Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)

プロジェクト

プロジェクト識別子は、関連する作業を特定するために使用される管理識別子です。プロジェクト識別子は、ユーザー識別子やグループ識別子と同様な、作業負荷に付けられているタグと考えることができます。ユーザーまたはグループは 1 つ以上のプロジェクトに所属できます。プロジェクトは、ユーザーまたはユーザーグループが参加することを許可されている作業負荷を表すために使用します。このメンバーシップは、たとえば、使用状況や初期資源割り当てに基づくチャージバックの根拠となります。ユーザーにはデフォルトのプロジェクトを割り当てる必要がありますが、ユーザーが起動するプロセスは、ユーザーが属しているプロジェクトであれば、どのプロジェクトにでも関連付けることができます。

ユーザーのデフォルトプロジェクトの判定

システムにログインするには、そのユーザーにデフォルトのプロジェクトが割り当てられている必要があります。

システム上の各プロセスはプロジェクトのメンバーシップを所有しているため、ログインやその他の初期処理にデフォルトのプロジェクトを割り当てるアルゴリズムが必要です。デフォルトプロジェクトを判定するアルゴリズムは、4 つの手順から成ります。デフォルトプロジェクトが見つからない場合、ユーザーのログインまたはプロセスの開始要求は拒否されます。

システムは、次の手順でユーザーのデフォルトプロジェクトを判定します。

  1. ユーザーが、/etc/user_attr 拡張ユーザー属性データベースで定義されている project 属性のエントリを持っている場合は、その project 属性の値がデフォルトプロジェクトになります (user_attr(4) 参照)。

  2. user.user-id という名前のプロジェクトが project(4) データベースにある場合は、そのプロジェクトがデフォルトプロジェクトになります。

  3. group.group-name という名前のプロジェクトが project データベースにあり、group-name がユーザーのデフォルトのグループ名 (passwd(4) で指定されている) である場合は、そのプロジェクトがデフォルトプロジェクトになります。

  4. project データベースに default という特別なプロジェクトがある場合は、そのプロジェクトがデフォルトプロジェクトになります。

このロジックは getdefaultproj() ライブラリ関数が提供します (getprojent(3PROJECT) 参照)。

project データベース

プロジェクトのデータは、ローカルファイル、ネットワーク情報サービス (NIS) のプロジェクトマップ、または LDAP (Lightweight Directory Access Protocol) ディレクトリサービスに保存できます。/etc/project データベースまたはネームサービスは、ログイン時、および PAM (Pluggable Authentication Module) によるアカウント管理に対する要求があったときに使用され、ユーザーをデフォルトのプロジェクトに結合します。


注 -

プロジェクトデータベース内のエントリに対する更新は、/etc/project ファイルまたはネットワークネームサービスのデータベース表現のどちらに対するものであっても、現在アクティブなプロジェクトには適用されません。更新内容は、login(1) または newtask(1) が使用されたときに、プロジェクトに新たに参加するタスクに適用されます。


PAM サブシステム

アカウント情報の変更や設定を行う操作には、システムへのログイン、rcp または rsh コマンドの呼び出し、ftp の使用、su の使用などがあります。アカウント情報の変更や設定が必要な場合は、設定可能なモジュール群を使用して、認証、アカウント管理、資格管理、セッション管理などを行います。

プロジェクト用のアカウント管理 PAM モジュールについては、pam_projects(5) のマニュアルページを参照してください。PAM システムについては、pam(3PAM)pam.conf(4) および pam_unix(5) のマニュアルページを参照してください。

ネームサービス構成

資源管理は、ネームサービス project データベースをサポートします。project データベースが格納されている場所は、/etc/nsswitch.conf で指定されます。デフォルトでは files が最初に指定されていますが、ソースは任意の順序で指定できます。


project: files [nis] [ldap]

プロジェクト情報に対して複数のソースが指定されている場合、ルーチンは最初に指定されているソースで情報を検索し、次にその後に続くデータベースを検索します。

/etc/nsswitch.conf の詳細については、Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS, NIS, LDAP 編)』の「ネームサービススイッチ (概要)」および nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

