Sun Cluster 2.2 のシステム管理

パブリックネットワーク管理 (PNM) の設定

この節では、PNM の設定とバックアップグループの構成を行う方法について説明します。

PNM を設定するには

次に、PNM の設定手順の概略を示します。

次に、PNM の詳しい設定手順を示します。

  1. 同じサブセットを使用して、単一のノード上に複数のネットワークアダプタが存在するようにノードハードウェアを設定します。

    ネットワークアダプタを設定するには、Sun Cluster ノードのハードウェアのマニュアルを参照してください。

  2. Sun Cluster ノードソフトウェアパッケージがまだインストールされていない場合は、scinstall(1M) コマンドを使用してそれらをインストールします。

    scinstall(1M) コマンドで、選択されたパッケージを対話形式でインストールします。PNM パッケージ SUNWpnm は、ノードパッケージセットの一部です。クラスタのインストール作業の詳細は、『Sun Cluster 2.2 ソフトウェアのインストール』を参照してください。

  3. 各ノードでデフォルトのネットワークインタフェースを登録します (まだ登録されていない場合)。

    各ノードに対応するインタフェースデータベース内のノードごとにデフォルトネットワークインタフェースを 1 つ登録するとともに、そのインタフェースが取り付けられ、正常に動作していることを確認する必要があります。

    1. 各ノードでインタフェースデータベースを作成し、主パブリックネットワークインタフェースを登録します。

      各ノードの /etc ディレクトリに、インタフェースデータベースとして使用するファイルを作成します。このファイルに、hostname.interfaceという名前を付けます (interface は、gfe、hme のようなインタフェースの種類)。続いて、そのノードのホスト名が入った 1 行を追加します。たとえば、デフォルトインタフェース qfe1 を持つノード phys-hahost1 で、次に示す行が入ったファイル /etc/hostname.qfe1 を作成します。

      phys-hahost1
    2. 各ノードの /etc/hosts ファイルで、主パブリックネットワークインタフェース名と IP アドレスを関連付けます。

      次の例では、主物理ホスト名は phys-hahost1 です。

      129.146.75.200 phys-hahost1-qfe1

      システムが /etc/hosts 以外の命名方法を使用している場合は、『TCP/IP とデータ通信』の該当する説明を参照し、同等の機能を実行してください。

  4. pnmset(1M) コマンドを使用して、PNM バックアップグループを作成します。

    対話式の pnmset(1M) スクリプトを実行して、バックアップグループを設定してください。


    注意 - 注意 -

    論理ホストとデータサービスをすでに構成してある場合は、pnmset(1M) を使用してバックアップグループメンバーシップを変更する前に、HA データサービスを停止する必要があります。pnmset(1M) コマンドを実行する前にデータサービスを停止しないと、重大な問題やデータサービス障害が発生することがあります。


    1. pnmset(1M) コマンドを実行します。

      phys-hahost1# /opt/SUNWpnm/bin/pnmset
      
    2. 構成するバックアップグループの合計数を入力します。

      通常、この数はパブリックサブネットの数に一致します。

      In the following dialog, you will be prompted to configure public 
      network management.
       
       do you want to continue ... [y/n]: y
       
       How many NAFO backup groups on the host [1]: 2
      
    3. バックアップグループ番号を割り当てます。

      プロンプトで、0 〜 255 (最大) の範囲で整数を指定します。pnmset(1M) コマンドは、この数字を文字列 nafo に加えてバックアップグループ名にします。

      Enter backup group number [0]: 0
      
    4. アダプタをバックアップグループに割り当てます。

      Please enter all network adapters under nafo0:
       qe0 qe1
      ...

      続けて、構成内のほかのすべてのバックアップグループに、バックアップグループ番号とアダプタを割り当てます。

    5. pnmset(1M) コマンドによって、アダプタ構成のテストが始まります。

      pnmset(1M) コマンドは、アダプタ構成の正確さをテストします。この例では、バックアップグループにアクティブアダプタが 1 つ、冗長アダプタが 2 つ含まれています。

      The following test will evaluate the correctness of the customer 
      NAFO configuration...
       name duplication test passed
       
       
       Check nafo0... < 20 seconds
       qe0 is active
       remote address = 192.168.142.1
       nafo0 test passed
       
       
       Check nafo1... < 20 seconds
       qe3 is active
       remote address = 192.168.143.1
       test qe4 wait...
       test qe2 wait...
       nafo1 test passed
       phys-hahost1#

      構成の検証が終わると、PNM デーモン pnmd(1M) は自動的に構成の変更を認識し、インタフェースの監視を開始します。


      注 -

      バックアップグループのアダプタの内、取り付けが行われ、/etc/hostname.adapter というファイルにエントリを持つのは、1 つのアダプタだけです。バックアップアダプタに IP アドレスは割り当てないでください。バックアップアダプタは取り付けられません。



      注 -

      PNM は、ブロードキャスト ping(1M) を使用してネットワークを監視します。ネットワークは、ブロードキャスト ICMP (Internet Control Message Protocol) パケットを使用して、ほかの遠隔ホストと通信を行います。ルーターの中にはブロードキャスト ICMP パケットを転送しないものがあり、PNM の障害検出動作はこの影響を受けます。この問題の対策については、『Sun Cluster 2.2 ご使用にあたって』を参照してください。


