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Oracle® VMユーザーズ・ガイド
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2 Oracle VMの概要

この章では、Oracle VM、そのコンポーネント、アーキテクチャおよびデプロイメント・オプションの概要について、次の内容を説明します。

2.1 Oracle VMの概要

Oracle VMは、仮想化テクノロジの最新の利点をすべて持つ環境を完備したプラットフォームです。Oracle VMを使用すると、サポートされている仮想化環境に、オペレーティング・システムおよびアプリケーション・ソフトウェアをデプロイできます。図2-1「Oracle VMのアーキテクチャ」に、Oracle VMのコンポーネントを示します。

図2-1 Oracle VMのアーキテクチャ

図2-1の説明は次にあります
「図2-1 Oracle VMのアーキテクチャ」の説明

2.2 Oracle VMの機能

この項では、Oracle VM Server、仮想マシン、記憶域リポジトリ、ネットワークおよびリソースの管理に使用されるOracle VM Manager機能の概要を示します。Oracle VM Managerは、次の主な機能を提供します。

APIでは、プログラムで規定されたOracle VM Managerへのアクセスが可能であるため、Oracle VM Managerが所有権を持つすべてのオブジェクトを使用できます。プログラムで規定されたOracle VM Managerの機能へのアクセスについては、Oracle VMプログラマ向けのガイドでAPIの説明を参照してください。

2.3 用語

この項では、このガイドを通して使用される用語およびOracle VMで使用される用語の定義について説明します。

2.3.1 ハイパーバイザ

各Oracle VM Serverに存在するハイパーバイザは、フットプリントが非常に小さい仮想マシン・マネージャおよびスケジューラです。システムで唯一完全な権限を持つエンティティとなるように設計されています。CPUとメモリーの使用量、権限の確認、ハードウェア割込みなど、システムの最も基本的なリソースのみを制御します。

2.3.2 ドメイン、ゲストおよび仮想マシン

ドメイン、ゲストおよび仮想マシンは、ほぼ同じ意味に使用されていますが、若干の違いがあります。ドメインは、構成可能な一連のリソースで、メモリー、仮想CPU、仮想マシンを実行するネットワーク・デバイスおよびディスク・デバイスを含みます。ドメインには、仮想リソースが提供され、単独で起動、停止および再起動することができます。ゲストは、ドメイン内で実行される仮想化されたオペレーティング・システムです。ゲスト・オペレーティング・システムは、準仮想化またはハードウェア仮想化がなされています。同じOracle VM Serverで複数のゲストを実行できます。仮想マシンは、ゲスト・オペレーティング・システムとそれに関連するアプリケーション・ソフトウェアです。

2.3.3 管理ドメイン(dom0)

Oracle VM Server環境のハードウェア検出の役割のほとんどは、ドメイン0(dom0)と呼ばれる管理ドメインに渡されます。dom0カーネルは、様々なデバイス、ファイル・システムおよびソフトウェアRAIDとボリューム管理をサポートするフットプリントの小さいLinuxカーネルです。Oracle VM Serverにおけるdom0の役割は、多くのシステム・ハードウェアへのアクセスを可能にし、ゲスト・オペレーティング・システムを作成、破棄、管理し、これらのゲストに対して共通の仮想ハードウェアを使用可能にすることです。

2.3.4 ドメイン(domU)

各ゲスト・オペレーティング・システムには、「ユーザー・ドメイン」と呼ばれるこのシステムの管理ドメインがあり、「domU」と省略されます。このドメインは、ハードウェアまたはデバイス・ドライバに直接アクセスする権限を持たないドメインです。各domUは、dom0のOracle VM Serverによって起動します。

2.3.5 記憶域および記憶域リポジトリ

記憶域リポジトリは、仮想マシンを構築する様々なリソースが保存される中央の場所です。これらのリソースには、テンプレート、ISOファイル、VMファイルなどが含まれます。物理サーバーが故障した場合に備えて、環境内の利用可能なディスク領域の使用量が最適化され、仮想マシンの再割当てを簡単に行えるように、Oracle VM Serverには記憶域リポジトリへの共有アクセス権があります。

