Sun Cluster 2.2 ソフトウェアのインストール

Sun Clusterがサポートする構成

クラスタは、一群の物理ホスト (ノード) で構成されます。Sun Cluster のマニュアルでは、クラスタのノードは Sun Cluster サーバーとも呼びます。

このリリースの Sun Cluster では、ハードウェア構成として、対称、非対称、クラスタ化ペア、リング、N+1 (星型)、N to N (スケーラブル) トポロジをサポートしています。以降、この章では、これらのトポロジをそれぞれ詳しく説明します。


注 -

リングトポロジは Solaris 2.6 と Solaris 7 だけでサポートされます。Solaris 8 ではサポートされません。


対称構成では、ノードは 2 つだけです。両方のサーバーは同じ構成であり、一般に、通常の運用では両方がデータサービスを提供します。図 1-12 を参照してください。

一方のサーバーがもう一方のサーバーのホットスタンバイサーバーとして動作する 2 ノードの構成は、非対称構成といいます。この構成は、N+1 (N=1) 構成として扱われます。

クラスタ化ペアは、1 つのクラスタ管理フレームワークの下で動作する 2 つの Sun Cluster ノードペアです。

リング構成では、データサービスの 1 つのセットごとに主サーバーとバックアップサーバーを 1 つずつ指定できます。すべてのディスク記憶装置が二重ホスト化され、正確に 2 つのクラスタノードに物理接続されます。ノードおよび記憶装置は、リング内に交互に接続されます。リング構成は、オンラインの複数の高可用性データサービスを構成するのに理想的です。図 1-14 を参照してください。

N+1 (星型) 構成は、2 つ以上のノードで構成されます。N+1 構成内のノード (+1 のノード) は、別のノードで障害が発生しない限り、アクティブにならないよう構成することができます。この構成では、+1 のノードは、「ホットスタンバイ」として機能します。通常の運用では、残りのノードはアクティブです。この章の例では、通常の運用では、ホットスタンバイノードはデータサービスを実行しないことを前提にしています。しかし、通常の運用で +1 のノードがデータサービスを実行しないことが必須というわけではありません。図 1-15 を参照してください。

N to N (スケーラブル) 構成では、すべてのサーバーが 1 組の共有ディスクに直接、接続されます。データサービスが別のどのサーバーにでもフェイルオーバーできるため、これは最も柔軟性がある構成です。図 1-16 を参照してください。

高可用性と並列データベースの構成

Sun Cluster は、HA データサービスと並列データベースの構成をサポートしています。いくつかの制限がありますが、HA および 並列データベースを 1 つのクラスタ内で組み合わせることもできます。

HA 構成内のデータサービスは、複数のホストを同じ物理ディスク格納装置に接続することによって高可用性になります。各ホストの状態は、プライベートインターコネクトを介して監視されます。ホストの 1 つで問題が発生すると、同じ共有記憶装置に接続されている別のホストが、障害ホストの行なっていたデータサービス業務を引き継ぐことができます。図 1-10 は、高可用性データサービス構成の例です。

図 1-10 高可用性データサービス構成

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Oracle Parallel Server (OPS) は、複数のホストが共有記憶装置上の同じデータにアクセスすることを可能にすることによってリレーショナルデータベースを高可用性にします。共有ディスク格納装置へのトラフィックは、2 つのプロセスが同時に同じデータにアクセスすることを防止する DLM によって制御されます。高可用性は、データベースへのアクセストラフィックを障害ホストから残りのノードの 1 つにリダイレクトすることによって実現されます。図 1-11 は、高可用性 OPS 構成の例です。プライベートインターコネクトは SCI (Scalable Coherent Interface) または Fast Ethernet のどちらでもかまいません。

図 1-11 OPS データベース構成

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Informix-Online XPS 並列データベースは、複数の共有記憶装置にまたがってリレーショナルデータベースをパーティション分割することによって並列アクセスを可能にします。複数のホストプロセスは、同じパーティションに格納されているデータにアクセスするのでなければ、同じデータベースに同時にアクセスできます。特定の 1 つのパーティションへのアクセスは 1 つのホストによって行われるため、そのホストで問題が発生すると、そのパーティションのデータは利用できなくなります。このため、Informix-Online XPS は並列データベースではありますが、Sun Cluster 内で高可用性の構成にすることはできません。

