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iPlanet Application Server インストールガイド



第 1 章   入門


この章では、iPlanetTM Application Server の使用目的と、その目的に適したインストールオプションについて説明します。さらに、iPlanet Application Server コンポーネントの概要についても説明します。

この章には次のトピックがあります。

iPlanet Application Server をインストールする前に、この章をお読みください。インストール手順の最新の更新情報については、次のサイトに掲載されている『リリースノート』を参照してください。

http://docs.iplanet.com/docs/manuals/ias.html から入手できます。



iPlanet Application Server の機能



この節では、ご使用の環境への iPlanet Application Server の統合を計画する際に、考慮する必要がある機能について説明します。目的に応じて選択した構成によって、iPlanet Application Server をインストールする場所と、インストール後の設定方法が変わることがあります。特にカスタムインストールを選択している場合、一部の設定はインストール時に設定値を入力して行いますが、大部分の設定は、インストール完了後に iPlanet Application Server Administration Tool を使って行う必要があります。

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高いスケーラビリティ

スケーラビリティの高いシステムとは、ユーザ数が増加するに従って、システムの容量、機能、スループット、および負荷の増加に対応できるシステムのことです。iPlanet Application Server では、次のカテゴリのスケーラビリティを備えています。

  • 垂直方向の拡張 - リソースを最大限に活用するために 1 台の強力なマシンに負荷を集中させます。

  • 水平方向の拡張 - 比較的低速のマシンを複数台追加して、パフォーマンスを向上させます。

iPlanet Application Server のスケーラブルなアーキテクチャによって、初期導要件を満たすアプリケーションを開発してから、ビジネス要件の増大に応じてシステム要件を拡大していくことができます。iPlanet Application Server アプリケーションは、動的に拡張できるため多数のユーザに対応できます。iPlanet Application Server の分散データ同期 (DSync) メカニズムを使うと、サーバやアプリケーションコンポーネントの新しいインスタンスを動的に追加できます。


高いパフォーマンス

iPlanet Application Server では、スループットを低下させずに多数の同時ユーザをサポートできます。次の機能によって、高いパフォーマンスを実現します。

  • マルチスレッド機能 - ホストオペレーティングシステムのマルチスレッド機能をサポートします。

    アプリケーションでは、複数のスレッドでリクエストを処理することによってパフォーマンスを最適化しており、CPU リソースを最大限に活用できます。

  • ダイナミックロードバランシング - アプリケーションサーバのインスタンス間にリクエストを分散することによって、一部のサーバの負荷が低すぎたり、ほかのサーバに比べて一部のサーバに負荷が集中する状況を回避します。

    iPlanet Application Server には、サーバ負荷、応答時間、ラウンドロビン、ウェイト付きラウンドロビンメカニズムなど、いくつかのロードバランシング方法があります。詳細については、『iPlanet Application Server 管理者ガイド』の「ユーザリクエストのロードバランス」を参照してください。

  • アプリケーションパーティショニング - コンポーネントを複数のサーバに分散して重負荷の増加に対応します。

    iPlanet Application Server アーキテクチャではアプリケーションパーティショニングをサポートしています。この機能を使ってアプリケーションロジックを複数のサーバに分散することにより、アプリケーションを拡張して負荷の増加に対応することができます。iPlanet Application Server Administration Tool を使うと、システム管理者はアプリケーションをいくつかの機能領域に分割できます。

  • リソースのプールおよびキャッシュ - 次に示す方法によって、頻繁にアクセスされる結果を取得する時間と、コネクションを作成したり閉じたりする時間を節約します。

    • コネクションのキャッシュおよびプール - パフォーマンスを向上させるために、iPlanet Application Server では、通常使用する既存のコネクションを毎回確立し直すのではなく再利用するように、データベースコネクションをキャッシュします。コネクションのキャッシュによって、リクエストごとに新しいデータベースコネクションを作成するときに発生するオーバーヘッドを回避することができます。