ただし、Oracle VM内の記憶域はリポジトリ以上であり、クラスタ化サーバー・プール用のサーバー・プール・ファイル・システム、物理ディスクまたはLUN(ストレージ・アレイ内)、ローカル物理ディスク(Oracle VM Server上)も含まれます。これらの記憶域要素はすべて様々な方法で使用され、Oracle VM Managerで集中管理されます。

2.3.6 サーバー・プール

Oracle VM Serverが1つだけである場合でも、サーバー・プールはOracle VMの必須エンティティです。実際には、複数のOracle VM Serverによって1つのサーバー・プールが形成され、Oracle VM環境に1つ以上のサーバー・プールが含まれる場合があります。通常、サーバー・プールはクラスタ化されますが、理論的にはクラスタ化されていないサーバー・プールも可能です。

サーバー・プールはストレージ・リポジトリへの共有アクセスが可能で、サーバー・プール・ファイル・システムの重要なクラスタ情報を交換し、格納します。サーバー・プールでは、Oracle VM Managerとの通信を集中的に行うマスター・サーバーが選択されます。サーバー・プールの他のメンバーは、必要に応じてマスターのロールを引き継ぐことができます。サーバーで障害が発生した場合でも、サーバー・プールには、その仮想IPアドレスでアクセスできます(仮想IPアドレスはプール内のすべてのサーバーで共有されます)。

サーバー・プール内では、ロード・バランシングまたはスケジュールされたメンテナンスのために、仮想マシンのライブ・マイグレーションが可能です。プール・メンバーがなんらかの理由で消失した場合、必要なリソースはすべて共有記憶域で使用可能であるため、その仮想マシンをリカバリして別のOracle VM Serverで起動することができます。

2.3.7 ネットワーク

Oracle VM環境のネットワーク・インフラストラクチャは、Oracle VM Server間、Oracle VM ServerとOracle VM Manager間、およびOracle VM Serverとそれらの記憶域サブシステム間の接続に加えて、環境内にデプロイされている仮想マシン間の通信および仮想マシンと外部のプライベートまたはパブリック・ネットワーク間の通信で構成されます。これらのネットワーク接続では、Oracle VMによってサポートされる機能(ネットワーク化されたファイル・システム、クラスタリング、冗長性とロード・バランシング、ブリッジングおよび仮想LAN(VLAN)のサポートなど)を利用できます。

物理ネットワークとは、Oracle VM ManagerとすべてのOracle VM Serverの物理接続の集合、および宛先に情報を届けるスイッチとルーターです。Oracle VMの論理ネットワークはこれらの物理接続上に構築されます。Oracle VMネットワークを作成する場合は、1組の論理イーサネット・ネットワークに使用可能なネットワーク・ポートをマップします。このマッピングはOracle VM Managerで実行します。

Oracle VMのネットワークでは1つ以上のネットワーク機能を実行できます。Oracle VMのネットワーク機能には、サーバー管理、ライブ・マイグレーション、クラスタ・ハートビート、仮想マシンおよび記憶域があります。機能は組み合せたり、複数の異なるネットワーク上で使用することができ、設計上の要件は使用可能な物理ネットワーク・インフラストラクチャ(各サーバーのNICの数など)によって異なります。

2.3.8 ジョブとイベント

ジョブは、通常はユーザー処理によってトリガーされる一連の操作です。サーバーの検出、リポジトリの提示、VMの作成などがあります。これらのジョブはOracle VM Managerの「Home」ビューおよび「Hardware」ビューの下部に表示され、そのステータスは進捗状況に従ってリフレッシュされます。ジョブには、特定のユーザー・アクションによるものではなく、更新版のYUMリポジトリの確認など、再帰的なシステム操作によるものがあります。環境内のすべてのジョブの履歴は、ジョブ・リストの表示およびフィルタ処理と、各ジョブの詳細(ステータス、実行タイム・スタンプ、ジョブなどの一部として実行される操作など)の表示が可能な「Jobs」ビューで確認できます。

