Oracle Manufacturing: 有償支給(日本, 韓国, 台湾)ユーザーズ・ガイド リリース12 E05615-01 | ![]() 目次 | ![]() 前へ | ![]() 次へ |
この章では、次の内容について説明します。
有償支給会計プロセスでは、次のことが考慮されます。
OEMは品目外注品を製造するためにMPに支給品を出荷しますが、支給品の所有権は保持します。
このため、MPはOEMから受け入れた支給品の支払を行う義務はありません。
MPはOEMが提供した支給品から組立品(追加額)を製造してOEMに出荷します。
OEMは組立品と支給品の受入と消費を行い、MP組織に追加額のみを支払います。
注意: MP組織はシミュレート済組織で、在庫計画と追跡に使用され、原価には影響を与えません。このため、MP組織のすべての会計取引はGLに転記されません(MP組織では「GLへ転送」は「No」に設定されています)。
詳細は「有償支給会計の設定」を参照してください。
MP組織への支給品の出荷には受注が使用され、MPからの組立品の調達には発注が使用されます。売掛/未収金と買掛/未払金の請求書はネッティングされ、OEMは追加額をMP組織に支払います。
次に主な会計概念を示します。
OEMは支給品を出荷して、その所有権と仮想売上を保持します。
品目外注支給品の出荷に関連する会計取引は、別個に追跡する必要があります。これらの取引は、有償支給用に定義された品目外注売上原価勘定、品目外注収益勘定、品目外注売掛/未収金勘定に転記して処理され、OM取引タイプに関連付けられます。この取引タイプは出荷ネットワークで定義され、連動マネージャが支給品の支給品補充受注を作成するときに、出荷ネットワークで定義されたOM取引タイプで作成されます。各勘定は品目外注支給品の受注実行時に転記されます。
期末に、OEMは会計帳簿で支給品在庫を明らかにする必要があります。支給品の手持在庫および在庫額をシミュレート・レコードに基づいて識別および計算するレポートが用意されています。
重要: 適切な会計帳簿に手動で入力し、その入力を翌期の期首に戻し入れる必要があります。
MPからの組立品の調達には発注が使用されます。MPから組立品を受け入れた後、OEMは組立品を製造するために出荷した支給品の売掛/未収金請求書と買掛/未払金請求書をネッティングします。OEMはMPに追加額を支払います。組立品の購買価格は、BOM所要数量と支給品売上に基づいて計算されます。
支給品と組立品の販売価格と購買価格の設定については、第2章を参照してください。
支払プロセスをサポートするために、組立品の購買価格は支給品の販売価格と追加額によって定義されます。このため、OEMでの組立品受入に関連する購買価格差異は、有償支給用に定義された品目外注差異勘定を使用して追跡する必要があります。この勘定は出荷ネットワークに関連付けられており、発注受入時に、購買価格差異は品目外注差異勘定に転記されます。
全プロセスにおいて支給品販売価格、支給品と組立品の標準原価、組立品購買価格には固定価格が使用されるため、価格と原価の差異は会計処理に影響を与えます。これらの変更とその影響を識別するために、一連のユーティリティ(レポート)が用意されています。
重要: 整合性を確保するために、会計レコードを手動で調整する必要があります。
有償支給会計では、支給品と組立品の原価と価格は、仮想売上取引から生じた純利益が組立品購買に関連する仮想利益と相殺されるように定義する必要があります。
原価と価格の設定の詳細は、「有償支給の設定」を参照してください。
次の図は、原価と価格の設定方法を示しています。金額はすべてUSDです。
品目 | 原材料原価 | OSP(MPによる追加額) | 単価 |
---|---|---|---|
B | 2 | - | 2 |
C | 3 | - | 3 |
A | 2*2 + 3*1 = 7 USD | 5 | 12 |
品目 | 品目原価 | 販売価格 | 購買価格 | 組立品Aの1 Eaごとの損益 |
---|---|---|---|---|
B | 2 | 4 | N/A | 2*(4 - 2) = 4 |
C | 3 | 6 | N/A | 1*(6 - 3) = 3 |
A | 12 | N/A | 19 | 19 - 12 = 7 |
支給品補充受注によってMPに支給品BとCを出荷することによる損益は、組立品Aを1つ製造するごとに4 + 3 = 7 USDです。
MPから組立品Aを1つ購入することによる損益相殺は、7 USDです。
相手先商標製品製造業者(OEM)は、支給品をMPに出荷することによる損益がMPから組立品を購入することによる損益相殺と等しくなるように、品目価格を設定する必要があります。
