リンカーとライブラリ

セグメントの宣言

セグメントの宣言により、出力ファイルに新しいセグメントを作成したり、既存のセグメントの属性値を変更したりできます。既存のセグメントとは、以前に定義したもの、あるいは以下に述べる 4 つの組み込みセグメントの 1 つのことです。

セグメントの宣言は以下の構文で行います。

        segment_name = {segment_attribute_value}*;

segment_name に対して、任意の数の segment_attribute_values を任意の順序で指定し、それぞれは空白文字で区切ります。セグメント属性ごとに 1 つの値だけを指定できます。 セグメント属性および有効な値を、次の表に示します。

表 8–1 Mapfile セグメント属性

属性 

値 

segment_type

LOAD | NOTE | STACK

segment_flags

? [E] [N] [O] [R] [W] [X]

virtual_address

V number

physical_address

P number

length

Lnumber

rounding

Rnumber

alignment

Anumber

4 つの組み込みセグメントが存在し、以下のデフォルト属性値を保持します。

デフォルトでは、bss セグメントは無効に設定されています。この唯一の入力部分である SHT_NOBITS タイプのセクションは、データセグメント内でキャプチャされます。SHT_NOBITS セクションの詳細は、表 7–12 を参照してください。最も単純な bss 宣言を次に示します。

        bss =;

この宣言で、bss セグメント作成を有効にできます。すべての SHT_NOBITS セクションは、データセグメントではなく、このセグメントによりキャプチャされるようになります。最も単純な場合、他のセグメントにも適用されるデフォルトを使用してこのセグメントの整列が行われます。宣言を実行してセグメントの追加属性を指定することにより、セグメント作成を有効にしたり、指定した属性を付与したりすることもできます。

リンカーは、mapfile を読み取る前に、これらのセグメントが宣言されたように動作します。詳細は、mapfile オプションの初期値を参照してください。

セグメント宣言を入力する場合、以下のことに注意してください。


注 –

virtual_address 値が指定されている場合、セグメントはその仮想アドレスに置かれます。システムカーネルの場合、この方法で正しい結果が生成されます。exec(2) を介して開始するファイルの場合、この方法では、セグメントがページ境界に対応する正しいオフセットを保持しないため、不正な出力ファイルが作成されることになります。


?E フラグにより、空のセグメントが作れます。この空のセグメントには、関連付けられたセクションが存在しません。このセグメントは実行プログラムについてのみ指定でき、LOAD 型で、長さおよび整列が指定されていなければなりません。この種類のセグメントは複数定義することもできます。

?N フラグにより、ELF ヘッダー、および任意のプログラムヘッダーを最初の読み込み可能なセグメントの一部分として含めるかどうかを制御できます。特に指定しない場合、 ELF ヘッダーおよびプログラムヘッダーは、最初のセグメントに含まれます。これらのヘッダー内の情報は、対応付けられたイメージ内で (通常は実行時リンカーにより) 使用されます。?N オプションを使用すると、イメージの仮想アドレス計算が最初のセグメントの最初のセクションで開始されます。

?O フラグを使用すると、出力ファイル内のセクションの順序を制御できます。このフラグは、コンパイラの -xF オプションと合わせて使うようになっています。ファイルを -xF オプションを使ってコンパイルすると、そのファイル内の各関数が、.text セクションと同じ属性を持つ別個のセクションに置かれます。これらのセクションは、 .text%function_name という名前になります。

たとえば、main()foo()、および bar() の 3 つの関数を持つファイルを -xF オプションを使ってコンパイルすると、再配置可能オブジェクトファイルが作成され、3 つの関数のテキストが .text%main.text%foo、および .text%bar という名前のセクションに配置されます。-xF オプションは 1 つのセクションに 1 つの関数を割り当てるので、セクションの順番を制御するために ?O フラグを使うと、実際には関数の順番を制御することになります。

次のユーザー定義の mapfile を検討します。

        text = LOAD ?RXO;
        text: .text%foo;
        text: .text%bar;
        text: .text%main;

最初の宣言により、?O フラグがデフォルトのテキストセグメントに関連付けられます。

ソースファイルの関数定義の順序が、mainfoo、および bar の場合、最終的な実行プログラムには foobar、および main の順序で関数が含まれます。

同じ名前の静的関数を対象とする場合、ファイル名も指定する必要があります。?O フラグを指定すると、mapfile で指定されたとおりにセクションの順序付けが行われます。たとえば、静的関数 bar() がファイル a.o および b.o にあって、ファイル a.o の関数 bar() を、ファイル b.o の関数 bar() の前に置く場合、mapfile のエントリは次のようになります。

        text: .text%bar: a.o;
        text: .text%bar: b.o;

次のエントリも構文上は可能です。

        text: .text%bar: a.o b.o;

しかし、ファイル a.o の関数 bar() がファイル b.o の関数 bar() の前に置かれることは保証されません。2 番目の形式は、結果が予測できないため、お勧めしません。