この節では、PNM の設定とバックアップグループの構成を行う方法について説明します。
次に、PNM の設定手順の概略を示します。
各サブネットのノードごとに複数のネットワークアダプタを許可するようにノードハードウェアを設定します。
Sun Cluster と PNM パッケージがまだインストールされていない場合は、これらをインストールします。
クラスタを起動します。
デフォルトのネットワークインタフェースを検証します。
pnmset(1M) コマンドを使用して PNM バックアップグループを作成します。
PNM 構成を検証します。
次に、PNM の詳しい設定手順を示します。
同じサブセットを使用して、単一のノード上に複数のネットワークアダプタが存在するようにノードハードウェアを設定します。
ネットワークアダプタを設定するには、Sun Cluster ノードのハードウェアのマニュアルを参照してください。
Sun Cluster ノードソフトウェアパッケージがまだインストールされていない場合は、scinstall(1M) コマンドを使用してそれらをインストールします。
scinstall(1M) コマンドで、選択されたパッケージを対話形式でインストールします。PNM パッケージ SUNWpnm は、ノードパッケージセットの一部です。クラスタのインストール作業の詳細は、『Sun Cluster 2.2 ソフトウェアのインストール』を参照してください。
各ノードでデフォルトのネットワークインタフェースを登録します (まだ登録されていない場合)。
各ノードに対応するインタフェースデータベース内のノードごとにデフォルトネットワークインタフェースを 1 つ登録するとともに、そのインタフェースが取り付けられ、正常に動作していることを確認する必要があります。
各ノードでインタフェースデータベースを作成し、主パブリックネットワークインタフェースを登録します。
各ノードの /etc ディレクトリに、インタフェースデータベースとして使用するファイルを作成します。このファイルに、hostname.interfaceという名前を付けます (interface は、gfe、hme のようなインタフェースの種類)。続いて、そのノードのホスト名が入った 1 行を追加します。たとえば、デフォルトインタフェース qfe1 を持つノード phys-hahost1 で、次に示す行が入ったファイル /etc/hostname.qfe1 を作成します。
phys-hahost1 |
各ノードの /etc/hosts ファイルで、主パブリックネットワークインタフェース名と IP アドレスを関連付けます。
次の例では、主物理ホスト名は phys-hahost1 です。
129.146.75.200 phys-hahost1-qfe1 |
システムが /etc/hosts 以外の命名方法を使用している場合は、『TCP/IP とデータ通信』の該当する説明を参照し、同等の機能を実行してください。
pnmset(1M) コマンドを使用して、PNM バックアップグループを作成します。
対話式の pnmset(1M) スクリプトを実行して、バックアップグループを設定してください。
論理ホストとデータサービスをすでに構成してある場合は、pnmset(1M) を使用してバックアップグループメンバーシップを変更する前に、HA データサービスを停止する必要があります。pnmset(1M) コマンドを実行する前にデータサービスを停止しないと、重大な問題やデータサービス障害が発生することがあります。
pnmset(1M) コマンドを実行します。
phys-hahost1# /opt/SUNWpnm/bin/pnmset |
構成するバックアップグループの合計数を入力します。
通常、この数はパブリックサブネットの数に一致します。
In the following dialog, you will be prompted to configure public network management. do you want to continue ... [y/n]: y How many NAFO backup groups on the host [1]: 2 |
バックアップグループ番号を割り当てます。
プロンプトで、0 〜 255 (最大) の範囲で整数を指定します。pnmset(1M) コマンドは、この数字を文字列 nafo に加えてバックアップグループ名にします。
Enter backup group number [0]: 0 |
アダプタをバックアップグループに割り当てます。
Please enter all network adapters under nafo0: qe0 qe1 ... |
続けて、構成内のほかのすべてのバックアップグループに、バックアップグループ番号とアダプタを割り当てます。
pnmset(1M) コマンドによって、アダプタ構成のテストが始まります。
pnmset(1M) コマンドは、アダプタ構成の正確さをテストします。この例では、バックアップグループにアクティブアダプタが 1 つ、冗長アダプタが 2 つ含まれています。
The following test will evaluate the correctness of the customer NAFO configuration... name duplication test passed Check nafo0... < 20 seconds qe0 is active remote address = 192.168.142.1 nafo0 test passed Check nafo1... < 20 seconds qe3 is active remote address = 192.168.143.1 test qe4 wait... test qe2 wait... nafo1 test passed phys-hahost1# |
構成の検証が終わると、PNM デーモン pnmd(1M) は自動的に構成の変更を認識し、インタフェースの監視を開始します。