イベントもユーザー処理に関連することがありますが、ユーザー視点での主な機能は、今後の参考のために「オブジェクト」のステータス情報を登録したり、問題のトレースをより簡単にすることです。イベントはOracle VM Managerの管理ペインの個別のタブに表示されますが、イベントのリストはナビゲーション・ペインのツリー・ビューで選択されているオブジェクトによって異なります。たとえば、VMのイベント・リストでは、作成された時期、起動および停止されたポイント、移行された時期などが表示されます。同じツリー・ビューでサーバーまたはサーバー・プールを選択すると、特定のオブジェクトに関連する別のタイプのイベントが表示されます。イベントにはステータスはなく重大度レベルがあり、大部分のイベントは情報レベルに該当しますが、注意が必要な警告やエラーなどの状況である場合もあります。

2.4 サーバーおよびサーバー・プール

Oracle VM環境は、単一のOracle VM Managerによって制御される、拡張可能な一連のOracle VM Serverで構築されます。Oracle VM Managerは、物理インフラストラクチャと仮想インフラストラクチャの両方に関するすべての情報を含むデータベースを実行します。また、環境全体の構成および管理に使用されるWebブラウザ・インタフェースをホストします。Oracle VM ManagerとOracle VM Server間の通信は、サーバー上およびサーバーを介した操作を実行するために、環境内のすべてのサーバーに存在するOracle VM Agentを介して中継されます。

サーバーは、Oracle VM Managerユーザー・インタフェースによって、IPアドレスまたはホスト名に基づいて検出されます。容量の拡大が必要になったときにはいつでも追加サーバーをインストールして検出できます。Oracle VM Serverは、ホストする仮想マシンに計算機能(CPUおよびRAM)を提供します。また、アタッチされているファイルベースおよびブロックベースの共有記憶域(データ・センターの他のハードウェアが提供)への接続に使用される記憶域プラグインをホストします。詳細は、この章の第2.5項「記憶域」および第5章「記憶域の管理」を参照してください。

Oracle VM Serverはサーバー・プールのメンバーです。サーバー・プールは仮想IPアドレスを使用して、Oracle VM Managerとの通信を処理する1台のマスター・サーバーを選択します。マスター・サーバーが停止した場合、プール内の別のサーバーがマスター機能をすぐに引き継ぐため、サーバー・プールでは、仮想IPアドレスは使用可能なままとなります。障害が発生したサーバーで実行されている仮想マシンは、プール内の別のサーバーでリストアすることができます。これは、サーバー・プールのすべてのメンバーが、仮想マシン構成、ディスク、テンプレートなどが格納されている同じ共有記憶域にアクセスできるためです。

クラスタ化されたサーバー・プール(標準的な構成)では、サーバーとそのサーバーがホストする仮想マシンで高可用性が有効になります。クラスタ化されたサーバー・プールは、クラスタのハートビート機能や構成などのクラスタリング情報を取得するために共有ocfs2プール・ファイル・システムを使用します。クラスタリングおよびocfs2によって、ブロックベースの共有記憶域へのアクセス、フェイルオーバーのポリシー、ロード・バランシング、電源管理などの重要な拡張機能が有効になります。サーバー・プール、クラスタリングおよびocfs2の詳細は、第7章「サーバー・プールの管理」を参照してください。

Oracle VM環境は、いくつかのサーバー・プールで構成できます。設計上の要件では、データ・センターと同様、リソースをグループに分割し、それらを分離して別のユーザー(部門、チーム、管理者、顧客など)に割り当てるほうが適している場合があります。

2.5 記憶域

Oracle VM記憶域のすべての側面について説明するには、記憶域機能のプロビジョニングと使用の両方の側面について説明する必要があります。以降の項で、次の2つの重要な質問に対する答えについて説明します。

2.5.1 プラグインベースの実装

すべてのOracle VM記憶域の実装は、Oracle Storage Connectプラグインに基づきます。プラグインは、パッケージ化されてRPMパッケージとして分散され、Oracle VM Serverにデプロイされます。これらは、ブロックベースの任意の記憶域に対するストレージ・アレイ・プラグインと、ファイル・システムベースの任意の記憶域に対するファイル・システム・プラグインの2つの主なカテゴリに分類されます。