  5. scadmin(1M) コマンドを使用してクラスタを起動します。

    1 つのノードで、次のコマンドを実行してください。


    # scadmin startcluster physical-hostname sc-cluster
    

    続いて、ほかのすべてのノードで次のコマンドを実行し、クラスタにほかのすべてのノードを追加してください。

    # scadmin startnode
    
  6. pnmstat(1M) コマンドを使用して、PNM 構成を検証します。


    phys-hahost1# /opt/SUNWpnm/bin/pnmstat -l
    bkggrp  r_adp   status  fo_time live_adp
    nafo0   hme0    OK      NEVER   hme0
    phys-hahost1# 

    以上で、PNM の初期設定は終了です。

PNM を再構成するには

ネットワークアダプタを追加または削除して既存の PNM 構成を再構成する方法を次に示します。作業中も Sun Cluster サービスを利用できるように、この手順は一度に 1 つのノードに対して行なってください。

  1. 再構成するノードで、Sun Cluster ソフトウェアを停止します。

    phys-hahost1# scadmin stopnode
    
  2. ネットワークアダプタを追加または削除します。

    「ネットワークインタフェースの追加と削除」に説明されている作業を行なってください。

  3. pnmset(1M) コマンドを実行して、バックアップグループを再構成します。

    「PNM を設定するには」の手順 4 に説明されているように、pnmset(1M) コマンドを使用してバックアップグループを再構成してください。

    phys-hahost1# pnmset
    
  4. そのノードで、Sun Cluster ソフトウェアを再起動します。

    管理ワークステーションから次のコマンドを実行して、ノードを再起動してください。

    phys-hahost1# scadmin startnode
    
  5. 再構成するノードごとに、手順 1 〜 4 を繰り返します。

バックアップグループの状態を確認するには

pnmptor(1M)pnmrtop(1M) コマンドを使用すると、ローカルバックアップグループだけの状態を確認できます。pnmstat(1M) コマンドを使用すると、ローカルまたは遠隔のバックアップグループの状態を確認できます。

  1. アダプタが属しているバックアップグループを確認するには、pnmptor(1M) コマンドを実行します。

pnmptor(1M) コマンドは、実際のアダプタ名に指定する疑似アダプタ名を割り当てます。次の例では、システム出力は、疑似アダプタ名 nafo0 がアクティブアダプタ hme2 に対応することを示しています。

phys-hahost1# pnmptor nafo0
hme2
  1. 特定のバックアップグループに対応するアクティブアダプタを確認するには、pnmrtop(1M) コマンドを実行してください。

次の例では、システム出力は、アダプタ hme1 がバックアップグループ nafo0 に属することを示しています。

phys-hahost1# pnmrtop hme1
nafo0
  1. バックアップグループの状態を確認するには、pnmstat(1M) コマンドを実行します。

ローカルホスト上のバックアップグループの状態を確認するには、-c オプションを使用します。


phys-hahost1# pnmstat -c nafo0
OK
NEVER
hme2

遠隔ホスト上のバックアップグループの状態を確認するには、次の構文を使用します。


phys-hahost1# pnmstat -sh remotehost -c nafo1
OK
NEVER
qe1

注 -

-s-h オプションを共に使用することは重要です。-s オプションが指定されると、pnmstat(1M) はプライベートインターコネクトを介して通信を行います。-s オプションが省略されると、pnmstat(1M) はパブリックインターコネクトを介して照会を行います。remotehostpnmstat(1M) を実行するホストは、両方ともクラスタメンバーでなければなりません。


ローカルホストと遠隔ホストのどちらを確認している場合でも、pnmstat(1M) コマンドは状態、履歴、現在のアクティブアダプタを報告します。詳細は、マニュアルページを参照してください。

構成可能な PNM パラメータ

次の表は、ユーザーが構成できる PNM パラメータについて説明しています。これらのパラメータは、PNM をインストールした後で (ただしクラスタを立ち上げる前)、クラスタ内のすべてのノードの構成ファイル /opt/SUNWcluster/conf/TEMPLATE.cdb を手作業で編集して構成してください。1 つのノードで編集したファイルをほかのすべてのノードにコピーすることも、クラスタコンソールを使用してすべてのノードでファイルを同時に変更することも可能です。現在の PNM 構成は、pnmset -l を使用して表示できます。詳細は、pnmd(1M) のマニュアルページを参照してください。

表 6-2 構成可能な PNM パラメータ

pnmd.inactive_time

秒単位で示した障害検証間の時間。デフォルトの間隔は 5 秒。 

pnmd.ping_timeout

秒単位で示した、障害検証がタイムアウトするまでの時間。デフォルトのタイムアウト値は 4 秒。 

pnmd.repeat_test

PNM が失敗した検証を再試行する回数。この回数を過ぎると、PNM は障害があると判断する。デフォルトの反復数は 3 回。 

pnmd.slow_network

秒単位で示した、障害検証の待機 (listen) 段階とアクティブ検証段階の間の応答時間。デフォルトの応答時間は 2 秒。ネットワークが遅く、PNM が疑似テイクオーバーを引き起こす場合は、この応答時間を増やすとよい。