グリッドは、タスクを実行するコンピューティングリソースの集合です。もっとも簡単な形式のグリッドの場合、ユーザーには、強力な分散リソースへの単一のアクセスポイントを提供する大きなシステムのように見えます。この節の後半で説明するより複雑な形式のグリッドは、多くのアクセスポイントをユーザーに提供できます。いずれの場合でも、ユーザーはグリッドを 1 つのコンピュータリソースとして扱います。N1 Grid Engine 6.1 ソフトウェア (Grid Engine ソフトウェア) などのリソース管理ソフトウェアは、ユーザーが発行したジョブを受け付けます。ソフトウェアは、リソース管理ポリシーによって、ジョブがグリッド内の適切なシステムで実行されるようにスケジューリングを行います。ユーザーは、ジョブの実行場所を気にせずに、一度に数百万ものジョブを発行できます。
同じグリッドというものは 1 つもありません。また、あるサイズのグリッドですべての状況に対応することはできません。グリッドには次の 3 つの主要クラスがあり、単一システムから、数千のプロセッサを使用するスーパーコンピュータクラスの計算ファームまでをカバーしています。
クラスタグリッドは、もっとも単純なクラスです。クラスタグリッドは、連動して動作するコンピュータホストの集合で構成されています。クラスタグリッドは、単一のプロジェクトまたは部署のユーザーに単一のアクセスポイントを提供します。
キャンパスグリッドでは、組織内の複数のプロジェクトまたは部署がコンピューティングリソースを共有できます。組織はキャンパスグリッドを使用して、周期的な業務プロセスからレンダリング、データマイニングなどのさまざまなタスクを処理できます。
グローバルグリッドは、組織の境界を越えて非常に大きな仮想システムを作成するキャンパスグリッドの集合です。ユーザーは、自分自身の組織内で使用できるリソースをはるかに超える計算能力を利用できます。
図 1–1 に 3 つのグリッドクラスを示します。クラスタグリッドでは、ユーザーのジョブはクラスタ内の 1 システムのみによって処理されます。ただし、そのユーザーのクラスタグリッドはより複雑なキャンパスグリッドの一部の場合もあります。そしてキャンパスグリッドはもっとも大きいグローバルグリッドの一部の場合があります。このような場合、ユーザーのジョブは世界中のどこにあるメンバー実行ホストでも処理できます。
N1 Grid Engine 6.1 ソフトウェア は、キャンパスグリッドに必要なパワーと柔軟性を提供します。本製品を使用するとキャンパスグリッドの作成へのスムーズな移行をより簡単に実現できるので、既存のクラスタグリッドにとって有利です。Grid Engine システムは、キャンパスのすべての既存のクラスタグリッドを統合して、この移行を実行します。さらに、Grid Engine システムはグリッドコンピューティングモデルに初めて移行する 企業にとっても最適です。
Grid Engine ソフトウェア は、組織の技術スタッフと管理スタッフが策定する企業のリソースポリシーを基に、処理能力の提供を調整します。Grid Engine システムは、これらのポリシーを使用してキャンパスグリッド内の使用可能なコンピュータリソースを調べます。システムはこれらのリソースを収集したあと、リソースの割り当てと提供を自動的に行い、キャンパスグリッド間の使用率を最適化します。
キャンパスグリッド内での協調を実現するために、グリッドを使用するプロジェクトの所有者は次の操作を実行する必要があります。
ポリシー間の折衝
固有のプロジェクト要件に対する、手動による優先のためのポリシーの柔軟性の確保
自動的なポリシーの監視および実施
Grid Engine ソフトウェア は、コンピュータリソースの利用で競合する多くの部署とプロジェクトのエンタイトルメントを調整できます。