支給品の原材料原価を定義します。組立品の原材料およびOSPチャージを定義して、OEM組織で標準原価を更新します。OSPチャージとは、MP組織により追加される追加額です。MP組織での原価計算は重要ではありません。
MPへの支給品の仮想売上からの損益が組立品の購買価格によって相殺されるように、支給品の販売価格と組立品の購買価格を定義します。損益とは支給品の販売価格と標準原価との差異であり、相殺とは組立品の購買価格と標準価格との差異を指します。また、組立品の購買価格と支給品の販売価格との差異が追加額です。OEMは組立品を受け入れた後、MP組織に追加額を支払います。
前の例では、支給品BとCの標準原価はそれぞれ2USDと3USDで、販売価格はそれぞれ4USDと6USDです。MPにBを2単位およびCを1単位販売すると、仮想利益が7USDになります。このうち4USDはBからで3USDはCからです。
仮想利益を相殺するために、組立品の購買価格は19USDに設定されており、標準原価は12USDです。購買価格と標準原価の差異は17USDであり、この金額によって支給品売上による仮想利益が相殺されます。
売掛/未収金請求書の正味金額は14USDで、そのうち8USDは2単位のBで6USDは1単位のCによるものです。この正味金額は買掛/未払金請求書の19USDと残高の5USDに対して計算され、MP組織に支払われる追加額を表します。
支給品の仮想売上に関連する会計取引は、別の勘定で追跡されます。
支給品補充受注の出荷確認時
この例では、支給品BとCの出荷確認時の会計仕訳を示します。金額はすべてUSDです。
勘定 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
支給品B(2ずつ) | ||
繰延売上原価(品目原価2USD) | 4 | - |
在庫評価(品目原価2USD) | - | 4 |
支給品C(1ずつ) | ||
繰延売上原価(品目原価2USD) | 3 | - |
在庫評価(品目原価2USD) | - | 3 |
これらは標準取引です。在庫はOEM会計帳簿の貸方に表記されていますが、OEM組織が在庫を所有しています。期末にレポートを実行して、MPサイトの手持在庫と金額を計算し、OEM会計帳簿を調整して会計を適正化します。
支給品補充受注の請求
この例では、支給品BとCのAR請求書の会計仕訳を示します。金額はすべてUSDです。
勘定 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
支給品B(2ずつ) | ||
売上原価(繰延金額4 USD) | 4 | - |
繰延売上原価(繰延金額4 USD) | - | 4 |
品目外注売掛/未収金(販売価格4 USD) | 8 | - |
品目外注収益(販売価格4 USD) | - | 8 |
支給品C(1 EA) | ||
売上原価(繰延金額3 USD) | 3 | - |
繰延売上原価(繰延金額3 USD) | - | 3 |
品目外注売掛/未収金(販売価格6 USD) | 6 | - |
品目外注収益(販売価格6 USD) | - | 6 |
品目外注支給品の支給品補充受注の請求に関連する売上原価、収益、売掛金取引は、有償支給勘定に転記されて追跡されます。
品目外注オーダーは、MPから品目外注品を調達するために作成される標準発注または標準リリースです。発注には次のイベントが含まれます。
受入事業所への組立品の受入
組立品の在庫への搬送
表示される金額はすべてUSDです。
組立品Aの受入
勘定 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
組立品A(1ずつ) | ||
在庫受入(発注価格19 USD) | 19 | - |
買掛金経過勘定(発注価格19 USD) | - | 19 |
これらのエントリは標準品目とほぼ同じです。
組立品Aの搬送
勘定 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
組立品A(1ずつ) | ||
在庫評価(品目原価12USD) | 12 | - |
品目外注差異(発注価格 - 品目原価) | 7 | - |
在庫受入(発注価格19 USD) | - | 19 |
在庫12USDが借方記入されます。これには、支給品原価と追加額が含まれます。購買価格差異は品目外注差異勘定に転記されて追跡されます。
組立品AのAP請求書
勘定 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
組立品A(1ずつ) | ||
