LAN とルーター間にあるホスト上では、IP 透過モードで Solaris Bandwidth Manager を実行します。
このモードが IP 透過と呼ばれるのは、Solaris Bandwidth Manager が動作しているホストが IP ネットワークに完全に透過的であり、LAN に接続されたまったく別のマシンのように認識されるためです。LAN と WAN は、そのルーターだけで直接接続されているように動作します。各ホストのルーティングテーブルを変更する必要はありません。
カーネルには 3 つのモジュールがあり、LAN とルーター間でパケットを受信、フィルタ、分類、スケジュール管理、および転送を行います。図 2-6 に点線で、IP 透過モードにおけるデータの論理フローを示します。
ipqos1 |
システム起動時に autopush.ba と autopush_usr.ba によって IP スタックに実装される。このモジュールは LAN からホストに到着するパケットを監視するが、ホストマシン宛のパケットだけを処理する |
ipqos2 |
ポリシーエージェント起動時に実装される。このモジュールは LAN からホストに到着するパケットを監視して、フィルタし、カーネル内に振り分ける |
ipqos3 |
ポリシーエージェント起動時に実装される。このモジュールインタフェースは LAN または WAN からホストに到着したパケットを監視する。そして、分類、スケジュール管理する。設定ファイルのクラスはこのモジュールに格納される |
LAN から Solaris Bandwidth Manager が動作しているホストへ向けたトラフィックは、LAN インタフェースによって受信されます。
パケットの着信先 IP アドレスが Solaris Bandwidth Manager が動作しているホストである場合、そのパケットはすでに ipqos1 によって IP スタック上へ送られているため、ipqos2 では破棄されます。
パケットの着信先 IP アドレスが Solaris Bandwidth Manager が動作しているホストでない場合、次の条件に適合すれば、そのパケットはルーターへ直接転送されます。
IP パケットがルーター宛てである場合
パケットが IP パケットでなく、かつ、設定ファイル内で非 IP モードが direct に設定されている場合
パケットがマルチキャストパケットであり、マルチキャストモードが direct に設定されている場合
上記以外の場合、パケットは ipqos3 によって分類およびスケジュール管理されます。
WAN からのトラフィックは、ipqos3 と ipqos2 経由で LAN に転送されます。
ipqos3。次の状況下では、パケットは分類およびスケジュール管理されない
ipqos3 が着信トラフィックを制限するように構成されていない場合
マルチキャストパラメータが direct に設定されている場合
パケットが IP パケットでなく、かつ、非 IP モードが direct に設定されている場合
ipqos2。このモジュールは着信先 IP アドレスをチェックする。パケットが Solaris Bandwidth Manager が動作しているホスト宛ての場合、そのパケットは ipqos1 経由で IP スタックに送られる。それ以外の場合、パケットはその宛先に転送される
設定ファイルから設定できるのは ipqos3 だけです。そのため、設定ファイル内のインタフェースに対する参照はすべて、WAN インタフェースである必要があります。設定ファイル内のネットワークデバイスオプションを設定して LAN インタフェースを参照するには、次のどちらかの方法を使用します。
設定ファイル内のインタフェースセクションにある network キーワードを編集する
batool の「設定」の中の「インタフェース」ウィンドウを使用する
nonip_mode パラメータが direct に設定されている場合、非 IP トラフィックは ipqos をバイパスします。このようなパケットはフロー統計に記録されません。nonip_mode パラメータが ipqos に設定されている場合、トラフィックは default クラスに送られます。default クラスが設定されていない場合は root クラスに送られます。