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Oracle Applicationsパッチ・プロシージャ
リリース12
E05656-01
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1 パッチ適用の概念とユーティリティ

パッチを適用すると、製品の追加からシステム・パフォーマンスの改善まで、既存のシステムが様々な点で更新されます。この章では、様々な種類のパッチを紹介し、パッチの適用や、システムへの影響の監視に使用するユーティリティについて説明します。この章には次の項があります。

パッチ適用の概念

Oracle Applicationsのライフ・サイクル過程では、次のような様々な理由でパッチが適用されます。

パッチのタイプに応じて、ファイル・システムまたはデータベース(あるいはその両方)が更新されます。


注意:

Oracle Applicationsのすべてのパッチは、OracleMetaLinkから入手できます。

コードレベルとコードライン

Oracle Applicationsリリース12では、パッチの前提条件、依存性および互換性を容易に追跡できるように、コードラインとコードレベルが導入されます。パッチはコードラインに関連付けられ、製品機能セットを識別する以外に、その機能セットに修正を提供するためにリリースされた各種パッチの順序も識別します。

コードラインは、一意の製品機能セットで構成される基点で始まり、その基点に修正を提供するために作成されたすべてのパッチを含むように進行します。たとえば、システムでOracle FinancialsとOracle Human Resourcesがアクティブになっています。Oracle Financialsの最初の機能セットまたは基点はFIN.A、Oracle Human Resourcesの最初の機能セットまたは基点はHR.Aです。

基点に修正が必要な場合、パッチ(またはパッチ・セット)がリリースされ、基点に追加された数値がパッチの作成順序を示します。新規パッチはそれぞれ、コードレベルと呼ばれます。たとえば、コードレベルFIN.A.1は基点の最初の修正セット、FIN.A.2は2番目の修正セットになります。コードレベルは累積型です。つまり、各コードレベルには、最初の機能セットとその製品ファミリに対してこれまでに作成されたすべての修正(後続のパッチによって置き換えられる修正を除く)が含まれます。

一部のパッチには新機能が含まれています。このようなパッチは、新しい基点を作成したり、新しいコードラインを開始します。たとえば、Oracle Financialsが(Oracle Applicationsの完全なアップグレードの一部になるのではなく)パッチで新機能をリリースすると、パッチは新しいコードラインFIN.Bを開始します。拡張された機能セットの修正を含む後続のパッチ・リリース(またはコードレベル)には、それに応じて、FIN.B.1、FIN.B.2、FIN.B.3などの名前が付けられます。

ユーザーとして、既存のコードラインを修正するためのパッチを受け入れることも、より新しいコードラインでパッチを受け入れることもできます。より新しいコードラインは、製品に修正を提供する以外に、システムに機能拡張も追加します。

パッチ・タイプ

パッチは、タイプ別およびフォーマット別に定義されます。パッチ・タイプは、パッチの目的を示します。たとえば、パッチで製品の機能を追加したり既存の問題を修正します。Oracle Applicationsシステムに対する適用を要求されるパッチ・タイプもあります。次の表にパッチ・タイプを示します。

パッチ・タイプ 説明
バグ・フィックス 既存の問題を修正します。
新機能 新機能を追加します。
相互運用性 Oracle Applicationsのファイルとデータベース・オブジェクトが含まれ、現行バージョンのOracle Applicationsに、新規バーションのデータベースやテクノロジ・スタック・コンポーネントとの互換性を提供します。たとえば、Oracle 11gデータベースをOracle Applicationsリリース12で使用できるようにします。
診断 問題の原因を判断するために特別にリリースされたパッチです。診断パッチには、修正は含まれません。
翻訳 英語から別の言語に翻訳されたOracle Applicationsのファイルが格納されます。翻訳パッチは、データベース内のデータをロードまたは更新するタスクも実行できます。
パフォーマンス 以前の主要なリリースからアップグレード(11.5.9から12など)する際に、問題を修正したり、パフォーマンスを改善します。
ドキュメント Oracle Applicationsオンライン・ヘルプを更新します。製品のMinipackまたは新機能を追加するStand-aloneパッチを適用する場合は、関連するドキュメント・パッチについて、OracleMetaLinkの「Features Summary Matrices」を検討してください。

パッチの形式

パッチのフォーマットは、パッチをパッケージ化して適用する方法を示します。たとえば、Stand-aloneパッチは、特定の1つの問題に焦点を当てたパッチですが、Minipackは、基本的に、特定の期間の特定の製品用のパッチすべてを統合したマージ・パッチです。パッチは次の形式でリリースされます。フォーマットが累積型のパッチには、初期のリリース12から最新のリリース・レベルまでの一連の更新内容が含まれます。

