パッチを適用すると、製品の追加からシステム・パフォーマンスの改善まで、既存のシステムが様々な点で更新されます。この章では、様々な種類のパッチを紹介し、パッチの適用や、システムへの影響の監視に使用するユーティリティについて説明します。この章には次の項があります。
Oracle Applicationsのライフ・サイクル過程では、次のような様々な理由でパッチが適用されます。
より高いメンテナンス・レベルへの更新
製品の最新拡張機能の適用
新機能の追加
既存の問題の修正
パッチのタイプに応じて、ファイル・システムまたはデータベース(あるいはその両方)が更新されます。
注意: Oracle Applicationsのすべてのパッチは、OracleMetaLinkから入手できます。 |
Oracle Applicationsリリース12では、パッチの前提条件、依存性および互換性を容易に追跡できるように、コードラインとコードレベルが導入されます。パッチはコードラインに関連付けられ、製品機能セットを識別する以外に、その機能セットに修正を提供するためにリリースされた各種パッチの順序も識別します。
コードラインは、一意の製品機能セットで構成される基点で始まり、その基点に修正を提供するために作成されたすべてのパッチを含むように進行します。たとえば、システムでOracle FinancialsとOracle Human Resourcesがアクティブになっています。Oracle Financialsの最初の機能セットまたは基点はFIN.A、Oracle Human Resourcesの最初の機能セットまたは基点はHR.Aです。
基点に修正が必要な場合、パッチ(またはパッチ・セット)がリリースされ、基点に追加された数値がパッチの作成順序を示します。新規パッチはそれぞれ、コードレベルと呼ばれます。たとえば、コードレベルFIN.A.1は基点の最初の修正セット、FIN.A.2は2番目の修正セットになります。コードレベルは累積型です。つまり、各コードレベルには、最初の機能セットとその製品ファミリに対してこれまでに作成されたすべての修正(後続のパッチによって置き換えられる修正を除く)が含まれます。
一部のパッチには新機能が含まれています。このようなパッチは、新しい基点を作成したり、新しいコードラインを開始します。たとえば、Oracle Financialsが(Oracle Applicationsの完全なアップグレードの一部になるのではなく)パッチで新機能をリリースすると、パッチは新しいコードラインFIN.Bを開始します。拡張された機能セットの修正を含む後続のパッチ・リリース(またはコードレベル)には、それに応じて、FIN.B.1、FIN.B.2、FIN.B.3などの名前が付けられます。
ユーザーとして、既存のコードラインを修正するためのパッチを受け入れることも、より新しいコードラインでパッチを受け入れることもできます。より新しいコードラインは、製品に修正を提供する以外に、システムに機能拡張も追加します。
パッチは、タイプ別およびフォーマット別に定義されます。パッチ・タイプは、パッチの目的を示します。たとえば、パッチで製品の機能を追加したり既存の問題を修正します。Oracle Applicationsシステムに対する適用を要求されるパッチ・タイプもあります。次の表にパッチ・タイプを示します。
パッチのフォーマットは、パッチをパッケージ化して適用する方法を示します。たとえば、Stand-aloneパッチは、特定の1つの問題に焦点を当てたパッチですが、Minipackは、基本的に、特定の期間の特定の製品用のパッチすべてを統合したマージ・パッチです。パッチは次の形式でリリースされます。フォーマットが累積型のパッチには、初期のリリース12から最新のリリース・レベルまでの一連の更新内容が含まれます。
追加情報: 使用可能な最新のパッチは、OracleMetaLinkにログインして確認できます。「Patches & Updates」タブをクリックし、「Quick Links to the Latest Patchsets Mini Packs」、「Maintenance Packs」リンクの順に選択して、最新のパッチにアクセスします。 |
通常、パッチは、最上位ディレクトリとそこに含まれる複数のファイル、および1つ以上のサブディレクトリで構成されます。最上位ディレクトリには<patchnum>という名前が付けられます。<patchnum>はそのパッチの番号を示します。最上位ディレクトリで最も重要なファイルは、README.txt、README.htmlおよびドライバ・ファイル(u<patchnum>.drv)です。ほとんどのパッチでは、パッチ・ドライバを適用するのみで済みます。
各パッチのREADME.txtまたはREADME.htmlファイルには、パッチの目的、およびパッチを適用するためのカスタマイズされたインストール手順の生成方法が記載されています。
統合ドライバには、ファイルとデータベース・オブジェクトを変更したり、新しいオブジェクトを生成する際に必要なコマンドが含まれています。
