Oracle Approvals Managementインプリメンテーション・ガイド リリース12 E06007-01 | ![]() 目次 | ![]() 前へ | ![]() 次へ |
Oracle Approvals Management(AME)の目的は、Oracle Applicationsの承認プロセスを判別する承認ルールを定義することです。次の図は、組織で使用される一般的な承認プロセスを示しています。
承認ルールは、トランザクションの承認プロセスの判別に役立つビジネス・ルールです。ルールは条件と処理で構成されます。たとえば、次のような承認ルールがあるとします。
トランザクションの合計原価が1,000 USD未満で、かつトランザクションが旅費関連である場合は、トランザクションを発行する個人の直属の管理者から承認を受けます。
次の図は、承認ルールのコンポーネントを示しています。
承認ルールの「if」部分は、いくつかの条件(条件がない場合もあり)で構成され、それに対応する「then」部分は1つ以上の処理で構成されます。条件は、ビジネス変数(AMEでは属性)と属性値のセット(そのいずれかが条件に該当する)で構成されます。処理は、トランザクションの承認プロセスをある方法で変更するようAMEに指示します。図のサンプル・ルールの条件は、トランザクションの合計原価とトランザクションの目的という2つの属性を表しています。サンプル・ルールの処理は、依頼元の管理者をトランザクションの承認者リストに追加するようAMEに指示しています。
AMEを使用すると、様々な承認ルールを示すルールを定義できます。たとえば、次のようなルールを定義できます。
対象分野の専門家(SME)の承認を必要とするルール
マネージャ承認を必要とするルール
マネージャ承認を必要とするルールの例外を作成するルール
特別な場合に承認者を別の承認者に置き換えるルール
特別な場合にマネージャの署名権限を取り消すルール
特別な場合にマネージャに臨時の署名権限を付与するルール
変数名に値を割り当てる作業を生成するルール(例: 変数名eSignatureへの値digital certificateの割当)
参考情報の通知を送信するルール
承認ルールに優先順位を付けることができます。この結果、所定のトランザクションに対して十分な優先順位のルールを適用できます。
AMEを使用してトランザクションの承認プロセスを管理するアプリケーションは、統合アプリケーションと呼ばれます。この統合アプリケーションでは、トランザクションを複数のカテゴリに分割できます。この場合、各カテゴリには個別の承認ルールのセットが必要です。各ルール・セットはトランザクション・タイプと呼ばれます。複数の異なるトランザクション・タイプであっても、同じ属性名を使用して、異なる方法で計算される値や別々の場所からフェッチされる値を表すことができます。これにより、複数のトランザクション・タイプで承認ルールを共有できます(したがって、複数のトランザクション・タイプ間で一貫した承認ポリシーが実装されます)。ルール使用は、トランザクション・タイプが所定の期間に(必要に応じて所定の優先順位レベルで)特定のルールを使用する場合に実行されます。
Oracle Approvals Management(AME)は、セルフサービスのWebアプリケーションで、AMEが統合されているOracle Applicationsでトランザクションの承認プロセスを管理するビジネス・ルールを定義できます。
Oracle Approvals Managementを使用することにより、ビジネス・ユーザーは、コードを記述したり、アプリケーションをカスタマイズすることなく、アプリケーションの承認ルールを指定できます。アプリケーションに対してルールを定義すると、そのアプリケーションは、AMEと直接通信して、アプリケーションのトランザクションに対する承認を管理します。
対象の統合アプリケーションでパラレル承認者などの特定の機能を使用できるかどうか確認するには、製品のマニュアルを調べる必要があります。AMEでは、各リリースで新機能が提供されます。そのため、提供から特定の開発チームによる実装までの間にタイム・ラグがある可能性があります。
役職、管理者階層、職階または個人リストによる承認を定義できます。個人リストは、承認ルールの設定時に作成されるか、ルールの起動時に動的に生成されます。異なる承認方法を連結でき、きわめて柔軟性の高い承認プロセスを作成できます。
異なるアプリケーションで同じルールを使用できます。1つのアプリケーションに固有のルールを定義することも、異なるアプリケーション間で共有されるルールを定義することもできます。