どちらのカテゴリにも汎用プラグインが含まれます。これによって、NFS記憶域、iSCSIまたはファイバ・チャネルSANおよびローカル記憶域を検出、登録および使用する標準機能が提供されます。Oracle VMでサポートされる記憶域の詳細は、第5.2項「記憶域型」を参照してください。汎用プラグインで許可される標準操作は、Oracle VM Serverに提供される記憶域要素を検出して使用できるという点でパッシブです。汎用プラグインでは、記憶域ハードウェア上の対話型管理操作は利用できません。

また、オラクル社では、記憶域パートナと連携し、記憶域ハードウェア・ベンダーに呼びかけて特定のハードウェア用のOracle Storage Connectプラグインを開発しています。これらのベンダー固有のプラグインは記憶域ハードウェアの特定のブランドまたは製品ラインでのみ使用できますが、汎用プラグインと比較して、Oracle VM Managerで実行可能な操作がを追加されています。たとえば、汎用ストレージ・アレイ・プラグインは記憶域ホストのLUNのみを検出し、記憶域要素にアクセスできるサーバーを定義するアクセス・グループを1つだけ所有します。一方、ベンダー固有のストレージ・アレイ・プラグインはLUNの作成や変更などの対話型の操作を実行でき、様々なアクセス・グループを構成してより詳細な記憶域アクセス管理を実行できます。Oracle Storage Connectプラグインの詳細は第5.3項「Storage Connectプラグイン」を参照してください。

プラグインを使用することの主な利点は次のとおりです。

  • 柔軟性。既存の記憶域インフラストラクチャを使用および統合し、ファイルベースまたはブロックベースのソリューションを選択し、テスト用またはあまり重要でない仮想マシンのローカル記憶域を使用します。選択した使用可能なハードウェアまたは新しいハードウェアに応じて、汎用プラグインまたはベンダー固有のプラグインを使用します。

  • スケーラビリティ。必要な記憶域の増加に合わせて、希望の記憶域プロバイダを追加し、それらをサーバー・プールに提示します。より大きな記憶域の要件が一時的なものである場合は、記憶域の量を再度削減します。要件およびプリファレンスに従って、冗長性とマルチパス機能を備えた記憶域をプロビジョニングします。

  • 拡張性。 記憶域をアップグレードする場合は、ベンダー固有のプラグインの追加機能について考慮してください。Oracle Storage Connectプラグインが有効なハードウェアを選択する場合は、RPMについて製造業者に問い合せ、この記憶域ハードウェアへのアクセス権を持つOracle VM Serverにプラグインをインストールします。

2.5.2 記憶域要素の使用方法

環境内のOracle VM Server構成にかかわらず、Oracle VMでは、仮想マシンの作成および管理に不可欠な環境リソースを格納するための場所が常に必要となります。こういったリソースには、VMテンプレートおよびアセンブリ、ISOファイル(仮想DVDイメージ)、VM構成ファイル、およびVM仮想ディスクがあります。このようなリソースのグループが格納される場所を記憶域リポジトリといいます。記憶域リポジトリを、これらのリソースへのアクセス権が必要なOracle VM Server(通常はサーバー・プール内のすべてのサーバー)に提示します。

記憶域リポジトリは、NFSファイル・システムまたはストレージ・アレイの物理ディスク(LUN)に構成できます。ただし、物理ディスク上の記憶域リポジトリでは、そのリポジトリへのアクセス権を持つサーバーは、クラスタ化されたサーバー・プールのメンバーである必要があります。クラスタ化されていないサーバー・プールの場合は、ファイル・サーバーの記憶域のみが使用可能です。記憶域リポジトリの使用方法の詳細は、第5.8項「記憶域リポジトリの準備および構成」を参照してください。

クラスタリングでは、環境に別の記憶域要素(サーバー・プール・ファイル・システム)が追加されます。サーバー・プールの作成時、その新しいサーバー・プールに指定されたサーバー・プール・ファイル・システムは、そのファイル・システムがNFS共有、FC LUNまたはiSCSI LUNとしてOracle VM Serverによってアクセスされるかどうかにかかわらず、OCFS2ファイル・システムとしてアクセスされ、フォーマットされます。このフォーマットによって、グローバル・ディスク・ハートビートの領域を含め、ファイル・システムにいくつかの管理領域が作成されます。サーバー・プール・ファイル・システムは、クラスタリングおよびOracle VM環境の高可用性構成で重要な役割を果たします。サーバー・プールのクラスタリングの詳細は、第7.2項「サーバー・プール・クラスタ」を参照してください。