買掛金経過勘定 | 19 | - |
買掛/未払金(品目外注品) | - | 19 |
買掛金/未払金請求書が作成された後の会計仕訳。
売掛/未収金請求書と買掛/未払金請求書を処理する準備が整いました。Oracle Payablesの売掛/未収金および買掛/未払金機能を使用して、MPに追加額を支払う必要があります。
売掛/未収金と買掛/未払金のネッティング
勘定 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
AP(品目外注品): 19 USD、品目外注AR: 14 USD | ||
AP(品目外注品) | 14 | - |
品目外注AR | - | 14 |
売掛/未収金のネッティング後、金額14USDは一部支払として調整され、残高5USDをMPに支払うことができます。
APとARのネッティングの詳細は、『Oracle Payablesユーザーズ・ガイド』を参照してください。
有償支給では、支給品と組立品の標準原価、販売価格および購買価格すべてに変更がない場合、勘定は適切に転記されます。これらの原価および価格は、原材料原価の上昇、追加額の変更など様々なビジネス上の理由で変更されることがあり、こうした場合、OEMは標準原価、販売価格、購買価格を変更しなければなりません。これらの変更により未実現損益が生じ、会計に影響を及ぼします。
これらの変更による影響を事前に識別して管理し、会計の適正化を図るために、次のユーティリティおよび手順が用意されています。
標準原価更新
販売価格変更
支給品消費調整
支給品返品
標準原価更新
原価更新分析レポートを実行して、提示原価変更の影響を究明する必要があります。このレポートにより、MPのすべての支給品および組立品について、提示原価変更の累積的な影響を把握できます。GL勘定に手動調整を加えてから、次のように支給品と組立品の標準原価を更新します。
金額がプラスの場合、在庫評価勘定を借方記入する。
金額がマイナスの場合、在庫評価勘定を貸方記入する。
販売価格変更
支給品の販売価格は、一般に期首に変更されます。標準原価と同様、販売価格の変更も損益に影響します。
OEMは影響を帳消しにするために、次の手順に従う必要があります。
確認レポートを使用して、MP組織の在庫を消し込みます。
受注返品を作成して、未割当の支給品補充受注数量の論理返品を行います(RMA)。(論理返品とは、OEMレコードでは返品が行われるが、支給品はMP組織に物理的に置かれていることを意味します。)
価格表の支給品販売価格を新規販売価格に変更します。
返品数量に対して新しい支給品補充発注を作成し、連動マネージャを実行します。
連動マネージャは新規価格で支給品補充受注を作成します。
論理出荷を行います。支給品はMPにありますが、新規価格で出荷が登録されます。
このプロセスの後、実行プロセスを続行できます。
支給品消費調整
BOMに基づく計画消費に対する支給品消費差異は、MP組織の支給品消費調整処理によって登録および処理されます。この処理により、MP組織のシミュレート・レコードの手持在庫の計画と実行が調整されます。ただし、OEM組織の支払プロセスでの差異の影響は、手動で対処する必要があります。
消費超過の場合、MPは計画数量よりも多くの数量を消費しており、この消費超過分の販売価格は組立品の購買価格には含まれません。結果として、売掛/未収金額が買掛/未払金額より多くなり、ネッティングによりMP組織への支払が発生することになります。この状況を解決するために、OEMは超過消費分のクレジット・ノートを作成し、追加額の支払を行う必要があります。
消費不足の場合、MPは計画数量よりも少ない数量を消費しており、買掛/未払金額が売掛/未収金額より多くなり、ネッティングにより追加額よりも多くの支払が発生することになります。消費不足額分のデビット・ノートを作成し、追加額のみの支払を行うことで、この状況を解決できます。
両方のシナリオは、適切なネッティング設定または手動外部ネッティングで処理できます。
『Oracle Payablesユーザーズ・ガイド』の買掛/未払金機能と売掛/未収金機能に関する項を参照してください。
支給品返品
MPは様々なビジネス上の理由でOEMに支給品を返品します。次に例を挙げます。
支給品の不良
歩留改善による支給品超過
支給品の廃止
価格変更による論理返品
支給品出荷時とRMA受入作成時の標準原価差異は、損益に影響します。
返品による損益を帳消しにする手順は、次のとおりです。
原価更新分析レポートを期末オプションで実行し、損益を計算します。
金額がプラスの場合、在庫評価勘定を借方記入します。
金額がマイナスの場合、在庫評価額勘定を貸方記入します。