この章では、Coherence管理機能の概要について説明します。Coherence管理は、Java Management Extensions (JMX)を使用して実装されます。JMXは、Javaアプリケーションとサービスを管理および監視するためのJava標準です。JMXの詳細は、次の記事を参照してください。
http://java.sun.com/developer/technicalArticles/J2SE/jmx.html
この章には次の項が含まれます:
Coherenceでは、クラスタ管理用のJMXフレームワークが用意されています。このフレームワークは、MBeanサーバーをホスティングするように構成された1つ以上のクラスタ・メンバーに依存します。MBeanサーバーは、他のすべてのクラスタ・メンバーの管理対象オブジェクトを管理します。このフレームワークでは、どのクラスタ・メンバーからも管理情報にアクセスでき、JMXメンバーに障害が発生した場合はフォルト・トレラントになります。管理フレームワークはデフォルトでは無効にされており、最低でも1つのクラスタ・メンバーでMBeanサーバーをホスティングするように構成することで明示的に有効にする必要があります。CoherenceでJMX管理を有効にする方法の詳細は、第2章「JMXを使用したCoherenceの管理」を参照してください。
Coherence MBean
Coherenceの管理対象オブジェクトは、com.tangosol.net.management.Registry
インタフェースを使用してMBeanサーバーに登録されます。このインタフェースはCoherenceのクラスタ化されたリソースの管理に特化したもので、基本的なJMX登録APIを抽象化しています。このインタフェースはJMXインフラストラクチャと密接に関係していますが、javax.management.*
のクラスには依存していません。このインタフェースでは、JMXサービスと一緒に配置されていないクラスタ・メンバーのリモート管理がサポートされており、管理対象オブジェクトと一緒に配置されているか、またはリモートで管理対象オブジェクトと関連しているMBeanサーバーにCoherence MBeanを登録できます。
付録A「Coherence MBeanのリファレンス」には、すべてのCoherence MBeanのリストがあり、管理対象リソースに対して公開されている個々の属性と操作が説明されています。ある管理対象リソースでは、各クラスタ・メンバーに単一インスタンスのみが割り当てられており、別の管理対象リソース(例: CacheMBean
MBean)では、各クラスタ・メンバーに複数のMBeanインスタンスが割り当てられています。さらに、MBeanは、少なくとも1つの管理対象リソースが運用されている場合にのみ登録されます。CacheMBean
MBeanでは、MBeanの登録前にキャッシュが起動されている必要があります。
カスタムMBean
Coherenceでは、管理フレームワーク内でカスタムMBeanを管理および監視できます。カスタムMBeanは、アプリケーション固有の動的MBeanまたは標準MBeanです。MBeanは、XMLファイルで宣言的に登録されるか、Registration
インタフェースを使用してプログラム的に登録されます。これにより、アプリケーションのMBeanがクラスタ内のどのJVM、メンバー、エンドポイントからも管理または監視できるようになります。カスタムMBeanの登録方法の詳細は、第3章「カスタムMBeanの登録」を参照してください。
MBeanコンソール
Coherence MBeanとは、MBean対応のコンソールでやり取りできます。Coherenceには、JDKとともに配布されたJava Management & Monitoring Console (jconsole)とJMX参照実装の一部として組み込まれているJMX HTTPAdapter Webアプリケーションの両方のサポートが含まれています。これらのコンソールを使用したCoherence MBeanとのやり取りの詳細は、「Coherence MBeanへのアクセス」を参照してください。
Coherenceレポータには、時系列の管理情報の表示に使用される管理レポートが用意されています。このレポートは、Coherence MBeanから取得したデータで構築されるテキスト・ファイルです。レポートは構成された時間間隔で自動更新されるため、MBeanを監視するのみでは得られない履歴コンテキストが提供されます。レポートは、多くの場合、トラブルシューティングと計画で重要となる傾向を特定するために使用されます。
Coherenceには、多数の事前定義されたすぐに使用できるレポートがあります。これらのレポートをカスタマイズするか、必要に応じて新しいレポートを作成できます。レポーティングはデフォルトでは無効になっているため、明示的に有効にする必要があります。また、最初はレポートのサブセットのみが構成されて生成されます。Coherenceでのレポーティングの有効化の詳細は、第4章「JMXレポーティングの使用」を参照してください。また、事前定義されたレポートの詳細は、第6章「レポータの内容の分析」を参照してください。
