcom コマンドのデフォルト出力は次に示す情報を示します。

acctcom 出力ファイルを、次に示します。


# acctcom
COMMAND                           START    END          REAL     CPU    MEAN
NAME       USER     TTYNAME       TIME     TIME       (SECS)  (SECS) SIZE(K)
#accton    root      ?            02:30:01 02:30:01     0.03    0.01  304.00
turnacct   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.42    0.01  320.00
mv         adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.07    0.01  504.00
utmp_upd   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.03    0.01  712.00
utmp_upd   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.01    0.01  824.00
utmp_upd   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.01    0.01  912.00
utmp_upd   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.01    0.01  920.00
utmp_upd   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.01    0.01 1136.00
utmp_upd   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.01    0.01  576.00
closewtm   adm       ?            02:30:01 02:30:01     0.10    0.01  664.00

acctcom オプションを使用すると、次の情報を得ることができます。

表 20–6 acctcom のオプション

オプション 

説明 

-a

選択したプロセスに関する特定の平均統計を表示する。統計は出力が記録された後に表示される 

-b

 

ファイルを逆読みし、最後のコマンドから先に表示する。標準入力の読み込みには関係しない 

-f

fork/exec フラグおよびシステム終了状態カラムを出力する。出力は 8 進数

-h

平均メモリーサイズの代わりに hog 係数を表示する。これは経過時間とプロセスが実行中に消費した合計 CPU 利用可能時間との比。hog 係数 = 合計 CPU 利用時間/経過時間

-i

入出力カウントを含むカラムを出力する 

-k

メモリーサイズの代わりに、キロバイト/分ごとのコアサイズの合計値を表示する 

-m

平均コアサイズを表示する。これがデフォルト 

-q

平均統計だけを出力する。出力レコードは出力しない 

-r

CPU 係数 (システム使用時間 / (システム使用時間 + ユーザー使用時間)) を表示する 

-t

システムおよびユーザー CPU 時間を表示する 

-v

出力からカラム見出しを除外する 

-C sec

合計 (システム + ユーザー) CPU 時間が sec 秒を超えたプロセスだけを表示する

-e time

time 以前に存在したプロセスを hr[:min[:sec]] の書式で表示する

-E time

time 以前に開始されたプロセスを hr[:min[:sec]] の書式で表示する。同じ time-S-E の両方に使用すれば、そのときに存在していたプロセスを表示する

-g group

group に属しているプロセスだけを表示する

-H factor

factor を超えるプロセスだけを表示する。ただし、factor は「hog 係数」(-h オプションを参照)

-I chars

chars によって指定されるカットオフ数を超える文字数を転送したプロセスだけを表示する

-l line

端末 /dev/line に属しているプロセスだけを表示する

-n pattern

pattern+」が 1 回以上現れることを意味する以外は、一般的な正規表現に一致するコマンドだけを表示する

-o ofile

レコードを出力しないで、レコードを acct.h 形式で ofile にコピーする

-O sec

CPU システム時間が sec 秒を超えるプロセスだけを表示する

-s time

time 以後に存在したプロセスを hr[:min[: sec]] の書式で表示する

-S time

time 以後に開始されたプロセスを hr[:min[: sec]] の書式で表示する

-u user

user に属しているプロセスだけを表示する