Solaris PC NetLink 管理マニュアル

5.2.3 WINS とブロードキャスト名前解決

WINS はルーティングされたネットワーク環境でコンピュータ名の動的な IP アドレスマッピングを登録および照会する分散データベースを提供します。WINS は複雑なインターネットワークで発生する名前解決の問題を解決します。

WINS は名前解決に関するローカルブロードキャストの使用を削減し、ユーザーがリモートネットワーク上で簡単にシステムを検出することができるようにします。さらに、DHCP を通じた動的なアドレス指定により、サブネット間を移動するコンピュータに新規の IP アドレスが割り当てられた場合は WINS データベース内で自動的に更新されます。ユーザーもネットワーク管理者も手動で変更を行う必要はありません。

以下の節で、WINS と名前照会ブロードキャストメッセージによって名前解決が行われる方法について説明します。

5.2.3.1 ルーティングされた環境での WINS

WINS は以下の 2 つのコンポーネントで構成されます。

Windows ネットワーククライアント (WINS 対応の Windows NT、Windows 98、Windows 95、または Windows for Workgroups 3.11 コンピュータ) は直接 WINS を使用することができます。b ノード対応のインターネットワーク上にある非 WINS コンピュータ (RFC 1001 および 1002 に示されている) はプロキシ (名前照会ブロードキャストに反応してローカルサブネット上にない名前に関して応答する WINS 対応のコンピュータ) を通じて WINS にアクセスできます。

WINS なしでブラウズできるようにするには、ユーザーのプライマリドメインに、ルーターの両側にマスターブラウザとして機能する SunLink Server、Windows NT Server、または Windows NT Workstation コンピュータがあることをネットワーク管理者が確認する必要があります。これらのコンピュータには、サブネット用のドメインコントローラのエントリを持つ、正しく構成された LMHOSTS ファイルが必要です。

WINS ではこのような対策は必要ありません。WINS サーバーやプロキシは、ドメインがルーターをまたぐような場合でも、ルーターを越えてブラウズする際に必要なサポートを透過的に提供するからです。


注 -

Windows NT を実行しているクライアントコンピュータで DHCP にも対応している場合、管理者が WINS サーバー情報を DHCP オプションの一部として指定していれば、コンピュータは自動的に WINS サーバーの情報を利用するように構成されます。


WINS およびブロードキャスト名前解決環境では、WINS 対応のクライアントコンピュータと WINS 非対応のクライアントコンピュータとでは動作の仕方が異なります。以下の節で説明するように、これらのクライアントが解決、登録、解放、および更新などを取り扱う方法に、このような相異が現れます。

名前解決

インターネットワークで使用可能な状態にある WINS では、NetBIOS コンピュータ名は WINS 解決がクライアントコンピュータ上で使用できるようになっているかどうかによって、2 つの基本的な方法で解決されます。どちらの方法が使用されるかにかかわらず、システムが構成された後のプロセスはユーザーには見えません。

WINS サーバーはユーザーデータグラムプロトコル (UDP) の名前照会と受信や応答を行います。WINS サーバーを使って登録された名前の IP アドレスマッピングはすべて、名前照会の際に信頼性をもって提供されます。ただし、データベースでのマッピングは必ずしも関連デバイスが現在も稼動しているということを示すものではなく、コンピュータが特定の IP アドレスを要求し、それが現在有効なマッピングであることを示しているだけです。

名前登録

名前登録は、NetBIOS コンピュータ名および IP アドレスが各デバイス独自のものであることを確認するものです。

非 WINS コンピュータが名前の要求を出した後、重複した名前登録の試みにはチャレンジし、登録された名前に対して発行された名前照会には通常の応答を返す必要があります。2 つのシステムがセッションを確立できるように、通常の名前照会応答にはコンピュータの IP アドレスを含めます。

名前解放

コンピュータが特定の名前の使用を止めた場合、その名前に関する他のコンピュータからの登録要求にはチャレンジしません。これを名前の解放といいます。

名前の更新

クライアントコンピュータは WINS サーバーを使ってその NetBIOS 名の登録を定期的に更新する必要があります。クライアントコンピュータが最初に WINS サーバーへの登録を行う際、WINS サーバーは以下のようにクライアントが登録を更新しなければならない時期を示すメッセージを返します。

エントリがローカル WINS サーバーに所有されている場合、その名前はクライアントが更新しない限り指定された時間で解放されます。エントリが別の WINS サーバーに所有されている場合、そのエントリは指定された時間で再度有効になります。エントリがそれを所有する WINS サーバーのデータベースに存在しない場合、ローカル WINS データベースから削除されます。名前の更新要求は新規の名前登録と同じように取り扱われます。


注意 - 注意 -

更新期間の不適切な調整は、逆にシステムおよびネットワークの性能に影響を与えることがあります。


5.2.3.2 WINS プロキシ

WINS プロキシは、ルーティングされた TCP/IP イントラネット上で WINS 非対応のコンピュータが名前照会を解決する際に役立つ WINS 対応のコンピュータです。デフォルトでは、WINS に対応していないコンピュータは b ノードとして構成され、名前照会には IP ブロードキャストを使用します。WINS プロキシコンピュータは IP ブロードキャストの名前照会にローカルサブネット上で対応します。

WINS に対応していないコンピュータが IP 名前照会ブロードキャストを送るとき、WINS プロキシはブロードキャストを受信して、キャッシュから対応する NetBIOS コンピュータ名の IP アドレスマッピングを探します。WINS プロキシのキャッシュの中に正しいマッピングがあった場合、WINS プロキシはその情報を非 WINS コンピュータに送ります。その名前と IP アドレスのマッピングがキャッシュの中にない場合、WINS プロキシはそれを WINS サーバーに照会します。

WINS サーバーがローカルサブネット上で使用できない場合、WINS プロキシはルーターを通じて WINS サーバーへの照会を行うことができます。WINS プロキシは WINS サーバーから受信したコンピュータ名の IP アドレスマッピングをキャッシュ (メモリーに保存) します。これらのマッピングは、それ以降のローカルサブネット上での b ノードコンピュータからの IP ブロードキャスト名前照会への応答に使用されます。

WINS プロキシが WINS サーバーから受信した名前の IP アドレスマッピングは一定の時間 (インストール時のデフォルトでは、この値は 6 分になっています。最小値は 1 分です) WINS プロキシのキャッシュに保存されます。

WINS プロキシが WINS サーバーからの応答を受信したとき、WINS プロキシはそのマッピングをキャッシュに保存して、WINS サーバーから受信したそのマッピングを基にそれ以降の名前照会ブロードキャストに応答します。

WINS プロキシの役割は、DHCP クライアントの要求をルーターを通じて転送する DHCP/BOOTP リレーエージェントの役割に似ています。WINS サーバーはブロードキャストには応答しないため、WINS プロキシとして構成されるコンピュータは名前解決にブロードキャストを使用するコンピュータを含むサブネット上にインストールする必要があります。


注 -

Windows NT Version 4.0 コンピュータを WINS プロキシとして構成するには、そのコンピュータのレジストリを手動で編集する必要があります。EnableProxy キーワードを 1 (REG_DWORD) に設定してください。このキーワードは HKEY_LOCAL_MACHINE¥SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥NetBT¥Parametersのキーにあります。