Coherence管理は、複数の構成ファイルを使用して構成されます。Coherence構成の詳細は、『Oracle Coherence開発者ガイド』を参照してください。該当するファイルは次のとおりです。
オペレーション・オーバーライド・ファイル: tangosol-coherence-override.xml
ファイルは、オペレーション・デプロイメント・ディスクリプタをオーバーライドするために使用します。クラスタ・サービス、通信サービス、データ管理サービスを作成、構成および維持するために使用する、操作設定およびランタイム設定を指定します。管理設定は、<management-config
ノード内で定義します。管理で使用可能な設定の詳細は、『Oracle Coherence開発者ガイド』を参照してください。
MBean構成オーバーライド・ファイル: custom-mbeans.xml
ファイルはデフォルトのMBean構成オーバーライド・ファイルです。カスタムMBeanを宣言的に定義するために使用します。カスタムMBeanはオペレーション・オーバーライド・ファイル内にも定義できます。ただし、一般的にはカスタムMBeanではなくMBean構成オーバーライド・ファイルが使用されます。
レポート構成ファイル: レポート構成ファイルのセットであり、特定のメトリック・セットに関する管理情報を表示するレポート・ファイルをそれぞれで作成します。レポート構成ファイルは、実行時に使用されるレポート・グループ構成ファイルで参照される必要があります。デフォルトのレポート構成ファイルはcoherence.jar
の/reports
ディレクトリにあり、デフォルトのレポート・グループ構成ファイルによって参照されます。カスタムのレポート構成ファイルも必要に応じて作成できます。レポート・ファイル構成要素の詳細は、付録B「レポート・ファイル構成リファレンス」を参照してください。
レポート・グループ構成ファイル: レポート・グループ構成ファイルは、レポート定義ファイルの名前と場所、およびレポートが書き込まれる出力ディレクトリのリストを示すために使用されます。このファイルの名前と場所は、オペレーション・デプロイメント・ディスクリプタに定義されます。デフォルトでは、report-group.xml
ファイルが使用され、このファイルはcoherence.jar
の/reports
ディレクトリに存在します。必要に応じて、追加のレポート・グループ構成ファイルを指定して、カスタム・レポート・グループ・ファイルを作成することもできます。レポート・グループ構成要素の詳細は、付録C「レポート・グループ構成リファレンス」を参照してください。
management-config.xml
: 管理構成ファイルは、Coherence JMX管理フレームワークで使用される管理呼出しサービス・インスタンスを構成するために使用します。このファイルはcoherence.jar
ファイルのルートに存在し、クラスパスでcoherence.jar
ファイルより前にmanagement-config.xml
ファイルを置くことでオーバーライドできます。この構成ファイルはXSDで定義されません。ファイルには<config
ルート要素が存在する必要があります。また、<invocation-scheme
要素で利用できる同じサブ要素をサポートします。管理構成ファイルの設定は通常、変更するものではなく、一般的にはデフォルト設定のままにしておくことをお薦めします。
Oracle Enterprise Manager Grid Controlには、Coherenceクラスタの管理と監視に使用するOracle Coherence用のManagement Packがあります。管理者は、この管理パックを使用してCoherenceクラスタのパフォーマンスをプロアクティブに監視することで、アプリケーション環境内のパフォーマンス問題を識別および診断するために要する時間を削減できます。主なメリットは、次のとおりです。
クラスタ全体を単一ターゲットとしてモデル化することによる複雑性の管理
キャッシュとノードのリアルタイム・パフォーマンス監視および履歴パフォーマンス監視による診断時間と解決時間の短縮化
アプリケーション・コンテキストでのキャッシュの監視による依存性の分析
しきい値とアラートを使用したプロアクティブな監視
自動化されたプロビジョニングとライフサイクル管理を使用することによるリスクの軽減
迅速なランタイム構成変更によるキャッシュ・パフォーマンスのチューニング
Oracle Enterprise Manager Grid Controlで用意されているOracle Coherence用のManagement Packは次のOTNサイトからダウンロードできます。
http://www.oracle.com/technetwork/oem/grid-control/downloads/index.html?ssSourceSiteId=ocomen
この管理パックの構成方法および使用方法の詳細は、Oracle Enterprise Manager Documentation LibraryのOracle Coherenceのスタート・ガイドを参照してください。
http://www.oracle.com/technetwork/oem/grid-control/documentation/index.html