    • リザルトキャッシュ - iPlanet Application Server では、アプリケーションロジック実行の結果をキャッシュすることによって、アプリケーションのパフォーマンスを向上させます。開発者は、オプションで、アプリケーションのこの機能を有効にできます。

    • JSP キャッシュ - iPlanet Application Server ではこの機能によって、合成 JSP の開発を支援しています。これは、Java エンジン内に JSP をキャッシュして、ポータルページのような複数の JSP が含まれるマスター JSP を作成できます。各 JSP は、異なるキャッシュ基準を使ってキャッシュできます。JSP キャッシュは、結果キャッシュへの追加機能です。

  • データストリーミング - データをすばやく移動して結果をすぐに表示します。

    iPlanet Application Server のデータストリーミング機能を使えば、命令が完全に処理される前にも、すぐにリクエストの結果を表示できます。アプリケーション開発者は、データのストリーミング方法を明示的に制御したり、自動ストリーミングを設定したりできます。

  • 最適化された Web サーバ通信 - Web サーバと緊密に統合することにより、アプリケーションのパフォーマンスを向上させます。

    Web サーバの統合は、Web Connector プラグインおよび対応するリスナを通して行われます。iPlanet Application Server では、NSAPI、ISAPI、APACHEAPI および iPlanet、Microsoft、CGI 互換 Web サーバに最適化された CGI をサポートしています。

アプリケーションのパフォーマンスには、ネットワークトポロジ、ネットワークとサーバのハードウェア、データベースアーキテクチャ、およびアプリケーションプログラミングなども影響します。詳細については、次のサイトに掲載されている「iPlanet Application Server Performance News Group」を参照してください。

snews://secnews.netscape.com/iplanet.ias.perf


フェールオーバーによる高い可用性

iPlanet Application Server は、24 時間運用に対応しています。可用性の高い iPlanet Application Server を構成するには、フェールオーバー機能をまず考慮する必要があります。

iPlanet Application Server では、ロードバランシングと動的なフェールオーバー (別名フェールリカバリ) を使って、可用性と信頼性が高いソリューションを提供します。iPlanet Application Server では、アプリケーションの全部または一部を複数のサーバに分散できます。つまり、1 つのサーバがダウンしてもほかのサーバがリクエストの処理を継続できます。iPlanet Application Server では、ユーザセッション情報およびアプリケーションステート情報を自動的に分散することにより提供して、停止時間を最小にします。クラッシュしたサーバのクラスタ内で、1 つ以上の iPlanet Application Server が動作しているかぎり、情報は保持されます。

iPlanet Application Server では、次のフェールオーバー機能を組み込むことによって、アプリケーションの可用性を向上させています。

  • ステートフルセッションビーンフェールオーバー - 予期しない重大な問題がサーバに発生した場合、ビーンはほかのサーバに引き継がれます。ステートフルセッションビーンのフェイルオーバーのサポートは、iPlanet Application Server の付加価値機能です。この機能をサポートするために J2EE アプリケーションを変更する必要はありません。

  • リッチクライアントフェールオーバー - リッチクライアント CXS (CORBA Executive Service) は、IIOP (Internet Inter-Object Protocol) を使うリッチクライアントと、iPlanet Application Server の Java エンジンの EJB (Enterprise JavaBeans) 間のブリッジとして機能します。iPlanet Application Server 内の CXS サーバがクラッシュした場合は、すべての EJB のブリッジオブジェクトのステートが、CXS サーバのクラッシュ前のステートに復元されます。iPlanet Application Server では、特定の箇所の障害が全体に影響することがないため最大数のアプリケーション可用性を提供します。


セキュリティ

ビジネスロジック、リソース、およびデータへの認証されていないアクセスを防ぐには、認証メカニズムをまず考慮する必要があります。このメカニズムには、ロールベース、証明書ベース、またはフォームベースの認証があります。

iPlanet Application Server は、ロールベースの認証、証明書認証、およびフォームベースの認証を含む、J2EE セキュリティ必要条件をすべてサポートしています。iPlanet Application Server は、EJB v1.1 セキュリティモデルおよび Java Servlet v2.2 セキュリティモデルをサポートしています。

