Oracle Advanced Pricingインプリメンテーション・マニュアル リリース12 E05612-01 | ![]() 目次 | ![]() 前へ | ![]() 次へ |
この付録では、次のトピックについて説明します。
Tech Emporium社は、ネットワーク産業向けのハイテク機械を製造する架空の会社です。 主力製品は、BraingloおよびInfratimersです。 BraingloとInfratimersは、いずれもツール品目の製品グループで販売されています。 また、Braingloは、インフラストラクチャ製品グループにも属しています。
Tech Emporium社が製品を販売している顧客は、OEM企業と新興企業の2つの顧客区分に分かれます。 この事例では、National OEM社(OEM企業)と、新興企業のHTG社(Hoping to Grow社)からの注文について考えてみます。
次の表は、Tech Emporium社の価格設定の状況を示しています。 最初の表は価格表、2番目の表は顧客別の値引、3番目の表は製品別の値引を示しています。 これらの表は、この事例全体で参照します。
製品 | 法人価格(デフォルト) | National OEM社の価格 | HTG社の価格 |
Brainglo | $200 | $175 | 適用なし |
Infratimers | $160 | 適用なし | $150 |
注意: 法人価格表には、すべての品目が含まれています。 価格表に記載のない製品については(「適用なし」のマーク)、その価格は「法人」にデフォルト設定されます。
顧客 | 顧客区分 | 価格表 | 値引 | 値引名 | 例外 |
National OEM社 | OEM | National OEM社 | 3% | VIP値引 | 顧客区分がOEM |
HTG社 | 新興企業 | HTG社 | NULL | NULL | NULL |
製品 | 製品グループ: | 値引 | 例外 |
Brainglo | インフラストラクチャ | 5% | 顧客固有の価格表 |
Brainglo | ツール | 10% | NULL |
Infratimers | ツール | 10% | NULL |
次の項では、いくつかの価格設定の使用例を紹介します。
価格表の使用例
Tech Emporium社は、特定の顧客に対して、一部の製品は特別価格で提供し、その他の製品は標準価格で提供します。
National OEM社とHTG社は、BraingloとInfratimersを発注します。
価格設定の処理およびルール
特別価格および標準価格で製品を提供するために、価格設定の処理およびルールを定義します。 価格設定処理を次の2つ部分に分けます。
価格設定要件 | 価格設定ルール |
---|---|
適用可能な価格表に基づき、製品を特別価格で提供する。 | 価格表は受注では指定されない。 顧客が特定の価格表に対して適格である。 受注品目は、その特定の価格表に存在する必要がある。 |
その他の製品については、標準価格で提供する。 | 受注品目は、顧客の特定の価格表に存在しない。 |
値引の使用例
Tech Emporium社は、顧客グループおよび製品グループに基づいて値引を提供します。
National OEM社は、すべての発注に対して3%の特別VIP値引を受けることができます。 HTG社は新興顧客区分に属しているため、VIP顧客値引の対象として適格ではありません。
インフラストラクチャ製品グループの製品には5%の値引、ツール製品グループには10%の値引があります(Braingloはインフラストラクチャとツールの両方の製品グループに属しています。Infratimersはツール製品グループにのみ属しています)。 顧客が製品グループに基づく複数の値引に対して適格である場合は、少ないほうの値引を受けます。 たとえば、顧客がBraingloを購入する場合、5%値引と10%値引を両方受けることはできません。
価格設定要件2
特定の場合、1つの受注に対して複数の値引を同時に適用できません。 顧客が5%値引と10%値引の両方に対して適格である場合は、5%値引のみ受けることができます。
価格設定要件3
値引の適用は、品目が特別価格の販促に含まれるかどうかによって決まります。 インフラストラクチャ・カテゴリの製品は、顧客固有の価格表から価格が導出されている場合に5%値引の対象になります。 ツール・カテゴリの製品は、10%値引の対象になります。
価格設定要件4
値引は、顧客階層の体系に基づいて提供されます。 OEM顧客区分の顧客は、すべての受注が3%値引の対象になります。一方、HTG顧客区分の顧客は、値引の対象になりません。
価格設定要件5
受注の各明細を対象にする値引があります。 これ以外の値引は、受注全体を対象にします。 たとえば、OEM顧客区分の顧客は、受注レベルのVIP値引の対象になります。 したがって、5%値引と10%値引は、各明細ではなく受注に対して適用されます。
価格設定処理 | 価格設定ルール |
---|---|
5%値引を適用 | 受注明細に対してのみ適用される。 ユーザーが明細入力を終了すると適用される。 受注品目がインフラストラクチャ製品グループに属する場合に適用される。 顧客固有の価格表が選択されている場合のみ適用される。 競合する値引がある場合は、この値引が選択される。 |