パッチ 説明
Stand-alone 特定の問題を修正したり、新機能を提供するパッチです。
High-priority 影響を受ける製品をインストールしているすべての顧客が適用すると、メリットが十分にあることをオラクル社が示したパッチです。
Rollup 特定の製品またはファミリのリリース・レベルにあるパッチをまとめたものです。
Minipack 1つの製品を新しいコードレベルにアップグレードする製品に関するすべてのパッチを統合したものです。命名規則は、R12.<product>.<codeline>(R12.AD.Aなど)です。より高い<codeline>を持つMinipackで以前のバージョンは置換されます。このパッチは累積型です。
Family Pack 1つの製品ファミリに関するMinipackと他のパッチをセットにして統合したものです。より高い番号を持つFamily Packで以前のバージョンは置換されます。このパッチは累積型です。
Consolidated Update(CU) 一般的な推奨パッチと対象を絞った追加パッチが1つのパッチに統合されている更新です。Consolidated Updateを適用すると、最新の推奨パッチ・レベルのリリースになります。たとえば、R12 CU2などです。
Family Consolidated Upgrade Patch 1つの製品ファミリ内のすべての製品から、アップグレードに関連するすべてのHigh-priorityパッチを統合したものです。Family Consolidated Upgrade Patchは必要に応じてリリースされます。最新のFamily Consolidated Upgrade Patchは、『Oracle Applicationsリリース・ノート』にリストされています。
Maintenance Pack すべての製品の全Minipackを統合したものです。Maintenance Packによって、システムが、リリース11.5.10から12などのOracle Applicationsの新規リリースに更新されます。高い番号を持つMaintenance Packで以前のバージョンは置換されます。このパッチは累積型です。


追加情報:

使用可能な最新のパッチは、OracleMetaLinkにログインして確認できます。「Patches & Updates」タブをクリックし、「Quick Links to the Latest Patchsets Mini Packs」、「Maintenance Packs」リンクの順に選択して、最新のパッチにアクセスします。

パッチ・ファイルの構造

通常、パッチは、最上位ディレクトリとそこに含まれる複数のファイル、および1つ以上のサブディレクトリで構成されます。最上位ディレクトリには<patchnum>という名前が付けられます。<patchnum>はそのパッチの番号を示します。最上位ディレクトリで最も重要なファイルは、README.txt、README.htmlおよびドライバ・ファイル(u<patchnum>.drv)です。ほとんどのパッチでは、パッチ・ドライバを適用するのみで済みます。

各パッチのREADME.txtまたはREADME.htmlファイルには、パッチの目的、およびパッチを適用するためのカスタマイズされたインストール手順の生成方法が記載されています。

パッチ・ドライバ・ファイル

統合ドライバには、ファイルとデータベース・オブジェクトを変更したり、新しいオブジェクトを生成する際に必要なコマンドが含まれています。

統合ドライバ

統合ドライバには、コピー、データベースおよび生成の各部分が1つのドライバ・ファイルに含まれています。u<patchnum>.drvという名前が付けられます。すべてのAPPL_TOP上で統合ドライバを実行すると、AutoPatchにより、現在のAPPL_TOPに必要な処理のみが実行されます。

統合ドライバのコピー部分

統合ドライバのコピー部分を実行すると、次の処理が実行されます。

  • 各製品のCライブラリから適切なファイルが抽出されます。

  • 抽出されたオブジェクト・モジュールがパッチ・ディレクトリ内の対応するファイルと比較されます。この場合、フォーム、レポートおよびSQLスクリプトなどのファイルも比較されます。

  • パッチ・ディレクトリ内のより新しいバージョンの製品ファイルが、パッチ・ディレクトリ内のサブディレクトリにバックアップされます。たとえば、<patch_dir>がパッチ・ディレクトリ、<system_name>がApplicationsシステム名、<appl_top_name>がAPPL_TOP名、<prod>がパッチを適用する製品の名前である場合、次のようにバックアップされます。

    <PROD>_TOP/<subdir(s)>/<old_file_name>
    
    to
    
    <patch_dir>/backup/<system_name>/<appl_top_name>/ ¥ <prod>/<subdir(s)>/<old_file_name>
    

    注意:

    Applicationsシステム名とAPPL_TOP名は、Rapid Installの処理の過程で決まります。

  • 各製品の旧ファイルがパッチ・ディレクトリ内の新規ファイルで置換されます。

  • 新規オブジェクト・モジュールがCライブラリにロードされます。

  • Oracle Applications製品が、オペレーティング・システム、Oracleサーバーおよび他のOracle製品ライブラリに再リンクされます。

  • 変更されたJavaクラス・ファイルが適用され、必要に応じてJARファイルが再生成されます。

  • 指定されたHTMLまたはメディア・ファイルがそれぞれの宛先にコピーされます。

  • 古いJava Server Page(JSP)ファイルをコンパイルします(パッチにJSPファイルが含まれている場合)。

統合ドライバのデータベース部分

統合ドライバのデータベース部分を実行すると、次の処理が実行されます。

  • APPSスキーマ内にある現在の無効なオブジェクトのリストを取得します。

  • 以前のパッチで処理が実行されたかどうかが確認されます。

  • SQLスクリプトおよびEXECコマンドが実行されます。これによって、Oracle Applicationsデータベース・オブジェクトが変更されます。デフォルトでは、AutoPatchにより、スクリプトとコマンドはパラレルで実行されます。