最も具体的でOracle VMのすべてのユーザーから参照できる記憶域要素は、仮想マシン・ディスクです。VMディスクは、記憶域リポジトリのディスク・イメージ・ファイルまたはRAW物理ディスクのいずれかです。物理ディスク(LUN)が使用されている場合、物理マシンと同じ方法で直接VMにアタッチされます。仮想マシンの操作の詳細は、第8項「仮想マシンの管理」を参照してください。また、サーバー・プール内のすべてのOracle VM Serverから共有アクセスされる記憶域の場所にあるVMディスクの可用性は、VM高可用性にとって不可欠です。

2.6 ネットワーク

Oracle VM環境のネットワーク・インフラストラクチャは、Oracle VM Server間、Oracle VM ServerとOracle VM Manager間、およびOracle VM Serverとその記憶域サブシステム間の接続に加え、環境内にデプロイされている仮想マシン間の通信および仮想マシンと外部のプライベートまたはパブリック・ネットワーク間の通信で構成されます。

これらのネットワーク接続では、Oracle VMによってサポートされる機能(ネットワーク化されたファイル・システム、クラスタリング、冗長性とロード・バランシング、ブリッジングおよび仮想LAN(VLAN)のサポートなど)を使用できます。

Oracle VM Managerのネットワーク構成とは、1組の論理イーサネット・ネットワークへの使用可能なネットワーク・インタフェースのマッピングです。物理ネットワークとは、Oracle VM ManagerとすべてのOracle VM Serverの物理接続の集合、および宛先に情報を届けるスイッチおよびルーターです。Oracle VMの論理ネットワークはこれらの物理接続上に構築されます。Oracle VM Managerで論理ネットワークを定義する前に、VLANやサブネット使用など、使用する物理ネットワーク構成を確認する必要があります。また、Oracle VM Serverが利用できるネットワーク・インタフェースの数も考慮します。単一のOracle VM Serverで必要なポートの推奨される最小数は2つですが、テストまたはデモンストレーション用には1つで十分です。Oracle VM Server上に3つ以上のポートがある環境では、より多くの冗長性またはトラフィック分離を設計できます。

Oracle VMは、様々なネットワーク機能(サーバー管理、ライブ・マイグレーション、クラスタ・ハードビート、仮想マシンおよび記憶域)を識別します。すべてのネットワーク機能は、専用または共有物理ネットワーク上のいずれかで使用できます(仮想マシンのイントラ・サーバー・ネットワークを除く)。たとえば、物理ネットワークを仮想マシンまたは記憶域のみに割り当てることも、すべてのネットワーク機能に割り当てることもできます。ネットワーク機能の詳細は、第6.2項「ネットワークの使用」を参照してください。

物理ネットワーク環境を確認し、論理的な配分を決定してこれらの物理オブジェクトをグループ化したら、Oracle VM Managerで論理構成を作成してネットワーク設計を実装します。これらの論理構成には、ネットワーク・ボンド、VLANグループ、ネットワークおよびブリッジが含まれます。ネットワーク設計にインタフェース・ボンディング(2つのポートの集約)を含める場合は、最初にこれらのネットワーク・ボンドを作成します。複数のVLANからのトラフィックで同じボンドの使用が許可されている場合、これらのボンドはVLANとともに使用されることがあります。ネットワーク環境がVLANで構成される場合、次の手順でVLANグループを作成し、各Oracle VM ServerのどのポートまたはボンドでどのVLANからのトラフィックを受け入れるかを決定します。

使用可能なネットワーク・ビルディング・ブロックおよび必要なネットワーク機能を十分に評価してから、次のいずれかのタイプを選択して必要な論理ネットワークを作成します。

