Sun Cluster Geographic Edition のシステム管理

第 1 章 Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの管理の概要

Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、地理的に分散した複数のクラスタを使用することにより、アプリケーションが突然使用不能になることを防ぎます。これらのクラスタには、クラスタ間で複製されたデータを管理する Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーの同一のコピーが置かれます。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、Sun Cluster ソフトウェアを階層的に拡張したものです。

この章の内容は次のとおりです。

Sun Cluster Geographic Edition の管理

管理作業を実行する前に、『Sun Cluster Geographic Edition のインストール』『Sun Cluster Geographic Edition の概要』に目を通し、計画関連の情報を把握してください。このマニュアルでは、Sun Cluster Geographic Edition 構成の管理と保守のための基本的な作業を紹介します。

Sun Cluster、データサービス、ハードウェア管理関連の一般的な作業については、Sun Cluster のマニュアルを参照してください。

管理者は、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを稼働させているクラスタに対し、どのノードやクラスタにも障害を与えることなく、あらゆる管理作業を実施できます。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアのインストール、構成、起動、使用、停止、およびアンインストールは、稼動中のクラスタで実行できます。


注 –

データ複製ソフトウェアのインストールや、Sun Cluster 管理作業の実行などの準備作業では、ノードまたはクラスタをオフラインにするように求められることがあります。管理上の制限事項については、適切な製品マニュアルを参照してください。


Sun Cluster Geographic Edition の管理ツール

Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアが稼働しているクラスタ上の管理作業は、グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) またはコマンド行インタフェース (CLI) を使用して行えます。

このマニュアルでは、CLI を使用して管理作業を行う方法について説明します。

グラフィカルユーザーインタフェース

Sun Cluster ソフトウェアは、SunPlex TM Manager という GUI ツールをサポートします。このツールを使用して、クラスタ上でさまざまな管理作業を実施できます。SunPlex Manager の具体的な使用方法については、Sun Cluster のオンラインヘルプを参照してください。


注 –

SunPlex Manager – Geographic Edition GUI を使用して Sun Cluster Geographic Edition を管理する場合は、パートナーシップにある両方のクラスタのすべてのノードでルートパスワードが同じであることを確認してください。


GUI を使用して Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを管理できるようにするには、あらかじめ geoadm start コマンドを使用してソフトウェアインフラストラクチャーを有効にしておく必要があります。geoadm start コマンドと geoadm stop コマンドの実行は、CLI を使用して行います。Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーの有効化と無効化については、第 3 章「Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーの管理」を参照してください。

パートナーシップに参加していないカスタムハートビートは、GUI では作成できません。パートナーシップへの参加操作でカスタムハートビートを指定する場合は、CLI を使用して geops join-partnership コマンドを実行します。

GUI を起動するには、Java および JavaScript に対応したブラウザから次の URL に移動し、Sun Administration Console にルートとしてログインします。


注 –

RBAC は GUI 内ではサポートされていません。



https://clustername:6789

コマンド行インタフェース

表 1–1 に、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの管理に使用するコマンドを示します。各コマンドの詳細は、『Sun Cluster Geographic Edition リファレンスマニュアル』を参照してください。

表 1–1 Sun Cluster Geographic Edition の CLI

コマンド 

説明 

geoadm

ローカルクラスタ上で Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを有効または無効にし、ローカルクラスタの実行時状態を表示します 

geohb

Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと一緒に提供されるハートビートメカニズムの構成と管理に使用します 

geops

クラスタ間のパートナーシップの作成と管理に使用します 

geopg

保護グループの構成と管理に使用します 

災害復旧管理の概要

この節では、災害復旧状況と、管理者が実施できる作業の例を示します。

X 社には、地理的に離れたクラスタが 2 つあります。1 つはパリの cluster-paris、もう 1 つはニューヨークの cluster-newyork です。これらのクラスタは、パートナークラスタとして構成されています。パリのクラスタは主クラスタ、ニューヨークのクラスタは二次クラスタとして構成されています。

暴風雨の影響による停電のため、cluster-paris クラスタが一時的に停止しました。管理者は次のイベントを予測できます。

  1. cluster-pariscluster-newyork の間でハートビート通信が停止しました。パートナーシップの作成中に、ハートビート通知を行うように構成したため、管理者に電子メールでハートビート喪失通知が送信されます。

    パートナーシップやハートビート通知の構成方法については、「パートナーシップの作成と変更」を参照してください。

  2. 管理者は、電子メール通知を受け取り、社内の処置規定に従って検証を行いました。この結果、二次クラスタによるテイクオーバーが必要な状況が発生したため、切り離しが行われたことがわかりました。テイクオーバーに時間がかかる可能性があるため、保護対象のアプリケーションの要件に従い、X 社は主クラスタを2時間以内に修復できないかぎりテイクオーバーを許可しません。

    システムでの切断の確認については、次のいずれかのデータ複製ガイドを参照してください。

  3. 少なくとももう 1 日、cluster-paris クラスタをふたたびオンラインにすることができないため、管理者はニューヨークのクラスタのノードで geopg takeover コマンドを実行します。このコマンドは、ニューヨークの二次クラスタ cluster-newyork 上で保護グループを起動します。

    システムでのテイクオーバーの実行については、次のいずれかのデータ複製ガイドを参照してください。

  4. テイクオーバーが行われると、二次クラスタ cluster-newyork が新たに主クラスタになります。障害を起こしたパリのクラスタは、まだ主クラスタとなるように構成されています。したがって、cluster-paris クラスタを再起動すると、主クラスタがダウンしてパートナークラスタとの接続が失われたことが、クラスタによって検出されます。その後、cluster-paris クラスタはエラー状態になります。この状態の解消には、管理アクションが必要です。また、クラスタ上のデータの復旧と再同期が必要になる場合もあります。

    テイクオーバー後のデータの復旧については、次のいずれかのデータ複製ガイドを参照してください。

アプリケーションの適合性の分析

この節では、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアによって管理されるアプリケーションを作成する際に必要なガイドラインを説明します。

Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアによって管理されるアプリケーションを作成する前に、アプリケーションが高可用性またはスケーラビリティーを備えるための次の要件を満たしているかどうかを判断してください。


注 –

アプリケーションが一部の要件を満たしていない場合は、アプリケーションの可用性とスケーラビリティーを高めるようにアプリケーションのソースコードを変更して対応することがあります。


スケーラブルサービスを実現するためには、前に示した高可用性の要件をすべて満たした上で、次に示す追加要件も満たしている必要があります。

スケーラブルサービスの場合、アプリケーションの特性により負荷均衡ポリシーが決定されます。たとえば、負荷均衡ポリシー Lb_weighted は、任意のインスタンスがクライアントの要求に応答できるポリシーですが、クライアント接続にサーバー上のメモリー内キャッシュを使用するアプリケーションには適用されません。この場合、特定のクライアントのトラフィックをアプリケーションの 1 つのインスタンスに制限する負荷均衡ポリシーを指定する必要があります。負荷均衡ポリシー Lb_stickyLb_sticky_wild は、クライアントからのすべての要求を同じアプリケーションインスタンスに繰り返して送信します。この場合、そのアプリケーションはメモリー内キャッシュを使用できます。異なるクライアントから複数のクライアント要求が送信された場合、RGM はサービスの複数のインスタンスに要求を分配します。

スケーラブルデータサービス用の負荷均衡ポリシーの設定については、『Sun Cluster データサービス開発ガイド (Solaris OS 版)』の第 2 章「データサービスの開発」を参照してください。

アプリケーションはデータ複製に関する次の要件を満たす必要があります。