また、iPlanet Application Server では Web サーバ通信がセキュリティで保護されており、クライアントへの SSL、HTTP、および HTTP チャレンジ応答認証をサポートします。ブラウザとデータソース間のセキュリティギャップを埋めるために、iPlanet Application Server では、トランザクション処理を安全に行うため、認証、cookie、およびデータベースアクセスコントロールをサポートしています。イベントの記録および追跡を行うことによって、認可されていないアクセスを検出および排除します。

iPlanet Application Server には、次のセキュリティ機能が組み込まれています。

  • iPlanet Application Server のすべてのアプリケーションに対するシングルサインオン

  • リッチクライアントのセキュリティ

  • XML ベースのロールマッピング情報。iPlanet Application Server の GUI ベースの配置ツールを使って、セキュリティ情報を含む XML ファイルを作成します。

  • LDAP ベースの認証


エンタープライズシステムとデータベースの接続

iPlanet Application Server には、外部データベースおよびエンタープライズ情報システムと接続する機能があります。iPlanet Application Server では、開発者にネイティブデータベースドライバ、JDBC サポート、および統合フレームワーク API を提供します。これらによって、複数のベンダーのデータベースにまたがった異機種間のトランザクションを実現できます。

iPlanet Application Server では、Java Software JDBC 2.0 API with Extension に準拠した JDBC データベースドライバがすべてサポートされます。iPlanet Application Server では、次の JDBC ドライバを認証します。

  • Oracle

  • DB2

  • Informix

  • Sybase

  • SQL Server (Windows のみ)

iPlanet Application Server では、JDBC の iPlanet Application Server 実装を介して JDBC 接続機能を提供します。この実装では、異機種間トランザクションおよびグローバルトランザクションがサポートされています。ローカルトランザクションは、データベース固有で、1 つのプロセス内に制限されます。ローカルトランザクションおよびグローバルトランザクションは、iPlanet Application Server に構築されたトランザクションマネージャによって管理および調整されます。


エンタープライズ全体の管理機能

iPlanet Application Server Administration Tool を使うと、システムの操作またはクライアントへのサービスを中断せずに、システム設定を変更できます。iPlanet Application Server Administration Tool は Java ベースなので、複数のアプリケーションサーバおよび分散アプリケーションの監視や管理を、ローカルまたはリモートから行うことができます。次の機能が用意されています。

  • サーバとそのアプリケーションをリモートで設定するリモート管理

  • 障害が発生したサーバおよびプロセスの自動検出と再起動

  • システムイベントおよびパフォーマンスのリアルタイム監視

  • イベント通知システムスクリプトを実行して重要な状態について電子メールメッセージを送信するように設定できる

  • アプリケーションの管理とパーティショニング

  • パフォーマンスを最適化するアプリケーションの微調整

  • セキュリティロールおよびアクセス制御リストの設定

  • ローカルまたはグローバルトランザクションのトランザクション管理機能


プラットフォーム間の移植性

iPlanet Application Server は、異なるハードウェアプラットフォームで柔軟に開発および配置することがきます。

iPlanet Application Server は、さまざまなハードウェアプラットフォーム上で利用できます。利用可能なプラットフォームは次のとおりです。

  • Microsoft Windows NT SP6a または Windows 2000 Professional

  • SolarisTM 2.6 または Solaris 8 が搭載された Sun® SPARCTM

  • Hewlett Packard HP-UX 11.0

  • IBM® AIX 4.3.3



サーバコンポーネントの概要

iPlanet Application Server には、iPlanet Console、Administration Server 、Web Connector プラグイン (オプション)、Directory Server、iPlanet Application Server Deployment Tool および Administration Tool が含まれています。図 1-1 は、3 つの層の関係と J2EE 処理モデルを示しています。