ローカルの project ファイルの形式

nsswitch.confproject データベースとして files を選択した場合、ログインプロセスはプロジェクト情報を /etc/project ファイルで検索します (projects(1) および project(4) 参照)。project ファイルには、システムによって認識されるプロジェクトごとにエントリが 1 行ずつ、次の形式で記述されています。


projname:projid:comment:user-list:group-list:attributes

フィールドの定義は次のとおりです。

projname

プロジェクト名。英数字、下線 (_)、ハイフン (-) から成る文字列を指定します。最初の文字は英字でなければなりません。projname に、ピリオド (.)、コロン (:)、または改行文字を使用することはできません。

projid

システムでプロジェクトに割り当てられる一意の数値 ID (PROJID)。projid フィールドの最大値は UID_MAX (2147483647) です。

comment

プロジェクトの説明です。

user-list

プロジェクトへの参加を許可されたユーザーをコンマで区切ったリストです。

このフィールドではワイルドカードを使用できます。アスタリスク (*) を指定した場合、すべてのユーザーにプロジェクトへの参加を許可します。感嘆符に続けてアスタリスクを指定した場合 (!*)、すべてのユーザーのプロジェクトへの参加を拒否します。感嘆符 (!) に続けてユーザー名を指定した場合、指定されたユーザーのプロジェクトへの参加を拒否します。

group-list

プロジェクトへの参加を許可されたユーザーのグループをコンマで区切ったリストです。

このフィールドではワイルドカードを使用できます。アスタリスク (*) を指定した場合、すべてのグループにプロジェクトへの参加を許可します。感嘆符に続けてアスタリスクを指定した場合 (!*)、すべてのグループのプロジェクトへの参加を拒否します。感嘆符 (!) に続けてグループ名を指定した場合、指定されたグループのプロジェクトへの参加を拒否します。

attributes

名前と値の組をセミコロンで区切ったリストです (第 8 章「資源制御」参照)。name は、オブジェクトに関連する属性を指定する任意の文字列です。また value はその属性のオプション値です。


name[=value]

名前と値の組で、名前に使用できるのは、文字、数字、下線、ピリオドに制限されます。rctl のカテゴリとサブカテゴリの区切り文字にはピリオドを使用します。属性名の最初の文字は英字にする必要があります。名前については大文字と小文字は区別されます。

値を、コンマと括弧を使用して構造化することにより、優先順位を設定できます。セミコロンは、名前と値の組を区切るために使用されるので、値の定義には使用できません。コロンは、プロジェクトフィールドを区切るために使用されるので、値の定義には使用できません。


注 -

このファイルを読み取るルーチンは、無効なエントリを検出すると停止します。このため、無効なエントリの後に指定されているプロジェクトの割り当ては実行されません。


次に、デフォルトの /etc/project ファイルの例を示します。


system:0:System:::
user.root:1:Super-User:::
noproject:2:No Project:::
default:3::::
group.staff:10::::

次に、デフォルトの/etc/project ファイルの最後にプロジェクトエントリを追加した例を示します。


system:0:System:::
user.root:1:Super-User:::
noproject:2:No Project:::
default:3::::
group.staff:10::::
user.ml:2424:Lyle Personal:::
booksite:4113:Book Auction Project:ml,mp,jtd,kjh::

/etc/project ファイルに資源制御を追加する方法については、資源制御の使用を参照してください。

NIS のネームサービス構成

NIS を使用している場合は、NIS マップ内でプロジェクトを検索するように、/etc/nsswitch.conf ファイルで指定できます。


project: nis files 

NIS マップの project.bynameproject.bynumber はどちらも、次に示すように /etc/project ファイルと同じ形式です。


projname:projid:comment:user-list:group-list:attributes

詳細は、Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS、NIS、LDAP 編)を参照してください。

LDAP のディレクトリサービス構成

LDAP を使用している場合は、LDAP エントリでプロジェクトを検索するように、/etc/nsswitch.conf ファイルで指定できます。


project: ldap files

LDAP データベースにおけるプロジェクトエントリのスキーマなどの詳細については、『Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS, NIS, LDAP 編)』の「一般的なリファレンス」を参照してください。