詳細は、第6.3項「ネットワーク環境の構築」およびこの章の以降の項を参照してください。

2.7 高可用性、ロード・バランシングおよび電源管理

Oracle VMの各レベルには、高可用性(HA)機能が組み込まれています。環境に存在するOracle VM Managerは1つだけですが、重要な情報は管理対象の複数のサーバーに分散されるため、障害発生時にOracle VM Managerとそのインフラストラクチャ・データベースを再構築することができます。Oracle VM Serverおよび仮想マシン・レベルでは、HAはクラスタリングに基づきます。Oracle VM Serverが停止した場合にクラスタへの接続を確実に維持できるように、クラスタ化されたサーバー・プールのメンバーは交換可能なマスター・サーバー・ロールと仮想IPを使用します。すべての必要なデータを共有記憶域で取得できるため、サーバーが失われた場合は別のサーバーが同じVMをリカバリできます。予想可能な障害またはスケジュールされたメンテナンスが発生した場合、仮想マシンは、ライブ・マイグレーションを使用してサーバー・プールの他のメンバーに移動されます。

また、Oracle VMではHAネットワークおよび記憶域がサポートされますが、これらの構成はシステム管理者によってOracle VM Managerの外(RAID、マルチパスなど)に実装される必要があります。

クラスタ化されたサーバー・プールでは、動的電源管理(DPM)と動的リソース・スケジューラ(DRS)と呼ばれる高度な管理ポリシーもサポートされます。DPMは、電源を節約するためにサーバー・プール・メンバーの使用を最適化するポリシーです。DPMが有効になっている場合、ポリシーは利用中のOracle VM Serverを定期的に検索し、そのサーバーからプール内の別のサーバーへの仮想マシンのライブ・マイグレーションを実行します。ライブ・マイグレーションが完了すると、サーバーは停止し、電源が節約されます。反対に、サーバーが過負荷状態になった場合、ポリシーはビジー状態のサーバーから仮想マシンの負荷を軽減するために別のサーバーを検索します。電源の入った他のOracle VM Serverがどれも使用可能でない場合、ポリシーはWake-On-LAN機能を使用して電源が停止状態のサーバーを起動し、仮想マシンのライブ・マイグレーションを開始して全体的な負荷のバランスをとります。DPMに追加されたすべてのサーバーで、専用の管理ネットワークに接続する物理ネットワーク・インタフェースに対して、BIOSのWake-On-LANが有効になっている必要があります。Dynamicリソース・スケジューラ(DRS)はDPMと同じ基礎コードを使用します。相違点は、DRSでは、CPUとネットワーク使用量のしきい値を上回るサーバーのみが対象となり、サーバーから仮想マシンを移動する処理のみが実行されることです。これらのしきい値はDRSポリシー(指定された間隔で実行され、サンプル期間にCPUとネットワーク使用量を監視)で設定できます。計算された平均負荷がしきい値と比較され、移行を実行する必要があるかどうかが決定されます。

2.8 仮想マシン

仮想マシン(VM)は、関連付けられたソフトウェアとアプリケーションを持つ仮想化されたオペレーティング・システムとして定義できます。3つのいずれかの仮想化モード(ドメイン・タイプ)で実行されます。

仮想マシンは様々なタイプのリソースから作成可能であり、事前構成された仮想マシンを含むテンプレートやアセンブリから作成する方法、またはインストールDVDのISOファイル(イメージ)を使用して最初から作成する方法があります。現在は、PXEを介したVMのブート機能が組み込まれています。

テンプレートからのVMの作成はクローニングに基づいており、テンプレートはアーカイブとしてインポートされ、解凍されてそのディスクのイメージと一緒にVM構成ファイルとして格納されます(新しいインスタンスを作成するためにVM形式でクローニングされます)。同様に、既存のVMをクローニングして、新しいVMおよび新しいテンプレートを作成することができます。クローニングの詳細は第8.8項「仮想マシンまたはテンプレートのクローニング」を参照してください。

アセンブリは、仮想マシンのグループのテンプレート(複数のVMテンプレートの集まり)と言えます。Oracle VM Managerでは、テンプレートおよびアセンブリは記憶域リポジトリの異なるタブに表示されますが、そのVM構成ファイルおよびディスク・イメージは、別の仮想マシンおよびテンプレートとは別の場所に格納されます。

