Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)

ダイアルアップ PPP の概要

もっともよく使用される PPP 構成は、ダイアルアップリンクです。ダイアルアップリンクでは、ローカルピアがリモートピアをダイアルアップして接続を確立し、PPP を実行します。ダイアルアッププロセスでは、ローカルピアがリモートピアの電話番号を呼び出してリンクを開始します。

一般的なダイアルアップの使用例では、ユーザーの自宅にあるコンピュータが、着呼を受信するように構成されている ISP 側のピアを呼び出します。別のダイアルアップの使用例では、企業サイトでローカルマシンが PPP リンクを使用して、別の建物内にあるピアにデータを転送します。

このマニュアルでは、ダイアルアップ接続を開始するローカルピアは、ダイアルアップマシンと呼びます。着呼を受信するピアは、ダイアルインサーバーと呼びます。このマシンは実際にはダイアルアウトマシンがターゲットにするマシンに過ぎず、真の意味でのサーバーではない場合もあります。

PPP はクライアントサーバープロトコルではありません。PPP のドキュメントの中には、「クライアント」や「サーバー」という用語を、電話呼び出しによる確立のことを示すために使用しているものがあります。ダイアルインサーバーは、ファイルサーバーやネームサーバーのような真の意味でのサーバーではありません。ダイアルインサーバーという用語は、ダイアルインマシンが複数のダイアルアウトマシンにネットワークでのアクセス可能性を「提供」していることから、PPP 用語として幅広く使用されています。それでもダイアルインサーバーは、現実には、ダイアルアウトマシンのターゲットピアにすぎません。

ダイアルアップ PPP リンクの構成要素

図 29-2 基本的なアナログダイアルアップ PPP リンク

この図は、場所 1 と場所 2 との基本的なダイアルアップリンクを示しています。このリンクについては以下で詳しく説明します。

リンクのダイアルアウト側 (場所 1) の構成は、次の要素から成ります。

リンクのダイアルイン側 (場所 2) の構成は、次の要素から成ります。

ダイアルアウトマシンで ISDN 端末アダプタを使用する

外付けの ISDN TA はモデムよりも高速ですが、両者の構成方法は基本的に同じです。両者の主な相違は chat スクリプト間の構成にあります。ISDN TA の場合、chat スクリプトの記述では、TA の製造元に固有のコマンドが必要になります。ISDN TA 用の chat スクリプトについては、外部 ISDN TA 用 chat スクリプトを参照してください。

ダイアルアップ通信中の動作

ダイアルアウトとダイアルインの両方のピアにある PPP 構成ファイルには、リンクを設定するための命令群が含まれています。ダイアルアップリンクが開始されると、次のプロセスが発生します。

  1. ダイアルアウトマシン上のユーザーまたはプロセスは、pppd コマンドを実行してリンクを開始する

  2. ダイアルアウトマシンは PPP 構成ファイルを読み取る。次に、シリアル回線を介して、ダイアルインサーバーの電話番号などの命令群をモデムに送信する

  3. モデムは電話番号をダイアルして、ダイアルインサーバー側のモデムと電話接続を確立する。

    ダイアルアウトマシンは、必要に応じて、ダイアルインサーバーにコマンドを送信し、サーバー側の PPP を呼び出す

  4. ダイアルインサーバーに接続されているモデムは、ダイアルアウトマシン側のモデムとリンクのネゴシエーションを開始する。

    ダイアルアウトマシンが、モデムとダイアルインサーバーに送信する一連のテキスト文字列は、chat スクリプトと呼ばれるファイルに格納されている

  5. モデム同士のネゴシエーションが完了すると、ダイアルアウトマシン側のモデムは「CONNECT」を通知する

  6. 両方のピア側の PPP は確立フェーズに入る。このフェーズでは、リンク制御プロトコル (LCP) が基本的なリンクパラメータと認証の使用をネゴシエートする

  7. ピアは、必要に応じて、互いを認証する

  8. PPP のネットワーク制御プロトコル (NCP) は、IPv4 や IPv6 などのネットワークプロトコルの使用をネゴシエートする

ダイアルアウトマシンでは、ダイアルインサーバーに知られているホストに telnet または類似のコマンドを実行できます。