図 1-1    iPlanet Application Server は、3 層処理モデルの中心である


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iPlanet Console

iPlanet Console では、サーバの停止と起動、新しいサーバインスタンスのインストール、Directory Server の LDAP サービスを介したユーザ情報とグループ情報の管理などの共通サーバ管理機能を実行します。iPlanet Console は、iPlanet Application Server とともにインストールするか、または単独でインストールできます。スタンドアロンアプリケーションとしてインストールすると、ネットワーク上のすべてのマシンからリモートサーバを管理できます。


Administration Server

iPlanet Application Server をインストールするときに、Administration Server もインストールされます。iPlanet Application Server の Administration Server は、Administration Tool および Deployment Tool によって内部的に使われ、システム管理者が直接使うことはありません。

また、iPlanet Console をインストールするときは、その Administration Server がインストールされます。iPlanet Application Server の Administration Server と同様に、このサーバは iPlanet Console によって内部的に使われます。


コアアプリケーションサーバコンポーネント


Web Connector プラグイン

Web Connector プラグインを使うと、iPlanet Application Server と Web サーバ間で通信できるようになります。iPlanet Application Server をインストールすると、Web サーバが Web Connector プラグイン用に自動的に設定されます。つまり、Web サーバ上の必要なディレクトリと設定がすべて更新されます。

iPlanet Application Server と Web Connector プラグインの接続に問題がある場合、詳細については、『iPlanet Application Server 管理者ガイド』を参照してください。


iPlanet Application Server Administration Tool

iPlanet Application Server Administration Tool はグラフィカルユーザインタフェースを持つスタンドアロン Java アプリケーションで、1 つまたは複数の iPlanet Application Server を管理することができます。


iPlanet Application Server Deployment Tool

iPlanet Application Server Deployment Tool を使うと、J2EE アプリケーションをパッケージ化して配置できます。Administration Tool と同様に、Deployment Tool もグラフィカルユーザインターフェイスを持つスタンドアロン Java アプリケーションです。


iPlanet Directory Server

iPlanet Application Server などのディレクトリに対応したアプリケーションでは、iPlanet Directory Server をネットワークアクセスできる共通の場所として使って、ユーザおよびグループ ID、サーバ ID、アクセスコントロール情報などの共有データを保存します。Directory Server のサービスとして、Distinguished Name Service (DNS) が最も普及しています。

iPlanet Directory Server では、グローバルディレクトリサービスを利用できます。さまざまなアプリケーションに情報を渡すことができます。グローバルディレクトリサービスは、ディレクトリ情報の単一集中管理リポジトリで、アプリケーションとディレクトリ間のネットワークベースの通信を介して、すべてのアプリケーションからアクセスできます。iPlanet Directory Server では、LDAP (Lightweight Directory Access Protocol) を使って、アプリケーションからグローバルディレクトリサービスにアクセスします。LDAP プロトコルを使えば、ハードウェアおよびネットワークインフラストラクチャにわずかに投資するだけで、iPlanet Directory Server を数百万のエントリに対応させることができます。



iPlanet Directory Server は、Windows では slapd サービスとして、Solaris では ns-slapd として実行されます。



iPlanet Directory Server を Application Server とともにインストールすると、設定情報および認証情報が iPlanet Directory Server に格納されます。iPlanet Application Server をインストールすると、この情報のブランチを持つ Directory Server データ情報ツリー (DIT) が設定されます。詳細については、次のサイトに掲載されている 『iPlanet Directory Server インストールガイド』を参照してください。http://docs.iplanet.com

設定されるディレクトリは、アプリケーションサーバ設定情報の保存に使われる Directory Server の一部です。このディレクトリには、o=NetscapeRoot データツリーが含まれます。このデータツリーには、iPlanet Application Server によって、組織の識別に設定した接尾辞を持つ設定情報が格納されます。複数のサーバインストールでは、設定ディレクトリ上に設定を保存できます。

iPlanet Application Server とともに Directory Server コンポーネントをインストールする場合は、インストール先に別の Directory Server がインストールされていても、このインストールを設定ディレクトリとして指定する必要があります。

Directory Server のさまざまな機能の概要については、『iPlanet Directory Server インストールガイド』を参照してください。


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最新更新日 2002 年 3 月 12 日