AMEには、ビルトインのテスト機能があり、新規または編集したビジネス・ルールの動作を本番の実行前に確認できます。
AMEでは、各承認後に承認チェーンが再計画されるため、トランザクションは、組織変更、トランザクション値の変更、ルール変更または通貨換算に関係なく、最新の状態で承認されることが保証されます。
Oracle Approvals Management(AME)には、パラレル承認プロセスが用意されています。承認のパラレル化により、トランザクションの承認プロセスに要する時間が短縮されます。承認プロセス時間は、AMEでトランザクションの承認者リストに階層(ツリー)構造が適用され、ツリーの特定レベルの各部分で、それぞれの通知-承認サイクルをパラレルで進行できるようになると短縮されます。詳細は、「パラレル承認プロセス」を参照してください。
トランザクションの承認プロセスには、次の2つのコンポーネントがあります。
承認者リスト
作業セット
トランザクションの承認者リストは階層構造で、複数の項目の承認者リストを含めることができます。各項目の承認者リストには3つのサブリストを作成できます。これらのサブリストの中で、権限サブリストには、1つ以上の処理タイプ別に生成される権限チェーンを作成できます。各承認者グループまたは権限チェーンには、複数の承認者を含めることができます。
項目
AMEでは、トランザクションのヘッダーに対する承認者リストと、トランザクション内の各項目に対する別の承認者リストを生成できます。トランザクション・タイプでは、複数の項目区分を定義できます。たとえば、各トランザクションのヘッダー、明細項目およびコスト・センターに対して別々の承認者リストが生成される場合があります。すべてのトランザクション・タイプにヘッダー項目区分が含まれており、ヘッダー項目区分には常に1つの項目(トランザクションのヘッダー)が含まれています。他のすべての項目区分はオプションです。
サブリスト
項目の承認者リストには次の3つのサブリストを含めることができます。
権限チェーン前
権限
権限チェーン後
チェーン前とチェーン後のサブリストには、いくつかの承認者グループ(ない場合もあり)が含まれ、権限サブリストには、いくつかの権限チェーン(ない場合もあり)が含まれます。
処理タイプ
処理タイプは、共通の目的を持つ処理のセットです。各サブリストには、いくつかの処理タイプによって生成される承認者グループまたは権限チェーンを含めることができます。たとえば、「絶対役職レベル」処理タイプの処理ではすべて、特定の役職レベルのマネージャに到達するまでHR管理階層をさかのぼることにより、権限チェーンが生成されます。処理は、必要な役職レベルによって異なります。
承認者グループ
承認者グループは、ユーザーが定義した承認者の集まりです。通常は、対象分野の専門家(SME)が含まれます。
権限チェーン
権限チェーンは、承認者の階層をさかのぼります。承認者の階層は通常、AME以外のアプリケーション(例: HRMS。管理者職階階層)で定義されます。チェーンの開始位置、および階層をどのレベルまでさかのぼるかは、通常はトランザクションごとに異なります。また、承認者グループを権限チェーンとして使用することもできます。 この場合、AMEでは、承認者グループのグループ固有のプロパティは無視されます。一般的に、権限チェーンにはマネージャが含まれています。
承認者グループと権限チェーンの動作は、特定の状況では異なります。たとえば、ある承認者が承認を要求する通知を別の承認者に転送する場合です。それ以外は、承認者グループと権限チェーンの動作は同じです。
承認者
承認者には、次の2つのプロパティがあります。
承認者タイプ
承認者タイプは、ワークフロー・ディレクトリ・サービス元システムであり、承認を要求するワークフロー通知を受信できるエンティティを定義します。たとえば、HRアプリケーションでは、ディレクトリ・サービス元システムとして従業員のセットが定義されるため、HR従業員を承認者にできます。
承認者カテゴリ
AMEでは、処理承認者と情報(参考情報またはFYI)承認者の2つの承認者カテゴリのいずれかに属する承認者を生成できます。処理承認者は、トランザクションを承認する必要があります。FYI承認者は、トランザクションを説明する通知を受信するのみです。すべての通知の正確な内容は、通知を生成するアプリケーションによって異なります。