  • データベース内の無効なオブジェクトをコンパイルします。

  • APPSスキーマ内にある現在無効なオブジェクトのリストが作成されます。


注意:

リリース12では、個別のMRCスキーマは不要なため、(以前のリリースに含まれていた)実行者権限の処理は削除されました。

統合ドライバの生成部分

パッチで生成するファイルが1つ以上含まれるすべてのAPPL_TOPディレクトリ上で、統合ドライバの生成部分を適用します。不明な場合は、すべてのノード上のすべてのAPPL_TOPに適用してください。ドライバの生成部分を実行すると、次の処理が実行されます。

  • Oracle Forms PL/SQLライブラリ・ファイルが生成されます。

  • Oracle Formsメニュー・ファイルが生成されます。

  • Oracle Forms実行可能ファイルが生成されます。

  • Oracle Reports PL/SQLライブラリ・ファイルが生成されます。

  • Oracle Reportsファイルが生成されます。

  • メッセージ・ファイルが生成されます。

  • Oracle Workflowリソース・ファイルが生成されます。

パッチ適用ユーティリティ

パッチは、専用に設計されたユーティリティの1つを使用して、必要に応じて適用および追跡管理されます。これらのユーティリティの一部はコマンドラインから実行されます。その他のユーティリティはWebベースです。

コマンドライン・パッチ適用ユーティリティ

次のユーティリティはコマンドラインから実行します。

AutoPatch

AutoPatchは、すべてのパッチをOracle Applicationsのファイル・システムやデータベースに適用するために使用するユーティリィティです。

ADマージ・パッチ

パッチを個別に適用する場合は、パッチを適用するタスクを複数回実行する必要があります。たとえば、すべてのパッチで、リンク、生成および接続の各処理が重複している可能性があります。AD Merge Patchでは、パッチの適用に必要なタスクと処理が1回のみ実行されるように、複数のパッチを1つのパッチにマージします。

Webベースのパッチ適用ユーティリティ

次のユーティリティはWebベースです。これらのユーティリティは、Oracle Applications Manager(OAM)を介してアクセスします。

Applied Patches

Applied Patchesユーティリティを使用すると、システムに適用されたパッチのリストについてパッチ履歴データベースを問い合せることができます。Applied Patchesインタフェースから、パッチ番号とタイプ、ドライバ・ファイル名、プラットフォームとバージョン、適用済パッチの場所、パッチの内容と言語、変更またはコピーされたファイル、各ドライバ・ファイル内のバグ・フィックス、パッチ適用が成功したかどうか、およびタイミング情報などのパッチ情報を表示できます。

File History

File Historyユーティリティを使用すると、パッチによって更新されたファイルを表示できます。ファイルが存在するAPPL_TOP、ファイルが存在するディレクトリ、ファイルを所有する製品ファミリ、ファイルの名前、ファイルのバージョン、ファイルが変更された日付、パッチ詳細レポート、およびファイルに関する更新の処理要約レポートなど、ファイル履歴情報を表示できます。

Patch Wizard

パッチ適用処理で重要な点は、推奨される新しいパッチに迅速に対応し、実際に適用する前にパッチが与える影響を分析することです。Patch Wizardを使用すると、システムには適用されていないが、システムを最新の状態に保つために推奨されているパッチを判別できます。また、このウィザードを使用すると、パッチを適用する前に、個々のパッチの適用によるシステムへの影響を確認できます。

Timing Reports

Timing Reportsユーティリティを使用すると、実行中のジョブを監視したり、完了したAutoPatchセッションおよびAD Administrationメンテナンス・セッションの統計を表示できます。タスク名、タスクの完了に要した時間、開始時刻と終了時刻などの情報を表示できます。

Registered Flagged Files

Registered Flagged Filesユーティリティを使用すると、ファイルに対して行われたカスタマイズを1箇所に記録できます。Registered Flagged Filesを使用して、カスタマイズ・ファイルのレコードをインポート、エクスポート、追加、削除および表示します。このユーティリティは、以前のリリースのOracle Applicationsからapplcust.txtファイルを置換します。

Manage Downtime Schedules

Manage Downtime Schedulesの詳細は、『Oracle Applicationsシステム管理者ガイド - メンテナンス』の制限モードにおける停止時間の管理に関する項を参照してください。