統合ドライバには、コピー、データベースおよび生成の各部分が1つのドライバ・ファイルに含まれています。u<patchnum>.drvという名前が付けられます。すべてのAPPL_TOP上で統合ドライバを実行すると、AutoPatchにより、現在のAPPL_TOPに必要な処理のみが実行されます。
統合ドライバのコピー部分を実行すると、次の処理が実行されます。
各製品のCライブラリから適切なファイルが抽出されます。
抽出されたオブジェクト・モジュールがパッチ・ディレクトリ内の対応するファイルと比較されます。この場合、フォーム、レポートおよびSQLスクリプトなどのファイルも比較されます。
パッチ・ディレクトリ内のより新しいバージョンの製品ファイルが、パッチ・ディレクトリ内のサブディレクトリにバックアップされます。たとえば、<patch_dir>がパッチ・ディレクトリ、<system_name>がApplicationsシステム名、<appl_top_name>がAPPL_TOP名、<prod>がパッチを適用する製品の名前である場合、次のようにバックアップされます。
<PROD>_TOP/<subdir(s)>/<old_file_name> to <patch_dir>/backup/<system_name>/<appl_top_name>/ ¥ <prod>/<subdir(s)>/<old_file_name>
注意: Applicationsシステム名とAPPL_TOP名は、Rapid Installの処理の過程で決まります。 |
各製品の旧ファイルがパッチ・ディレクトリ内の新規ファイルで置換されます。
新規オブジェクト・モジュールがCライブラリにロードされます。
Oracle Applications製品が、オペレーティング・システム、Oracleサーバーおよび他のOracle製品ライブラリに再リンクされます。
変更されたJavaクラス・ファイルが適用され、必要に応じてJARファイルが再生成されます。
指定されたHTMLまたはメディア・ファイルがそれぞれの宛先にコピーされます。
古いJava Server Page(JSP)ファイルをコンパイルします(パッチにJSPファイルが含まれている場合)。
パッチで生成するファイルが1つ以上含まれるすべてのAPPL_TOPディレクトリ上で、統合ドライバの生成部分を適用します。不明な場合は、すべてのノード上のすべてのAPPL_TOPに適用してください。ドライバの生成部分を実行すると、次の処理が実行されます。
Oracle Forms PL/SQLライブラリ・ファイルが生成されます。
Oracle Formsメニュー・ファイルが生成されます。
Oracle Forms実行可能ファイルが生成されます。
Oracle Reports PL/SQLライブラリ・ファイルが生成されます。
Oracle Reportsファイルが生成されます。
メッセージ・ファイルが生成されます。
Oracle Workflowリソース・ファイルが生成されます。
パッチは、専用に設計されたユーティリティの1つを使用して、必要に応じて適用および追跡管理されます。これらのユーティリティの一部はコマンドラインから実行されます。その他のユーティリティはWebベースです。
次のユーティリティはWebベースです。これらのユーティリティは、Oracle Applications Manager(OAM)を介してアクセスします。
Applied Patchesユーティリティを使用すると、システムに適用されたパッチのリストについてパッチ履歴データベースを問い合せることができます。Applied Patchesインタフェースから、パッチ番号とタイプ、ドライバ・ファイル名、プラットフォームとバージョン、適用済パッチの場所、パッチの内容と言語、変更またはコピーされたファイル、各ドライバ・ファイル内のバグ・フィックス、パッチ適用が成功したかどうか、およびタイミング情報などのパッチ情報を表示できます。
File Historyユーティリティを使用すると、パッチによって更新されたファイルを表示できます。ファイルが存在するAPPL_TOP、ファイルが存在するディレクトリ、ファイルを所有する製品ファミリ、ファイルの名前、ファイルのバージョン、ファイルが変更された日付、パッチ詳細レポート、およびファイルに関する更新の処理要約レポートなど、ファイル履歴情報を表示できます。
パッチ適用処理で重要な点は、推奨される新しいパッチに迅速に対応し、実際に適用する前にパッチが与える影響を分析することです。Patch Wizardを使用すると、システムには適用されていないが、システムを最新の状態に保つために推奨されているパッチを判別できます。また、このウィザードを使用すると、パッチを適用する前に、個々のパッチの適用によるシステムへの影響を確認できます。
Timing Reportsユーティリティを使用すると、実行中のジョブを監視したり、完了したAutoPatchセッションおよびAD Administrationメンテナンス・セッションの統計を表示できます。タスク名、タスクの完了に要した時間、開始時刻と終了時刻などの情報を表示できます。