マルチデータ転送 (MDT) では、ネットワークスタックから同時に複数のパケットをネットワークデバイスドライバに送信できます。この機能を有効にすると、ホストの CPU 使用率やネットワークのスループットが改善され、パケットあたりの処理コストが削減されます。
マルチデータ転送機能を利用できるのは、この機能をサポートするデバイスドライバのみです。
MDT パラメタを使用するには、/etc/system ファイルを編集して、次のパラメタを有効にする必要があります。
set ip:ip_use_dl_cap = 0x1
デフォルトの設定では、MDT は無効になっています。次のコマンドを実行すると、TCP/IP スタックにより、MDT が有効になります。
# ndd -set /dev/ip ip_multidata_outbound 1
MDT を有効にする前に、次の点を確認してください。
この機能を有効にすると、IP レイヤと DLPI プロバイダ間でパケットの外観が変化することがあります。このため、inconfig modinsert コマンドによって IP レイヤと DLPI プロバイダ間に動的に挿入される他社製の STREAMS モジュールが動作しないことがあります。inconfig modinsert コマンドは、MDT STREAMS データ型を認識しません。
さらに、autopush コマンド機構によって IP レイヤと DLPI プロバイダ間に挿入されるモジュールも動作しないことがあります。
MDT に対応しない STREAMS モジュールを使用する場合は、この機能を有効にしないでください。たとえば、ipfilter や CheckPoint Firewall-1 などの共有ドメインユーティリティは MDT に対応しません。
詳細は、『Solaris カーネルのチューンアップ・リファレンスマニュアル』および ip(7P) のマニュアルページを参照してください。
Solaris オペレーティング環境では、Java Messaging Service (JMS) アプリケーションをサポートしています。今回の Solaris リリースでは、JMS プロバイダとして Sun ONE Message Queue (旧名称は iPlanetTM Message Queue for Java) を使用します。
Sun ONE Message Queue は、Solaris 9 12/02 Update リリースでは SPARC プラットフォーム向けの新機能です。Solaris 9 8/03 Update リリースでは x86 プラットフォームでも利用できるようになりました。
JMS のメッセージングにより、アプリケーションおよびアプリケーションコンポーネントの非同期メッセージ交換および信頼性を実現しています。異なるプラットフォーム上および異なるオペレーティングシステム上で実行されるプロセスが共通のメッセージサービスに接続して、情報の交換ができます。
Solaris リリースの Sun ONE Message Queue, Platform Edition では、JMS 仕様が完全に実装されています。Message Queue では、次のような機能を提供しています。
一元管理
調整可能なパフォーマンス
Java Naming and Directory InterfaceTM (JNDI) のサポート
SOAP (Simple Object Access Protocol) メッセージングのサポート
詳細は、『Sun ONE Message Queue 3.0.1 管理者ガイド』および『Sun ONE Message Queue 3.0.1 開発者ガイド』を参照してください。Sun ONE Message Queue のバージョンと機能については、次の Web サイトも参照してください。
http://www.sun.com/software/products/message_queue/home_message_queue.html |
Solaris オペレーティング環境には、Sun ONE Application Server 7, Platform Edition (旧名称は iPlanet Application Server) が統合されています。Application Server の Platform Edition は、エンタープライズクラスのアプリケーションサービスと Web サービスの基盤を提供します。このサーバーは、高性能、省メモリの JavaTM 2 Platform, Enterprise Edition (J2EETM) を提供します。J2EE は、エンタープライズアプリケーションや Web サービスを幅広い種類のサーバー、クライアント、およびデバイス上で開発、配備、および管理することを可能にします。
Sun ONE Application Server は、J2EE 1.3 プラットフォームと互換性のある新しい Java および XML (eXtensible Markup Language) アプリケーションの移植性と市場投入までの時間の短縮化を実現します。Sun ONE Application Server を使って、JavaServer PagesTM (JSPTM)、Java サーブレット、および Enterprise JavaBeansTM (EJBTM) テクノロジをベースにするアプリケーションを開発できます。EJB テクノロジは、部門ごとの小規模アプリケーションから企業規模の基幹サービスまで、ビジネス要件を幅広くサポートしています。
主な特徴には次のものがあります。
Sun ONE Message Queue と Sun ONE Web Server の HTTP (Hypertext Transfer Protocol) サーバーの統合