AMEでは、作業によって変数名に値が割り当てられます。たとえば、変数名eSignatureに値digital certificateが割り当てられる作業が生成される場合があります。AMEでは、生成する作業は解釈されません。実際には、標準作業の変数名も定義されません。かわりに、これらのタスクは、統合アプリケーションとそのトランザクション・タイプに委ねられます。
AMEでは、次の種類の作業が生成されます。
トランザクション・レベルの作業。トランザクション全体に関連付けられる変数名または値のペアです。
承認者レベルの作業。トランザクションの承認者リスト内の特定の承認者に関連付けられます。
項目レベルの作業。トランザクション内の各項目に関連付けられます。
トランザクション・タイプに対してルール・セットを定義し、トランザクション・タイプに関連付けられているアプリケーションがAMEを使用するように構成されると、アプリケーションは直接AMEと通信して、そのトランザクション・タイプの承認プロセスを管理します。通常、アプリケーションは、アプリケーションでトランザクションが開始されるときにAMEと通信し、その後は、承認者がアプリケーションによるトランザクションの承認要求に応答するたびに通信し、すべての承認者がトランザクションを承認するまで続きます。AMEでは、各承認が記録され、承認者がトランザクションの承認要求に応答するたびに、トランザクションに対する承認者リストが再計画されます。
AMEでは、承認者が応答するたびに承認者リストが再計画されます。この結果、AMEでは、トランザクションの承認者リストに影響を与える可能性がある次のようないくつかの状況を考慮できます。
属性値の変更。該当する条件に影響を与え、結果としてトランザクションに適用されるルールに影響を与えます。
条件またはルールの追加、変更、削除。この場合もトランザクションに適用されるルールに影響を与えます。
トランザクション・タイプのルール・セットで使用される組織階層の変更。適用可能な権限チェーンのメンバーシップが変わります。
通貨換算レートの変更。通貨属性の該当する条件に影響を与え、結果としてトランザクションに適用されるルールに影響を与えます。
このような変更を考慮することによって、AMEでは、トランザクションが常に、可能な限り最新のビジネス・データに応じて承認されることが保証されます。
統合アプリケーションは、様々な方法でAMEと通信できます。たとえば、トランザクションのすべての承認者リスト、適用されるルール、またはアプリケーションが次に通知する必要がある承認者のセットをAMEに問い合せることができます。
標準アルゴリズム
通常、統合アプリケーションは、トランザクションの承認プロセスを管理するために、次の単純な手順を実行します。
AMEにトランザクションのすべての承認者リストを問い合せます。
承認者リストを依頼元に表示します。必要に応じて、承認者を抑制するかまたは追加するかを尋ねます。
承認者の抑制または追加をAMEに通知します。
AMEにトランザクションの承認プロセスが完了したかどうかを問い合せ、完了していない場合は通知する承認者(いる場合)を問い合せます。
AMEがこれ以上の承認が必要ないことを示した場合は、処理を終了します。
手順5でAMEによって示された承認者に通知します。
承認者が通知に応答するまで待機します。
応答をAMEに通知します。
手順4に戻ります。
承認者通知順序
標準アルゴリズムのステップ4でAMEが通知対象の承認者を提示する順序は、オーダー・モードとオーダー番号の種類によって異なります。これらの組合せによって、トランザクションの承認者リストにある承認者の一意の順序が決定されます。
オーダー・モードは、AMEに対して、トランザクションの承認者リストを構成する階層の所定のレベルに位置する承認者の集合を順序付けする方法を指示します。たとえば、サブリストのオーダー・モードでは基本的に、他の条件がすべて同じ場合に、事前承認者に対して権限承認者と同時に通知するかどうかをAMEに指示します。AMEでは通常、トランザクションが承認のためにAMEに発行される前に、順序付けされる数が不明な場合にオーダー・モードが使用されます。たとえば、特定の処理タイプによって生成される承認者には、順次またはパラレルで通知される場合があります。
オーダー番号は、トランザクションの承認者リストを構成する階層の所定のレベルに位置する承認者の集合に対して、固定順序を設定します。たとえば、承認者グループ内の承認者にオーダー番号が割り当てられます。オーダー番号は、必ずしも一意ではありません。したがって、承認者グループ内の複数の承認者に同じオーダー番号を設定できます。AMEでは通常、トランザクションが承認のためにAMEに発行される前に、順序付けする数がわかっている場合にオーダー番号が使用されます。