仮想DVD(イメージ・ファイル、ISO)からのVMの作成は仮想化モードによって異なります。HVMゲストを作成する場合は、新しいVMが仮想DVDからすぐにブートされるように、記憶域リポジトリに配置されているISOファイルを割り当てることができます。一方、PVMゲストは、何もないところからDVDによるブートは実行できないため、リモートからマウントされるISOファイルにNFS、HTTPまたはFTPを介してアクセスし、そのファイルを使用します。

この項および第2.5項「記憶域」で述べたとおり、仮想マシン・リソースは記憶域リポジトリに格納されます。記憶域リポジトリのコンテンツと構造の詳細は、第8.5項「仮想マシン・リソース」を参照してください。

VMを実行すると、VNCコンソールを介してアクセスすることができ、VMを通常のPCとして使用できます。第8.9項「仮想マシンの管理」で説明するとおり、VM上のすべての操作はOracle VM Managerを介して実行されます。

2.9 デプロイ・オプション

この項では、Oracle VMのデプロイ・オプションの概要を示します。

図2-2 Oracle VMデプロイメント

図2-2の説明
「図2-2 Oracle VMデプロイメント」の説明

図 2-2に示すように、Oracle VMデプロイメントには、次のコンポーネントが含まれます。

2.10 Oracle VMの事前作成テンプレート

Oracle VMテンプレートは事前構成された自己含有型の仮想マシンで、主要なOracleテクノロジが備わっています。各Oracle VMテンプレートはOracleベスト・プラクティスを使用してパッケージ化されますが、これによってインストールおよび構成のコストの削減、リスクの軽減およびデプロイメントのタイムラインの大幅短縮を実現できます。

多くの主要Oracle製品(Oracle Linux、Oracle Solaris、Oracle Database、Fusion Middlewareなど)のOracle VMテンプレートはダウンロード可能です。

Oracle VMテンプレート・ライセンスには、製品ライセンスを購入するためのオプションとともに、無料ダウンロードおよび無料トライアル利用が含まれます。Oracle VMテンプレートには時間の制限または機能の制限がありません(つまり、Oracle VMテンプレートはフル機能で有効期限がありません)。Oracleテクノロジ・ライセンスを購入することによって、Oracle VMテンプレートの評価版から製品版に迅速に移行できます。

Oracle VMテンプレートはOracle Technology Networkからダウンロードできます。

http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/vm/templates-101937.html

すべてのOracle VMテンプレートのrootユーザーのパスワードはovsrootです。OVM_os_version_ORACLE_11Gテンプレートのoracleアカウントのパスワードはoracleです。

ダウンロードされたテンプレートを使用する前に、Oracle VM Managerにそれらをインポートする必要があります。テンプレートのインポートの詳細は、第8.5.3.1項「仮想マシン・テンプレートのインポート」を参照してください。

これらのテンプレートの詳細は、次を参照してください。

http://download.oracle.com/otn_software/virtualization/README.templates

2.11 Oracle VM Management Pack

Oracle VM Management Packは、Oracle Enterprise ManagerにOracle VM Manager機能を追加するOracle Enterprise Managerプラグインです。Oracle VM Management Packによって、ゲスト・オペレーティング・システムの監視、管理、プロビジョニングおよびパッチ管理に加え、Oracle VM Server、サーバー・プールおよび仮想マシン・レイヤーでの管理が可能になります。Oracle VM Serverは、2つの管理オプション(Oracle VM ManagerまたはOracle VM Management Pack)のいずれかからのみ管理できます。

Application Change Consoleは、Oracle VM Management Packによってライセンスが付与される個別のスタンドアロン・アプリケーションです。Application Change Console(ACC)を使用すると、構成ファイルを解析して変更または差分を追跡し、変更が行われた場合にアラートまたは通知を送信することができます。Application Change Consoleには、オペレーティング・システム構成ファイル用の事前作成されたパーサーがあります。Application Change Consoleのインストール後、ホスト名を使用してOracle VM Serverおよび仮想マシンにApplication Change Consoleを指定することができます。Application Change Consoleは、ホストにSSH接続して構成を収集し、追跡します。他のエージェントをインストールする必要はありません。Application Change ConsoleのすべてのコンポーネントはOracle VMのOracle Linuxで実行できます。