バックアップグループのアダプタの内、取り付けが行われ、/etc/hostname.adapter というファイルにエントリを持つのは、1 つのアダプタだけです。バックアップアダプタに IP アドレスは割り当てないでください。バックアップアダプタは取り付けられません。
PNM は、ブロードキャスト ping(1M) を使用してネットワークを監視します。ネットワークは、ブロードキャスト ICMP (Internet Control Message Protocol) パケットを使用して、ほかの遠隔ホストと通信を行います。ルーターの中にはブロードキャスト ICMP パケットを転送しないものがあり、PNM の障害検出動作はこの影響を受けます。この問題の対策については、『Sun Cluster 2.2 ご使用にあたって』を参照してください。
scadmin(1M) コマンドを使用してクラスタを起動します。
1 つのノードで、次のコマンドを実行してください。
# scadmin startcluster physical-hostname sc-cluster |
続いて、ほかのすべてのノードで次のコマンドを実行し、クラスタにほかのすべてのノードを追加してください。
# scadmin startnode |
pnmstat(1M) コマンドを使用して、PNM 構成を検証します。
phys-hahost1# /opt/SUNWpnm/bin/pnmstat -l bkggrp r_adp status fo_time live_adp nafo0 hme0 OK NEVER hme0 phys-hahost1# |
以上で、PNM の初期設定は終了です。
ネットワークアダプタを追加または削除して既存の PNM 構成を再構成する方法を次に示します。作業中も Sun Cluster サービスを利用できるように、この手順は一度に 1 つのノードに対して行なってください。
再構成するノードで、Sun Cluster ソフトウェアを停止します。
phys-hahost1# scadmin stopnode |
ネットワークアダプタを追加または削除します。
「ネットワークインタフェースの追加と削除」に説明されている作業を行なってください。
pnmset(1M) コマンドを実行して、バックアップグループを再構成します。
「PNM を設定するには」の手順 4 に説明されているように、pnmset(1M) コマンドを使用してバックアップグループを再構成してください。
phys-hahost1# pnmset |
そのノードで、Sun Cluster ソフトウェアを再起動します。
管理ワークステーションから次のコマンドを実行して、ノードを再起動してください。
phys-hahost1# scadmin startnode |
再構成するノードごとに、手順 1 〜 4 を繰り返します。
pnmptor(1M) と pnmrtop(1M) コマンドを使用すると、ローカルバックアップグループだけの状態を確認できます。pnmstat(1M) コマンドを使用すると、ローカルまたは遠隔のバックアップグループの状態を確認できます。
pnmptor(1M) コマンドは、実際のアダプタ名に指定する疑似アダプタ名を割り当てます。次の例では、システム出力は、疑似アダプタ名 nafo0 がアクティブアダプタ hme2 に対応することを示しています。
phys-hahost1# pnmptor nafo0 hme2 |
次の例では、システム出力は、アダプタ hme1 がバックアップグループ nafo0 に属することを示しています。
phys-hahost1# pnmrtop hme1 nafo0 |
ローカルホスト上のバックアップグループの状態を確認するには、-c オプションを使用します。
phys-hahost1# pnmstat -c nafo0 OK NEVER hme2 |
遠隔ホスト上のバックアップグループの状態を確認するには、次の構文を使用します。
phys-hahost1# pnmstat -sh remotehost -c nafo1 OK NEVER qe1 |
-s と -h オプションを共に使用することは重要です。-s オプションが指定されると、pnmstat(1M) はプライベートインターコネクトを介して通信を行います。-s オプションが省略されると、pnmstat(1M) はパブリックインターコネクトを介して照会を行います。remotehost と pnmstat(1M) を実行するホストは、両方ともクラスタメンバーでなければなりません。
ローカルホストと遠隔ホストのどちらを確認している場合でも、pnmstat(1M) コマンドは状態、履歴、現在のアクティブアダプタを報告します。詳細は、マニュアルページを参照してください。
次の表は、ユーザーが構成できる PNM パラメータについて説明しています。これらのパラメータは、PNM をインストールした後で (ただしクラスタを立ち上げる前)、クラスタ内のすべてのノードの構成ファイル /opt/SUNWcluster/conf/TEMPLATE.cdb を手作業で編集して構成してください。1 つのノードで編集したファイルをほかのすべてのノードにコピーすることも、クラスタコンソールを使用してすべてのノードでファイルを同時に変更することも可能です。現在の PNM 構成は、pnmset -l を使用して表示できます。詳細は、pnmd(1M) のマニュアルページを参照してください。
表 6-2 構成可能な PNM パラメータ
pnmd.inactive_time |
秒単位で示した障害検証間の時間。デフォルトの間隔は 5 秒。 |
pnmd.ping_timeout |
秒単位で示した、障害検証がタイムアウトするまでの時間。デフォルトのタイムアウト値は 4 秒。 |
pnmd.repeat_test |
PNM が失敗した検証を再試行する回数。この回数を過ぎると、PNM は障害があると判断する。デフォルトの反復数は 3 回。 |
pnmd.slow_network |
秒単位で示した、障害検証の待機 (listen) 段階とアクティブ検証段階の間の応答時間。デフォルトの応答時間は 2 秒。ネットワークが遅く、PNM が疑似テイクオーバーを引き起こす場合は、この応答時間を増やすとよい。 |