対称構成と非対称構成

定義では、対称および非対称 HA 構成は、正確に 2 つのノードで構成されます。高可用性データサービスは、そのうちの 1 つまたは両方のノードで動作します。図 1-12 は、2 ノードの構成を表しています。この構成例では、兄弟と呼ばれる 2 つのアクティブなノード (phys-hahost1phys-hahost2) で構成されます。

両方のノードとも、1 組の多重ホストディスクに物理接続されます。

図 1-12 2 ノードの構成

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クラスタ化ペア構成

クラスタ化ペア構成は、対称構成の変形です。クラスタ化ペア構成では、2 つのサーバーのペアがあり、それぞれのペアが独立して動作します。しかし、サーバーのすべてはプライベートインターコネクトによって接続され、Sun Cluster ソフトウェアの制御下に置かれます。

図 1-13 クラスタ化ペア構成

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クラスタ化ペアは、一方のペアで並列データベースアプリケーション、もう一方のペアで HA データサービスを実行できるように構成できます。フェイルオーバーは、1 つのペア上でのみ可能です。

リング構成

リング構成では、データサービスの 1 セットごとに主サーバーとバックアップサーバーを 1 つずつ指定できます。特定のデータサービスについて、主サーバーに隣接するノードがバックアップです。すべてのディスク記憶装置が二重ホスト化され、正確に 2 つのクラスタノードに物理接続されます。リング内には、ノードおよび記憶装置が交互に接続されます。すべてのノードがアプリケーションを実行できます。1 つのノードが 1 つのデータサービスセット用の主サーバーであると同時に、別のデータサービスセットのバックアップになります。図 1-14 は、4 ノードのリング構成を表しています。


注 -

リング構成には、同じノード上で複数の RDBMS データサービスを実行できないという制限があります。



注 -

リングトポロジは Solaris 2.6 と Solaris 7 ではサポートされますが、Solaris 8 ではサポートされません。


図 1-14 リング構成

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N+1 (星型) 構成

N+1 (星型) 構成は、複数のアクティブサーバーと 1 つのホットスタンバイサーバーで構成されます。アクティブサーバーとホットスタンバイサーバーを同じ構成にする必要はありません。図 1-15 は、N+1 構成を表しています。アクティブサーバーはデータサービスを提供し、ホットスタンバイサーバーはアクティブサーバーの障害に備えて待機します。ホットスタンバイサーバーは、構成内において、すべてのディスク拡張装置に対する物理的なディスク接続を持つ唯一のサーバーです。

アクティブなサーバーの 1 つで障害が発生した場合、障害サーバーが提供していたデータサービスはホットスタンバイサーバーにフェイルオーバーされます。その後、ホットスタンバイサーバーは、データサービスが元のアクティブサーバーに手動でスイッチオーバーされるまでデータサービスを提供し続けます。

別の Sun Cluster サーバーの障害に備えて待機している間、ホットスタンバイサーバーがアイドル状態になっている必要はありません。しかし、ホットスタンバイサーバーには、常に、アクティブサーバーの 1 つで問題が発生したときの負荷を処理するために必要十分な CPU 能力を残しておいてください。

図 1-15 N+1 構成

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N to N (スケーラブル) 構成

N to N (スケーラブル) 構成では、すべてのサーバーがすべての多重ホストディスクに物理接続されます。1 つのノードが提供していたデータサービスは、1 つまたは複数のバックアップにフェイルオーバーできます (階層式フェイルオーバー)。

N to N 構成は、データサービスが最高 3 つの別のノードにフェイルオーバーできるため、最も冗長な構成です。

図 1-16 N to N 構成

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構内クラスタ化

Sun Cluster は、構内クラスタ化をサポートしています。これは、サイトを地理的に隔てて、特定の種類の障害からの回復を可能にするクラスタ構成です。そうした障害は、構内の一部に局所化されます。

すべてのサーバーと記憶装置を、物理的に 1 つのサーバールームに集中することも、地理的に複数のサイトに分散させることもできます。地理的に分散すると、火災などの大惨事からデータを保護することができ、このため全体のデータサービスの可用性が向上します。

構内クラスタ化についての詳細は、ご購入先にお問い合わせください。