10%値引を適用 | 受注明細に対してのみ適用される。 ユーザーが明細入力を終了すると適用される。 受注品目がツール製品グループに属する場合のみ適用される。 |
3%値引を適用 | 受注全体に対してのみ適用される。 顧客がOEM顧客区分に属する場合に適用される(この例では、National OEM社のみ値引を受ける)。 |
前の項では、各要件を価格設定処理と価格設定ルールに分けました。この項では、Oracle Advanced Pricingを使用して、それらの処理とルールを実装する方法を説明します。
価格表の設定
2つの顧客固有の価格表および1つの法人価格表を設定する必要があります。 価格表を顧客固有にするには、顧客名のクオリファイアを添付します。 顧客は、発注時に価格表を指定しません。 クオリファイアを添付することにより、価格設定エンジンが価格表を検索できるようになります。 Oracle Advanced Pricingでは、クオリファイアによって価格設定エンジンに特定の価格表が指示されます。
第2価格表は、特別な価格設定を持たない製品に対して設定する必要があります。 この例では、Tech Emporium社の全製品が含まれる法人価格表が第2(またはデフォルト)価格表になります。 価格設定エンジンは、受注品目が主要価格表で見つからない場合に第2価格表を検索します。
値引の設定
モディファイアとクオリファイア:
値引など、その他の価格設定処理は、モディファイアとクオリファイアを使用して実装します。 各価格設定ルールは、モディファイア・フォームのセクションにマップできます。 また、クオリファイアをモディファイアに添付して、値引の適格条件を指定できます。
非互換グループ:
顧客が5%値引と10%値引の両方に対して適格になる場合があります。 価格設定ルールには、顧客は両方の値引を受けることはできず、5%値引のみ受けることが設定されています。 値引を同じ非互換グループにグループ化すると、値引の競合がなくなります。 価格設定エンジンは、同じ非互換グループ・レベル内のモディファイアを評価して、1つのモディファイアのみ選択します。 実装者は、各価格設定フェーズでの非互換性を解決するために、優先または最善価格のどちらを使用するかを選択します。 この事例では、優先を選択するとします。 5%値引と10%値引は、同じ非互換グループに属しています。価格設定エンジンは、優先値が最小のモディファイア明細を選択します。
価格設定フェーズ
非互換性は、価格設定フェーズ内でのみ機能します。 値引は、受注サイクルの異なる時点で適用できます。 Tech Emporium社は、受注サイクルの異なる時点で3つの値引を適用します。 最初の2つの値引は、ユーザーが受注明細の入力を終了すると適用されます。この価格設定フェーズは「リスト明細調整」と呼ばれます。 3番目の値引は、受注が保存されると適用されます。この価格設定フェーズは、「全明細調整」と呼ばれます。 「全明細調整」の場合、受注の全明細が価格設定エンジンによって評価されます。
値引の例
Tech Emporium社には、OEM顧客区分に属する顧客は受注レベルで3%値引の対象になる、という価格設定ルールがあります。 National OEM社は、この値引の対象になります。 この値引は他の値引とともに適用されるため、設定時にこの値引に対して非互換グループを定義する必要はありません。 値引には、明細レベルまたは明細グループ・レベルで適用される値引と、受注レベルで適用される値引があります。 3%のVIP値引は受注レベルの値引で、5%と10%の製品値引は明細レベルの値引です。
5%値引
競合する値引がある場合に確実にこの値引を適用するには、優先値を他の値引よりも小さくする必要があります。 非互換性は、「非互換グループ・レベル1」に設定します。
10%値引
この値引は、ユーザーが受注明細の入力を終了すると適用されます。 非互換性は、「非互換グループ・レベル1」に設定します。 優先値は大きい数値(低い優先度)に設定します。
3%値引
受注レベルの値引を定義して、顧客区分クオリファイアを添付する必要があります。 この値引は、顧客が要件を満たすと常に適用されます。 非互換グループを定義する必要はありません。 顧客区分がクオリファイアになります。
この事例で説明した価格表とモディファイアの設定に基づき、次の各表にNational OEM社とHTG社からの受注を示します。
次の表は、National OEM社からの受注を示しています。
品目 | 数量 | 価格表 | 定価 | 販売価格 | 価格調整 |
---|---|---|---|---|---|
Brainglo | 1 | National OEM社 | 175.00 | 161.00 | 3%のOEM値引 5%のインフラストラクチャ製品値引 |
Infratimers | 1 | 法人 | 160.00 | 139.20 | 3%のOEM値引 10%のツール値引 |
次の表は、同じ品目について、HTG社からの受注を示しています。
品目 | 数量 | 価格表 | 定価 | 販売価格 | 価格調整 |
---|---|---|---|---|---|
Brainglo | 1 | 法人 | 200.00 | 180.00 | 10%のツール値引 |
Infratimers | 1 | HTG社 | 150.00 | 135.00 | 10%のツール値引 |