スケーラビリティと高性能
広範囲にわたる Web サービスのサポート – Java Web Services、SOAP、WSDL (Web Services Description Language)
Sun ONE Portal Server 6.0 および Sun ONE Directory Server の相互運用性
J2EE リファレンス実装の利用
次の名称が変更されています。
Sun ONE Message Queue (旧名称は iPlanet Message Queue for Java)
Sun ONE Web Server (旧名称は iPlanet Web Server)
Sun ONE Portal Server (旧名称は iPlanet Portal Server)
Sun ONE Directory Server (旧名称は iPlanet Directory Server)
詳細は、Sun ONE Application Server 7 Update 1 Collection (Solaris Edition) - Japanese を参照してください。このコレクションの詳細は、以下の Solaris 9 8/03 リリースの新規マニュアルおよび改訂マニュアルを参照してください。http://www.sun.com/software/products/appsrvr/home_appsrvr.html も参照してください。
それぞれの使用許諾権については、バイナリコードライセンスを参照してください。
6to4 トンネルをサポートするルーターを 1 個以上構成することにより、IPv6 ネットワークからインターネットプロトコルバージョン 4 (IPv4) ネットワーク経由でパケットを転送できるようになりました。システム管理者は、6to4 トンネルを使って、IPv4 ネットワークから IPv6 ネットワークへ移行できます。この機能は、RFC 3056 および 3068 を実装しています。
IPv6 の詳細は、『IPv6 の管理』を参照してください。
この機能により、IPv6 経由の IPv4 トンネリング、および IPv6 経由の IPv6 トンネリングという IPv6 経由のパケットトンネリングが可能になります。IPv4 パケットまたは IPv6 パケットは IPv6 パケットでカプセル化できます。
詳細は、『IPv6 の管理』を参照してください。
Solaris Network Cache and Accelerator (NCA) カーネルモジュールは、Web サーバーのマルチインスタンスをサポートします。これにより、Solaris マシン上で IP アドレスベースの仮想 Web ホスティングを行うことができます。Solaris は、/etc/nca/ncaport.conf という名前の単一の構成ファイルを使って、NCA ソケットを IP アドレスに割り当てます。
詳細は、ncaport.conf(4) のマニュアルページを参照してください。
IP サービス品質 (IPQoS) は、Solaris オペレーティング環境に新たに追加された機能です。システム管理者は IPQoS により、顧客や重要なアプリケーションに対して異なるレベルのネットワークサービスを提供できます。IPQoS を使用することによって、管理者はサービスレベルに関する条項を設定できます。これらの条項により、ISP (インターネットサービスプロバイダ) のクライアントに対して、価格に基づいて異なるレベルのサービスを提供できます。企業も IPQoS を使用することによって、アプリケーション間で優先順位をつけることができます。これにより、アプリケーションの重要度に応じて、より高い品質のサービスを提供できます。
詳細は、『IPQoS の管理』を参照してください。
Solaris IPQoS 機能に、これまでの uid セレクタを補うユーザーセレクタが追加されました。このユーザーセレクタでは、ipqosconf ファイルの filter 節に、条件としてユーザー名またはユーザー ID を指定できます。これまでの uid セレクタでは、ユーザー ID しか指定できませんでした。以下は、ユーザーセレクタを使用する場合の ipqosconf ファイルの filter 節の抜粋です。
filter { name myhost user root } |
フィルタとセレクタの詳細は、『IPQoS の管理』および ipqosconf(1M) のマニュアルページを参照してください。
Solaris システムソフトウェアは、Routing Information Protocol Version 2 (RIPv2) をサポートします。
RIPv2 では、クラスレスドメイン間ルーティング (CIDR) および 可変長サブネットマスク (VLSM) 拡張機能が RIPv1 プロトコルに追加されています。MD5 (Message Digest 5) 拡張機能により、悪意のあるユーザーによって故意に引き起こされる誤った転送からルーターを保護します。新しい in.routed 実装には、組み込みの Internet Control Message Protocol (ICMP) ルーター発見 (RFC 1256) 機構も含まれています。
RIPv2 は、ポイントツーポイントのリンクがマルチキャストで有効になる場合には、マルチキャストをサポートします。RIPv2 では、ユニキャストもサポートします。/etc/gateways ファイルを使用してブロードキャストアドレスを構成した場合は、RIPv2 でブロードキャストをサポートします。
RIPv2 の構成方法については、in.rdisc(1M)、in.routed(1M)、および gateways(4) のマニュアルページを参照してください。